インタビュー・会談

【対談記事】
工場などでの入退手続き・管理に関する課題を、認証プラットフォームと画期的QRシステムが融合したオフライン顔認証ソリューションで解決!

トヨタグループのデンソーの子会社で、QRコード®・RFIDといった自動認識分野や産業用ロボット・IoTなどのFA分野、そして制御機器分野において多様な製品・サービスを世に送りだすデンソーウェーブ。QRコード®を開発した会社としても知られる同社は、顔認証に関するさまざまな課題を解決する画期的なQRコード®ソリューション「SQRC®顔認証システム」を開発しています。このシステムと、TOPPANエッジが提供する認証プラットフォーム「CloakOne®」を組み合わせることで、工場などの施設における入退管理の課題を解消する新たなソリューション「外部事業者入退システム」が生まれました。

本記事では、株式会社デンソーウェーブで西日本エリアにおけるソリューション事業の営業を担当する営業・CSグループ 営業2部 中部営業1室/3室室長の山口 朋之さんと、TOPPANエッジで「CloakOne®」サービスを展開するITイノベーション本部 セキュアID開発部部長の渡邉 直孝に「外部事業者入退システム」誕生の経緯とソリューションの魅力についてお聞きしました。

TOPPANエッジ株式会社 事業推進統括本部 ITイノベーション本部 セキュアID開発部 部長渡邉 直孝 氏、株式会社デンソーウェーブ 営業・CSグループ 営業2部 中部営業1室/3室 室長 山口 朋之 さん
左から、TOPPANエッジ株式会社 事業推進統括本部 ITイノベーション本部 セキュアID開発部 部長 渡邉 直孝、株式会社デンソーウェーブ 営業・CSグループ 営業2部 中部営業1室/3室 室長 山口 朋之 さん

受付に時間がかかり、セキュリティの担保も必要な入退の悩み

――「外部事業者入退システム」開発の背景として、いま製造業を中心とする企業は、外部事業者の入退時の管理や認証に関してどのような課題を抱えているのかお聞かせください

渡邉:製造業の工場などの施設には、工事やメンテナンスなどで外部事業者が多く出入りします。入退管理は、予約申請などのフロー自体はデジタル化されているものの、現地の受付では社名や個人名を紙に記入し、それを予約と照らし合わせ、身分証明書を目で確認するというアナログ対応がまだ一般的です。ですがこの方法は煩雑ですし、手書きなのでデジタルログとして管理されていないため、例えば火災などの有事が発生したとき逃げ遅れた人がいないか、といったことをリアルタイムに確認するのが難しいです。

山口さん:実際に当社でも、QRコード®による入退門管理を行っているものの、受付ではまだまだアナログ対応が残っており、入構申請の紙に記入してもらったり、運転免許証で本人確認をしたりするため、混雑する時間帯は長時間お待ちいただくこともあります。また、自動車業界では日本自動車工業会が入退時の身分証明や記録の保管を求める厳しいサイバーセキュリティガイドラインを出したこともあって、早急な対策が必須となっている状況です。

従来の顔認証システムで足りない部分とは

――従来の顔認証もそうした課題に有効かと思われますが、何か課題があるのでしょうか?

山口さん:もちろん、顔認証は本人確認を確実かつ迅速に行えるので、有効な手段です。ただ、受け入れ企業側が顔に関するデータを持つ必要があるため、厳重な個人情報保護・管理の仕組みを整備する必要があります。また、顔認証はクラウドに接続するケースが多いのですが、受け入れ企業側のセキュリティポリシーの関係で個人情報を扱う際はネットワークへ接続できない、あるいはパブリッククラウドのサービスに個人情報を載せられない、といった話を聞きます

渡邉:工事業者が出入りする場合など、作業に必要な資格を確認しなければならないケースもあります。従来の顔認証ではそこまでの確認を行えず、やはり資格証明書などを別途チェックする必要があるため、結局、受付で時間がかかってしまいます。

