地方創生とは? 企業の取り組みやSDGsとの関係、成功事例をご紹介
現在、国をはじめ、自治体と企業が力を注いでいる「地方創生」。近年はデジタルツールを活用することで、より効率的かつ効果的に地方創生を実施する取り組みが各所で行われています。企業にとって、地方創生は地域貢献につながるほか、積極的に関わることでSDGsへの貢献にもつながります。実は、地方創生はSDGsにも関係しているのです。一体、どのように関係しているのでしょうか?
そこで今回は、地方創生の概要と目的や、企業が取り組むべき課題、SDGsとの関係、成功事例をご紹介します。
地方創生とは?
地方創生とは、2014年に第二次安倍内閣によって取り決められた地方活性化の政策です。
政府一体となって取り組むために同年9月に「まち・ひと・しごと創生法」が制定され、内閣に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置されました。地方の人口減少に歯止めをかけ、地方活性化につなげることを目的としています。
また同年12月には、2060年に1億人程度の人口を維持するといった中長期的な展望を示した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と、これを実現するための5か年の目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめた第1期の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が策定されました。また2020年度からは、2024年度までの第2期「総合戦略」のフェーズに入っています。
第2期「総合戦略」においては、「地域の特性に応じた、生産性が高く、稼ぐ地域の実現」「安心して働ける環境の実現」や、「地方への移住・定着の推進」、「地方とのつながりの構築」、「結婚・出産・子育てしやすい環境の整備」「活力を生み、安心な生活を実現する環境の確保」といった基本目標が掲げられています。
地方創生が求められる背景
では、地方創生が必要とされる背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
地方の人口減少
人や産業が東京ヘ一極集中していくことで、地方の人口が年々減少していることから、地方からの人口流出を食い止める手段が求められています。また、東京一極集中により働き手となる現役世代が特に東京へ流出しているため、地方の高齢化も同時に問題となっています。
地方の少子高齢化
日本で少子高齢化が進んでいる現状は、言うまでありませんが、特に少子化に伴う地方の働き手の減少は深刻な問題となっています。年々進行している少子化により、2020年の出生率は1.34まで減少しています。出生率が減少し、少子化が進んでいくことで、将来の働き手が少なくなり地域経済もこれまで以上に縮小していくことが予想されるため、地方の少子高齢化を食い止めることが求められています。
このような問題から、将来的な地域経済の悪化が予想されており、地域活性化に向けた取り組みが求められています。
地方創生において取り組むべき課題
地方公共団体・自治体や企業が地方創生に取り組むにあたって、現状、次のような課題があります。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の必要性
DXとは、単なるデジタル化ではなく、ITを駆使して、データ活用を促進し生産性を抜本的に向上させることを指します。地方創生においては、地方における医療、福祉、教育などの分野においてDXを加速させる必要があり、5Gなどの情報通信基盤の早期整備やデジタル人材の育成・確保、「地方創生推進交付金 Society5.0タイプ」の創設が、支援策として挙げられています。
感染症対策・危機に強い地域経済の構築
コロナ禍を受け、働く環境が大きく変わる中、テレワークなどを活用しながら対策を講じると同時に、危機が起きても雇用維持・事業継続を進め、強靱かつ自律的な地域経済構築が目指されています。
地方への移住・定着の推進と安定的な雇用確保
「地方大学の産学連携」を強化するとともに、体制を充実させるほか、リモートワーク推進などによる、地方への移住・定着の推進が求められています。
具体的な施策として「地方大学・地域産業創出交付金」の創設により、地方のサテライトキャンパスの設置促進や、地域の雇用の創出・拡充による、若者の地方への定着推進などがあります。
結婚・出産・子育ての支援
総合的な少子化対策として、結婚・出産・子育てしやすい環境の整備は、地域の実情に応じた取り組みを推進する必要があります。
地方創生の課題解決策
自治体が中心となって実施する地方創生において、民間企業も積極的にサポートしていくことが求められます。そこで企業が実践できる、ビジネスと関連させた課題解決策をご紹介します。
