コラム

企業の生産性向上に必要な
4つのポイントとは

近年、日本企業の多くは、主に人員削減により生産性を上げてきました。また、特に1990年代から2000年代半ばにかけて日本企業はマーケットサイズを大きくすることで粗利を上げ、生産性を保ってきましたが、安くて品質の良い製品を作る国が増え、薄利多売型の努力は限界に。
国内に目を向けても、今は高度経済成長期のように、大量生産・大量販売・大量消費の時代ではなくなりました。生産性=モノを作るスピードではなくなった現在、生産性を上げるのは、「新しいアイデア」「企画提案」「メンテナンスやアフターサービスの充実」など、モノ以外の要素が強くなってきています。
今の時代に合った方法で生産性を上げるために、企業は何をすべきでしょうか。次の4つの要素が、カギを握っていると考えられます。本記事では、その4つの要素について飯田先生に解説していただきました!


ideanote vol.149 新しい「生産性向上」のススメ


企業の生産性向上に必要な4つの要素

1 従業員満足度の向上

 従業員の満足度が向上し、職場定着度が上がると、コミュニケーションの質やチームワークが向上するので、企業の生産性は上がります。現代において従業員の満足度は、報酬以上に、働きやすい環境かどうかに左右される傾向にあります。
 
 特に、従業員が自発的に働ける環境かどうかは重要です。
自発的に行う仕事と、人に言われて行う仕事では、たとえ同じ内容だったとしても満足度は全く違います。また、従業員が自発的に働ける環境は、新しいアイデアや人脈を生みやすくします。

 ポイントは、「いかに会社が従業員を管理監督する時間を減らしていくか」です。
周囲の目を気にせず、自由に働いたほうが人は疲れにくいですし、効率も上がるものです。仕事中に疲れたら、気軽にリフレッシュできる環境が必要なことは、言うまでもないでしょう。
 かつては、休憩室がこの役目を果たしていましたが、リモートワークが浸透しつつある昨今ではオンラインでも雑談ができ、情報を共有するシステムを活用すれば、円滑なコミュニケーションや新しいアイデアも生まれやすいはずです。

自発的に働ける職場

2 労働時間の短縮

 生産性を考えるとき、注目すべきは時間あたりの労働生産性の高さです。
例えば、昼時の数時間だけ営業しているキッチンカーのお弁当屋さんと24時間営業のチェーン店のお弁当屋さんを比較してみましょう。総売上はチェーン店のお弁当屋さんの方が高いかもしれませんが、1時間あたりの売上はキッチンカーのお弁当屋さんのほうが高く、1時間あたりの労働生産性もキッチンカーの方が上になります。

 日本の多くの組織では、未だに「長時間働いている人が偉い」という考えが根強いですが、長時間労働は、疲労につながります。疲労すれば、パフォーマンスも満足度も落ち、新しいアイデアが生まれにくくなってしまいます。
 無駄な業務を削減し、テクノロジーなどを活用することで労働時間を短縮すれば、従業員満足度も上がり、生産性も向上するでしょう。

労働時間の短縮

3 テクノロジーの活用

 テクノロジーの活用とは、最新式の製造機械を導入することだけではありません。すでに存在するテクノロジーを上手に活用することも重要です。

 例えばある不動産会社では、ビルや商業施設など大きな建物を建てるために、まとまった土地を探すことが必要でした。従来は人海戦術でしらみつぶしに探していたものを、Webマップサービスを活用することで土地の捜索にかかる手間を大幅に削減。既存のテクノロジーを活用することによって業務を効率化し、生産性を向上した例です。

 テクノロジーの活用によってイノベーションや新たな価値を生み出すことが大切なのです。

テクノロジーの活用

4 イノベーション

 イノベーション(innovation)の本来の意味は、「新結合」。
ゼロから何かを生み出すのではなく、何かと何かをくっつけることで、イノベーションは生まれます。

 例えば日本のある建設機械メーカーは、機械にGPS端末を付けて、使用状況をモニタリングするIoT技術により生産性を向上させました。当初、これは盗難防止のために導入したシステムでしたが、現場の業務改善や、修理・メンテナンスに新たに活用したのです。GPSに「こんな使い方もあるのでは」というアイデアを、社内の誰かが思いつき実行しました。
 それこそがイノベーションであり、技術そのものより重要なのです。
 
 あるおむつメーカーの場合、1970年代から少子化が始まり、売上が低下しました。そこで液体を固定化する技術に着目し、砂漠の緑化事業という新領域に進出しました。自分たちが提供している価値を捉え直すことで、事業の幅を広げていった一例です。

 また、ある業界で常識的に行われていることが、別の業界では新しい取り組みになる可能性があります。例えば日本の大手自動車メーカーで1954年に取り入れられたジャストインタイム生産システム(※)のやり方は、アメリカの総合スーパーでは戦前から行われていた在庫管理方法でした。
 あまりにもかけ離れた業界だったため、それまで製造業で取り入れる会社がなかったのです。隣の業界で当たり前に行われていることに、イノベーションのヒントがあった例です。さまざまな交流会やセミナーなどに積極的に関わり、コネクションを広げることが大切かもしれません。

※必要なものを、必要な時に、必要な量を生産することで、在庫(経費)を徹底的に減らして効率化すること

イノベーション

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関連ソリューションのご紹介

最後に、記事に関連して、生産性向上に貢献するTOPPANのソリューションを紹介いたします。

関連ソリューションのご紹介

①五感に訴える“空間演出”で集中力維持をサポート
Your Space ®


②習熟度に応じた反復学習で、業務に活かせる知識を完全習得
Core Learn


③多言語にも対応した動画マニュアル制作サービス
教育ドーガ


④ビジネス書要約読み放題の人材育成サービス
flire 法人版


⑤約1,200社のカタログと、自社の資料をシームレスに提供
iCata×SalesStation+


⑥伝えたい情報を選んで並べるだけ!オリジナルWebサイトで営業活動
SALAD-BAR


⑦印刷物の煩雑な校正作業をクラウドで一元管理
TOPPAN PRINT ONLINE


⑧販促物の編集・印刷から在庫管理・発送までクラウドで一元管理
販速部長


⑨書類審査業務におけるチェックの精度と効率を向上
NoEROR

飯田泰之(いいだやすゆき)さん

1975年生まれ。エコノミスト。明治大学政治経済学部教授。東京大学経済学部卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。内閣府規制改革推進会議委員、株式会社シノドスマネ-ジングディレクターなどを歴任。専門は日本経済・ビジネスエコノミクス・経済政策・マクロ経済学。主な著書に、『日本史に学ぶマネーの論理』(PHP研究所)、『経済学講義』(ちくま新書)などがある。

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2022.10.31

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