DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
事例も交えてわかりやすく解説!
最近、ビジネスにおいて「DX」という言葉をよく耳にするようになりましたね。DXというと、なんとなくデジタル化やIT化のイメージがありますが、実はそれらとは異なります。どのように異なるのか、ぜひ確認しておきましょう。正確に理解することによって、DXを推進する際に、成果につながりやすくなると思われます。
今回は、DXとは何かという意味の解説から、DXに取り組む必要性やメリット、求められる人材、成功事例まで、わかりやすくご説明します。
DXとは?意味を解説
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉です。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指します。
DXの概念は、この「変容」というところに真意があるのです。
DXとIT化の違いとは
DXというと、ITシステムを導入ししたIT化を思い浮かべる方も多いかと思います。しかし、DXはIT化とは似て非なる言葉ですので、その違いを説明していきたいと思います。
まず、IT化は、「ITシステムの導入やIT企業などが提供している技術を導入することで、アナログな作業をデジタル化する」という意味があります。
一方でDXは、デジタル化やIT化等を通して、ビジネスや生活を劇的に変容させることを意味しています。
確かに、DXはデジタル化やIT化と似た概念ではあります。しかし真の意味でのDXとはデジタル化されたデータを活用することで新たなモデルを創り出すことを意味します。
また紙の書類をデジタルデータ化するという意味での「デジタイゼーション(Digitization)」や、個別の業務や製造プロセスをデジタル化して自動化・効率化するという意味での「デジタライゼーション(Digitalization)」という言葉もありますが、どちらも本質的なDXとは異なります。
ここで、経済産業省によるDXについての定義を確認しておきましょう。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や
社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務その
ものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
この定義からわかることは、DXにおけるデジタル化は「組織横断的・全体的」に行われる必要があること、そして「顧客ニーズに沿う、顧客起点の価値創出」を目指すものということです。
なぜ企業はDXに取り組む必要があるか
現在、社内や組織内でDX推進など、DXのための何らかの取り組みを実施しているのではないでしょうか。実際、多くの企業や組織がDXに取り組んでいますが、何のために取り組んでいるのか、いまいち理解していないというのが本音ではないでしょうか。
では、なぜ企業や組織はDXに取り組む必要があるのでしょうか。その背景を確認しておきましょう。
DX推進の背景
「2025年の崖」
「2025年の崖」という言葉を耳にしたことがありませんか?
これは、2025年以降、日本国内において最大で年間12兆円という、現在の約3倍もの経済損失が生じる可能性があるという問題を表しています。
「2025年の崖」は、経済産業省の「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」にて公表されました。現状、既存システムの複雑化やブラックボックス化(※1)、経営方針と現場サイドの葛藤などの課題があり、これらを克服しなければ経済損失が生じるというのです。このことから、DXを促進して課題解決を行い、2030年には実質GDP130兆円超の押上げが目指されています。
※1 ブラックボックス化:システムのブラックボックス化とは、なぜそのシステムが動いているかわからない、保守や改修する技術者が存在しない状態のシステムであり、内部構造がわからず、誰も触れられないシステムのことです。
デジタル化によるビジネスの多様化
デジタル化やデータ活用は、ビジネスにはもはや欠かせないものとなっていますよね。それは業務をしながら常日頃から肌で感じていることでしょう。実際、最先端テクノロジーを活用した新たなビジネスモデルが続々と生まれ、多様化しています。この多様化した市場に適応していくためにDXを推進していく必要があります。そして市場競争に勝っていくためにはDXに取り組み、顧客起点の価値創出を組織全体で実施することも必要不可欠となっています。
消費者のニーズの変化
