コラム

デジタルヘルスケアとは?
AIなどのデジタル技術がもたらす変化

昨今、AIやIoTなどのデジタル技術の進歩が目覚ましく、あらゆる業界で活用が進んでいます。医療やヘルスケアの分野でも広がっており、「デジタルヘルスケア」という新しいジャンルが生まれています。
今回は、デジタルヘルスケアの意味や日本で推進されている背景、デジタル技術がヘルスケアにもたらす変化、デジタルヘルスケアの具体例をご紹介します。


デジタルヘルスケアとは?

デジタルヘルスケアとは、医療やヘルスケアの分野にデジタル技術を活用することです。

医療とは医術・医薬で病気やけがを治すこと、つまり治療する行為を指します。またヘルスケアとは、健康の維持や増進のための行為や健康管理のことを指します。

医療やヘルスケアに、AIやチャットボット、IoT、ビッグデータ解析、VR(仮想現実)、ウェアラブルデバイスなどのデジタル技術を活用することにより、病気やけがの予防から治療、回復まで、健康を維持・改善するためのすべての行為の効果を高めることを目指しています。

またデジタル技術が高度化すると共に、膨大な量の情報をやり取りすることが可能になっています。医療機関ではすでにカルテが電子化されていたり、検査値やレントゲン画像などがデジタルデータとして蓄積・管理されています。また個人が自身の健康に関する記録「PHR(Personal Health Record)」を容易に管理できる仕組みも整ってきています。

このように、デジタルヘルスケアはさまざまなシーンで人々の健康・医療に浸透してきています。


デジタルヘルスケアが推進されている背景

デジタルヘルスケアが推進されている背景には、主に次のようなことが挙げられます。

高齢化を背景とした医療費の増大

国内において急速に進む高齢化に伴い、国が給付する医療費が拡大しており、財政を圧迫しています。医療費を削減するためには、治療そのものを減らす必要があり、予防医療や健康増進が求められています。ヘルスケアを推進するに当たり、デジタル技術を用いることで、さらなる健康増進を図ることを目指しています。

業務へのデジタル活用・医師の働き方改革の必要性

医療・介護業界における業務はデジタル化が遅れており、非効率な部分も残っています。デジタル活用が進むことで、業務効率化や医師の長時間労働の是正など働き方改革の促進にも寄与すると期待されています。

デジタル技術の進歩

近年のデジタル技術の進歩も背景にあります。すでに医療分野においてはAIによる問診や画像診断など高度なデジタル技術の活用も進んでいます。

地域医療格差への対応の必要性

都市部への人口集中や地方で高齢化が進行していることにより、地域での医療従事者確保が困難な状況が続いています。こうした地域医療格差を埋めるための一つの手段として、遠隔からの画像読影やオンライン診療などの開発が推進されています。

企業の従業員の健康増進の必要性

民間企業においては従業員の健康増進を経営理念として実施する「健康経営」を推し進める必要性もあります。生産性向上のためにも、健康診断の結果やヘルスケアデータなどのデジタルデータを用いて、従業員自ら積極的に健康増進を図る取り組みがより重要となってくるでしょう。


デジタル技術がヘルスケアにもたらす変化

デジタル技術を用いることで、ヘルスケアに次のような変化がもたらされると考えられます。

住んでいる地域や環境に左右されないヘルスケア・健康促進

患者がスマートフォンアプリなどを用いて診療予約を行えるようにしたり、オンライン診療により、医療機関にかかることが困難である人や、介護や子育て中の人、遠方に住んでいる人たちがより手軽に診療を受けられるようにしたりすることで、住んでいる地域や環境に左右されることなくヘルスケア向上・健康促進につながります。

健康データ活用による健康維持増進・予防医療の促進

個人が心拍数や血圧などの自分の健康データをスマートフォンなどで閲覧・管理できるようにすることで、健康維持増進につながります。また蓄積された健康データを医療機関の診療に利用することで、早期発見・早期治療、医療の質向上などが実現できます。予防医療が進めば、“人々の健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”である「健康寿命」が延び、治療の回数が減ることで医療費削減にもつながります。

データ活用による医療の質向上

医療データは、医療機関を横断して利活用できるようにすることで、個人の健康状態や病歴、治療歴を踏まえた上で、より迅速に医療サービスを提供することが可能となったり、初めてかかる病院でも適切な診察を受けられたりすることで、医療の質が高まります。さらに複数の医療機関が連携できることで、生涯にわたって住み慣れた地域で医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に受けられる「地域包括ケアシステム」の構築に役立てられるでしょう。
さらに、データ活用は新たな診断・治療法の開発などにも寄与する可能性も見出されています。

データ活用による医療の質向上

デジタルヘルスケアの具体例

現在、推進されているデジタルヘルスケアの具体例をご紹介します。

PHR(Presonal Health Record)の利活用

PHR(Personal Health Record)とは、個人健康情報記録と訳されるデータのことです。医療機関にかかった受診履歴や、予防接種歴、妊婦検診、特定検診の結果など、医療機関や薬局ごとに保存・保管している個人の保健医療データを指します。
PHRを個人が閲覧・管理できる仕組みが整い、利活用が進んでいけば、個人による健康維持増進につながり、質の高い医療を受けられるようになると考えられます。

オンライン診療・処方せん薬宅配サービス

オンライン診療では、患者が医療機関や薬局に行かずに、自宅などにいながらスマートフォンやパソコンなどを通じて、予約・問診・診察・処方・決済を行うことができます。メリットとして遠隔から診療が受けられることや、予約制のため、待合室での待ち時間がないことのほか、院内感染・二次感染のリスクがないことも挙げられます。

予防アプリ・ウェアラブルデバイス

個人がスマートフォン上で利用できる睡眠管理アプリや歩数計アプリ、カロリー計算アプリ、スマートウォッチなどを通じて心拍数や血圧を測定するウェアラブルデバイスなどが数多く開発されています。これらのツール活用により、自身では気づけなかったデータを閲覧、活用できるようになることで、個人のヘルスケアがより促進されるでしょう。

AI機械翻訳

医薬・製薬開発に関わる文書の翻訳にAIを用いる手法があります。

例えば、TOPPANの「PharmaTra™」は医薬の翻訳に特化した翻訳ツールで、高精度AIと臨床開発用語集を搭載しているので、医薬英文の翻訳を社内で手軽に行うことができます。医薬・製薬開発に関わる文書の翻訳時間を短縮したいニーズに対応します。

医師の説明業務へのデジタルクローン生成技術活用

医療機関に従事する医師は、近年の医療技術の高度化や医療制度の複雑化、医療安全などの観点から多くの説明業務があります。この説明業務がメインとなる医療提供業務を圧迫している課題を受け、効率化する技術が生まれています。

例えばTOPPANと北海道大学病院が共同開発した「DICTOR™(ディクター)」のα版は、デジタルクローン技術を活用して、医師が患者やその家族に対して医療行為などの説明を行う動画を自動生成し、再生するサービスです。医師による動画と声の登録は一回のみで、その後は説明テキスト文の入力のみで簡単に説明動画が生成できることから、毎回の説明業務を削減でき、業務効率化につながります。


まとめ

ヘルスケアへの意識の高まりや、健康増進の必要性からヘルスケアへの取り組みは推進されており、デジタル技術の活用はヘルスケア推進に大きく寄与するものと考えられます。デジタルヘルスケアは、さらに今後も技術・サービス共に発展していくことでしょう。

TOPPANでは、デジタルヘルスケア関連のサービスを複数ご提供しております。ご興味のある方は、ぜひサービス詳細をご覧ください。

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2023.10.26

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