コラム

SDGs未来都市とは?
未来都市の選定基準と選定されるメリットを紹介

政府や地方自治体、団体、企業が取り組むSDGs。自社で新たな取り組みを始めるのはハードルが高いと思われる方も多いのではないでしょうか。先進的な取り組み事例を知るには、「SDGs未来都市」に選定された地方自治体に注目することをおすすめします。

そこで今回は、SDGs未来都市とは何か、そして2022年に選定された都市一覧や選定基準、注目の都市の取り組み例をご紹介します。


SDGs関連コラム一気読み資料

SDGs未来都市とは

「SDGs未来都市」とは、平成30年度(2018年度)から内閣府主導で実施している取り組みで、「地方創生SDGs」の達成に向け、優れたSDGsの取り組みを提案する地方自治体を選定するものです。

SDGs未来都市は、環境問題の解決、社会的公正の実現などのSDGsの17の目標を全て取り入れ、バランス良く達成することを目指しています。
具体的には、再生可能エネルギーの利用や資源の有効活用、地域コミュニティの強化など、持続可能な社会を作り上げるための施策が盛り込まれています。

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、持続可能な社会をつくるために取り組む、世界共通の目標です。2015年9月に、国連に加盟する193か国により全会一致で採択されたもので、2030年までの15年間で達成すべき17の目標と、目標に紐づく169のターゲットが設定されています。


地方創生SDGsとは、SDGsを原動力とした地方創生を推進することを指します。従来から行われてきた持続可能なまちづくりや地域活性化に向けた取り組みの推進を行うにあたって、SDGsの理念を取り込むことにより、政策の全体最適化と地域課題解決の加速化という相乗効果が期待できます。

SDGs未来都市を選定し、優れたSDGsの取り組みを行う地方自治体の成功事例を公開することで、SDGsへの取り組みの普及を促進させています。

SDGs未来都市に選定されると、向こう3か年の取り組みを具体化したSDGs未来都市計画に基づいた活動を、目標に向かって積極的に実施していきます。そして定期的に取り組みの進捗評価が行われ、その達成度の公表と共にフォローアップが行われます。

SDGs未来都市に選定された地方自治体の中で、特に優れた先導的な取り組みについては「自治体SDGsモデル事業」として選定され、SDGs未来都市計画の推進にあたって、補助金を受けることができます。

SDGs未来都市の目指す未来は、人々が安心して暮らせる環境を実現することです。それは、環境負荷の低減だけでなく、地域の経済発展や社会的包摂性の向上も含まれます。そのため、SDGs未来都市は、人々がより良い生活を送るための都市と言えます。
またSDGs未来都市の実現は、私たち一人ひとりの生活にも大きな影響を与えます。持続可能な生活を実現することで、私たち自身の生活の質が向上し、次世代に良い環境を残すことが可能になります。そのため、SDGs未来都市の概念は、私たちの未来をより良くするための重要なステップと言えます。
私たち一人ひとりがその実現に向けて行動を起こすことで、より良い未来を創り出すことが可能となります。


SDGs未来都市に選定された都市の数と一覧(令和4年度)

平成30年度(2018年度)の開始以来、毎年、約30の都市がSDGs未来都市に選ばれています。平成30年度(2018年度)から令和4年度(2022年度)までの5年間で、計154都市がSDGs未来都市に選定されてきました。各地方自治体はそれぞれの課題の解決に向け、策定したSDGs未来都市計画に基づいたまちづくりを推進しています。

