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自動化できるところ、できないところ
マーケティングにおける、さまざまな業務を自動化する「マーケティングオートメーション(MA)」。しかし、すべてMAツールに任せてしまえばいい、と言うわけにはいきません。
「自動化できるところ」と「できないところ」を、理解しておかなければ、せっかくMAツールを導入しても、効率の良い運用はできないのです。
<目次>
1.MAとは
2.MA自動化の一般的な例
3.BtoCにおける自動化の一例(メールマーケティング)
4.BtoBにおける自動化の一例(メールマーケティング)
5.自動化できない業務に注力
6.マーケティング自動化の未来とAIの役割
1.MAとは
MA(マーケティングオートメーション)とは、企業のマーケティング活動を自動化し、効率化するための仕組みやシステム全般を指します。Marketing Automationの頭文字を取った用語です。
必要とされる背景
なぜ今マーケティングオートメーションが注目されるのでしょうか。背景には、インターネットの普及による顧客行動の変化があります。顧客は営業担当者に会う前に、自らWebサイトやSNSで情報収集を完了させるようになりました。そのため、企業側もデジタル上での接点を強化し、顧客の興味の段階に合わせた情報提供を行う必要が出てきたのです。
しかし、個々の顧客の行動を手動で追いかけ、最適なアプローチを続けるには限界があり、その課題を解決する方法としてMAが求められています。
MA導入の目的
・顧客データの一元管理
多くの企業が、Webサイトの問い合わせデータ、イベントで集めた名刺、メール配信リストなどを個別に管理しているという課題を抱えています。マーケティングオートメーションは、これらのバラバラな情報を一元的に集約します。氏名や会社名といった属性情報と、Web閲覧履歴やメール開封といった行動履歴のデータを結びつけることで、顧客像を立体的に把握するのをサポートをします。これにより、営業部門とマーケティング部門が同じ顧客情報を活用できる基盤が整います。
・見込み顧客(リード)の育成
MAの核となるのが「リードナーチャリング(見込み客の育成)」です。集めた見込み客リストに向けて、画一的な情報を送るだけでは成果につながりません。マーケティングオートメーションを活用することで、顧客の行動履歴や興味の度合いに基づき、「製品事例を求めている人」「価格を検討している人」といったセグメントに分け、それぞれに最適なコンテンツを自動配信できます。このアプローチにより、手動では難しかった長期的な関係構築が可能となり、商談の質と量の向上が期待できます。
2.MA自動化の一般的な例
上記の図で示した、オレンジの業務に関しては、一般的な企業においてMAツールによる自動化が実現できます。
MAツールによって、マーケティング業務のどの部分が自動化できるのでしょうか? 以前のMAツールは、レコメンドだけ、メール生成だけといった、マーケティング業務の一部のみを自動化するものでした。しかし、最近のMAツールは、複数の業務を統合して実行できるものが多数登場しており、オムニチャネル化やマルチコンタクトポイントに対応していることも当たり前になっています。
各企業が提供しているツールやサービスによって、自動化される業務は異なります。また、どのようなマーケティングプランを実行するのか、BtoCなのか、BtoBなのかによっても、どの業務を自動化するのかは違ってきます。
3.BtoCにおける自動化の一例(メールマーケティング)
新規獲得したリード(潜在顧客・見込顧客)を、収集したリード情報から属性分類を行います。あらかじめ用意していたシナリオ設定に基づいた属性別のメールを自動生成し、それぞれのリードに配信。配信したメールに対するリードのアクション結果に応じて、次に配信するメールコンテンツを自動生成し、配信します。この時、ホットリード(確度が高い有望見込顧客)に対するメールコンテンツの配信は、内容だけでなくタイミングも重要となります。
商材によってメールの配信回数などは変わってきますが、複数のメール配信を通じてリードナーチャリング(見込顧客の育成)を行い、商品やサービスの購入につなげます。さらに、場合によっては、SNSやWebサイト、実店舗なども含めたオムニチャネルによるアプローチも行います。
4.BtoBにおける自動化の一例(メールマーケティング)