クラウドファンディングサイトの創設・参加
クラウドファンディングとは、インターネットを通して途上国支援や商品開発などの目標や夢への想いを発信し、共感した人から活動資金を募るしくみです。事業資金を集めやすいことから、地方創生との親和性が高いのが特徴です。クラウドファンディングサイトを創設・運営したり、自ら地方創生の何らかの目標を掲げて資金を募るなどのプロジェクトも考えられます。
中古住宅のリノベーション、空き家問題解決
不動産業界においては、地方の中古住宅を生まれ変わらせるリノベーションを推進するほか、空き家問題に取り組むことで、地方移住を促進させることができます。
地方と雇用を結ぶサービス開発提供
地方移住とともに、地方での雇用を創出するために、地方と地方移住希望者とのマッチングを図るツールの開発提供などが行われています。
多言語翻訳ツールの開発提供
インバウンド(訪日外国人)を受け入れることは地方創生のカギといわれており、地方への興味関心を呼び込むためにも多言語翻訳ツールの開発提供は一つの手段といえます。
地方創生とSDGsとの関係
では、いよいよ地方創生とSDGsとの関係性をみていきましょう。国内では「地方創生SDGs」と呼ばれています。「SDGs」は、国連サミットで設定された、2030年までに持続可能な地球環境を目指す国際目標です。SDGsの各ゴール達成への取り組みが国内でも活発化する中、地方創生につながるSDGsの取り組みも推進されています。
地方創生SDGsが推進されている背景
地方が、将来にわたって成長力を確保するためには、地方住民が安心して暮らせる、持続可能なまちづくりと地域活性化が重要です。急激な人口減少の過渡期にある地域では、くらしの基盤の維持や再生を図ることが求められています。
その地方創生をSDGsの理念に沿って進めることにより、地方創生の政策全体の全体最適化、そして地域課題解決の加速化という相乗効果が期待できることから、地方創生の取り組みの一層の充実・深化につなげることができるという点から、内閣府はSDGsを原動力とした地方創生を推進しています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームとSDGs未来都市
内閣府では、地方創生SDGs官民連携プラットフォームを設置し、官民連携によって地方創生SDGsを推進する取り組みを行っています。
また、中長期を見通した持続可能なまちづくりに取り組むため、地方公共団体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案した60都市を「SDGs未来都市」として選定し、成功事例として示しながら地方創生の深化につなげています。
企業が地方創生に取り組んだ成功例
政府だけでなく、地方創生は民間企業も積極的に取り組んでいくことで、深化につながっていきます。そこで企業が地方創生に取り組んだ成功例を2つご紹介します。
食品メーカーの事例~自治体と民間企業の連携・協働で地域活性化を実現
ある大手食品メーカーは、食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業を目指しています。社会課題の一つである「農業振興・地方創生」にも積極的に取り組んでおり、その一例として、各自治体と連携し、季節限定の野菜ジュースシリーズ展開により、地域の農産物を全国で消費する「地産全消」の活動や、「農業振興」「健康寿命の延伸」「地域活性化」など、各地域が抱える課題解決に向けた全国自治体などとの包括協定の締結、協働事業展開、農村の過疎化や耕作放棄地の拡大などの農村課題を解決すべく、農産物をEC等で販売する通販事業を実施するなどしています。自治体と民間企業それぞれが持つ知見とノウハウ、特性を活かし、効果的に連携している好例といえます。
りんごの産地で知られる町~人口減少・地域活性化対策のための施策
りんごが特産物の、ある町は、人口減少に歯止めをかけ、地域を活性化していくためにさまざまな施策を展開しています。
そのうち、地域経済の活性化、創業比率の増加などを目標に、「人づくり」「関係づくり」「機会づくり」を軸にした活動を民間企業であるTOPPANのサポートにより実施しています。「人づくり」では学び・集い・つながれるイベントプログラムの実施、「関係づくり」ではWebマガジンの運営、「機会づくり」では旧小学校校舎を活用した地域の交流拠点施設の整備を行いました。
まとめ
地方創生は、政府だけが推進するものではなく、自治体、民間企業、大学など産官学連携で実施していくことで、大きな成果を挙げることができます。
企業は、地方創生に対してあらゆる活動を実施することが可能です。カギになるのは、デジタル活用やデータ活用です。必要なデジタル技術やデータを大いに活用しながら、新しい未来都市づくりに向けて、ぜひ積極的に取り組んでいきましょう。
2023.12.01