「外部事業者入退システム」が提案する本人確認のDX

――伺ってきた課題を解決するソリューションとして、今回、「外部事業者入退システム」がリリースされました。まず、この「外部事業者入退システム」はどういったソリューションなのか教えてください

渡邉:顔認証に用いる写真の撮影から、セキュアなQRコード®の生成、そのQRコード®のスマートフォンでの表示までを一貫して実現し、厳格で迅速な本人確認を行えるようにするものです。当社の「CloakOne®」はIDデータを統合管理して認証に活用できるクラウドベースのオフィスDXプラットフォームで、スマホによる自撮りで顔写真を収集できる「CloakOne® Smart」、IDデータを統合管理する「CloakOne® Management」、スマホに認証用QRコードを表示する「CloakOne® Mobile」をはじめ5つのサービスから成り立っています。今回の「外部事業者入退システム」は上の3つのサービスを用い、デンソーウェーブさんの「SQRC®顔認証システム」を組み合わせて実現するソリューションです。

山口さん:「SQRC®顔認証システム」は当社が開発したSQRC®というQRコードで顔認証を行う仕組みです。SQRC®内に、一般的なリーダーでも読み取れる公開データと、専用リーダーでしか読み取れない顔の特徴を暗号化した非公開データを格納しています。認証を行う際は、非公開データに含まれた本人だけが持っている顔の情報と顔写真を1対1で照合するので、セキュアかつスピーディーな認証が可能です。しかもネットワーク接続を必要とせず、オフライン環境でも厳格な認証を実現できます。SQRC®は顔の情報が組み込まれているため、企業側が個人情報を管理する必要はありません。加えて、他人の顔写真ではSQRC®内の非公開データと照合できないので、不正利用は不可能です。

「外部事業者入退システム」活用の3ステップ
「外部事業者入退システム」活用の3ステップ

――両社のシステムを組み合わせることでどのような価値を実現できるのですか?

渡邉:例えば「CloakOne® Smart」は、自撮りした顔写真の自動品質チェック機能があり、品質の高い顔写真を手軽に撮影・収集できるところが高く評価されています。また「CloakOne® Mobile」も、顔認証に用いるQRコード®だけでなくIDカードも併せてスマホに表示できる便利なサービスです。ただ、「CloakOne®」はクラウドベースのサービスですので、顔認証時の正解となる顔のデータはクラウド上に保管し、顔写真の照合もクラウドを介して行います。そのため、セキュリティポリシーなどの関係でクラウドに個人情報を上げたり、照合のため外部に接続したりできないケースでは利用できません。その点、「SQRC®顔認証システム」はQRコード®内に顔の特徴データが入っているので、双方を組み合わせることでオフラインでも認証を完結できますし、かつ高品質の顔写真をSQRC化することで認証の精度も高くなります。SQRC®の表示はスマホだけでなく、紙のカードにも印刷できますし、SQRC®をコピーしたり、印刷したカードを落としてしまったりしても悪用できないことは、山口さんがおっしゃった通りです。

山口さん:当社としても、SQRC®の技術自体はすでに確立しており、顔認証でSQRC®を活用する事例も以前からありました。ですが、顔写真を撮り、そこからQRコード®を生成し、かつ提示するというSQRC®活用のためのプロセスが別途必要になり、それぞれにシステム構築や委託などを考えなければなりませんでした。今回の「外部事業者入退システム」では、スマホでの自撮りからSQRC®の生成、管理、そして表示・認証までを「CloakOne®」という一つのプラットフォーム上でワンストップに行えるようになりました。セキュリティ対策を手軽に、効率良く実現できるという点は、製造業をはじめ入退管理・認証に課題を感じているさまざまな企業にご評価いただけるのではないかと考えています。

株式会社デンソーウェーブ 営業・CSグループ 営業2部 中部営業1室/3室室長 山口 朋之さん
株式会社デンソーウェーブ 営業・CSグループ 営業2部 中部営業1室/3室室長 山口 朋之さん

