コラム

ユニバーサルデザインと
バリアフリーの違いは?
具体例を交えて解説

  • TOPPAN CREATIVE編集部

誰にとってもわかりやすく、利用しやすいことを重視するユニバーサルデザインは、障害がある人への配慮が根底にあるバリアフリーの考え方と混同されることが少なくありません。
本コラムでは、ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いについて説明し、さらに両者に共通する点から、デザインのポイントを解説します。これからのデザインを検討する際の参考にしてください。


ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い

ユニバーサルデザインは、すべての人が生涯のどこかで何らかの不具合に遭遇することを前提として設計し、誰がどんなときでも支障なく使えるデザインを理想とします。そのためユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、性別、人種にかかわらず、あらゆる人を対象とし、誰もが快適に使え、魅力を感じるデザインであることを重視します。
一方、バリアフリーはもともと、段差など「障害となるもの(バリア)からの解放」を意味する建築の用語です。障害者や高齢者など、日常生活で継続的に不具合を抱える人を対象とし、支障となるものを取り除く形でデザインを考えます。



対象とする人が違う

ユニバーサルデザインとバリアフリーのもっとも大きな違いは、対象者の捉え方です。
ユニバーサルデザインでは、すべての人を対象として捉えます。障害の有無や性別、年齢、文化などで分け隔てることなく、誰にとっても利用しやすい設計を目指します。
一方のバリアフリーは、障害者や高齢者など、特定の不具合を抱えている人を対象とするものです。

障害に対する考え方が違う

ユニバーサルデザインでは、障害を特別視しません。身体や精神の特性に限らず、怪我や病気による一時的な不具合、自然災害や停電などによる環境的な不具合、子ども時代や高齢期の不自由さなども障害と考えれば、誰もが必ず、一生のうちのどこかのタイミングで、障害に見舞われるものだと考えます。そのためユニバーサルデザインでは、すべての人が使いやすいことを重視してデザインを行います。

一方でバリアフリーにおける障害とは、目が見えない、歩けないなど、日常生活に支障を来す特定の性質を指します。対象はそういった性質に特化し、それ以外の、健康な人にとっての利便性についてはそれほど考慮しません。

製品の魅力に対する考え方が違う

ユニバーサルデザインは市場原理を重視します。これもバリアフリーとは大きく異なる点です。

すべての人にとってわかりやすく利用しやすいものが広く普及するためには、多くの人が手に取ってみたくなる魅力が不可欠です。また、持続的に製品を出し続けるには経済コストも重要です。

バリアフリーの場合、こうした市場の原理は持ち込まれず、障害の除去を最優先にするためビジュアル面でのバリエーションに乏しかったり、製作コストが見合わず大量生産できなかったりするものが少なくありません。

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いがわかる例

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いについて、デザイン例から見ていきましょう。
例えば、階段に昇降リフトをつけて車いすの利用者が使えるようにするのは、バリアフリーの考え方です。リフトがあれば車いすの利用者でも階段の昇り降りはできますが、他の歩きづらい人には利点がありません。
一方、ユニバーサルデザインだとエレベーターの設置を考えます。車いすごと乗り込めるだけでなく、高齢者や妊婦、病人、大きな荷物を抱えた人など、誰でも利用できる状態をつくるわけです。
この他にも、車いす用にスペースをとったバリアフリートイレに対し、ベビーベッドやオストメイト洗浄機器、子ども用便器などを併設した多目的トイレは、誰でも使えるユニバーサルデザインのひとつといえます。




ユニバーサルデザインとバリアフリーの共通点

ユニバーサルデザインとバリアフリーでは、対象とする人の範囲や障害の考え方、市場性などの捉え方に違いがあるものの、一人ひとりが快適に暮らせる世の中を目指している点では共通しています。
ユニバーサルデザインもバリアフリーも、環境整備や製品の普及と同じくらい、普及教育が欠かせません。普及教育は、互いを思い合う心のやさしさやリスペクト、助け合う福祉の精神に通じます。
どんなに工夫しても、ハード面の整備だけでは使いにくさを感じる人が出てくるでしょう。利用する人たちの中に思いやりや心のやさしさがあってはじめて、本当の意味で使いやすく、魅力あるものになっていくのです。

