製造業におけるメタバースの可能性とは?
活用メリット・活用方法を紹介
ワクワクする未来を想起させてくれるメタバース。すでに多様な分野で活用されており、今後もあらゆる発展の可能性を秘めています。近年、製造業においても活用され、業務効率化やイノベーション創出に役立てられていますが、製造業ではメタバースを具体的に、どのように活用しているのでしょうか?今回は製造業でのメタバースの活用方法やメリット、事例を合わせてご紹介します。
製造業におけるメタバース活用の可能性
メタバースとは、「メタ(meta)」と「ユニバース(universe)」を組み合わせた造語です。metaは「異なる次元からの観点」「超越した」、universeは「宇宙・世界」などの意味を持ちます。直訳すれば「超越した世界」となりますが、現代においては、主にオンライン上の仮想空間に構築された世界のことを指しています。
メタバースの特徴は、ただの仮想空間というだけでなく、人々が互いに交流したり、購買活動が行えたりするなど、現実空間と連動したり、つながりを持ったりする点にあります。
メタバースは、当初はゲームやイベントなどエンターテインメントの世界で親しまれていましたが、今後は現実世界と連動した商業やビジネス、産業向けの活用も期待されています。
すでにメタバースは製造業でも活用が進んでいます。例えば製造シーンにおいては、仮想空間上に、現実世界に実装されていない新技術を導入したテスト環境をつくって試したり、再現しにくい危険な環境をつくってトレーニングを行ったりする形で活用されています。
製品販売の際も、メタバースは活用可能です。具体的には、消費者が仮想空間上で製品を試すことで、実際に製品を手に取って試すことなく、製品の特徴や使い心地を理解することができます。
また、「スマートファクトリー」における活用も想定されています。メタバースの仮想空間上において製造機器や搬送ロボットの動きをシミュレーションし、製造工程を最適化したり、自動化したりすることができれば、工場のスマート化の一助となります。
「デジタルツイン」の活用も注目されています。デジタルツインとは、IoTなどを活用することで、現実世界において収集したデータをもとに、デジタル上に現実世界と同じ環境を再現し、そこで得られたデータをまた現実世界にフィードバックする手法のことを指します。例えばメタバース上の工場においてモニタリングやシミュレーション、AI(人工知能)を通じて収集した分析結果を、現実の工場に採用することで業務改善や生産性向上が可能になります。
このように、メタバースは製造業において、製品設計から製造、販売までの各段階で活用することができ、効率化やコスト削減、新たな顧客体験の提供などに寄与します。
メタバースの製造業における活用方法
さらに具体的に、メタバースの製造業における活用方法を見ていきましょう。製品開発から試作、ライン設計、製造、運用、プロモーション、研修まで、製造のあらゆる工程において、幅広く利用の可能性があります。例えば、次のような活用方法が考えられます。
製品の使用シミュレーション
製品をメタバース上で仮想設計し、それを使用したらどうなるか、メタバース上で挙動や操作性などのシミュレーションを行うことができます。例えば工業製品のモックアップ(模型)を実寸大で3D設計してプロトタイプとして試すという利用方法があります。
デジタルツイン工場で製造ラインの再現・リアルタイムシミュレーション
デジタルツイン工場をメタバース上に構築し、製造ラインを再現、作業者の動きをシミュレーションすることで、製造工程の見直しや作業の効率化を図ることが可能です。
デジタルツイン工場とは、現実の工場の運用状況をリアルタイムでデジタル上に再現し、最適な運用方法をシミュレーションすることができる技術のことを指します。
工場での作業を再現して研修に役立てる
工場における教育といえば、オンザジョブトレーニング(OJT)が主流ですが、実作業しながらの教育は危険を伴うケースもあります。工場の設備をメタバース上に再現することで、事故発生のリスクを負わずに、研修に集中することができます。
オープンコラボレーション
例えばある自動車メーカーは、メタバース上に24時間いつでも閲覧可能なショールームを構築し、イベントを行うなど、ファンコミュニティを創造しています。これにより、ファンからのフィードバックを直接受けられるため、企業と消費者の双方向のコミュニケーションが進み、共創、オープンコラボレーションの場としての活用も考えられます。
メタバースの製造業における活用メリット
メタバースは、製造業にとってさまざまな活用方法の可能性があることがわかります。実現すれば、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。考えられるメリットをご紹介します。
生産性・品質の向上
デジタルツインにより、生産ラインの可視化やシミュレーションを行い、さらにAIによる分析を加えて、現実世界にフィードバックすることによって、生産性や製品設計の品質の向上が期待できます。また、製造作業の遠隔地同士の共同作業も可能になります。
売上・マーケティング・ブランディング効果向上
製品を疑似体験できるようなショールームをバーチャル上に構築することで、デザインや内装など現実世界では現地に足を運ばなければ見ることができないものを顧客に見せ、体験してもらうことができます。それにより、売上向上や、ブランディングが実現する可能性があります。遠方の潜在顧客に対してもアプローチできるようになります。
研修効果向上
労働安全教育の一環として事故予防を教える際に、メタバースを活用すると、現実では実施不可能なシーンを再現できるので、学習効果の向上が期待できます。
コラボレーションによるイノベーション創出
メタバースで製品を疑似体験してもらう場を作ることで、より多くの顧客や見込み顧客の獲得につながります。また、コミュニケーションやフィードバックを通じたコラボレーションが進むことで、イノベーション創出が期待できます。結果的に、これまでにない製造・開発が行える可能性があります。
メタバースの製造業における活用事例
製造業においては、すでにメタバースが多様な用途で活用されています。その主な事例やサービスをご紹介します。
VR空間で3Dデータ管理&シミュレーション
TOPPANが提供するビジネス向けメタバースサービス基盤「MiraVerse(ミラバース)」は、現実空間を正確に取り込んだ高い臨場感のメタバースが特徴です。建物や製品・アートや自然など、あらゆるものを、設計図や3D計測・色彩計測などを用いて正確に3Dデータ化することが可能です。さらに、4K/8Kの高精細・低遅延なオリジナルレンダリングエンジンとの組み合わせで、真正性を追求したメタバース空間を構築することができます。
製造・設計分野では、リアルタイムシミュレーションを使った設計やデザインなどの協調作業が質高く行える可能性があります。
自動車工場を3Dスキャンしメタバース化
ある海外の自動車メーカーは、世界各地にある自動車工場を3Dスキャンし、デジタルデータ化して、メタバース工場を作りました。そして、工場の生産ラインにデジタルツインを活用することで、生産効率の向上を目指しています。
まとめ
製造業において、メタバースは今回ご紹介した活用用途や事例以外でも、さらなる活用が期待されます。特にスマートファクトリーなど、IoT、AI等を活用した工場の形が増えています。
メタバースを活用することで、製造そのものがより進化・発展していくのではないでしょうか。ものづくりに強い日本だからこそ、メタバースの有効な活用例が生まれる可能性も高いでしょう。
本文でもご紹介したTOPPANの「MiraVerse」は、製造分野での活用も可能となっています。メタバースを製造業において導入する際には、ぜひご検討ください。
また、メタバースについてより知識を深めたい方は、TOPPANの情報誌「ideanote vol.148」をご一読ください。弊社のメタバース関連サービスの情報も掲載しております。
また、弊社のセミナーに登壇したバーチャル美少女ねむ氏の登壇動画は、メタバースを理解するのに役立ちます。ぜひご覧ください。
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2023.12.18