ひろぎんホールディングス×TOPPAN
【事例対談】お客様との継続的な
リレーション構築の実現へ~ひろぎんホールディングスの挑戦~
ビシネスモデルの多様化や消費者ニーズの変化に伴い、データを活用して顧客ニーズを捉え、適切なサービス提供を行うためのデジタルマーケティング(以下、デジマ)の実施や、社内外のさまざまなデータを活用してデータドリブンな経営を行うDXニーズは高まり続けています。しかしその一方、実行のための基盤の導入やパートナー選び、また効率的な運用についてお悩みを抱える企業は多いでしょう。
そこで今回、TOPPANとして初の地銀業界へのデジタルマーケティングの環境構築や運用パートナーとして共に走り出した「株式会社ひろぎんホールディングス(以下、ひろぎん)」をお迎えし、顧客の解像度を上げ、コミュニケーション強化に向けて取り組むリアルな現場の声を、対談形式にてお届けいたします。
社内推進時の苦労やデジマ基盤導入時に陥りがちな罠、パートナー選定のポイントなど、業界問わず、みなさまのヒントになれば幸いです。
*本記事は2024年9月12日に実施したウェビナーの抜粋です。
ウェビナー本編は、下記より動画でご視聴いただけます。
ひろぎんホールディングス
株式会社ひろぎんホールディングスは、広島銀行を中核とするひろぎんグループを統括する持株会社。2020年10月に設立され、「幅広いサービスを通じて、地域社会と共に、『未来を、ひろげる。』」というパーパスのもと、非金融分野を含め、あらゆる課題の解決に徹底的に取組む『地域総合サービスグループ』を目指している。
スピーカー紹介
谷本 知春 氏
株式会社 ひろぎんホールディングス
グループ営業戦略部 営業統括グループ 営業戦略室 兼
広島銀行
営業統括本部チャネル・ネットワーク企画室
2002年、広島銀行に中途入社。2011年から非対面チャネル担当としてホームページやインターネットバンキング、ネット支店立ち上げなどに携わり、2016年からはひろぎんアプリを始めとしたアプリ企画、運用推進などを手がけるほか、2020年からはデジタルマーケティング担当も兼務。立ち上げから環境構築、現在の運用フェーズに至るまで、チームメンバーと共に奮闘中。
山本 太郎
TOPPAN 株式会社
ビジネストランスフォーメーションセンター
エクスペリエンスデザイン本部
デジタルマーケティング部 3T
事業会社2社においてMA*1やCDP*2導入などを経験し、2019年8月にTOPPAN入社。現在はマーケティングプランナーとして業界業種、エリアを問わずさまざまなクライアントのデジマ基盤の構築、運用支援を伴走型でサポートしている。
デジマに取り組んだ背景・きっかけ
山本:まずはひろぎんがデジマ強化に取り組まれた背景、きっかけからお聞かせください。
谷本氏:背景としては、顧客接点の変化です。地方銀行は地域に根ざし多くの店舗があることが強みですが、来店されるお客さまは年々減少する一方、ひろぎんアプリの利用先数は伸び続け、最近では逆転現象が起こっています。また、日常の取引に関しても、インターネットバンキングが着実に増加してきています。こうしたリアル店舗中心からデジタル中心への確実な変化を重要視し、今後はアプリを中心としたデジタルチャネルでのお客さまとのコミュニケーションを進める必要があると考え、今回の取り組みに至りました。
山本:地方銀行ではまだまだこれからアプリの利用先数を増やしていくところも多々あると思いますが、ひろぎんはかなり早いタイミングで、顧客接点がデジタル中心になってきたのですね。
デジタルマーケティングの取り組みで心がけていること
山本:対面と比べて、デジタルは特有の難しさがあると思いますが、心がけた点はございますか?
