香りの空間演出で期待できる
効果とは?事例も紹介!
香りは、五感のなかでも記憶や情緒への結びつきが強く、空間演出においてもその効果が注目されています。
本記事では、香りによる空間の演出について、活用のヒントや期待される効果、具体的な活用事例、注意点などを解説していきます。
施設や店舗の空間づくりにおいて「香り」が重要な理由
嗅覚は、記憶や情動を司る大脳辺縁系を直接刺激します。そのため、空間づくりにも香りを活用すれば、訪れる人の体験をより印象的にすることが可能です。
また、空間演出に用いた香りをオリジナル商品として提供することにより、来訪者が香りを持ち帰って、体験の記憶を共有し、これが長期にわたり定着することにより、ブランディングの強化を図ることができます。
体験の特徴的な香りに触れると、別の場所で同じ香りを嗅いだときに体験がよみがえるため、時間と場所を超えて顧客満足度を高めることもできるでしょう。
香りの空間演出を活用できるシーン
ここからは、空間ごとにどのような演出ができるのかを具体的にみていきましょう。
店舗
アパレルやショッピングモール、ショールーム・車ディーラーなど、商品やサービスを提供する店舗では、来訪者の目的に応じた香りを店内に展開することで、購買意欲を高める効果が期待できます。
たとえば、バニラの香りを使った実験では、店舗での滞在時間や購入金額、購入場所への再訪問の意向などに、統計的に有意な効果があることが判明しています。
オフィス
オフィス環境に香りを活用することにより、生産性の向上や従業員のモチベーションアップが期待できます。
クリエイティブな成果がほしい職場の空間は、意識がクリアになって集中力が高まる香り、休憩室はリラックスしてストレスが軽減される香りにするなど、空間ごとに香りのテーマを決めて演出することも可能です。
たとえば、レモングラスやラベンダー・ペパーミントなどは、集中力アップによいとされており、オフィスの生産性の向上にプラスの効果を与えるでしょう。
オフィスの空間ダクトにディフューザーを接続することで、効果の高い香りを拡散させることも可能です。
ホテル
ホテルは、自宅にいるようなくつろぎでリラックスしつつ、特別なお客様としての対応を受けることにより独自の体験が得られる空間です。
この「おもてなしの空間」で香りを活用すれば、より上質なホスピタリティを演出し、効果的な体験にすることができます。
たとえば、ホテルのエントランスを独自に調合した香りで満たすことにより、他の施設では得られない体験を期待させることができます。
また、この香りを客室のアメニティにしのばせることにより、ホテルの統一したコンセプトの演出が可能です。
さらには、この独自の香りをアロマグッズとして販売すれば、宿泊者が帰宅した後も自宅内でホテルの記憶を再現し、良いイメージを長く定着させることも期待できるでしょう。
病院
病院には、病気・怪我などへの措置時のにおいの消臭と、患者を元気づける香りが求められます。
患者だけでなく医療従事者のストレス緩和にもなり、患者と家族、医療従事者のコミュニケーションの促進を図り、より良い医療の提供と活用も期待できます。
香りの空間演出で期待できる効果
ここからは、香りを使った空間の演出により、具体的に期待される効果をみていきましょう。
ブランディング効果
香りに関する効果として、記憶との結びつきが強いことが挙げられます。そのため、独自の香りを体験し、後にその香りに別の場所で触れたとき、かつての体験が強い感情を伴う記憶としてよみがえる「プルースト効果」が期待できます。
香りにブランドイメージを紐付け、他との差別化を図る「ブランド・セント(Brand Scent:特別に独自開発した香り)」によって、情動的なストーリーを展開し、ブランドの強化や拡散を図ることができるのです。
おもてなしを表現できる
香りをとおしてお客様が心地よく過ごせる環境を作り出す「おもてなし空間」で、顧客満足度を高めることができます。
自宅のようなくつろぎ、普段と異なる場所への期待、特別な待遇を期待させる高級感などを香りで演出することにより、おもてなしのコンセプトがストーリーをもって記憶に残り、より好印象となって次回への期待を抱かせます。
滞在時間を延長させる
良い香りがある空間は快適で、いつまでもそこに居続けたくなります。さらに、香りによってその空間の中での体験が肯定的な印象となっているため、消費行動を続けたくなる可能性もあります。
イベントの高揚感を盛り上げる
音楽や美術、演劇、映画などのイベント会場で、内容に合わせた香りを利用することで、視覚・聴覚だけでなく嗅覚も動員した空間になり、これまでにない臨場感や高揚感を体験する場とすることができます。
