コラム

SDGsと地方創生の関係とは?
「地方創生SDGs」をわかりやすく解説!

SDGsを原動力とした地方創生である「地方創生SDGs」が国によって推進されています。地方創生とSDGsが結びつくと、果たしてどのような取り組みとなるのでしょうか?
今回は、SDGsと地方創生が密接につながることで実現する「地方創生SDGs」の定義や推進の背景、具体的な取り組み方、成功事例をご紹介します。


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SDGsと地方創生の関係とは?

SDGsと地方創生は、どのような関係があるのでしょうか? まずはそれぞれの意味を確認しておきましょう。

SDGsとは

SDGsとは、国連サミットで設定された、2030年までに持続可能な地球環境を目指す国際目標です。「17のゴール」と「169のターゲット」から構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国だけでなく、先進国も含めて取り組むユニバーサル(普遍的)なものであることが特徴です。

地方創生とは

地方創生とは、地方の人口減少に歯止めをかけ、地方活性化につなげることを目的とした政策です。地方創生においては、基本目標として生産性が高く稼げる地域・安心して働ける環境の実現、地方への移住・定着の推進、地方とのつながりの構築、結婚・出産・子育てしやすい環境の整備による安心した生活を実現する環境の確保が掲げられています。地方を活気づけ、長期にわたって成長し続けることが目指されています。

SDGsと地方創生についての詳細は「SDGsとは? 17の目標から企業の取り組みまで解説!」と「地方創生とは? 企業の取り組みやSDGsとの関係、成功事例をご紹介」のコラムをご覧ください。

SDGsと地方創生の関係は?

地方創生は、地域の持続可能性を追求するものであることから、SDGsが目指すところと共通している部分があります。日本としてはSDGsと地方創生の両方を推進する必要があることから、SDGsを原動力とする地方創生である「地方創生SDGs」が生まれました。これにより、SDGsと地方創生の結び付きはより強化されたと言っても良いでしょう。


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地方創生SDGsとは?

地方創生SDGsとは「SDGsを原動力とした地方創生」のことを指します。

自治体や関係者が持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて取り組みを推進する際にSDGsの理念に沿って進めることにより、政策の全体最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待でき、地方創生の取り組みをより一層、充実させ、また深化させることができるという考えの下に推進されています。

この地方創生SDGsが推進されている背景として、近年急速に進む人口減少が、経済社会に与える影響が大きいことが挙げられます。例えば、社会保障などの持続可能性が困難となれば、働き手への負担が増加してしまいます。また中山間地域などの活力が低下してしまうと集落の維持が困難となります。さらに東京圏に高齢者が急増していることで医療・介護問題が深刻化しています。

これらの課題を受け、将来にわたって活力ある地域社会の実現を目指し、人口減少をやわらげ、地域の外から稼ぐ力を高めるとともに地域内経済循環を実現し、人口減少に適応した地域をつくること、東京圏への一極集中の是正などにつなげ、人々が安心して暮らせる持続可能なまちづくりを推進していくことが必要です。
また地方創生SDGsに「脱炭素化の流れを地方創生に取り込む」取り組みを掛け合わせて行うことも想定されています。

地方創生SDGs

地方創生と共にSDGsを推進する際の注意点

地方創生と共にSDGsを推進をする際、いくつか注意点があります。押さえておきたい注意点について解説します。

実施中の取り組みとSDGs施策を紐づけない

既存の取り組みをSDGsに紐づけて、地方創生SDGsに取り組むことは本質的な課題解決にはなりません。施策の中身を変えない状態でSDGsに取り組んでいるように見せる行為は、企業や自治体のイメージ低下を引き起こしますため、必ず中身の伴ったSDGs施策を設定する必要があります。

企業や自治体だけで地域問題を抱え込まない

SDGs施策を決める際に、住民の声を聞いたり、住民が施策を評価できる「参加型評価」の形式を取り入れ、住民を巻き込むことも重要です。企業や自治体だけでは把握ができない、地域課題を抽出し、ゴールをイメージしたうえで、ステークホルダーとの連携を積極的に推進し、情報共有など協働していく姿勢が重要です。

SDGs施策自体に持続性を持たせる

施策や事業を継続させるには、自律性が求められます。補助金の期限切れや財源不足などで地域課題を解決できない状態を作り出さないためにも、自治体や企業などステークホルダーが深く連携し、財政的基盤を強固にしながら、地域を経営していく姿勢を身に付けていくことが重要です。


地方創生SDGsの具体的な取り組み

地方創生SDGsには、具体的に次の取り組みがあります。それぞれどんな取り組みなのか、確認していきましょう。

SDGs未来都市

SDGs未来都市とは、地方創生SDGsの達成に向け、優れたSDGsの取り組みを提案する地方自治体を選定するものです。
SDGsの理念に沿った基本的・総合的取り組みを推進しようとする都市・地域の中から、特に、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域を選定しています。優れた成功事例を公開することで、日本全体のSDGsへの取り組みの普及を促進させます。