消費者ニーズが大きく変化していることもDX推進が必要な背景といえます。例えば、象徴的なのが「モノ消費からコト消費への変化」です。モノ消費とは、従来からある消費者が製品を購入して「所有」することで満足感を得る消費行動です。一方、コト消費は、モノを「所有」したこと自体に満足感を得るのではなく、モノを「利用」することによる「体験価値」に満足感を得る消費行動です。今ではサブスクリプションサービスをはじめとした「所有」ではなく「利用」、しかも一定期間に限った「利用」の消費スタイルが根付いており、「体験価値」が消費者にとって重要視されています。
企業はこうした現代社会における消費者のニーズに適したビジネスを提供できるよう、DXに取り組み、システムそのものやサービスを変革し、刷新していく必要があるのです。
企業がDXを推進するメリット
ところで、企業がDXに取り組み、組織やサービスなどの仕組みをDX化すると、どのようなメリットがあると思いますか? そこには、想像以上に多数のメリットがあると考えられているのです。ここでは、DX推進によって期待できる主なメリットをご紹介します。
市場変化に適応でき、多様化する顧客ニーズに応えられる
近年、急速に進むデジタル技術によって発展し続けているビジネス市場に対応するためにはDXが不可欠です。デジタル化はもちろんのこと、組織全体でDX化を目指すことによって、市場の変化に適応し、多様化する顧客ニーズに応えることが可能になります。
グローバル市場に向けたビジネス展開が容易になる
グローバル市場に向けたビジネス展開はもはや、どの企業にとっても必要不可欠といえます。少子高齢化が進む日本だけを見据えていては、将来的な利益は見込めないという考えが広がっています。DXを推し進めることは、グローバルにおいても通用するビジネス構築のために欠かせないといえるでしょう。
業務効率向上・人手不足の解消・働き方改革の実現
DXは、前述の通り、顧客起点で考えるべきものではありますが、実は、社内にもメリットをもたらすのです。なぜなら、社内のあらゆる仕組みがDX化により変革されれば、業務効率化につながり、長時間労働の削減などの働き方改革の実現にもつながるからです。
また、近年どの業界でも問題視されている人手不足の課題についても、DX活用の過程で省力化を実現することで、解決につながります。
BCPの実現
企業がなすべきBCP(事業継続計画)は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や自然災害の多発による業務の中断が起こりうる近年において、必要不可欠となっています。BCPとは、緊急時における事業継続・早期復旧のための準備を計画的に実施しておくことです。BCP策定においてはデジタル活用が肝となります。なぜなら、重要なデータのデジタル化やバックアップは災害時の早期復旧や遠隔からのデータ操作などに役立つためです。また、DX化が推進されることにより組織が変革されることで、さらにBCPが充実し、強い組織を作ることができます。
DX認定制度の適用
2020年11月から開始された「DX認定制度」に選定されることで、DXを推進している企業であるというブランドを獲得することも可能となります。
DX推進が納得できる成果を出した場合は、申請を検討してみても良いかもしれません。
「DX認定制度」については、経済産業省が公開している情報もありますので、申請を検討されている企業様は、下記をご確認ください。
DXを推進するために求められる人材とは
DX人材とは
DXという言葉と共に、よく使われるようになった言葉に「DX人材」があります。企業がDXを推進していくにあたっては、専門的な知識とスキルを備えた「DX人材」の活用が欠かせないといわれています。果たして、DX人材とはどのような人材なのでしょうか?
DX人材の種類
DX人材は、専門分野によってさまざまな種類があります。
例えば、ビジネスプロデューサー、ビジネスデザイナー、データサイエンティスト/AIエンジニア、UXデザイナー、ビジネスアーキテクト、ソフトウェアエンジニア/プログラマー、先端技術エンジニアなどがDX人材といえるでしょう。
DX推進の企業事例
DXを推進するというのは、具体的にどのようなことをすることなのか、イメージがわかない方も多いかもしれません。そこで、TOPPANが支援を行ったDX推進の成功事例を3つご紹介します。
マーケティングDX~コンテンツと生活者の出会いを個別最適化・最大化
【課題】
デジタル化が進んだことで、生活者とコンテンツとの接点は多様で複雑なものになっています。企業側が提供したいコンテンツがあっても、これまでは漫画や音楽などのアート作品は映像化、DVDなどの製品として販売といった流れのみで、チャネルは豊富にあってもユーザーが触れられるチャネルは限られていました。さらに、 スマートフォンなどの普及によりデジタルコンテンツの需要は高まっています。しかし従来のコンテンツ(例:大賞を受賞した漫画)は特定の媒体(例:映像化、DVD化)として制作され、利用者とコンテンツのタッチポイントは、媒体ごとに複数存在している状況でした。また各社ブラウザのCookie規制(※2)が強化され、個人情報の取り扱いが制限されたことで、リターゲティング広告(※3)の代替になる独自のシステムの必要性が生じていました。