ここで、令和4年度(2022年度)に、SDGs未来都市に選定された30都市の一覧を紹介します。

令和4年度SDGs未来都市 選定都市一覧

No. 提案者名 提案全体のタイトル
1 宮城県大崎市 「宝の都(くに)・大崎」の実現に向けた持続可能な田園都市の創生
2 秋田県大仙市 課題先進地の挑戦 Well-beingにあふれる持続可能なまち
3 山形県長井市 循環で繋がるまち 長井
4 埼玉県戸田市 一人ひとりの行動変容から始まる持続可能なまちづくり ~『このまちで良かった』みんな輝く 未来共創のまち とだ~
5 埼玉県入間市 Well-being City いるま ~健康と幸せを実感できる未来共創都市~
6 千葉県松戸市 「やさシティ、まつど。」の進化と深化~多様な人材が奏でるSDGs未来都市の実現~
7 東京都板橋区 絵本がつなぐ「ものづくり」と「文化」のまちの実現~子育てのしやすさが定住を生む教育環境都市~
8 東京都足立区 多様なステークホルダーと挑む「貧困の連鎖」解消に向けた都市型モデルの構築
9 新潟県 豊かな自然としなやかに共存する「住んでよしの新潟」
10 新潟県新潟市 都市と田園の好循環~デジタル技術で食と農の可能性を拡げる都市~
11 新潟県佐渡市 人が豊かにトキと暮らす黄金の里山・里海文化、佐渡~ローカルSDGs佐渡島、自立・分散型社会のモデル地域を目指して~
12 石川県輪島市 “あい”の風が育む「能登の里山里海」・「観光」・「輪島塗」― 三位一体の持続可能な発展を目指して ―
13 長野県上田市 「ひと笑顔あふれ 輝く未来につながる健幸都市」上田の創造
14 長野県根羽村 源流の里による生命環境を生かした村づくり〜矢作川源流地の持続可能社会に向けた取組〜
15 岐阜県恵那市 「住みたい田舎」であり続ける観光・交流・定住・安住・共生の恵那ライフ ーENA遺伝子の継承と伝達ー
16 静岡県御殿場市 誰もが輝ける 富士の麓の環境を守り育てるまち 御殿場
17 愛知県安城市 安城ならではの公民連携によるウェルビーイングな脱炭素社会の実現
18 大阪府阪南市 人と自然が共生・共創するCo-ベネフィット型未来都市の実現
19 兵庫県加西市 SDGsの推進を通じてみんなで創る 加西の元気力
20 兵庫県多可町 人と自然が共生する新たな森林サービスで幸福度高まるTAKA[多可]創生事業
21 和歌山県田辺市 未来へつながるまち「田辺市」を目指して ~1000年をつなぐ熊野の保全と継承~
22 鳥取県 人口最少県とっとりの「小さくとも持続可能な地域づくり」への挑戦
23 徳島県徳島市 SDGsでまちの未来を創ろう!持続可能なわくわくするまち・とくしまの実現
24 徳島県美波町 森への回帰 ウミガメの森の恵みの地域好循環による“にぎやかそ(にぎやかな過疎)”の加速
25 愛媛県新居浜市 ~先人の思いをつなぎ、シビックプライドを次のアクションへ~「SDGs未来都市 にいはま」実現プロジェクト
26 福岡県直方市 未来へつなぐ「ひと・まち・自然」~Road To 2030 Team NOGATA~
27 熊本県八代市 新たなつながりの創出で、「持続可能な人と企業に選ばれるまち」づくり
28 熊本県上天草市 島々を抱く穏やかな海で自然の恵みを活かしたサスティナブルシティ ~訪れたい、応援したい、戻りたい~
29 熊本県南阿蘇村 3つのKによる「誰もが住みたい・住み続けたい南阿蘇村」の構築
30 鹿児島県薩摩川内市 「持続可能で魅力的なまち・薩摩川内市」を目指して

※都道府県・市区町村コード順


そして令和4年度(2022年度)は10事業が自治体SDGsモデル事業に選定されました。

令和4年度自治体SDGsモデル事業 選定事業一覧

No. 提案者名 自治体SDGsモデル事業名
1 宮城県大崎市 大崎耕土GIAHSを核とした持続可能な地域社会づくり
2 千葉県松戸市 Z世代を起爆剤に多様な主体が奏でる常盤平団地エリアのリ・ブランディング
3 東京都足立区 逆境を「まちの力」で乗り越える足立SDGsモデル構築事業「やりたくてもできない」から「やりたい!」に。
4 新潟県新潟市 将来に向けた持続可能な食と農の創出プロジェクト
5 岐阜県恵那市 恵那発たべるSDGsモデル構築プロジェクト〜恵那ふうど=FOOD×風土〜
6 大阪府阪南市 共創による新しい地域価値の創造カーボンニュートラルの先にあるCo-ベネフィット型未来都市に向けて
7 和歌山県田辺市 1000年をつなぐ田辺市熊野SDGsプロジェクト〜
8 鳥取県 人口最少県 誰もが活躍する「人づくり王国とっとり」戦略〜SDGsチャレンジ人財サポート
9 熊本県八代市 Move forward!「SDGs フードマッチングプロジェクト」
10 熊本県上天草市 島々を抱く穏やかな海とともに生き続けるためのプロジェクト