谷本氏:私達は基本的に対面営業もデジタルも、お客さまとの接点という点では同じものだと考えています。対面営業では日頃から、対話をしながらお客さまの理解を深め、その中でニーズに合った商品提案を行い、反応を見ながらフォローして、最終的にお取引していただくフローで行っています。デジタルもそれと同じだと考えていますが、お客さまの反応やニーズを推測する手段がデジタルであるため、ログデータ等、デジタルチャネルで得られるデータを重要な情報源として活用する必要があります。
我々がデジタルコミュニケーションを実現するためには課題点が2つありました。1つはデジタル上のログデータをきちんと収集、蓄積していく環境が必要だということ。もう1つはお客さまとコミュニケーションを行うために自動で、高速でかつ我々の負担なく配信できる環境が必要だという点です。この2点を解決するために我々はTreasure Data とSalesforceを採用し、その運用についていま、TOPPANにサポートいただいています。
山本:なるほど。データの収集、蓄積をして顧客の解像度を上げていくというところと、その結果、コミュニケーションの自動化や高度化を進めて、One to Oneマーケティングを実現していくところがポイントですね。
デジマ社内推進における苦労とは?
山本:私も過去、事業会社時代にMA*1やCDP*2の導入でかなり苦労して、それがいまとなってはよい経験になっているのですが、社内推進において苦労したことや、注意点について教えてください。
谷本氏:はい。まず導入前は、デジタルチャネルを使った接点強化が必要、やらないといけないという認識は社内にもあったのですが、具体的に何をするのか、何ができるのか、成果とは何なのか、投資効果をどう考えるのかなど、さまざまな検討課題がありました。それを私自身どう整理し、周りに理解いただけるよう説明するかは、大変苦労しました。その結果、先ほど述べた通りデジマで何か特別なことをするのではなく、対面で行っている営業をデジタルに置き換えるのだと整理し、社内でもそういう説明を行いました。
次に環境構築時ですが、デジタルも対面営業と同じく、まずはお客さまを知るところから始めていく必要があります。そのためにデータを集め、活用して、お客さまの解像度を上げていく取り組みをいま、スタートしています。そして、その成果はまず小さくてもよいので、成功体験を少しずつ積み上げていく。それが我々メンバーのモチベーションにもなりますし、社内でもデジマはこういうものなのだと分かっていただけるきっかけにしていきたいと思っています。
そして現在ですが、我々デジマチームは10名(ウェビナー収録時時点)で、ほとんどが銀行出身者と若手で構成される新設のチームです。ノウハウもスキルもなく、体制も十分整っていないのが現状です。将来的には法人も含めたマーケティング組織に成長させたいと考えていますので、運用および人事面のルールや体制作り、あと何より人材育成にも取り組む必要があると感じています。
山本:ひろぎんの場合は数年スパンで先々を見据えて体制を考えられているところが、私の前職とは違うなと思います。そのあたりの今後の実装に向けても、TOPPANでサポートさせていただいていると捉えています。
デジマ基盤のアーキテクチャ概要
山本:ひろぎんのデジマ基盤の概要を、こちらの図を使ってご説明します。
左側が情報元、DWH*3で、アプリの行動ログのBigQuery、Webサイトの行動ログやアンケートなどのデータをしっかり貯めていくところです。
左から2番目のTreasure DataがCDPとして、外部データの結合、お客さまデータの一元管理、セグメンテーション、ターゲットリストの作成、さらにBI(ビジネスインテリジェンス)用のデータマートという役割です。ここではアナリストとプランナーの両輪が必要で、接客前にバックヤードで準備するイメージが近いですね。
その右のSalesforceでは、MAであるMarketing Cloudでアプリのコミュニケーションコンテンツを配信していく、メールやSMSのプッシュ通知、またはバナーやお客さまごとに合わせたポップアップの表示といったことを行っています。
その下のtableauはKPIの可視化、分析。デジマにおける接客を可視化してその成果を見ていくイメージです。
この基盤の運用支援をひろぎんとTOPPANが分担し、密に連携しながら協力して行っているという状況です。
これらのアーキテクチャはあくまでも手段ですので、状況に応じて変わります。ツールに関して、この限りではない点はご留意ください。
デジマ基盤導入時に陥りがちな「罠」とは?
