コラム

身の回りにある
ユニバーサルデザインの具体例をご紹介

  • TOPPAN CREATIVE編集部

ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、文化の違い、障害の有無によらず、誰にとってもわかりやすく、使いやすい設計のことを指します。
ユニバーサルデザインの中には、普段目にする道具や、街中のさまざまな機能にさりげなく組み込まれているものも少なくありません。
本コラムでは、日常生活にある身近な例からユニバーサルデザインをご紹介します。


家の中にあるユニバーサルデザインの例

まず、家の中にある身近なユニバーサルデザインの例を見ていきましょう。

シャンプー・リンスのボトル

シャンプーとリンスのボトルは、シャンプーの容器にきざみ状の突起をつけ、リンスの容器に突起をつけないデザインにより、触っただけで区別することができます。視覚に障害のある人だけでなく、洗髪中で目を閉じたままでも使い勝手がよくなっているのです。

現在はメーカーを超えて統一が図られ、より使いやすくなっています。

照明のスイッチ

照明のオン・オフを切り替えるスイッチは、どちら側を押しても切り替わるシーソー型のものや、手のひらで押すことができる大きいサイズのものが主流になっています。指の力の弱い高齢者や子どもでも扱いやすいデザインです。

トイレ

トイレにも、誰もが快適に利用できるよう、多くの機能が施されています。たとえばシャワートイレは、病院で術後のケアとして活用されていた機能が一般用に普及したものです。また、人の気配を感知して自動的に開閉するフタや、立ち座りを支援する手すり、手元に集められたボタンなどは、かがむ・ひねるといった動作による足腰への負担を軽減します。

階段の手すり

階段には安全性への配慮が随所に見られます。たとえば、手すりがコーナー部分にも設置されていれば、手を離すことなく昇降でき、転倒のリスクを減らすことができます。滑りにくい踏み板や足元照明は、つまずきや踏み外しを防ぐ役割のものです。さらに、角になる部分に柔らかい素材を使用したり、曲面の部材を使用したりすることで、万が一転倒した際の被害を軽減します。

センサー式の蛇口

手を蛇口付近に近づけるとセンサーが反応して自動的に水が出る仕組みは、障害のある方や握力の弱い子どもや高齢者など、栓をひねることが難しい人の利便性を高めます。
公共のトイレなど、不特定多数の人が利用する箇所で重宝されています。
蛇口に触ることなく水を止めることができるため、感染対策としても効果的です。




街中にあるユニバーサルデザインの例

ここからは、街中の施設や設備などに展開しているユニバーサルデザインの例を見ていきましょう。

信号機

音響式信号機には鳥の鳴き声で知らせる擬音式と音楽が流れるメロディ式があります。擬音式では「カッコー」と「ぴよぴよ」を使い分け、通りの方角をわかりやすくする工夫もされています。青信号の時間を延長する歩行者用ボタンは、高齢者など、素早い移動が困難な人でも安心して移動できる機能です。また、信号灯では色覚異常の方でも判別しやすい高輝度LEDなども開発されています。

自動ドア

自動ドアは身近なユニバーサルデザインの代表例といえるでしょう。重量センサーや人感センサーで自動的に開閉するため、ドアを開ける力をかけにくい高齢者や子ども、車いす利用者などが利用しやすくなっています。また、荷物を両手に抱えたり、ベビーカーを押したり、子どもを抱きかかえたりする人にとっても便利な存在です。

自動販売機

自動販売機にも、ユニバーサルデザインが採用された製品が多く登場しています。低めの位置に配置された選択ボタン、受け皿のついたコイン納入口、かがまないで商品が取り出せる高さにある商品取り出し口、商品を仮置きできる台など、さまざまな工夫が施された自動販売機は、子どもや高齢者、背の低い人、車いす利用者にとっても使い勝手がよいものです。

駅の改札

スペースを工夫したユニバーサルデザインの例では、駅の改札が挙げられます。最近の駅の多くには、通り抜ける幅の広い改札が1箇所は配置されています。車いす利用者や、松葉杖の利用者、歩行補助器を使う高齢者はもちろん、大きな荷物を抱えた人、ベビーカーを押している人など、誰でも改札を利用しやすいデザインになっています。

案内板

施設の入り口や街頭に設置された案内板にも、利用しやすい工夫がなされています。ピクトグラムや写真、外国語・ひらがなの併記、大きな文字、拡大操作ができるパネル、音声案内、点字など触覚を利用した表示、明るさや色、表示の高さへの配慮など、障害がある人や高齢者、国外からの旅行者だけでなく、一般の人にもわかりやすくなっています。