BtoBのメールマーケティングでは、ターゲット企業の購買行動プロセスを把握しておく必要があります。そのうえで、購買行動プロセスに関わるリードに対してアプローチをかけますが、あらかじめ設定した見込度合い以上のリードをセグメントします。
また、BtoCに比べるとリードナーチャリングに時間がかかります。
BtoBの購買行動プロセスにおいては、その製品・サービスを購入することが「自社にとって価値があるかどうか」が大きなポイントとなります。具体的にどのようなソリューションを実現し、どのような便益を提供できるのかを、わかりやすく伝えるシナリオを用意しておくことが重要です。
5.自動化できない業務に注力
AIによってスコアリングも自動化
特にBtoBの分野では、リードのスコアリングは、営業のタイミングに影響するため重要度が高く、以前は専門的な知見がなければ的確なスコアリングが困難でした。
しかし、最近のMAツールの多くは、手間をかけずにスコアリングができる機能を備えています。中には、AI(人工知能)を駆使し、学習を重ねてより精度の高いスコアリングを自動で行うものも出てきています。
自動化が難しい企画・制作業務
MAツールでも、企画やシナリオ・コンテンツ制作といったクリエイティブな部分までは、十分な対応が難しいと言えるでしょう。対応可能なツールもありますが、自社のビジネスコンテンツをよりわかりやすくリードに伝えるためには、しっかりと手をかけて制作を行うことが欠かせません。
また、複数のコンタクトポイントでリードのアクションを獲得するようなプランでは、いくつかのマーケティングツールを組み合わせるケースもあります(MA+SFA、MA+CRM、MA+広告管理ツールなど)。その場合、特にシナリオがしっかりつくり込まれていないと施策の成功は難しくなります。
どこまで自動化するのか、どこまで人的作業で行うのか、総合的に判断して、MAツールを有効活用しましょう。
6.マーケティング自動化の未来とAIの役割
マーケティングの自動化は、AI(人工知能)技術の発展によって、今まさに大きな変革期を迎えています。従来のマーケティングオートメーションが活動の「効率化」に主眼を置いていたとすれば、AIを活用した未来のMAは、分析や予測の「高度化・高精度化」を実現します。これまで人が行っていた複雑な判断や作成業務もAIが担うことで、マーケティングの成果は新たなステージへと向上します。具体的にどのような進化が起きるのか、その役割を見ていきましょう。
AIによるスコアリングとセグメンテーションの進化
現在のマーケティングオートメーションでもAIによるスコアリングの利用が進んでいますが、未来のマーケティング自動化におけるAIの活用は、その精度と深さが格段に進化します。従来の「Aの行動=5点」といった静的なルール設定を超え、AIが膨大な行動データと過去の成果(受注事例など)をディープラーニングで分析します。
これにより、「特定の3つのページを特定の順序で見た見込み客は、3日以内に商談化する可能性が80%」といった、人間では見抜けない複雑なパターンを抽出。スコアリング(点数付け)自体が動的かつ高精度になり、営業部門はより確度の高いリードに対して集中的なサポートを行えるようになります。
コンテンツとコミュニケーションの完全自動最適化
AIの役割は分析だけに留まりません。これまでは人間が作成していたシナリオ(分岐ルール)やメール文面自体を、AIが顧客ごとに自動生成する時代が到来しています。過去の事例や購買パターン、Web上の行動データに基づき、その顧客に最も響く画像、キャッチコピー、紹介するサービスをAIが瞬時に組み合わせて最適なメールコンテンツを作成します。
配信タイミングやチャネル(メール、LINE、Webプッシュ通知など)すら最適化され、真の「1to1コミュニケーション」が実現に向けて加速します。これにより、マーケティング活動のROI(投資対効果)の劇的な向上が期待されます。
戦略立案に集中できる未来のマーケティング体制
AIが複雑な分析や作成業務を担うことで、マーケティング担当者の役割は大きく変わります。マーケティングオートメーションシステムは単なる自動化ツールから、「戦略的パートナー」へと進化します。AIが提示する予測データに基づき、人は「どの市場に向けて新しいイベントを企画すべきか」「次の製品開発の課題は何か」といった、より上流の戦略的な意思決定やクリエイティブな企画立案にリソースを集中できるようになります。
マーケティングオートメーションの導入を検討する際は、単なる業務効率化の方法としてだけでなく、AIとの協業によるマーケティング活動全体の向上という視点を持つことが重要です。
2025.11.17



