データテクノロジー&プラットフォームサービス コラム

CDP構築時の手順・流れを解説!
注意すべきプロセスの落とし穴とは?

近年多様化・複雑化している消費者のニーズや購買行動。従来の大まかなターゲティングによる商品中心のマーケティングから、「顧客一人ひとりの趣味嗜好、興味関心に寄り添ったOne to One(顧客中心の)マーケティング」への移行が求められています。
そのため、企業はマルチチャネル化している顧客情報を横断的に把握することが求められますが、多くの企業では顧客情報がマーケティング・営業・カスタマーサポートなど、それぞれの目的に応じて導入された異なるツールでバラバラに管理されています。これにより、データのサイロ化といった課題に直面し、効果的なマーケティング戦略の実現に苦労しているのが実情です。
これらの課題を解決し、企業が保有する顧客データを一元管理・活用できる仕組みとして注目されているのが、「CDP(Customer Data Platform:カスタマー データ プラットフォーム)」です。
本コラムでは、CDP導入を検討している方に向けて、CDP構築の基本的なステップと注意点・要点を解説します。


<目次>
1.CDPとは?
2.CDP構築時の主なステップ
3.CDP構築時の落とし穴と成功のポイント
4.まとめ


1.CDPとは?

CDPとは、「Customer Data Platform(カスタマー データ プラットフォーム:顧客データ基盤)」の略称で「顧客の属性や行動などの各種データを収集・集約・蓄積し、利活用するためのシステム基盤」のことです。顧客一人ひとりをより深く分析することでニーズ把握、マーケティングの精度向上、顧客体験の最適化などを可能にします。また、データ収集から施策実行までのプロセスを効率化することができるのもCDPの利点です。


2.CDP構築時の主なステップ

続いて、CDP構築時の主なステップを解説します。

STEP1.ビジネス要件定義

CDP構築プロジェクトを長期的な視点でとらえ、会社として実現したい明確なビジョンを描きます。ビジョンが欠けていると、CDP導入後に「何のためにCDPを構築したのか」という目的意識が曖昧になり、導入効果が上がらないといった事態になることもあります。

ビジネス要件定義において検討・定義すべき主なポイントは以下の通りです。

・自社ビジネスにおけるデータ活用の方向性整理
自社の事業戦略やビジネス課題などを踏まえて、データをどう活用するかを明確化します。目的を具体化し、成果指標(KPI)を設定することで、後続の対応項目における優先順位と範囲を定義でき、投資対効果の最大化に寄与します。

・対象顧客の整理、保有データの整理
対象顧客を明確にし、そのために必要なデータを整理します。CRM、ECサイト、SNSといった顧客接点とデータの種類、そしてそれらが「誰によって、どのシステムで、どのようなルールで管理されているのか」という現状を把握します。またデータを安全に活用・管理するためのルール策定も必要です。

・実行施策の整理
実行施策の目的を明確にした上で、どのチャネル(例:メール、アプリ、店舗など)で、どのようなマーケティング施策やコミュニケーションを実行するのかを整理します。

・分析軸の整理
分析の目的を明確にした上で、データをどの部門が、どのような観点で可視化・分析していくのか整理します。

・運用体制・サイクルの整理
CDPを軸に「誰がどのようなスケジュール感で、施策プランニング・実行・分析・改善を回していくのか」といったPDCA運用の具体的な内容を整理します。

・ツールのFit&Gap分析
これまで検討してきた顧客・施策・分析・運用といったビジネス要件を踏まえ、導入想定ツールが実現できる範囲、実現できない範囲を確認します。また実現できないものはどう取り扱うかの方針も立てましょう。

・ロードマップの策定
CDP構築におけるロードマップを策定します。施策単位ではなく会社全体としてCDPをどう継続活用していくかという視点が重要です。

その他、データ統合やシステム連携など技術的な側面ではIT部門の協力が不可欠です。関連部門を早い段階から巻き込み、ビジネス要件のすり合わせを行うことで、後工程での手戻りを防ぐことができます。

STEP2.CDP要件定義

CDPの処理全体像を整理し、どのようなデータをどのような構造・処理で扱うのかを明確に定義することが重要です。以下の観点で要件を整理します。

・施策要件定義
実施するマーケティング施策の目的やシナリオ、利用するチャネル(メール、SNS、Webサイトなど)を明確にします。これにより、CDPで実現すべき施策を具体化します。

・分析要件定義
どのような分析を行いたいのか、その目的や必要なデータ、分析手法、期待される成果物(アウトプット)を定義します。ここで定めた分析要件が、後工程のデータ整備やシステム設計に大きく影響します。

