今後どうなる?教員の働き方改革
教員を取り巻く過酷な状況を緩和するため、文部科学省によって教員の働き方改革が推進されてきましたが、なかなか進まない状況があります。
改めて現状どのような取り組みが行われているのか、また今後は特にどのような部分に力点が置かれていくのか、文部科学省の発表資料から読み解いていきます。
1.教員の働き方改革の現状
文部科学省から令和5年12月に公表された「令和5年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」結果では、全国1795全ての教育委員会を対象に行われた調査結果をもとに、「学校・教師が担う業務に係る3分類」の負担軽減の取り組み状況がまとめられています。
まず「学校以外が担うべき業務」の4業務については特に「登下校時の対応」と「学校徴収金の徴収・管理」に関して、教員の関与が前回より減っていることがわかりました。
具体的な事例として、児童生徒が教員の勤務時間前に登校しないよう登校時間を決めたり、学校給食費を公会計化することで、学校で徴収や督促を行わないように変更するなどの取り組みが行われています。
続いて「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」については、部活動指導で外部人材の参画が進んでいることや、調査・統計への回答、校内清掃においても民間委託や事務職員などでの対応が取り入れられつつあることがわかります。
具体的な事例として、学校宛の文書を教育委員会が精査して不要なものを送付しないよう仕分けしたり、部活動での指導員の配置や活動時間の見直しなどが行われています。
「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」については、授業準備に支援スタッフが参画していること、支援が必要な児童生徒・家庭への対応を専門的な人材が行っていることなどがわかります。
具体的な事例として、ICTを活用した教材用のデータの蓄積や、AI採点システムの導入、外国人児童生徒向けのWeb連絡への多言語翻訳機能の導入などが行われています。
2.教員の働き方改革で今後優先して取り組むべき項目は「部活動」
こうした業務改善の対応の中で、今後特に優先的に取り組む項目として最も多く挙げられたのは部活動でした。
外部人材の登用が進んでいる一方で、児童生徒の取り組みの見守りや指導以外にも、用具やユニフォーム等の発注、他校との練習試合や合同練習などの調整、予定表の作成や会場の確保、保護者への連絡などやることが多く、プライベートな時間を犠牲にしながら報酬なしで取り組んでいる教員が多いことが問題になっています。また、どの部活の顧問になるかによって負担が大きく違うことから不公平感も生まれやすい現状があります。
文部科学省も、今後に向けてさらなる支援スタッフの充実や教職員定数の改善、学校DXの推進等の取り組みを推進すると共に、「3分類」を始めとした学校・教職員が担う業務の適正化、在校時間や業務時間の客観的把握、環境整備に取り組むという方針を打ち出しています。
3.令和6年度概算要求から見る働き方改革の強化ポイント
今後の教員の働き方改革の方針は、令和6年度の文部科学省概算要求からも見て取れます。
例えば「⼩学校における⾼学年の教科担任制の強化や35⼈学級の計画的な整備、教師の処遇改善」に1兆5302億円の予算が計上されています。質の高い教育の実現と働き方改革を両立させるため、教職員定数を5910人増やすことを目標とし、それによって小学校高学年における教科担任制の強化や、小学校における35人学級の実現をめざしています。
教科担任制が実現すれば、教員の持ちコマ数の軽減や授業準備の効率化など、教員の負担軽減を図れるだけでなく、教育の質向上も期待できます。
また、教員業務支援員や学習指導員の配置を拡充し、学習プリントの準備や来客・電話対応、行事・式典の準備補助、進路指導・キャリア教育での実務等を任せることで教師が児童生徒への指導や教材研究に注力できるように支援する方針も打ち出されています。
令和4年度の教員勤務実態調査では、前回実施された平成28年度の調査結果と比較して減少したものの、依然として在校時間が10時間を超える長時間勤務の教員が多い状況にあることが明らかになりました。
一方で、部活動顧問の活動日数は減少し、有給休暇取得日数は増加。校務支援システムや自動採点システムなどICTを活用した負担軽減の取り組みはほぼすべての小・中学校で行われていることもわかりました。
しかし依然として学校によっては副校長など管理職が担任を持ったり、複数クラス同時に授業を行うなどの対応をせざるを得ないほど、教員の人手不足が深刻なケースもあります。持ち帰り業務も含めると1か月の残業時間が過労死ラインを超えるケースもまだまだ無くなったとは言えない状況です。2023年度の東京都の新任教諭が1年以内に離職した割合は4.9%で、過去10年の最多というデータもあります。その理由として多かったのが過労やストレスによる体調不良。早急に働き方改革を進めて教員の心身の負担を減らしていかなければ、学校教育が成り立たなくなってしまいかねません。
今後より一層外部人材やICTを活用して教員の負担軽減に取り組み、労働環境を改善していく働き方改革の実現は急務となっています。「3分類」改善の機運の高まりを止めず、さらなる役割分担や業務効率化が進むことが期待されます。
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2024.09.05