コラム

マンション引き渡し時の作業負荷を軽減!
住宅事業者様向け取扱説明書管理サービス「IEMANE」で住宅設備の取扱説明書を
デジタル化

住友不動産株式会社(以下、住友不動産)では、東京都心部を中心とした「ビル賃貸事業」をはじめ、全国主要都市を対象としたマンション分譲などの「不動産販売事業」、リフォームや注文住宅などの請負を中心とした「ハウジング事業」、さらにマンション・戸建て・土地を仲介する「不動産流通事業」を主とした4つの事業セグメントを展開。


住友不動産は、コロナ禍を契機としてさまざまな顧客接点のデジタル化(DX)を推進し、ITを活用した営業や物件案内、不動産売買契約の電子化などを活用することで、非対面型による新たな販売手法を推進している。一方建設業界では労働力不足と高齢化による働き方改革の必要性、建設コスト高騰がますます顕在化しており、デベロッパーの立場からも早急に何らかの対策を講じなければならない状況だ。そこで今回、DXの一環として作業効率化や情報のデータ管理を目的に取り組んだのが、分譲マンション入居時の取扱説明書のデジタル化だ。その実現のために同社はTOPPANの住宅事業者様向け取扱説明書管理サービス「IEMANE(イエマネ)」を採用。その導入背景や経緯、また、導入効果について、住宅分譲事業本部 本部長補佐 猶原 博氏、同本部 企画管理部 コンプライアンス係長 濱田 正美氏にお話を伺った。

顧客接点のデジタル化推進と建設会社の作業負荷軽減が課題

接客から契約・お引渡まで顧客接点のデジタル化を推進

住友不動産では、従来から、業務負荷軽減やコスト抑制、情報管理などを目的に積極的に不動産取引におけるDXを進めてきた。これをさらにもう一段階大きく踏み出す契機となったのがコロナ禍だった。

住友不動産株式会社
住宅分譲事業本部
猶原 博氏

「コロナ禍によって、我々が所属する住宅分譲部門はお客さまと直接接点を持つことが難しくなりました。そのような状況下で『いかにお客さまとの接点を減らさず、供給・成約に結び付けていくか』という観点でDXを推進し、お客さまの多様な環境に合わせて、リモートでも接客できる仕組みを取り入れ、オンライン上で営業活動を積極的に推進しています」と、猶原氏はDXの取り組みについて説明した。

顧客接点のデジタル化は接客のみにとどまらない。顧客の利便性向上や安心感の提供と、自社の業務効率化の双方に貢献するよう、さまざまなプロセスや接点を対象にDXを進めている。

住友不動産株式会社
住宅分譲事業本部
濱田 正美氏

「モデルルームにお越しいただいて直接お部屋をご覧いただくことはもちろんありますが、マンションをご購入いただくまでのさまざまなフェーズで、お客様のニーズに合わせたリモート対応ができるようDXを進めています。例えば物件についてはWEB動画でご案内、売買契約も電子化を採用するなど、非対面でも契約、さらにはお引渡しまで対応できる環境を整えました」と、濱田氏は顧客接点デジタル化の現状についてこのように説明した。

取扱説明書の引き渡し作業が建設会社の大きな負担に

建設業界は現在、大きな波に直面している。周知のとおり、同業界では労働力不足や高齢化が深刻な問題となっており、材料費や人件費の上昇に伴い建設費が高騰し、その影響で大規模開発の計画が白紙になるといったニュースも耳にする。また、こうした状況はマンションなどの分譲住宅販売にも影響を及ぼすことが避けられない気配だ。さらに、建設業界ではゼネコンなど大手企業を中心に週休二日制の採用が進んでおり、これが従来からの人手不足に拍車をかける形となっている。

「昨年の春頃から建設業界でも働き方改革が推進されており、作業工数を減らして効率化しなければ事前に計画した工期にも影響するようなことも起こりかねない状況です」と、濱田氏は工事を請け負う建設会社側の状況を説明した。

物件の引き渡し時に建設会社側の大きな負担となっているのが、住宅設備の取扱説明書の準備、引き渡し作業だ。一口に取扱説明書と言っても部屋ごとに設備や機器が異なる。各部屋の設備を確認しながら個別に紙の取扱説明書をファイリングしていく必要がある。大規模物件となるとそれが何百戸、さらに千戸以上に上る場合もあるので気が遠くなる話だ。もちろんそれらのファイルは各部屋に配らなくてはならない。竣工前の特に多忙な時期でもあるので想像以上に負担が大きい。

「IEMANE」導入で取扱説明書の引き渡し作業をデジタル化

デジタル化により建設会社の作業負荷軽減を目指す

上記のような物件引き渡し時の作業負担軽減策として、「取扱説明書引き渡しのデジタル化」に着手した。住友不動産が進めている顧客接点のデジタル化の流れともうまく合致し、相乗効果も期待できる。
「我々がデジタル化を検討しようとしていたところに、ちょうど当社内の品質管理部門からも『建設会社の作業手間を削減する方法はないものか』と打診がありました。建設会社も課題を感じているのであれば、タイミング良くデジタル化を進めることができるのではないかと判断し、建設会社にも改めてヒアリングしてシステム導入を進めることになりました」と、猶原氏はデジタル化を決定した際の経緯を振り返った。

顧客に伴走するTOPPANの姿勢とサービス継続性を評価

そのようなタイミングでTOPPANからご紹介したのが、今回ご採用いただいた「IEMANE」だ。
「他社を含めて類似サービスが幾つかありますが、これらサービスのメリットは我々が供給する住宅設備類だけでなく、お客様が個別に購入する家電なども同じシステム内で管理できるいう点です。」