・アウトプットデータ要件定義
CDPからのアウトプットは、顧客とのコミュニケーション施策やデータ分析のために利用される情報になります。施策要件や分析要件を踏まえて、それに必要なデータの種類やアウトプットの方法を定義するのがアウトプットデータ要件定義です。
選定したCDPツールの制約を考慮しながら、必要な出力データの形式や具体的な項目を決めます。CDPからBIツール、MA(マーケティングオートメーション)、Web接客ツール、Web広告といった各サービス・システムへ連携する際のデータ形式や必要項目を洗い出します。

・インプットデータ要件定義
選定したCDPツールの制約を考慮しながら、データ形式や項目、事前加工の有無などを定めます。また、CDPへインプットするデータを保有するシステムから、どのような内容のデータをどのような形式・頻度で抽出・連携するかも定めます。
そして、CDPツールへのデータ取込タイミングや頻度、データ量、データの取込単位、各種システムからの連携方法などの設計を行います。このとき、社内システムからデータを統合する際には、「顧客軸」でデータをまとめることが重要です。

・データ処理要件定義
CDPがデータをどのように受け入れ、加工・統合し、管理・出力するかという「システム内部でどのような処理が必要か」を明確にする工程です。これには、データクレンジング、名寄せ、属性付与、集計処理などが含まれます。

・非機能要件定義
実運用を見据えて、運用体制や権限設定、監視範囲、運用・保守、連携システム先とのやりとり、障害発生時の対応方針等について要件定義を行います。

STEP3.設計

要件定義フェーズにおいて関係者間で合意した内容について、具体的な実現方法を設計に落とし込みます。

●CDPのデータ処理の流れ
CDPのデータ処理は、主に以下の4つのステップで構成されます。

1.データ取得
各種チャネルやシステムから必要なデータを収集します。

2.データ蓄積
収集したデータをCDP内に格納し、効率的に管理できるようにします。

3.データ統合
異なるソースから集めたデータを顧客単位などで統合・名寄せし、分析や施策に活用しやすい状態に整理します。

4.アウトプット(活用・連携)
統合したデータを分析や各種マーケティングツール、他のシステムへ連携し、実際の施策や意思決定に活用します。

●主な設計項目
例として、次の設計項目が挙げられます。

・データフロー設計
・テーブル設計
・データマート設計
・運用設計

この他にも、セキュリティ設計やアクセス権限設計、バックアップ設計など、プロジェクトや要件に応じて必要な項目を検討します。

STEP4.実装・テスト

設計フェーズで決定した内容に基づき、具体的な設定やシステム構築、プログラム開発、そしてテストを実施するフェーズです。

・各種設定およびSQL・パイプラインの実装
STEP3の設計に基づき、CDPや関連システムの各種設定を行い、必要なSQLクエリやデータパイプラインを実装します。これには、データの取り込み、加工、統合、出力など各種データ処理の実装が含まれます。

・データ処理および連携のテスト
テストデータとテスト環境を使用して、各データ処理テストや外部システムとの連携テストなどを行います。テスト結果をもとに必要な修正・改善を行い、品質を担保します。

・スルーテスト
テスト結果に問題がなければ、実際の運用を想定して最終的な検証を行いましょう。業務シナリオに基づき、CDP単体ではなく関連システム全体での総合テスト(スルーテスト)を行います。

STEP5.データ移行・本番展開

過去データなどの実データをCDPに移行し、スケジューラをセットすることで本番稼働を開始します。稼働後にはデータの抽出や連携処理が意図した通りに動作しているか念のため確認します。

これらの工程を経て、すべてのリリース・初期流動確認が完了すれば、CDPの初期構築は完了となります。



3.CDP構築時の落とし穴と成功のポイント

続いて、CDP構築の際に注意すべき、よくある失敗のポイントを3つご紹介します。どのような落とし穴なのかを詳しくご紹介するとともに、それらを回避し、成功につなげるポイントを解説します。

1.データ収集自体が目的化してしまう

CDP構築において最も避けたいのは「データ収集自体が目的化してしまう」ことです。多くの企業がCDPの導入を考える際、膨大なデータを集めることに注力しがちです。しかし、データ収集自体を目的としてしまうと、本来の目的である顧客理解やマーケティング戦略の最適化が達成されません。不要な工数が発生する可能性もあります。データの収集はあくまで手段であり、重要なのはそれを顧客体験の向上やビジネス目標の達成にどう活用するかを協議することです。

●成功のポイント:CDP導入目的の明確化と社内共有
CDPの導入にあたっては、「なぜCDPを導入するのか」のビジョンや「どのような業務や施策に活用するのか」のロードマップを最初に明確にすることが重要です。目的が曖昧なままプロジェクトを進めると、関係者間で認識のずれが生じ、不要な作業や議論が発生する恐れがあります。CDP導入目的としては「CX向上(足し算)」の側面と「効率化(引き算)」の側面があります。以下の目的例を参考に、自社の目的を明確に定めましょう。