電車内の優先スペース

電車の中で、座席の一部を取り外してつくられた広いスペースは、車いすやベビーカーなどで乗り込んだ人が優先的に利用可能です。より安全に移動できるよう設けられたスペースですが、優先的に利用していただく方が乗っていない場合は、キャリーバッグなどの大きな荷物を置くスペースとしても活用できます。


ノンステップバス

バスの床面を超低床の構造にし、停留所の地面すれすれにつけて乗降時の段差をほとんどなくしたバスをノンステップバスと言います。子どもや高齢者、松葉杖の方などが安全に利用できるほか、大きなキャリーバッグを引いた方などの乗り降りも楽になります。補助スロープを使えば、さらになめらかになり、車いすで乗り入れる場合もスムーズです。

段差を解消した歩道や公園出入り口

歩道や公園などの出入り口にある段差を解消すると、車いすやベビーカーなどの利用者が乗り入れしやすくなります。そのほかにも、子どもや高齢者、妊婦、松葉杖の利用者といった、段差でつまずきやすい人や、キャリーバッグを引いた人などが歩きやすくなるのもメリットです。また、自転車を運転する人にとっても安全に通行できる設計となっています。

インクルーシブ公園

インクルーシブ公園とは、身体能力や障害の有無を問わず、誰もが楽しく安全に遊べるよう配慮された公園です。物理的な配慮はもちろん、個人の興味や特性に応じた遊びを自ら見つけていける多彩な要素や挑戦のきっかけを提供するデザインにより、相互理解が深まる環境としても期待されています。

ピクトグラム

ピクトグラムは、人やものを単純化したマークで表現したものです。何を表しているかが一目でわかるデザインで、識字率の低い子どもや、国外からの旅行者、細かい文字を読み取りにくい高齢者など、文字情報だけでは理解しづらい人たちの助けになります。また、面白い形などで文字より目立たせることができ、誰にとってもわかりやすいデザインです。

幅の広い歩道

幅の広い歩道は、車いすやベビーカー、シルバーカー、歩行補助具などを利用する方が、介助者を含めて通行の幅を確保できるのが利点です。
また、周りの人のスピードを気にせずに通行できることや、歩行者と自転車の通行スペースを分離できるため、安全性が高い点もメリットです。

点字ブロック

点字ブロックは本来、視覚障害者の方が目的地までの方向を確認しながら歩けるよう設置されたものです。点字ブロックが敷かれている経路は、駅の改札やトイレなど公共性の高いものであることが一般的ですが、工事中の通路や地下街などの迷いやすい場所に点字ブロックを敷設すると、ルート案内としても活用でき、誰でも便利になります。

階段とスロープ

階段は、車いすやベビーカー、歩行具などを使った方の昇降が困難となるため、公共の施設などではスロープを併設するのが一般的となっています。緩やかな傾斜となるようスペースをとって設計されたものが多く、子どもや高齢者も歩きやすいのが利点です。また、自転車を押して通行できるよう、階段横に細い幅で敷設されたものもあります。








モノのユニバーサルデザインの例

そのほか、商品や道具などのデザインで工夫された生活用品の例として、文房具とスマートフォン、バッグについて見ていきましょう。

文房具

右利き・左利きに関係なく使えるカッターナイフ、弱い力でも握りやすいはさみ、針が格納され安全に抜き差しできる画鋲、正しい指の位置で安定して握れる鉛筆、反射によるちらつきやまぶしさを抑えたノートなど、年齢や能力、経験によらず、使う人の負担を減らし、誰でも同じように使いこなせるデザインが施された文房具があります。

スマートフォン

スマートフォンには、画面表示を自由に拡大したり、読み取りやすいフォントに変更したり、背景色や明るさを好みの状態に変更したりして、情報を取りやすくする機能があります。また、音声による支援も充実しており、読み上げや音声による画像の解説、音声入力のほか、メール送信、電話、スケジュール設定などを音声で指示することもできます。

アルコール飲料の缶

アルコールの入った缶飲料には、視覚障害をもった方が誤飲しないよう、点字がつけられています。カクテルやチューハイなどの低アルコール飲料はパッケージがジュースと紛らわしいものも多いため、点字だけでなく、「おさけ」「ビール」と明示し、ひらがなで文字を浮き上がらせるなど、誰でも区別しやすく工夫されています。

