コラム

自治体フロントヤード改革とは?
フロントヤード改革で実現する
自治体DXの推進

自治体で進む「フロントヤード改革」とは、住民が自治体・行政と直接かかわる窓口などの接点を根本的に変えるための取り組みです。市役所などの窓口へ足を運ぶ必要がなく、スマートフォンなどを通じてオンラインで手続きが完了することなどを目指します。
今回の自治体フロントヤード改革とは何か、また取り組むメリット、実施のポイント、すでに進めている自治体の事例をご紹介します。


■自治体フロントヤード改革とは?

フロントヤードとは、自治体と住民との接点を指します。

自治体フロントヤード改革とは、総務省が主導し、2020年に策定された「デジタル・ガバメント実行計画」において自治体が重点的に取り組むべき事項の一つです。自治体DXによる行財政の効率化などを目的とし、オンライン申請や「書かないワンストップ窓口※」などの実現を目指しています。

デジタルツールなどを有効活用しながら、対面とオンラインでの非対面などの対応を適切に組み合わせ、庁舎だけでなく自宅や支所、公民館など住民との接点の多様化と充実化を図ることが目指されています。

同時に、紙ではなくデータによる対応を前提とすることで、住民の利便性向上を図り、職員の業務効率化につなげることも含みます。

※窓口業務からバックヤード業務まで業務改革を行い、保有情報やマイナンバーカードなどのデジタルの力を最大限活用することで、手続きの際に「書かない」、「待たない」、「回らない」を実現する窓口のこと。

●フロントヤード改革が求められる背景

従来から、自治体では窓口業務改革が行われてきましたが、取り組みの不十分さや、自治体ごとの格差が課題でした。今後は、少子高齢化や人口減少が進み、行政資源の制約がさらに進んでいく中、住民のライフスタイルやニーズの多様化に対応していかなければなりません。そこで行政手続きのオンライン化はもちろん、「書かないワンストップ窓口」などを実現する必要性が高まっています。

フロントヤード改革が進めば、企画立案や相談対応などのコア業務への集中が実現し、持続可能な行政サービスの提供体制を確保できるようになります。

■自治体フロントヤード改革に取り組むメリット

自治体が自治体フロントヤード改革に取り組むメリットとして、次のことが挙げられます。

●住民サービスの質向上

フロントヤード改革では、行政手続きの際に申請書や書類を書く必要がなくなり、庁舎に足を運ばずに申請できると共に待ち時間なく、また迷うことなくスムーズかつスピーディーに手続きを完了できることから、住民に利便性向上やストレス低減などのメリットをもたらします。結果的に、住民サービスの質の向上につながるでしょう。

●業務効率化

自治体職員の業務負荷が高まっている中、フロントヤード改革が進むことで、職員の業務効率化につながります。例えばこれまでは住民との接点が窓口や電話、オンラインなど多様化していたため、それぞれのチャネルに対応しなければならず、非効率な面がありました。こうした窓口や申請方法を統合して、さらに効率的なフローを構築することで、より業務効率化につながります。

●少子高齢化への対応

少子高齢化による労働力不足の影響から、自治体職員の人手不足や業務負荷の高まりも深刻な課題です。フロントヤード改革によってバックヤードも含めた業務効率化が進むことで、職員の負担が減れば、メンタル面も良好となり、モチベーションアップにも寄与するでしょう。

●手続きに限らない庁舎の活用促進

従来の庁舎は「住民が窓口に手続きに足を運ぶ場所」のイメージが強く、相談や地域交流、学びのスペースそのものは限られていました。フロントヤード改革が進めば、手続きスペースの縮小が実現し、住民の交流やイベント、学びのスペースが増えることで、地域活性化にもつながるでしょう。

■自治体フロントヤード改革の実施ポイント

自治体が、自治体フロントヤード改革のための取り組みを実施する際のポイントをご紹介します。

●事例をもとに実現できることの検討

取り組むに当たって重要なのは、すでに実施している自治体の先行事例をもとに、実現できることを検討することです。事例は複数集め、それらを参考にして十分に話し合い、どの手法が最適かを決めていきます。

●DX・デジタルツールの検討

フロントヤード改革を実現するには、ツールの導入が必要不可欠です。例えば、窓口で利用するタブレット端末やシステム、オンライン申請用のフォームを制作できるツールなどさまざまなものがあります。最適なものを比較検討して選定することをおすすめします。選定に当たっては、ベンダー各社や業務委託先のアドバイスを取り入れると適切に検討できます。

●官民連携・BPOの利用

フロントヤード改革を強力に進めるためには、ツールの導入と共に、民間企業のサポートを利用するのがおすすめです。官民連携で進める際に、より深いサポートを期待できるのが、BPOです。BPOは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略称であり、企業が特定の業務やビジネスプロセスを専門の外部企業に委託する手法を指します。BPOは業務効率化や業務の質向上などを加味したアウトソーシング手法であることから、BPOを利用することで、委託事業者と二人三脚でフロントヤード改革を効果的に進められると考えられます。

■自治体のフロントヤード改革の事例

自治体フロントヤード改革の具体的な事例を見ていきましょう。本事例は、総務省によってモデル構築のために実施されたプロジェクト事例です。

●山口県 宇部市

山口県宇部市は「先駆けとなる改革に取り組むモデル」として採択されました。国による書かないワンストップ窓口システムである「窓口DXSaaS」やオンライン申請、DXコールセンターの導入などによって実現すると共に、来庁者や申請データ、各システムの操作ログなどを収集してAIによる分析を行って課題を発見し、継続的な業務効率化に取り組んでいます。

●兵庫県 神戸市

兵庫県神戸市は、「データ連携等によるバックヤード業務効率化」を実現しています。国民健康保険など「無収入」を条件とするさまざまな制度がありますが、それぞれ別々の窓口で対応していたため、すべてを市民税の申請窓口に集約しました。各種データをデータ連携基盤上で突合して本人情報確認と審査を自動化する仕組みを作り、審査登録作業の完全自動化を実現しました。電子申請の推進も含めて、年間約660時間の削減につながりました。

●山形県 西川町

山形県西川町は人口1万人未満の小規模自治体ですが電子申請やマイナンバーカードと連携したデジタル郵便による業務効率化、ワンストップ窓口を実現しています。特に高齢者への対応を意識した、住民ではなく職員のほうが移動するワンストップ窓口で、住民の利便性を高める窓口対応を行っている点が特徴的です。

■まとめ

自治体フロントヤード改革は、住民サービスの質向上や自治体の業務効率化などさまざまなメリットがあります。DX推進の一環として、各自治体で取り組まれている中、官民が連携することにより、迅速かつ強力に進めることができます。

官民連携やBPOをご検討の自治体は、ぜひTOPPANにおまかせください。数多くの自治体向けBPO実績を有し、フロントヤード改革のお手伝いをさせていただいています。

お困りのことがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。最適なご提案とご支援をさせていただきます。

2025.04.17