コラム

特定健診の受診率が低い原因は?
対処法と受診率向上のためのポイント

近年、国内では、特定健診の受診率が低いことが問題視されています。受診率を向上させ、生活習慣病につながる状況を早期に発見し、健康寿命を延伸すると共に、医療費削減につなげる必要があります。

今回は、自治体に向け、特定健診の受診率が低い原因から特定健診の受診率向上のための取り組みにおいて直面する課題、課題解決策とポイントをご紹介します。


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■特定健診の受診率が低い原因

まず、特定健診の概要と共に、受診率が低い原因をご紹介します。

●特定健診とは
特定健診は、正式には「特定健康診査」と呼ばれる、生活習慣病の発症や重症化の予防のために、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)に着目した健診です。

対象は医療保険の被保険者のうち、40歳以上74歳以下の被保険者・被扶養者であり、質問票(服薬歴、喫煙歴等)、身体計測、理学的検査(身体診察)、血圧測定、血液検査、脂質検査、血糖検査、肝機能検査、検尿が基本的な検査項目となります。

健診の結果、一定の条件に当てはまると特定保健指導を行います。

特定健診の費用は健診機関や自治体によって異なります。多くの自治体では無料で受診券を配布しており、年1回受けられるようにしています。

●特定健診の受診率
国内の特定健診の受診率はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省による令和5年度都道府県別特定健診受診率の結果、全国59.7%でした。年々伸びてはいるものの、全国目標である70%にはまだ届いていません。

●特定健診の受診率が低い原因
特定健診の受診率が低い原因として、次の点が考えられています。

・特定健診の年齢に達していることを知らない
・受診の時間が取れない
・受診に費用がかかることがある
・いつでも医療機関を受診できるから必要ない
・受診そのものが面倒に感じてしまう

特定健診の対象年齢についてそれほど認知が進んでいません。40歳になった時点で「特定健診を受けられる年齢になった」と認知できる機会を得られていないと考えられます。

また、特定健診は1時間程度で終了しますが、事前予約や医療機関への移動などを考えると仕事を長時間抜ける必要があり、休暇を取る必要があることもあります。そのため、働き盛りの世代は受診の時間がなかなか取りにくい実情があります。

受診したいけれど無料券が手元になく、費用がかかる場合はどうしても敬遠されがちです。
また現状は体に異常を感じておらず、気になることがあればいつでも医療機関を受診できるため、受診を決意することがない状況もあるようです。また、がん検診には興味があっても特定健診には興味が湧かないということもあります。
また受診の手続きが面倒など、手間を感じてしまうこともあります。

■特定健診の受診率向上のための取り組みにおける課題

特定健診の受診管理や指導を実施している自治体は、受診率向上のためにさまざまな取り組みを進めていますが、次のような課題に直面しています。

●チラシを送付しても見てもらえない・見ても受診につながらない
特定健診の受診勧奨の方法は、多くの場合、郵送物によるものです。送付する郵送物にはチラシなども封入しますが、それらを送付してもそもそも開封してもらえなかったり、開封して目にしても受診しようとは思われず、受診率向上の数値として現れないのも一つの課題です。

●個別電話、夜間訪問などでの勧奨に業務負荷が高い上に成果が出ない
郵送物の送付だけではなかなか受診につながらないため、特に必要と思われる対象者に個別に電話したり、仕事の帰宅後の時間、夜間に自宅を訪問することもあります。しかし、電話や訪問を1件ずつ実施するのは自治体職員にとって業務負荷が大きいものです。
また実施しても、思うような成果が表れてこないことも課題となっています。

●職員のスキル向上による健診受診率のアップには限界がある
個別電話や訪問の成果が出ないのは、職員のスキル不足が問題だという視点もありますが、スキル向上を実施したとしても、先述の通り、受診しない理由は多岐にわたるため、受診率の向上には限界があるのが実情です。

