BtoBマーケティングとは?戦略設計からWEBサイト構築・MAツール導入までの基本解説
コロナ禍による働き方の変化などの影響によって、これまでプッシュ型営業が優勢となっていたBtoBの営業・マーケティング手法も一変しています。今回はWEBサイト構築・MA(マーケティングオートメーション)ツールの活用法をはじめとしたBtoBマーケティングにおける基本情報を、BtoCとの違いに触れながら解説します。WEBサイトのコンテンツやMAツールによるメルマガ配信を有効活用すれば、自社の商材の売上を戦略的・効率的に向上させることができます。
【目次】
■BtoBの営業戦略はオフラインからオンラインへ
■BtoBマーケティングとは
■BtoBマーケティングの購買プロセス
■BtoBマーケティング戦略の策定方法
■BtoBマーケティングの戦術の例
■BtoBマーケティング推進で陥りがちな失敗談
■BtoBマーケティングの高度化は凸TOPPANへご相談ください
BtoBの営業戦略はオフラインからオンラインへ
コロナ禍を経て買い手側の意識も変容し、これまでオフラインでのプッシュ型営業が中心となっていたBtoBにおいても、WEBサイトやメールマガジンを経由して問い合わせに至るケースが増加しています。実際に、WEBサイト構築やMAツール導入・運用支援などをしているTOPPANにおいても、BtoB領域の相談が増えているのです。そこで今回は、BtoBにおけるオンラインでの営業戦略、BtoBマーケティングについてご紹介します。
BtoBマーケティングとは
BtoB(Business to Business)マーケティングとは、法人向けの企業間取引を目的とするマーケティング活動のことをいいます。個人消費者との取引を目的とする「BtoC(Business to Customer)」に対して、部長クラスなどの決裁者複数名が意思決定をする点や、購入を決定するまでの検討期間が長いなどの特徴が見られます。
BtoCマーケティングとの違い
BtoBとBtoCのビジネスには、主に次のような違いが見られます。
BtoB | BtoC | |
ターゲット(意思決定者) |
企業(管理職など複数) |
消費者(個人、基本1人) |
顧客数 |
絞られる |
幅広い |
購入単価 |
比較的高め(数億円に及ぶことも) |
比較的低め(数百円~数万円) |
検討期間 | 長期にわたる場合が多い | 短期 |
マーケティングの対象やアプローチの取り方、マーケティング活動のタームなど、BtoBとBtoCではマーケティング戦略が違ってくることがわかります。BtoBマーケティングの場合、購入に向けた意思決定が組織的に行われることを押さえておきましょう。
BtoBマーケティングの基本構造
BtoBマーケティングにおいては、見込み顧客の獲得から受注に至るまでの購買プロセスに沿って、次のようなファネル型の構造が見られます。ファネル(漏斗)のように、フローを追うごとに対象が絞られていくイメージです。
「リードジェネレーション」はいわゆる見込み顧客の獲得、「リードナーチャリング」は見込み顧客の育成、そして「リードクオリフィケーション」は選別・優先順位付けを示しています。続いては、この購買プロセスに基づいたアプローチを1つ1つ見ていきましょう。
BtoBマーケティングの購買プロセス
リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)
「リードジェネレーション」とは、見込み顧客(リード)を獲得するまでのプロセスのことを指します。この段階では、顧客の氏名や企業名、メールアドレス、電話番号といったデータを獲得していき、MAツールを使って顧客とコミュニケーションできる状況を目指します。主に、SEO対策やWEB広告の出稿といったオンライン施策と、イベント・展示会開催や営業活動などで名刺を獲得していくオフライン施策の2つがあります。
自社サイトへの問い合わせ誘導
オンライン施策のポイントの1つとして、自社のWEBサイトなどに営業を介さずに問い合わせを受け付ける窓口を用意しておくことが挙げられます。問い合わせがあった際にも、まずは非対面で営業活動を行うインサイドセールスにて対応する体制をとるようにしましょう。
商材に関連した資料のダウンロード誘導
オンライン施策のもう1つのポイントとして、商材に関連するお役立ち情報等をホワイトペーパーとしてまとめ、WEBサイト上で企業名や名前、メールアドレスなどの情報を入力すればダウンロードできるようにしておくことが挙げられます。
見込み顧客にとって、比較検討の初期段階でいきなり問い合わせをする行為はハードルが高いものです。資料のダウンロードはこうした購入の検討度合いがまだ高くない相手に対しても、商材をアピールしつつ顧客情報を獲得でき、有効な手段といえます。
営業担当者による名刺登録
オフライン施策のポイントの1つが名刺情報の登録です。営業アプローチをかけている顧客だからといって、いつでも購入の検討度合いが高いとは限りません。オフラインで獲得した名刺のデータをMAツールに登録しておき、顧客のニーズが高まるタイミングを逃さないよう定期的な接点を持っておくことが重要です。
イベント・展示会の開催