※都道府県・市区町村コード順


SDGs未来都市の選定基準

SDGs未来都市の選定基準

SDGs未来都市は、どのような基準で選定されているのでしょうか。

選定基準は、まずSDGsの理念に沿った基本的・総合的な取り組みを推進しようとする都市・地域であるということを第一条件としています。その中でも特に「経済・社会・環境」の3つの側面の統合的な取り組みによる相乗効果と新しい価値の創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域とされています。また、2021年度からは、脱炭素化に関する取り組みを選定時の加点要素として追加しています。

「経済・社会・環境」の3つの側面は、「環境未来都市」構想に基づいています。

「環境未来都市」構想とは、世界的に進む都市化を見据えて、持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりを目指す構想で、2021年度までに内閣府によって累計124自治体が選定されています。
では、環境未来都市はどのような都市なのでしょうか。その定義は「環境や高齢化など人類共通の課題に対応し、「経済・社会・環境」の3つの価値を創造することで『誰もが暮らしたいまち』『誰もが活力あるまち』の実現を目指す、先導的プロジェクトに取り組んでいる都市・地域」となっています。

SDGs未来都市は、環境未来都市のように持続可能な経済社会を実現する都市・地域づくりを推進している都市であることは同じですが、選定評価軸がSDGsの17の目標と紐づいている点が異なります。


SDGs未来都市の取り組み例

令和4年度(2022年度)にSDGs未来都市に認定された都市のうち、3都市の取り組みの概要をご紹介します。

愛知県安城市
「公民連携で安城の未来を紡ぐウェルビーイングな脱炭素社会実現プロジェクト」

愛知県安城市は自動車産業を中心とした製造業に支えられている都市であるため、自動車の電動化をはじめとした自動車産業の大変革は、市の持続可能性に大きな影響を与える可能性があるとしています。そのため、産業構造の大変化への対応を課題に据えています。

そこで2030年のあるべき姿として、自動車産業などで培った技術やそれを使いこなすことのできる人材、また財政的な基盤、地域に根付く文化やコミュニティをベースに、脱炭素社会の構築に挑戦していくとしています。特に市としてのトップビジョンである健幸都市=ウェルビーイングの実現を念頭に「安城ならではの公民連携によるウェルビーイングな脱炭素社会」の構築を目指しています。

具体的な取り組みとして、「経済」においては次世代モビリティ産業の構築、次世代型の農業の推進などがあり、「社会」においては、市民・事業者・行政の共創による日本一住みやすいまちの実現に向け、居心地よく歩くことができ、滞在できる空間を作るなどの「ウォーカブル(※)なまちづくり」を目指す取り組みがあります。

「環境」においては、地域特性をベースに再生可能エネルギーの利活用などを通して、資源を余すことなく活用するまちの実現に取り組んでいます。例えば、廃棄物焼却処理施設のエネルギーセンター化などの取り組みが挙げられています。

※「walk(歩く)」+「able(できる)」

岐阜県恵那市
「『住みたい田舎』であり続ける観光・交流・定住・安住・共生の恵那ライフ —ENA遺伝子の継承と伝達—」

岐阜県恵那市は、人口減少や高齢化で2030年には人口が16%減(2015年比)、高齢化率が38.8%に達すると予想されていました。そこで、観光・交流から移住への流れを作り、定住のための社会環境構築を行うことをはじめ、市民の郷土意識の回復、食料自給率100%を目指した地消地産のさらなる向上、健康寿命の延伸のための生涯学習を提供するまちづくり推進、CO2排出量削減や資源リサイクルに取り組んでいます。