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いまとめ

ユニバーサルデザインとバリアフリーの相違点をみることにより、誰もが使いやすいデザインについて考えてきました。
両者の概念は、思いやりや心のやさしさという福祉的な観点では共通しています。一方、バリアフリーが特定の障害に焦点を当てて使いにくさを解消するという考え方をとるのに対し、ユニバーサルデザインでは、障害の有無にかかわらず、年齢、性別、言語や文化の違いなどを超え、あらゆる人を対象として、わかりやすく快適な使い勝手、魅力ある製品を普及させていこうと考えます。
ユニバーサルデザインの範囲には、当然ながらバリアフリーが対象とする高齢者や障害者も入っています。そのことからユニバーサルデザインは、バリアフリーを内包し、より発展させた概念ともいえるでしょう。


TOPPANのユニバーサルデザイン推進

ここからは、TOPPANのUDへの取り組みの歴史をご紹介します。



商品パッケージから始まったUDへの取り組み

TOPPANのUD関連の取り組みは、1995年に商品パッケージの分野でのバリアフリー研究から始まり、ユニバーサルデザインに発展。時代のニーズに応え、社会のイノベーションに貢献したいという想いは、現在にも引き継がれています。


2000年には、全社横断のプロジェクトを発足。情報コミュニケーション領域など幅広い分野でサービス開発をすすめていくことになります。


2001年に『ユニバーサルデザイン考』展を中心とした啓発イベントを開催して以降、『みんなにうれしいカタチ』展など、社会との情報共有の場を設けるとともに、2007年には、キッズデザイン協議会の設立に参画。また、前述した「アクセシブルデザイン」の規格にもノウハウを提供しています。

TOPPANがノウハウを提供した規格
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JIS S 0022 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-開封性試験方法
JIS S 0022-3 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-触覚識別表示
JIS S 0022-4 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-使用性評価方法
JIS S 0025 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-危険の凸警告表示-要求事項
JIS S 0032 高齢者・障害者配慮設計指針-視覚表示物-日本語文字の最小可読文字サイズ推定方法
JIS S 0033 高齢者・障害者配慮設計指針-視覚表示物-年齢を考慮した基本色領域に基づく色の組合せ方法
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情報をわかりやすく、魅力的に伝えるために

2009年には、情報媒体でのユニバーサルデザインを追求した「TOPPAN E-UD」を体系化。「見ため」はもちろん、発行の目的に合致した企画なのか、ページ構成や文章表現は理解しやすいか、そもそも「読む気になるか」など、5つの視点で検証できるノウハウを体系化しました。
2018年には、このノウハウを活用した診断・改善提案サービスとして「でんたつクリニック®」をリリース。この記事でお伝えしてきたような広義の意味での情報ユニバーサルデザインを実現するためのソリューションとして、提供しています。
とくにブランディングとの親和性を重視していることが特長で、近年は、ジェンダー・性的多様性への配慮や、発達障害への関心の高まりを受けて注目されることの多い認知特性の多様性への配慮に注力しています。


UDからダイバーシティ&インクルージョンへ

2016年には、「UDコミュニケーションラボ」を開設し、狭義のユニバーサルデザインに限らない「ダイバーシティ&インクルージョン支援」を開始。
「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が普及してきた2020年には、これまでの「UDビジネス」を進化拡張させ「D&Iソリューション」として再構築し、多様なサービスを開発・ご提供しています。

今後は、さらに一歩踏み込んだユニバーサルデザインに関係の深い話題を取り上げていきます。
UDに関する疑問・ご要望などございましたら、お気軽に『CONTACT』からお問い合わせください。

2023.08.04

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