自治体職員不足を
乗り越えるための官民連携
~指宿市における
フロントヤード改革に向けた取り組み
TOPPANは、鹿児島県指宿(いぶすき)市と共同で、自治体の「行かない」「書かない」窓口の同時実現を目指した実証実験を行っております。
今回は、その実証実験の概要などについてご紹介した、2025年1月14日開催のウェビナー「自治体職員不足を乗り越えるための官民連携~TOPPANが取組むフロントヤード改革/バックヤード改革~」のうち、フロントヤード改革についての内容を要約してご紹介します。
オンライン申請や窓口DXに取り組もうとされている自治体は、ぜひご参考になさってください。
■指宿市のこれまでのDXの取り組みと課題
指宿市 総務部デジタル戦略課デジタル政策係 主査 前田伯氏から、今回の取り組みについてご紹介いただきました。

指宿市 総務部
デジタル戦略課 デジタル政策係 主査
前田 伯 氏
鹿児島県指宿市は、薩摩半島の最南端に位置し、豊かな自然に囲まれた人口約3.8万人の街です。温泉、水の恵み、そしてオクラやそらまめの生産量日本一を誇ります。名物の砂蒸し風呂は、温泉熱と砂の重みで心身ともにリフレッシュできます。また、鰹節の名産地としても知られ、その風味豊かな味わいは全国的に親しまれています。
指宿市は総務省の「自治体フロントヤード改革モデルプロジェクト」に採択され、DXの一環として市民からの申請のオンライン化と、窓口手続きについてタブレットを使用する窓口デジタル化を推進しています。

実現に至るまでにはさまざまな課題がありました。指宿市は2022年4月よりDX推進体制構築、ビジョンの策定を順次進め、2023年5月にはDX推進本部を設置、DX推進本部&プロジェクトチームを創設しDX化を進めました。そこで次の3つの課題が見えてきました。
●課題
1.システム導入費等が高コスト・高負荷
2.人的リソース不足で自走しにくい
3.取り組みが短期的かつ局所的に留まってしまう
2023年度事業では窓口DXSaaSを活用し、タブレット窓口システムや出生・転入を1つの窓口で行えるワンストップ窓口にチャレンジしようと試みましたが、財政面とシステム手続き登録が別途必要であり、職員負荷が増してしまったことで保留となっていました。
■「指宿市モデル」によるオンライン申請と窓口のデジタル化
課題解決のために取り組んだのが「指宿市モデル」のコンセプト掲出です。これは「ツールやシステム改修に莫大な予算をかけず、中小規模自治体の職員が自走できる範囲で中長期的に着実に前進できるモデル」です。

同モデルに基づき、オンライン申請拡充と窓口のデジタル化をTOPPANのサポートにより進めました。
●「指宿モデル」によるオンライン申請の拡充
オンライン申請の拡充においては、国の電子申請システム「ぴったりサービス」を活用。このシステムを利用すれば、市民はスマホやPCで行政手続きなどを行うことができる上に、無料で導入できランニングコストも不要です。
自治体で手続きの登録方法が分かりにくい・登録における職員負荷が大きいという課題については、TOPPANによる勉強会の実施、手続き登録の代行で対策することができました。
●「指宿モデル」による窓口のデジタル化
窓口のデジタル化においては、市役所の窓口に設置したタブレットに、TOPPANによる「窓口タブレット申請システム」を導入しました。「ぴったりサービス」のAPIを活用し、「ぴったりサービス」に登録した手続きを窓口でも活用でき、申請されたデータの取得はオンライン申請と同じシステムを利用できることにより、内部事務の職員も業務が効率化します。

■フロントヤード改革による効果と今後の課題
今回のフロントヤード改革による効果は現在、測定中ですが、ワンストップ関連手続きにおいては、氏名、住所、電話番号、生年月日を記入する項目が最大66%(96回→33回)も減少することから、待ち時間や手続き時間の削減が見込まれます。
オンライン申請の拡充により、市役所来庁者が減少することが予測されるため、平均待ち時間の削減も見込まれます。
●今後の課題
今回のフロントヤード改革モデルプロジェクトの実証で、さまざまな課題も見えてきました。
今後、指宿市は、改革前の平均待ち時間や、バックヤードまで見据えた職員の負荷を減らしていく取り組みを進め、住民にも職員にも優しい市役所を目指していきます。
改革プロセスを対外的に発信していくなかで、職員や市民がワクワクしながら変わっていく姿を知ってもらいたい。そんな思いで、公式YouTubeチャンネルで取り組みを発信中です。
■TOPPANの伴走ポイント
今回の指宿市のフロントヤード改革をサポートしたTOPPANの九州事業部BPR推進部 田中洋平が、TOPPANの伴走ポイントについて解説を行いました。

TOPPAN株式会社
九州事業部 BPR推進部
田中 洋平
1.オンライン申請の拡充

住民票・各種証明書と各課の申請手続きは、「ぴったりサービス」を活用し、オンライン決済まで実施できるようにしました。またTOPPANは「ぴったりサービス」の登録方法の勉強会と登録代行によってサポートしました。
●勉強会
オンライン申請の拡充の課題は、登録における分かりにくさと職員負担の大きさです。そのため、そもそも「ぴったりサービスは何か?」から、「何から着手すればいいか?」、設計の方法や登録の方法、次年度の更新作業の方法など年間で5回の勉強会を実施しました。まずは簡単な手続きを自分で登録できるように、そして自分たちで申請をしてみて取得する体験をしてもらうことで、自身の運用方法に落とし込んでいただく流れにし、最終的には自走できることを目標に支援しました。
●登録代行
項目数が多く登録負荷の大きい手続きに関しては、申請フォームの設計・登録作業をTOPPANにて代行しました。私たちは多くの自治体で数百の申請フォームの登録代行の実績があり、住民に分かりやすく、不備などの職員負荷を減らすようなフォームの設計ノウハウがあります。

国のマニュアル通りに作ると縦長の冗長なフォームになるため、TOPPANの申請登録代行のノウハウを活かし、住民の方々が登録しやすく分かりやすいフォーム設計を心がけました。
2.窓口のデジタル化
各課の窓口申請手続きとライフイベントの複数申請は、「ぴったりサービスAPI」を活用し、窓口デジタル化とオンライン申請とのデータを統一化しました。
●「窓口タブレット申請システム」活用とAPIによるデータ統一化
TOPPANが独自に開発した「窓口タブレット申請システム」を活用することで、「ぴったりサービス」に登録された手続きを、窓口でタブレットを使って利用しやすい形に自動変換します。住民の方が窓口でタブレットを使って入力すると、入力データはオンライン申請と同様に、「ぴったりサービス」に蓄積されていく仕組みです。
これにより、申請フォームの登録や更新の作業の二重化を防ぎ、負荷軽減につなげます。「ぴったりサービス」に登録するだけで、オンライン申請と窓口デジタル化が同時に実現できるのがポイントです。
また「ぴったりサービス」のAPIを利用することで、比較的安価にスタートできるのもメリットです。
■まとめ
指宿市とTOPPANによるフロントヤード改革の取り組みをご紹介しました。この取り組みは、他の中小自治体にも応用できると考えています。ぜひご参考になさってください。
TOPPANグループでは、自治体へのご支援施策として、次の3つの柱があります。
・BPO業務代行
・BPR業務分析・改善
・DX・デジタル化推進
お困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
「TOPPAN SOCIAL INNOVATION」には、TOPPAN がご支援させていただいた自治体事例を60件以上掲載しております。ぜひ合わせてご覧ください。
2025.03.10