事例

【活用事例:コア・ラーン】三菱UFJ銀行様

三菱UFJ銀行様では、2016年4月から新入行員の金融知識習得にデジタル教材「骨太ドリル」の活用を開始。「骨太ドリル」のシステム提供・運用をTOPPANで受託いたしました。「骨太ドリル」には、TOPPANが開発した金融機関向けの完全習得型デジタル教材「コア・ラーン」のしくみが息づいています。
今回の経緯から「骨太ドリル」導入により新人教育に起こった変化、もたらした効果に至るまでを、「三菱UFJ銀行法人アカデミー」の次長 江上昌宏さん(左)、上席調査役 永積賢一さん(右)、調査役 名倉裕子さん(中央)にお話を伺いました。
※所属部署・役職は取材当時のものです。

『骨太ドリル』
三菱UFJ銀行様の新入行員研修で導入されたデジタル教材。ドリルの解答は自動採点され、復習問題で学習者の理解度に合わせた問題を出題します。また教え手側は、学習者一人ひとりの進行状況・理解度を把握できるようになっています。

新入社員の効率化を考えたきっかけは 「教え手が足りない」と「理解度のバラツキ」

「コア・ラーン」をベースとする「骨太ドリル」が誕生するには、どのような背景があったのでしょうか。
三菱UFJ銀行様の法人部門の人材育成を担当されている「法人企画部法人アカデミー」は、
毎年500人の新入行員の育成を担当されています。
「2014年に、法人アカデミーを立ち上げ、法人部門の人材育成機能を集約。以前は、基
本的に新人の育成はOJTが中心でしたが、最近は教え手の人数が圧倒的に不足という現
状がありました。現場の負担を軽減するためにも、新人研修の中でできるだけ基礎知識を習
得した状態で、現場に送り出す必要があると考えていました」と、江上さんは当時を振り返ります。

法人アカデミーでは新人教育カリキュラムを変更することにし、それまで1年かけて教えていた内容を、2015年から3カ月の集合研修に短縮し、法人部門の銀行員に必要な基礎知識
を学ぶ場を設けました。1クラス30人の少人数制の講義を行い、各人が復習後にテストを
行って習熟度を確認するという方法に切り替えました。それでも課題は残りました。

「クラスが多いので、講師の教え方によって理解度にバラツキが出たり、テストをやっただけで終わりになって、完全に理解しないまま先へ進んでしまったり、何が理解できていないかがわからない…。研修を行う側としても一人ひとりの習熟度について把握することが難しく、どうしたらもっと効率良く理解度や習熟度を高めていけるか、あらゆる方法を検討していました」(永積さん)。

講義の資料やテストの問題などは、過去の研修から十分蓄積されてはいましたが、ICTの活
用については、オンデマンドやオンライン講座などの方法を試すなど、いろいろな方向性を模索されていました。

採用のポイントは、「解るまで繰り返しやる」 しくみ

そうした課題をうかがっのTOPPANの営業担当者は、教育事業推進本部が開発した小学生向けデジタル教材「やるKey」をご紹介しました。(※現在は「やるkey」に変わり「navima」というサービスを提供しています。)

「やるKey」には教科書に準じたデジタルドリルが格納されており、児童一人ひとりの理解度によって出題されます。三菱UFJ銀行様とは対象が大きく異なりましたが、個々の理解度に合わせて問題を出題するアダプティブラーニングという特長が、法人アカデミーの方々が抱えていた課題の解決に、うまくマッチしました。
TOPPANが提案した内容を、研修の実情に沿ったご要望に応じて改良する一方、三菱UFJ銀行様側では、新人用に新たに500台のタブレットを購入。2016年度の新人研修から「財務」「与信」の2科目で、「骨太ドリル」と名づけられたオリジナルの自学自習システムが導入されることになりました。「骨太ドリル」は、eラーニング「コア・ラーン」を三菱UFJ銀行様用にカスタマイズしたソリューションともいえます。

「提案いただいたものは、知識の定着をより確実にする間隔学習のしくみが良かったと思います。銀行員は7~8割の知識で判断すればいいのではなく、100%解っていなければ相手に信用していただけません。『完全定着』という点が、われわれの目指す方向性にぴったり合っていました。『完全定着』の方法として、解いた問題がその場で自動採点され、受講者の解答を分析し、その理解度に合わせた設問が自動的に配信されるというしくみは、復習の効率が良い。ムダのない学習体験ですので、学習意欲も向上しますね」(江上さん)。

さらには「全問正解するとシステム上でメダルがもらえたり、反対に配信された問題を実施せずにいるとメダルが割れるというインターフェースは、ゲーム慣れしている世代にやる気を喚起させるには効果的でした。勉強はやはり解るとやる気も出るものですから」とお話された名倉さんは、目標達成までのロードマップシートを用意し、進捗状況によってシールを貼ったり、全部終了すると講師の終了認定がもらえるなどのしくみで、新入行員たちの意欲を盛り上げました。こうしたデジタルとアナログ双方の施策により、「骨太ドリル」導入の成果はすぐに現れました。

「『骨太ドリル』を導入する前年度と比べて、テストの点数が全体として16%アップ。数値に表れたことで、私たちもその効果を確信できましたし、
周囲に対する説得力にもなりました」(名倉さん)。

新入行員たちにとっても、研修での講義後、自発的にドリルを繰り返すことによって、理解していなかったところや、復習すべきポイントなどを自分で認識しながら、知識が身に付いていることを確認することができます。集合研修中ということもあり、研修生同士で解らないところを教え合うなど、一緒に成長しようというチームワークといった副次的な効果も生まれました。

「ICTの導入によって、自己啓発のサイクルが構築できました。この先もどうやって自分で学んでいけばいいかということが認識できたと思います。また、基礎知識を得て自信がつく、ということが大きいと思います」(名倉さん)

ICTを活用し、人材教育の未来を拓く

ICTを使ったシステムのもう一つの特長である新入行員たちの学習状況の「可視化」によって、教え手側では、一人ひとりの習熟度や進捗状況などの「学習状況」が確認できるようになりました。多くの人が理解できていない点については、講義の内容を再検討することもできます。できる人はどんどん先に進み、そうでない人には個別にアドバイスやサポートができるという点でも、三菱UFJ銀行様の研修方針にうまく合致したようです。

「これまでは、新入行員たちの自主性に期待するだけでしたが、これからはこちらから能動的にフォローできるしくみができました。研修に関わるスタッフが、今までと違う学習体験を提供できるという意義も大きいと思います」(永積さん)。

一方では、「これまでの研修、テストの積み上げがあるとはいえ、3,000問のオリジナル問題をつくるのは大変な作業です。良い問題は、本質を理解していないとつくれないので、問題を作成する側も非常に勉強になります」と語る名倉さん。2017年度はさらに機能を追加し、「財務」「与信」の2科目だけでなく研修の全教科に「骨太ドリル」が導入されます。その背景には、経営や部門が期待するスキルに追いついているの
か、そのために必要な経験を積んでいるのかという、法人アカデミーとしての問題意識が常にあるとのことです。今後の問題作成には「コア・ラーン」の教材作成でのノウハウも期待されます。

「これからは法人部門だけでなく、他部門にも広げ、他行へもこのしくみを紹介していきたいと思います。日本最高水準レベルの人材教育を目指して、研修プログラムをつくっていきたいですね」(江上さん)。

2023.10.11