また、2030年のあるべき姿として、「経済」においては、域内循環型経済を基礎とした観光・交流による関係人口の拡大として、特産の栗きんとんに必要な栗生産の衰退を食い止めるための「超特選栗」モデルの横展開などに取り組むこととしています。

「社会」においては自律・分散型ネットワークによる定住・安住・多世代共生の充実のために、「エーナ健幸ポイント制度」という健診受診や運動などを行うことでポイントが貯まり、インセンティブが受けられる制度などの取り組みを挙げています。

「環境」においては資源循環とカーボンニュートラルによる自然との共生の継承のために、地域資源回収拠点の設置・運営や、間伐促進による森林管理などに取り組むとしています。

東京都板橋区
「絵本がつなぐ「ものづくり」と「文化」のまちの実現~子育てのしやすさが定住を生む教育環境都市~」

東京都板橋区では、若い世代の定住化と地域経済の好循環・新たな価値の創造や、高齢者が就労や地域活動などを通じて、支え合いながら自分らしく活躍できる社会の構築、気候変動への対応や暮らしやすい安心・安全な環境づくりなどが課題として挙がっています。

こうした課題を受け、2030年のあるべき姿として、ものづくりやボローニャ市との交流、印刷産業が多く立地する区の特徴を生かした「絵本のまち」、そして人と環境が共生する都市としての「エコポリス板橋」をもとに、絵本がつなぐ「ものづくり」と「文化」のまちの実現を掲げています。そして子育てのしやすさが定住を生む、教育環境都市となることを目標としています。

「経済」においては、産業都市・絵本のまちとしてのブランディング強化のために美術館・ボローニャ絵本館などを中心とした絵本のまちのストーリー展開などに取り組むこととしています。

「社会」においてはシニア世代活躍とフレイル(※1)・介護予防推進のために、地域におけるフレイル予防と10の筋トレの展開、高齢者就労支援・地域貢献活動促進などに取り組むこととしています。

「環境」においてはゼロカーボンシティ実現重点施策の推進のために、公共施設のZEB(※2)化、本庁舎への再生可能エネルギー100%電力の導入などに取り組むこととしています。

※1 健康な状態から要介護になるまでの中間的な状態

※2 ZEB:Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと(環境省HPより)。

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SDGs未来都市に選定されるメリット

SDGs未来都市に選定されるメリットには、どのようなことあるのでしょうか。主なメリットを確認しておきましょう。

政府のフォローアップ・有識者等からのアドバイスを受けられる

選定された地方自治体は、SDGs達成に向けての計画と進捗評価に対して、政府のフォローアップやサポート、そして有識者や各省庁からのアドバイスを受けることができます。

自治体としてPRにつながり、地方創生の推進に寄与

SDGs未来都市に選定され、一覧のリストに掲出されることは、自治体のPRに貢献し、観光や移住などのニーズにつながるでしょう

少子高齢化や経済縮小などの日本全体の課題解決に寄与する

国としては、SDGs未来都市の取り組み例が増えることで、より社会が持続可能になります。各地域全体を活性化できれば人々の暮らしはより豊かになります。これにより、少子高齢化や経済縮小の課題解決につながると考えられます。よって、地方自治体としては、自治体のみならず、日本全体の課題解決にも貢献できる可能性があります。


まとめ

SDGs未来都市の概要や選定された都市の一覧、選定基準、取り組み例などをご紹介しました。各地方自治体の取り組みは、他の地方自治体はもちろんのこと、企業にとっても参考になるものといえます。

またTOPPANでは、SDGs達成に向けた事業活動を通じて、特に注力すべき分野を特定した「TOPPAN Business Action for SDGs」を2020年11月に公表しています。「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」の実現を目指し、事業で取り組む注力分野を特定して活動を行っています。

また、TOPPANの情報誌「ideanote」のvol.146では、SDGsをテーマに据え、「ビジネス視点から考えるサステナブル」という観点からの読み物を掲載しております。ぜひご覧ください。

【SDGs関連コラム】

2023.05.22

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