ペットボトル

液体は重量があるため、高齢者や子どもなどの握力が少ない人でも扱いやすいよう、形状にくびれをつけたり、表面にでこぼこをつけたりといった加工がされています。ラベルのミシン目や感熱接着も、リサイクル時のラベル剥がしを楽にする工夫です。また、ボトルの強度を保ちつつ軽量化することにより、樹脂量や運搬時の負担を減らして環境保全も図っています。

お札

紙幣には、視覚障害者や外国人など識字が困難な方でも種類を判別しやすいよう、指の触感で識別できるマークが入っています。2024年度上半期を目処に刷新される予定の新紙幣では、誰もがわかりやすくなるよう、数字の大型化や、識別マークの形状と位置、ホログラムやすかしの位置などが種類ごとに変更される予定です。

片手でも使いやすいバッグ

画像引用:U-GO Free mini 
片手で使えるユニバーサルデザインバッグ U-GO



片手がふさがっている状態でも使い勝手のよいバッグは、片麻痺を抱える人だけでなく、肩がけしたまま使う一般の人にとっても便利です。斜めがけした状態で操作しやすい機構、バッグの口が開きっぱなしにならない磁石留めのフラップ、傾けても中のものを落としにくい大きめ・深めのポケットなどが特徴として挙げられます。





身近なユニバーサルデザインの例まとめ

いつもの場所や、よく手にする商品へ施されているユニバーサルデザインについて、具体的な事例とともにみてきました。ユニバーサルデザインは特殊な概念で特別な工夫や珍しいアイデアが必要だと身構えられがちですが、実は身近なところにあり、あたりまえの設計として浸透しているものも少なくないのです。



TOPPANのユニバーサルデザイン推進

ここからは、TOPPANのUDへの取り組みの歴史をご紹介します。


商品パッケージから始まったUDへの取り組み

TOPPANのUD関連の取り組みは、1995年に商品パッケージの分野でのバリアフリー研究から始まり、ユニバーサルデザインに発展。時代のニーズに応え、社会のイノベーションに貢献したいという想いは、現在にも引き継がれています。


2000年には、全社横断のプロジェクトを発足。情報コミュニケーション領域など幅広い分野でサービス開発をすすめていくことになります。


2001年に『ユニバーサルデザイン考』展を中心とした啓発イベントを開催して以降、『みんなにうれしいカタチ』展など、社会との情報共有の場を設けるとともに、2007年には、キッズデザイン協議会の設立に参画。また、前述した「アクセシブルデザイン」の規格にもノウハウを提供しています。

TOPPANがノウハウを提供した規格
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JIS S 0022 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-開封性試験方法
JIS S 0022-3 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-触覚識別表示
JIS S 0022-4 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-使用性評価方法
JIS S 0025 高齢者・障害者配慮設計指針-包装・容器-危険の凸警告表示-要求事項
JIS S 0032 高齢者・障害者配慮設計指針-視覚表示物-日本語文字の最小可読文字サイズ推定方法
JIS S 0033 高齢者・障害者配慮設計指針-視覚表示物-年齢を考慮した基本色領域に基づく色の組合せ方法
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情報をわかりやすく、魅力的に伝えるために

2009年には、情報媒体でのユニバーサルデザインを追求した「TOPPAN E-UD」を体系化。「見ため」はもちろん、発行の目的に合致した企画なのか、ページ構成や文章表現は理解しやすいか、そもそも「読む気になるか」など、5つの視点で検証できるノウハウを体系化しました。
2018年には、このノウハウを活用した診断・改善提案サービスとして「でんたつクリニック®」をリリース。この記事でお伝えしてきたような広義の意味での情報ユニバーサルデザインを実現するためのソリューションとして、提供しています。
とくにブランディングとの親和性を重視していることが特長で、近年は、ジェンダー・性的多様性への配慮や、発達障害への関心の高まりを受けて注目されることの多い認知特性の多様性への配慮に注力しています。


UDからダイバーシティ&インクルージョンへ

2016年には、「UDコミュニケーションラボ」を開設し、狭義のユニバーサルデザインに限らない「ダイバーシティ&インクルージョン支援」を開始。
「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が普及してきた2020年には、これまでの「UDビジネス」を進化拡張させ「D&Iソリューション」として再構築し、多様なサービスを開発・ご提供しています。



「でんたつクリニック®」ご紹介資料

2023.07.03

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