山本:デジマ基盤の導入時、多くのクライアントが落ち入りがちな罠のようなものがあります。それが何かというと、この情報元は料理で例えれば素材集め、素材作りです。CDPはその素材を料理、MAはお客さまのご希望に合わせた盛り付け、配膳する役割、ということになります。
ここで大事なことは、どのような料理を作るかが決まらないと、素材集めや素材作り、調理に進むことができないということです。そしてジャンルや料理が決まらないと、盛り付けや配膳の方法も決まりません。
要するに、基盤構築が目的とならないよう、アプトプットから逆算してシステムのアーキテクチャを描いていくことが重要です。
TOPPANは、プロジェクトにエンジニアだけでなくプランナーも参加、施策のアウトプットとインプットの両方を意識して動く点が、特長です。
*3 DWH:data warehouse
パートナー選定時のポイント
山本:パートナーを選定する際のポイントについて、お聞かせください。
谷本氏:我々がパートナー企業を選定するときに重視した点は2点。一つは将来の内製化に向けて、スキルトランスファーをしっかりしていただけること。そしてもう一つは我々が活用するSalesforceとTreasure Dataの両方を一気通貫でサポートいただけることでした。内製化なのかお任せなのか、自分たちが何を望むのかをしっかりイメージを持つことが重要です。
加えて、我々のプロジェクトの進め方をご理解いただけるかもポイントでした。内製化に向けて実施した作業に対しての成果物、エビデンスをお作りいただけて、それに対する説明をきちんといただけるか。要件通りに作り上げて納品するスピード重視のサポートを頂ける企業もあると思うのですが、それでは自分たちが仕組みを理解できず、不安が残ります。また我々がスキルを習得することもできません。
時間もかかり負担をおかけすることになるので、根気強くお付き合いいただけるところと考えたとき、TOPPANは体制も整っていて、人材も揃っていたことが、決め手となりました。
山本:ありがとうございます。ドキュメント類に関しては既に納品させていただいていますが、これからもコミュニケーションをとりながら内製化で本当に必要なものに絞り、しっかり対応していきたいと考えています。
TOPPANのスタンス
山本:TOPPANとしては、持続可能なBX(ビジネス変革)の支援をしていきたいと考えています。
データのアセスメント、BX戦略の立案から各施策の実行、分析による改善、そして事業領域を拡大していく、また新たな取り組みをしていくところに関して、全般的にサポート可能です。
TOPPANの特長としては、ビジネス起点の戦略立案が可能な点と、もう1つはツールニュートラルであることです。また、基盤は既に構築したものの、施策がうまくいかないといったお客さまも、ご支援可能です。さらに、事業会社を横断して、関連企業などのご支援も可能です。
お客さまの状況に応じて我々のリソースで伴走支援して、そして将来的な自走に向けてのスキルトランスファーを行ってまいります。
今後の取り組みについて
山本:それでは最後に、今後目指されることをお聞かせください。
谷本氏:1点目は現在行っているコミュニケーション(提案内容)を高度化していくこと。シナリオの数を増やすため、継続的な取り組みをTOPPANと共に行っています。これがある程度落ち着きますと、次はその質を高めていく。現在もPDCAを回していますが、どこかのタイミングで見直しもかけていく必要があると思っています。並行して、取得したデータの活用も常に意識しています。
2点目は、銀行が持っている金融情報だけではライフステージに合わせたコミュニケーションが難しいため、今後はアプリを通じて非金融情報も収集していきたいと考え、アプリの機能強化にも取り組みます。
3点目は、やはり我々は地方銀行ですので、店舗との融合、連携が目指すべき姿です。デジタルデータを店頭の行員に連携して、お客さまの特徴をお伝えすることも考えています。
加えて、法人向けも来年度から着手していきたいと思っています。こちらも環境構築が必要ですので、目下社内で検討しているところです。
山本:個人と法人、それぞれデジタルとリアルを繋げる、どう融合できるのかが、肝になってくると考えておりますし、私も事業会社時代、そこにかなり悩んだところでもあったので、その辺はぜひ意見交換しながら、進めていきたいですね。
本日はありがとうございました。引き続き、よろしくお願いします。
谷本氏:ありがとうございました。
*本記事は2024年9月12日に実施したウェビナーの抜粋です。
ウェビナー本編は、下記より動画でご視聴いただけます。
2024.10.30