その場での雰囲気が盛り上がる効果は無論のこと、後日同じ香りを嗅いだとき、イベントの高揚した記憶が強烈な情動とともによみがえってくる「プルースト効果」により、リピート需要やイベントのブランディングにもつながるでしょう。
従業員のモチベーションアップ
香りは空間全体へ広がるため、お客様だけでなく、その場にいる従業員にも同様の影響が期待できます。そのため、おもてなしの質の向上や、従業員の企業に対する愛着にも期待できます。
香りの空間演出を実施している企業事例
ここで、実際に香りで空間を演出している企業をご紹介しましょう。
LEXUS
トヨタ自動車が展開するブランドの中でも、もっとも高級なものとして知られている「LEXUS」のショールームの空間は、単なる豪華さではなく、お客様がLEXUSのオーナーであることを誇らしく感じられるように、特別感を五感で味わえる演出を行っています。
大理石を思わせる清潔な白い床、木目を基調とした重厚な設え、柔らかな照明、音楽家による生演奏も楽しめるホール、そして、中に入った瞬間から温かく迎えられていることを感じられる香りが、上質なくつろぎを堪能できる期待感を高めてくれるのです。
オリジナルブレンドの香りはウッド、フラワー、ミント、ハーブ、柑橘などが季節や天候によって用いられ、自宅でも同じ香りでくつろげるようにアロマオイルとして販売されています。
LIZ LISA
ガーリッシュなファッションブランドを確立しているLIZ LISAでは、ブランドコンセプトに沿った独自の香りを調合し、店舗の空間を演出するために利用しています。
香りは、ローズを中心とし、10種類のエッセンシャルオイルをブレンドしており、ファッションのイメージを彷彿させる甘くかわいらしい香りで、店内の雰囲気をさらに引き立たせています。
※2023年現在は行われていない可能性があります
香りの空間演出をする際の注意点
ここからは、香りによる空間の演出を行う際に気をつけておきたいことをみていきましょう。
香りとブランドイメージを合わせる
ブランディングは他と差別化した独自性が重要で、「ここだけにしかない」という特別感のある香りにしていきたいところです。
ただ、特徴的な香りだったとしても、ブランドのイメージとかけ離れていると、記憶が結びつかずに販促としては失敗に終わってしまいます。
香りは直接情動に訴える力もあるものですから、ブランドイメージに合っているかをよく検討して香りの選定・調合を行いましょう。
一般的に受け入れられる香りを選ぶ
香りは色とは異なり、三原色のように基本となるものがなく、原料となる物質の数だけ香りが異なります。
また、香りの記憶は個人の情動にひも付きやすいため、嗜好がはっきりと分かれる感覚的なものです。
このため、万人向けの香りを調合するのは困難ですが、柑橘系のフレッシュな香りなど、比較的多くの人に受け入れられやすい香りは存在します。
広く認知されるためには、まず一般に受け入れてもらいやすい香りから始め、徐々に特徴を強めた香りにしていくことも有効です。
香りの強弱は常に適切な状態に調整する
香りは放出されると、空気の中を漂い、水分・油分を失っていきます。また、香りを放出するディフューザーも、乾燥や蒸発で香りの効果が薄れていきます。
このため、定期的にアロマオイルや香水を補充し、常に香りの濃度を一定に保つよう、こまめにメンテナンスする必要があります。
少しでも長く香りを保たせようとして強めに香りを放出すると、香りの刺激が強すぎて周囲に不快感を与えてしまうかもしれません。
いわゆる「スメハラ」になってしまっては、かえって悪印象を広げかねませんから、一般に受け入れてもらいやすくするため、弱めの香りから始めることもひとつの方法です。
香りの空間演出をするならTOPPANへ
香りを使った空間の演出は、嗅覚と記憶や情動のしくみを応用した心身の機能にアプローチするもので、科学的根拠とエンターテイメント性を兼ね備えたマーケティングのひとつといえます。
ビジュアルに香りを加えて五感をさらに刺激し、これまでにない体験を印象づけ、同じ香りに触れたときにかつての体験がよみがえる「プルースト効果」を活用し、長く記憶にとどまるよう促すのが、香りの空間演出といえるでしょう。
TOPPANの「FRAGRANCE IDENTITY®」は、ブランドイメージを統合したコンセプトの組み立てをはじめ、コンセプトにふさわしい香りの調合、戦略的に売り出すための空間演出方法、ユーザー自身が手元に置いて楽しみ、SNSなどで拡散したくなるアロマグッズの展開など、総合的また戦略的に香りでブランドを打ち出すノウハウなど、香りをマーケティングに生かすためのさまざまなアイデアをご提案いたします。お気軽にご相談ください。
2023.09.19