詳細については「SDGs未来都市とは? 2022年都市一覧から選定基準、取り組み例まで一挙ご紹介!」コラムでも解説しています。

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、地域経済に新たな付加価値を生み出す企業や、専門性を持ったNGO・NPO・大学・研究機関など、広範なステークホルダー間とのパートナーシップを深める官民連携の場です。地方創生SDGsの推進にあたっては、官と民が連携して取り組むことが重要との考えの下、設置されました。
会員同士の連携を創出するマッチング支援、分科会開催、普及促進活動の3つの軸で実施し、会員数は2022年12月末時点で7,000団体に近づきつつあります。

地方創生SDGs金融

SDGs金融とは、持続可能な社会への変革に向けて、SDGs達成に取り組む企業の非財務的価値やESG要素等も評価し、金融市場からの資金流入等を通じて成長を支援することです。こうしたSDGs金融による資金の流れを、SDGsの達成を目指す地域事業者や地域経済に還流させることを「地方創生SDGs金融」と定義しています。
この資金の流れにより、地域におけるSDGs達成に向けた取り組みを加速させ、より一層の地方創生につなげます。
取り組みの一つに「地方創生SDGs金融表彰」があります。地方公共団体等と地域金融機関等が連携して、地方創生SDGsに取り組む地域事業者を支援する取り組みの中から特に顕著な功績の見られた取り組みを選定するものです。

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地方創生SDGsの事例

地方創生SDGs官民連携プラットフォームでは、会員によって官民連携による地方創生SDGsの事例が多く生まれています。今回はその中から3つの事例をご紹介します。

1.鳥取県日南町 × 株式会社山陰合同銀行
「SDGs・脱炭素社会に向けた圏域での官民連携プロジェクト」

鳥取県日南町は町面積の9割を占める森林を地域固有の資源と捉え、平成25年にJ-クレジット(※1) を取得しました。そして山陰合同銀行、鳥取銀行等と連携し、地域事業者の脱炭素化やサステナブル経営に向け、事業者の二酸化炭素の排出削減、環境意識の醸成、持続可能な森林整備の財源確保を図りました。

J-クレジットを保有する自治体の多くが持続的な販売実績につながっていない現状があるなか、この取り組みは、脱炭素社会の実現や企業の環境意識の醸成を促し、地域の森林保全につながっています。森林を有する自治体などが応用可能なモデルと評価されています。

※1:J-クレジット制度とは、省エネルギーの取り組みなどによって、CO2等の排出を削減した際、削減によるCO2排出の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。 創出されたクレジットは売却することも可能で、クレジットの売却益によって設備投資費用の回収や、さらなる施策へ費用を投じることができます。

2.高知県計画推進課 × 一般社団法人在宅栄養ケア推進基金
「医福食農連携で高齢者の低栄養予防に資する健康支援型配食サービス」

「医福食農連携で高齢者の低栄養予防に資する健康支援型配食サービス」 一般社団法人在宅栄養ケア推進基金は、高知県、土佐清水市と包括連携協定を締結し、大手配食サービス事業者と連携して、高齢者の低栄養予防を目指す健康支援型配食を整備しました。高齢者の低栄養予防はフレイル(※2)を予防し、介護予防・自立支援につながり、高齢者の社会参加を促します。

コロナ禍で販売不振に陥った農水畜産物を同社が買い取り、配食メニューへ組み入れ、全国販売することで、一次産業を救済し、地域活性化につなげました。

※2:加齢などによって、心や体の働きが弱くなってきた状態をフレイル(虚弱)と表現します。

3.岐阜県岐阜市 × 株式会社シイエム・シイ
「業務標準づくりと電子マニュアル導入による自治体の業務改革」

業務標準化・改善支援ツールを提供するIT企業は、岐阜県岐阜市の税業務に関して、業務改善支援ツールで業務フローの棚卸しを、そして連携ツールにて電子マニュアル化を行いました。
結果、業務の属人化を解消し、ヒューマンエラーの抑制や検索時間の削減による事務効率化を通して、職員の負担改善を実現しました。また、紙マニュアルの廃止を想定した際、A4用紙12,900枚の紙資源を削減できることが確認でき、環境資源への配慮を継続的に実施するきっかけにもなりました。

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まとめ

地方創生SDGsは、SDGsと地方創生を掛け合わせることで、双方を強力に推進するものです。具体的な取り組みが積極的に実施されており、これから企業や自治体が取り組みを推進することは大いに歓迎されるでしょう。

TOPPANでは、2020年11月にSDGs達成に向けた事業活動を通じて、特に注力すべき分野を特定した「TOPPAN Business Action for SDGs」を公表し、SDGsの目標達成に向け、積極的に取り組んでいます。「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」の実現を目指し、事業で取り組む注力分野を特定して活動を行っており、地方創生SDGsへの取り組みも推進しております。

SDGsや地方創生の理解を深めるための資料も多数ございます。「SDGs関連セミナー登壇資料」のほか、情報誌「ideanote」のvol.134 とvol.146では、「地方創生」や「SDGs」をテーマにコンテンツ展開しております。ぜひご覧ください。

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2023.12.04

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