■特定健診の受診率向上のための対処法とポイント

では、上記のような課題を解決し、特定健診の受診率向上につなげるにはどうすればいいのでしょうか。課題を解決するための対策と共に受診率向上のポイントをご紹介します。

●対象者の階層化による層別アプローチ
受診勧奨を実施する対象者は、ある程度絞り込んでいるかと思われますが、絞り込んだ後、さらに階層化し、階層別にアプローチ方法を変えることが一つに考えられます。診歴・通院歴、年齢などから勧奨対象を層別化し、グループ分けします。そして各グループを対象に最適なメッセージと手法を選定します。つまり、対象者すべてに郵送物を配布すると同時に、ランダムに電話をかけるといった手法ではなく、最適なメッセージを最適な手法で届けるのです。

最もわかりやすい例として、40歳から59歳までの比較的若い層はデジタルに親しんでいると思われるため、SMS・ショートメッセージ勧奨を行うことで気にしてもらいやすくなります。最適な勧奨方法によって受診率の向上を目指すことが可能です。

●特定健診受診者へのインセンティブを検討
特定健診を受診するとポイントを付与し、ポイント数に応じて地域の特定店舗で割引サービスが受けられるといったインセンティブを付与する自治体もあります。特定健診の受診にそこまでメリットを感じない若年層に、特に有効な施策といえます。

●「健診の手引き」の冊子改善
健診の手引きとは、特定健診などの健康診断に関する目的や内容、手順、注意事項などをまとめた手引書で、薄い冊子やチラシ形式で作成・配布することが多い資料です。
この健診の手引きがわかりにくく、見づらいものだと、特定健診への関心も薄れてしまうでしょう。そこでレイアウトやデザインを改善する試みも有効です。

実際、文字量・色覚・視線予測を実施し、見出しの文字サイズを大きくしたり、項目ごとに色分けしたりしてわかりやすくした事例があります。受診方法の明確化や予約などのアクション指示の単純化などを実現します。

●BPOの活用
BPOを利用して、特定健診の受診勧奨をアウトソースすることも有効な手段であり、近年、自治体の活用も進んでいます。
BPOとは「Business Process Outsourcing」の略で、ビジネスプロセスのアウトソーシングを意味しますが、単なる「アウトソーシング」の意味合いだけでなく、対象業務を効率化し、より質の高い業務レベルにまで引き上げ、業務の成果を高めるために利用されています。

受診勧奨の業務経験のあるBPO事業者に委託すれば、自治体職員の負荷を削減できる上に一定の効果が期待できます。

■TOPPANの特定健康診査受診勧奨支援パッケージとは?

TOPPAN BPOでは、自治体さまの業務を幅広く承っていますが、特定健診の受診勧奨における実績も多数有します。その実績と蓄積したノウハウを元に「特定健康診査受診勧奨支援パッケージ」をご提供しております。

●特定健康診査受診勧奨支援パッケージとは
本サービスは、特定健康診査の対象者分析によるグループ分け、勧奨コンテンツの提供、勧奨業務、報告書作成まで一括で支援するものです。

データ受領から分析・グループ化、コンテンツ制作まで汎用化されたパッケージを活用することで短期間での実施が可能です。

●特定健康診査受診勧奨支援パッケージの特徴
特徴は、TOPPAN独自の分析システムによる対象者のグループ化を行った上で、オリジナルの勧奨コンテンツを活用して健診の受診率向上につなげる点です。

・対象者を7つにグループ化
特定健診の検査結果などのデータ分析により対象者を7つにグループ化し、勧奨に適切な対象者を分類します。

・各グループに応じた勧奨コンテンツ
7つのグループごとに対象者特性に応じた、ナッジ理論を活用した勧奨コンテンツをご用意しています。

対象者の特性に応じた「自分事化」させる勧奨コンテンツと各種勧奨方法の提供、実施後の報告書作成まで、一括した業務支援を行い、担当者さまの業務負荷を減らします。

●勧奨方法
勧奨方法は、次の3種類に対応しています。

・通知物
・電話
・SMS・ショートメッセージ

健診受診率の低いグループや、特に注力をしたいグループに応じた勧奨方法の選択、組み合わせにより、最適な勧奨方法を検討し、受診率の向上を目指します。

ご興味のある方は、まずはお気軽にご相談ください。

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2025.06.23