イベント・展示会はそもそもオフライン施策の1つでしたが、最近では参加のハードルを下げるため、オンラインによるウェビナー形式のイベントや、オンライン展示会を開催する企業も増えています。ここでのポイントは参加者アンケートを取ること。アンケートにより購入の検討度合いが可視化され、そのまま効率良く商談につなげられます。
リードナーチャリング(顧客育成)
「リードナーチャリング」とは、リードジェネレーションで獲得した見込み顧客を育成し、購入の検討度合いを高めるプロセスのことです。例えば、MAツールでメールマガジンを定期的に送信し顧客に課題認識が生まれたところで、「あの製品・サービスが役立つのではないか」と想起してもらえる状態を作るのです。
メールマガジンの内容はサービス紹介や前述のお役立ち資料の紹介、イベント開催のお知らせなど、顧客にとってメリットのある情報を心がけ、開封率を高めるようにします。
商材と相性の良い業界やポジションの顧客へ向けたセグメント配信や、特定の行動に応じて自動的にメール送信を行うトリガー配信などを実施するとさらに効果的でしょう。
商談化・見積提示・受注
いよいよホットリード(購入検討度合いの高まった顧客)に対して、営業から直接アプローチをかけ、商談化に繋げていくプロセスです。
特にBtoBにおいては単価の高い商材を扱っている場合が多いため、WEBからの情報だけで購入を「決定」するに至ることはそう多くありません。対面・電話での商談や見積提示のようなオフライン施策との連動により、購入決定を後押ししましょう。
継続的な関係性構築
購買プロセスとしてはここまでですが、BtoBマーケティングはこれで終わりではありません。従来の営業活動と同様、リピートや拡売、契約継続を促すために継続的に課題をヒアリングし、クロスセル・アップセルの観点で提案を行うなどのフォローも欠かせません。リードナーチャリングで活用したダウンロード資料を既存顧客へ展開することも、話題作りや顧客の関心を高めるきっかけになるのでおすすめです。
BtoBマーケティング戦略の策定方法
施策を適切に回していくためには、戦略策定とKGIの設定が不可欠です。ここでは、その具体的な手法について詳しく見ていきましょう。
市場調査・顧客分析
目的に沿ったフレームワークを用いるなどで、狙いを定めるべき市場や競合他社の状況、その中で自社が狙うべきポジションといった情報をより深く読み取ります。例えば「PEST分析やSTP分析等を用いる」、また競合他社の動向、自社の強み・弱み、機会・脅威、顧客が抱えている課題を可視化するために「SWOT分析や3C分析等を用いる」といった形で、解決すべき課題を明確にしていきます。フレームワークによる情報読み取りと併せて、顧客のペルソナやカスタマージャーニーマップも作成するとより効果的です。
商材特性の整理
BtoBマーケティングの場合、自社の商材特性を活かしたアプローチを行うことが重要です。例えば次のようなポイントを改めて洗い出しておくとよいでしょう。今まで「当たり前だ」と思っていたことにも、新たな気づきが潜んでいるかもしれません。
・有形商材か、無形商材か
・購入検討期間
・平均購買単価
・競合他社への乗り換え難易度
KGIの策定
KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)は長期的な目標となるため、概括的になりがちです。そこで「初年度売上高●億円」など、具体的な数値で目標を立て、達成基準を明確にすることがポイントになってきます。
BtoBマーケティングの戦術の例
続いては、前述のKGIを達成するための手法例を見ていきましょう。
ABM(アカウントベースドマーケティング)
「ABM(アカウントベースドマーケティング)」は、ターゲットとする企業を定義・選択し、集中的・戦略的にアプローチする手法です。いわゆる「売れる可能性が高い顧客」に注力するため、手をかけた分の結果が出やすく、ROI(Return On Investment)の向上が見込めます。
MAツールを活用することで各企業と個別にコミュニケーションを取れるようになり、さらに近年SFA(営業支援システム)との連携も普及していることから注目されている手法でもあります。
コンテンツマーケティング
ビジネス情報などの有用なコンテンツを提供することで見込み顧客を育てる手法で、WEB上で行われるのが一般的です。WEBで情報収集する層は年々増えており、例えば導入事例・成功事例などの事例コンテンツで「自社にも役立ちそうだ」と印象付けることは有用な手段といえます。
ただし、事例コンテンツの場合、取引先への協力依頼、取材・制作などで公開までに数カ月かかり、さらにある程度事例数が揃わなければ見栄えがしないなど、コンテンツ制作は比較的時間がかかります。他の営業戦略とセットで実践するのがよいでしょう。
1to1マーケティング
レコメンド | 行動履歴に応じておすすめを表示 |
リターゲティング広告 | 訪問者に対して他メディアで広告表示 |
パーソナライズDM | 顧客に合わせてDMをカスタマイズ |
文字通り「1つの会社から1件の見込み顧客に対して」行われる手法です。WEB上での行動履歴に応じて商品・サービスなどをおすすめする「レコメンド」、自社サイトの訪問者に対して他のメディアで広告を表示する「リターゲティング広告」、顧客1人1人に合わせて内容をカスタマイズする「パーソナライズDM」などがあります。顧客それぞれに最適化された情報を届けられる手法ではありますが、母数が少ないと成果が上がりにくいというデメリットもあります。