「住宅設備の取扱説明書を閲覧する頻度はさほど高くないと思いますが、日常購入する家電を同システム内に追加していけるため、アプリ活用性が高まります。」

「また、TOPPAN様が開発~運用・サポート対応するシステムであるため当社としての負担も軽減でき、システム自体も環境に合わせてバージョンパップされていくことなど、クラウドサービスの利点を最大限に活かせるのではないかと考えたわけです」と、濱田氏はクラウドサービスを採用するに至った経緯をこう説明した。

もちろん外部サービスを活用する上での懸念材料が無いわけではない。

「最も気にかけたのが情報の取り扱いについてです。特に当社はお客さま情報などの個人情報を取り扱いますので、当社の事業スタンスをどれだけ理解してそれに向き合い、情報の取り扱いに注意を払っていただけるのか、サービス選定についてはその点を重視しました」と、猶原氏はサービス選定時のポイントを述べた。

もう1点重要なのが「継続性」だ。そのサービスが継続的に提供されるかどうかという点にも十分に留意しなければならない。重要な業務の一部を担うことになるので、もしも提供者の一方的の事情などでサービスが終了するようなことになれば大きなリスクを負う。これらの観点から検討した結果、採択いただいたのが「IEMANE」だ。

「TOPPAN様は、当社の事業スタンスや個人情報の取り扱いに関して我々の立場に立って真剣に考え、しっかりと当社に向き合って対応していただけました。また、『IEMANE』をサイドビジネス的な扱いではなく、本業の1つとして相当に力を入れて取り組んでおられたため、継続性に関しても問題ないと判断できました」と、猶原氏は「IEMANE」採択理由を説明した。

また、クラウドサービスを提供する事業者であっても開発は外部に委託している場合がある。しかしそれでは対応のレスポンスなどが遅くなってしまうことが多い。「IEMANE」はTOPPANが自社開発しており、住友不動産様からのご要望に対しても柔軟に対応できることも評価された。

「IEMANE」導入で引き渡し時の工数負荷が大幅軽減

新規物件では「IEMANE」を標準採用

「IEMANE」導入は2024年9月から。導入後は従来行っていた取扱説明書の個別ファイリング・配布が不要となり、入居者へはアプリやWeb上で取扱説明書データを閲覧するための二次元コードなどお渡しすることで、建設会社の作業負荷を軽減することに寄与できたのではないか。もちろん引き渡しのための準備は必要だ。しかし、メーカーから取扱説明書をデータで取り寄せ、設備名がわかるようにしてTOPPANへ納品するだけとなった。そのデータをTOPPANが「IEMANE」へ登録する。入居者は、渡されたコードをアプリなどから読み取るだけで、自室設備の取扱説明書がスマートフォンやPCからいつでも見ることができる。

2024年9月の導入以降、住友不動産が事業主である新規物件で「IEMANE」を標準採用。現時点で7物件導入済。今後についても順次導入を予定している。

「『IEMANE』には、当社のアフターサービス部門がWeb上から設備の情報を確認できるというメリットもあります。以前は住宅のグレード毎に設備情報を取りまとめていたのですが、それぞれ部屋毎に設備が異なる場合が多く、設備情報の確認作業が煩雑になっていました。導入後は部屋ごとに直接情報を確認できるのでかなり便利になっていると思います」と、猶原氏は住友不動産側のメリットも強調した。

このように「IEMANE」は、施工するゼネコンなどの建設会社、入居者、そして供給する不動産会社の三者それぞれにメリットがあるのも大きな特徴だ。

導入準備の段階では、建設会社との調整がポイントの1つになった。「IEMANE」導入に際して自分たちが何をしなければならないか、作業負担はどの程度なのか、一方で、TOPPAN側でどこまで対応してもらえるのかを非常に気にされていたようだ。

「サービス導入の結果、現場負担の軽減につながっているので建設会社からは高い評価を頂いています。加えて、特にTOPPAN様のサポート体制が良かった、という声も頂いています。導入時の説明も非常に丁寧だという印象を持ちましたので、そのような姿勢が当社や建設会社の高評価につながっていると思います」と、濱田氏はTOPPANへの評価を述べた。

今後は顧客ロイヤルティ向上など目的としたDXを検討

従来から進めていた顧客接点のデジタル化は、「IEMANE」導入によってさらに一歩前進。物件の検討から購入、引き渡しまでの多くのプロセスをペーパレスで対応する基盤が整いつつある。今後の課題は購入後の顧客接点強化だという。

「これからはグループ全体で顧客ロイヤルティ育成や再顧客化などをテーマにDXを進めようとしています。まだ具体的なことを申し上げられる段階ではありませんが、例えば再購入や再利用していただくために必要な情報の収集やマーケティング活動などをデジタル化していくようなイメージです。今後住宅ストック事業の強化のためにいかにお客様へアプローチするかが課題としてあります。「IEMANE」導入により取扱説明書引き渡しのペーパレス化は実現しましたが、さらに「IEMANE」が持つお客様データやメッセージ配信機能などを活用していくことが、上記の課題解決の切り口になるのではないかと考えています」と、今後の方向性について猶原氏は語った。

最後に

『IEMANE』は、システムフレンドリーな設計で、家電・住宅設備をデジタルで安心&安全&便利に管理し、取扱説明書の引き渡し業務負荷軽減や入居者さまとのコミュニケーションツールとしてご活用いただけます。
是非、お気軽にお問い合わせください。

2025.08.05

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