【目的例】
<CX向上(足し算)>
・ 既存商品・サービスの高度化・提供価値向上
・ 顧客接点の改善

<効率化(引き算)>
・ 業務効率化・省力化
・ 業務プロセスの改善・再設計
・ 経営データ可視化による意思決定の迅速化・スピード経営

●成功のポイント:段階的な導入とKPIの設定
CDP構築プロジェクトは中長期にわたることが多いため、段階的に導入し、各フェーズで成果を評価することが重要です。各段階で達成すべきアウトプットや成果指標(KPI)を明確にし、進捗と成果を定期的に確認しましょう。KPIの設定は比較的早期に成果が得られる「業務効率化」と、成果が出るまでに期間がかかる「売上向上」の大きく2つの観点で設定するのがポイントです。はじめから「売上向上」のみを成果に設定すると、結果が出るまでに時間がかかり、社内理解が得られなくなる恐れがあります。

【KPI設定のポイント】
・初期は「業務効率化」や「データ品質向上」など、短期間で成果を実感しやすいKPIを
設定する。
例:レポート作成時間の削減率、データ統合件数、データ重複率の低減

・中長期的には「売上向上」や「顧客満足度向上」など、ビジネスインパクトの大きいKPIを段階的に追加する。
例:クロスセル率の向上、リピート購入率の増加

2.データ量が不足している/データが集まりすぎて把握できない

次に考慮すべきはデータ量や整備の問題です。いざ収集してみた結果、データ量が足りず想定していたアクションプランが実行できないケースがあります。また、データの種類・項目が多すぎることや、同じ内容が複数の項目に存在してしまうことで、必要な情報を見つけ出すのが困難になることもあります。
さらに、様々なシステムから顧客に関するデータを集めてみても、顧客データ統合に必要な情報の一部が抜けていることや、システム間のルールが統一されていないことなどが理由で、顧客データの名寄せまたは統合が難しいことがあります。

●成功のポイント:データ把握・整理などを入念に行う
CDP導入時にデータが欠損している、値が揃っていない、異なっているなどの問題が生じないように、下記のようなデータの把握と整備をしっかりと行っておくことが重要です。

【データの把握・整理の例】
・統合対象のデータがどの部署のどのシステムに存在するかなど洗い出して把握する。
・データの保存・管理ルールやフォーマットを確認する。
・システム管理者が誰か(社内外含め)を明確にして対応する。

これらを怠ると、プロジェクト全体の進行に多大な影響を与えてしまいます。入念に行いましょう。

3.社内のルールが不明確で、プロジェクトが破綻

CDP構築プロジェクトが失敗するもう一つの要因は、「社内のルールが不明確」であることです。データの収集・管理・利用に関する明確なガイドラインがないと、各部署の独自ルールや縄張り意識が障壁となり、データ統合の目的や進め方、予算配分などで意見がまとまらず、最悪の場合プロジェクトが破綻してしまうこともあります。各部門が協力し、統一された方針のもとで進めることが重要です。

●成功のポイント:部署間の連携ルールと具体的な進め方を事前に決めておく
CDPは全社的に活用するためのデータを収集・統合するため、マーケティング部門など特定部署だけではなく、各事業部門、情報システム部門など部門横断での連携が欠かせません。「必要になったときに協力を依頼する」といった見切り発車でプロジェクトをスタートさせてしまうと、進行のたびに調整が発生し、その都度、目的や意図などを説明する余計な手間がかかるだけではなく、協力が得られないという最悪の事態にもつながりかねません。最初から部門間の連携ルールや具体的なアクションプランを策定し、プロジェクト計画に組み込んでおくことが重要です。

●成功のポイント:外部ベンダーとの協力も積極的に検討する
CDP構築を戦略立案から導入まで100%内製化することはリソースやノウハウの面で現実的ではありません。そのため多くの場合は、コンサルティング会社やシステムベンダーなど、外部の専門家と連携しながら進めることになります。社内のプロジェクトチームに加え、第三者の視点や専門的知見を取り入れることで、より効率的・効果的な構築が可能になるでしょう。できるだけ早い段階で外部ベンダーに相談することをおすすめします。


4.まとめ

本コラムでは、CDP構築時の手順・流れの解説から注意すべきポイントや成功のコツについて解説してきました。CDP構築は、顧客データを最大限に活用し、ビジネス成果を向上させるための重要なプロジェクトです。

その成功には綿密な計画と組織全体の協力が不可欠です。データの収集・統合・活用の各ステップでの課題を明確にし、適切な対策を講じることで、CDPの効果を最大限に引き出すことができます。よりスムーズで効果的な導入につながるよう、外部ベンダーとの連携を早期から検討することをおすすめします。これからCDP導入を検討している方は、ぜひ本コラムの内容を参考にしていただけますと幸いです。

TOPPANでは、お客さまごとに最適なCDPツールの選定から、目的に応じて構築支援の各種コンサルティング、デジタルマーケティング人材の提供まで、幅広くサポートしています。CDP導入によるデータ統合・活用をご検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。



2025.07.07