――顧客に提供する価値という点はもちろん、両社にとってもメリットがあったということですね

山口さん:はい。TOPPANエッジさんにはTOPPANグループの膨大な顧客基盤と販路がありますし、当社にもデンソー、そしてトヨタグループのお客様がいます。技術の共有とソリューションの共創により、ビジネスのさらなる広がりを期待できる点も、両社にとって大きなメリットだと考えています。もともと両社は以前からRFIDや食堂決済などさまざまな事業で協業していましたが、当社がQRコード®を開発して2024年で30周年を迎えたことを受け、これを機に新たなソリューションを世に送りだそうということで、今回の共同開発に至りました。

渡邉:実はあるとき山口さんが、「SQRC®顔認証システム」と「CloakOne®」を連携させれば工場などの入退管理はもちろん、例えばイベント会場での入場チェック時の本人確認をはじめ、ビジネスとしての可能性が無限に広がるという絵を描いてくれました。それを見て、私としてもその世界を見てみたいと思ったのもきっかけです。

TOPPANエッジ株式会社 事業推進統括本部 ITイノベーション本部 セキュアID開発部 部長 渡邉 直孝
TOPPANエッジ株式会社 事業推進統括本部 ITイノベーション本部 セキュアID開発部 部長 渡邉 直孝

手続き簡素化による時間削減とセキュリティ向上の効果

――実証実験の成果やユースケースを教えてください

渡邉:自動車業界のある工場で行った実証実験では、入構時の本人確認が0.5秒から長くても1~2秒で済み、受付の時間と手間を大幅削減できました。それだけでなく、資格情報も含めて確実に本人であるというチェックを厳格に行えるため、セキュリティや有事の際の確認、またデジタルログの保管という観点でも効果が見られました。

山口さん:ユースケースとしては、ここまでお話ししてきた工場の入退管理や、危険性あるいは機密性の高いエリアへ入る際の本人確認がやはりメインになります。管理する部門としては、従来、受付時にIDカードを渡し、退構時にそれを回収する手間がありましたが、SQRC®の顔認証ならそれが不要ですし、SQRC®が掲載された紙や画面をそのまま持ち帰っても問題無いので、業務が大きく効率化されます。

渡邉:まだリリースから間もないですが、すでに工場や化学プラントを持つ企業からの引き合いがあります

ソリューションの幅をさらに拡大していく未来図

――今後の展望をお聞かせください

渡邉:まずは普及させることで、2026年までに50カ所の施設での導入を目指しています。また、「CloakOne®」そのものはプラットフォームサービスですので、デンソーウェーブさんが持っている食堂の自動精算システムや来訪者管理システムなどさまざまなサービスとも連携し、ソリューションとしての幅をさらに拡大していきたいと考えています。

山口さん:イベント会場での入場チェックの話が出ましたが、ほかにも、医療機関など活用できるところはさまざま考えられます。今後は入退管理・認証以外の付加価値も追求し、お客様のビジネス成長をお手伝いしながら、両社のビジネスの夢も広げていきたいですね。


まとめ

「外部事業者入退システム」は、今後あらゆる施設で活用されていき、デンソーウェーブとTOPPANエッジの両社が連携を強化することで、新たな場面で使用されるような管理・認証ソリューションも生み出されていくことでしょう。これからも、両社が協業して課題解決に取り組み、提案から設計・開発・導入・運用をまでしっかりとサポートします。
本人確認・認証にまつわる課題をお持ちでしたら、一度両社に相談してみてはいかがでしょうか。

TOPPANエッジ株式会社 事業推進統括本部 ITイノベーション本部 セキュアID開発部 部長渡邉 直孝 氏、株式会社デンソーウェーブ 営業・CSグループ 営業2部 中部営業1室/3室 室長 山口 朋之 氏

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※CloakOneは、TOPPANエッジ株式会社の登録商標です。
※QRコード、SQRCは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
※所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。

2025.03.28