※2 Cookie規制:Cookieとは、Webサイトにユーザーがアクセスしたとき、Webサイトから発行され、一時的にブラウザに保存するための仕組みです。そのCookieの中でも、広告などから発行されるユーザーの行動を追跡する「サードパーティーCookie(3rd Party Cookie)」は個人情報保護とプライバシー保護の観点から問題視され、規制が行われるようになっています。
※3 リターゲティング広告:Web広告の一種。過去にWebサイトを訪問したことのあるユーザーに対して配信される広告。
【課題解決策】
「共通ID基盤」を構築し、各サービスやメディアでバラバラに登録・管理されている顧客情報を1つのIDに統合。メルマガ配信、SNSキャンペーン、オンラインサロン、ECサイトのグッズ販売、アンケート調査など、それぞれの利用者に適した多様なコミュニケーションを展開できるようにしました。利用者はこれまで複数のタッチポイントを横断して触れていたコンテンツについて、1つのメディアサイト内で、デジタルコンテンツや限定記事などの閲覧が可能になります。
【成果】
結果として、コンテンツと生活者の最適なマッチングがなされ、例えば漫画や音楽などのコンテンツは映像化・デジタル配信、舞台・イベント化、おもちゃ・ゲーム化といった展開ができるようになり、生活者は好きな場所、好きな媒体で見られるようになり、コンテンツと生活者の出会いを個別最適化することができるようになりました。
流通DX~口コミやSNSのデータを基にAIを活用するチラシづくり
【課題】
新型コロナウイルス感染拡大によって、小売店やスーパーマーケットは、来店客の集中を避けつつ売り上げを確保することが求められ、従来の特売チラシによる集客のほか、ECでの販売やEDLP(Everyday Low Price:特売期間を設けずに、年間を通じて商品の価格を変動させないローコスト戦略)に基づく施策を実施・強化しています。
また、生活者との適切なタッチポイントを確保するには、オンラインとオフラインの両方を駆使したコミュニケーションが必要となっています。
【課題解決策】
TOPPANの「未来のチラシ®」を導入。口コミやSNSのデータを基にAIを用いて電子チラシをつくる情報配信サービスです。口コミやSNS上の情報を収集し、AIを使って分析した後、商品に「#(ハッシュタグ)」を付け、価格だけではない商品の魅力を訴求する「ハッシュタグチラシ」、安価でスピーディにチラシを動画化する「動画チラシ」、そして生活者個々人の嗜好データとさまざまな商品データとの掛け合わせによる、より精度の高い1 to 1マーケティング(※4)チラシである「パーソナルDBチラシ」などの諸機能によって、市場・商品情報や顧客属性などのデータに基づいた販促活動を実現しました。
【成果】
上記の取り組みの結果、興味・関心に合わせた効果的な商品情報発信が可能となり、生活者とのパーソナルなコミュニケーションの実現、タッチポイントの多様化により、EDLP商品の売り上げアップを実現しました。
※4 1 to 1マーケティング:顧客一人ひとりに合わせたマーケティング手法。画一的なマーケティングではなく、顧客の嗜好や属性に合わせて最適化する。
製造DX~クラウド業務管理で働き方改革
【課題】
ある製造業の企業では、伝票処理を紙で行っており、会社での作業・承認、客先への直接のお届けが必要であったことから、事務処理の負荷が増大していました。
【課題解決策】
TOPPANの「NAVINECT® クラウド」を導入。同サービスでは「工程管理」「見える化」「帳票管理」「在庫管理」「稼働管理」の5つの製造DXアプリケーションをクラウド上で利用し、効率化を図りました。
【成果】
結果、クラウド業務管理で働き方変革につながるペーパーレス化を実現しました。クラウド上で伝票処理ができるので、端末があればどこでも承認可能になり、客先へはIDで管理された伝票をPDF送付できるので時間短縮にもつながりました。
まとめ
DX推進は、どの日本企業も率先して組織的に取り組むべき課題といえるのではないでしょうか。そうした中、いかに効率的で、企業にとって価値のある取り組みによってDXを推進していくかが重要になっています。
TOPPANではそのような企業のDX化をサポートするサービスやソリューションを豊富にご用意しております。課題に応じてご提案することも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
2023.11.17