BtoBマーケティング推進で陥りがちな失敗談
最後に、TOPPANにご相談いただくBtoB企業様の「失敗談」のうち、特に多いケース4種類をご紹介しましょう。
1:組織横断的な連携体制の構築が不十分
MAツールを用いたBtoBマーケティング推進には部署を横断する連携体制が欠かせません。しかし従来型の縦割り意識が強い企業など、こうした組織横断的な体制をうまく構築できない企業も珍しくないのです。
では組織横断的な連携体制とはどのようなものか、続いて具体例を見ていきましょう。ちなみに自社で体制づくりを賄いきれない場合は、TOPPANのようにマーケティングを専門とする外部パートナーを活用する手段も効果的です。
■ インサイドセールス
検討度合いが高いかまだわからない顧客に訪問などのアプローチをかけようとすると「業務時間を無駄に奪われる」、「勢いで買わされてしまう」などと警戒されかねません。そこで、オンラインなどで比較的ライトな接点を作る営業部隊を置く必要があります。
■ フィールドセールス
インサイドセールスの積み重ねなどで検討度合いが高まった顧客向けには、客先を訪問して、対面で商談や見積り提案を行う営業部隊を別途配置し、信頼を培うアプローチも検討しましょう。
■ WEBサイト構築・運用
今や、オウンドメディア構築は企業にとって必須と言っていいでしょう。「自社のWEBサイトを持っている」だけでなく、そのクオリティも会社や商材を評価する重要なポイントになります。
既存のWEBサイトに対しても「販売を目的とした『売れる』サイトになっているか?」といった視点で見直しをし、マーケティング的なメリットがないと判断した場合は、売れるサイトへリニューアルしなければなりません。
■ MAツール導入・運用
顧客にアプローチをかける手段として「メールマガジン配信」は有効なもののひとつです。一斉配信、セグメント配信のほか、行動履歴に応じてメールを送るシナリオ配信などを拡充させ、顧客ごとに最適な情報を届けることが求められます。
■ WEB広告運用
見込み顧客を醸成するためには、まず自社商材を認知してもらい、ニーズの高まったタイミングで検討対象に加えてもらわなければなりません。リスティング広告など、「まず認知度を高める」ためのWEB広告の出稿も検討する必要があります。
■ システム基盤構築
組織横断的な体制においては、データを管理しているツールもまたMAツールと連携させ、横断的に運用しなければなりません。顧客データベースや商談プロセス管理など複数のツールを用いている場合、各ツールの仕様を把握し、MAツールと繋ぐための具体的な手段を策定できるシステム部門との連携も必須となってきます。
2:KPIの設定が不十分
「KPIの設定」と聞けば、商談数、見積提示数、受注数といった指標をイメージしがちですが、これらは商談・見積りにまで至らなければ獲得できない数値でもあります。一方、リードナーチャリングやリードクオリフィケーションといった各プロセスにも、やはり資料ダウンロード数やメールマガジンの開封率といったKPIを設定したいところです。
もし、KPIを定めないまま施策だけが走り出してしまうと、上手くいかなかった場合に、改善へとつながる手がかりを見失ってしまいます。
3:WEBサイトに実装するコンテンツ不足
MAツールを活用するとなると、まずはシステムが持つ機能などが注目されがちです。しかし、MAツールはメッセージを効率的に届けるための「仕組み」であり、肝心な「顧客に届けるもの=コンテンツ」の設計が不十分だと、ツール導入後すぐに困ることになってしまいます。
コンテンツは特に初期段階に数多く実装し、顧客に「有用な情報が充実している」と認識してもらうことが大切です。限られた期間でコンテンツを揃えるためには、一定の投資も必要になってくるでしょう。
4:MAツールの運用リテラシー不足
MAツールなどは機能や操作方法が複雑な製品も多々あります。マーケティング専門の担当者をアサインしても、ITリテラシーが追いついておらずうまく使いこなせないといったケースも考えられるのです。実際に、高機能なMAツールを使っているのにメール配信ツールと同じように一斉送信にしか利用しない……いわば宝の持ち腐れのような運用状況は珍しくありません。
せっかく導入したMAツールです。顧客それぞれに最適な情報を届けられるシナリオ配信なども活用しながら、手をかけ過ぎずに情報発信の効率を高めていくことが重要です。
ツールベンダーとのやり取りや、ツールを使いこなせるか不安がある場合は、TOPPANのようなスペシャリストに運用代行を依頼したり、代行してもらう中で徐々に使い方を学んだりしでいくのもおすすめです。
BtoBマーケティングの高度化はTOPPANへご相談ください
TOPPANでは、リードナーチャリングやリードクオリフィケーションを踏まえたKPI設定に対するアドバイスや、WEBサイトに掲載するコンテンツの企画・制作、さらにMAツールによるコミュニケーションの設計から運用など、BtoBマーケティングに関する幅広い支援をワンストップで行っています。まずはぜひお問い合わせください。
2024.08.29