コラム

地域通貨とは?
仕組みや地域経済への効果や
メリットを解説

近年、特定の地域限定で活用できる地域通貨に注目が高まっています。導入する自治体も多く見られるようになり、拡大をつづけていますので、今後さらに地域経済活性化の一助となると考えられます。今回は、地域通貨の概要や仕組み、メリット、導入事例などをご紹介します。


地域通貨とは

まず地域通貨の概要や歴史、法定通貨との違いを見ていきましょう。

●地域通貨とは

地域通貨とは、特定の地域やコミュニティの中などの限定的な範囲でのみ有効な通貨です。一般的に地域通貨は国の通常の通貨と並行して使用され、地域内での特定の用途に制限されることもあります。地域通貨のサービスは紙媒体やカードという物理形態での提供に加え、近年では、スマートフォンを活用したデジタル形式で提供されることが多くなっています。また、地域通貨の利用やチャージに対するポイント還元、獲得したポイントの利用などの実施も進んでいます。
すでに日本では様々な自治体が導入しており、地域振興や地域密着型の事業をサポートすることで地域コミュニティの強化を図り、更に地元資源の有効活用や環境に配慮した取引を促進する手段を提供することによる持続可能な消費を促進することが可能です。
また、通貨の発行者を地元の組織や自治体が担うことで地元コミュニティのニーズに合わせた運用が可能となります。

●地域通貨の歴史

地域通貨は古くから地域振興券や期間限定の商品券といった紙媒体としては存在していましたが、近年、デジタル化が進んで利便性高く活用できるようになってからは、導入と浸透が加速しています。地域通貨の大きな課題の一つに、法定通貨とは異なり、強制通用力がないことが挙げられます。
しかし海外で発展し始めていたデジタル地域通貨の仕組みに倣い、1990年代後半からは日本でも本格的な取り組みが始まるようになり、発展していきました。2010年代になると、スマートフォンによる電子マネー決済の浸透が進み、地域通貨にも活用されていくようになりました。
地域通貨が地域やコミュニティに浸透し、地域経済を活性化するに至るまでには、持続可能な仕組みづくりが不可欠といえます。

●法定通貨との違い

地域通貨は、私たちが日常的に使う法定通貨とは大きな違いがあります。それは、地域通貨は法定通貨と比べて法的な通用力がないことです。
法定通貨は、国や中央銀行によって独占的に発行されることから法律に基づく強制通用力を持っています。一方、地域通貨は特定地域やコミュニティに限定して自治体、企業、NPO法人、信用組合、商店街などが独自に発行する通貨です。通用に強制力が働かないことから、信用の裏付けや必要性、利用のメリットなどが別途必要になってきます。

地域通貨の仕組み

地域通貨は、地域を管轄する地方自治体などの運営母体が構築するシステムとして成り立っています。
例えば、商店街の活性化を目的として地域通貨を導入する場合、各商店街の店主や組織においてその有用性を理解してもらうところからスタートする必要があります。また、強制通用力がないため、利用者がその地域通貨を利用したいと思えるような動機付けがされる仕組みをつくることで、地域通貨の普及を図ります。そのため地域通貨のシステムはできるだけシンプルで、メリット部分が理解しやすいように設計することが望ましいです。

従来は紙媒体等での発行が主流でしたが、デジタル化の進行に伴い、電子マネーや電子ポイントなどが活用されます。この場合は、オンライン決済プラットフォームを構築して、より管理がしやすく利用者も活用しやすい仕組みづくりを行います。このようなデジタルな仕組みはよりコストを抑えることができ、持続的に地域通貨を発行し運用するための重要な要素となります。

実際に利用者に付与された地域通貨は、提携している店舗等で利用され、地域内の経済活性化の一助となります。また、地域内の店舗利用により地域コミュニティも活性化され、経済活動だけでなく環境活動や慈善活動等の促進にもつながります。

財源は、主に経済対策や地方創生にかかわる交付金・補助金、ふるさと納税などが利用されます。近年は、地方銀行や信用組合といった金融機関を活用するケースも出てきており多様化しています。

●地域通貨の利用例

用途に応じて、例えば次のような利用例があります。

例1.地域経済活性化
地域住民や訪れた観光客が自治体によって発行された地域通貨を購入し、地域の参加店舗で決済手段として利用します。

例2.健康福祉・環境貢献の施策
自治体が提供する地域ボランティアやエコ活動、健康増進などの機会に地域住民が参加することで、ポイントなどの地域通貨を配布して還元します。地域住民はそのポイントを貯めることによって地域店舗で利用できたり、何らかのサービスを受けられたりします。

地域にオンライン決済プラットフォームを導入するメリット

デジタル地域通貨を利用する際には、オンライン決済プラットフォームを導入する必要があります。地域にとって導入にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

●地域活性化

地域通貨は、地域内に限定して利用できる通貨であるため、地域内決済を促進することから、地域経済活性化が期待できます。住民だけでなく観光客も含めた人々の、地域の店舗や施設での利用促進につながり、地域の企業の経済活性化にも寄与します。使用期限を設けることもできるため、流通スピードを高めることが可能です。
オンライン決済プラットフォームであれば、手持ちのスマートフォンを利用して手軽に決済できることから、より浸透しやすいと考えられます。
地方自治体はもちろん、地元企業や銀行、信用組合などの金融機関、NPO法人などあらゆる関係者のメリットとなるため、連携して行われるケースが多くあります。

●地域コミュニティの構築

地域通貨は、地域コミュニティの構築にも寄与します。地域内の店舗やサービスの利用、エコ活動や健康増進活動が進むことで、人との交流が促進されます。自然と地域コミュニティが形成されることで、地域住民や事業者などのつながりが深くなり、経済だけでない地域活性化や環境保護活動の促進などのメリットが生まれます。
オンライン決済プラットフォームは、地域通貨の浸透を促進することから、よりコミュニティ構築のスピードが加速すると考えられます。

●データ活用の促進

オンライン決済プラットフォーム上には、随時利用履歴が蓄積されていくことから、データ活用が促進されます。
自治体にとっては施策の根拠としての活用、店舗や企業にとってはマーケティングへの活用などデータ活用の可能性は広がっています。

デジタル地域通貨の活用事例

実際に、地域通貨にオンライン決済プラットフォームを導入し、地域活性化などに活用している事例を2つご紹介します。

●高知県香美市「kamica」

高知県香美市は、地域通貨「kamica(カミカ)」にオンライン決済プラットフォームを採用しました。
kamicaは、香美市内の加盟店事業者で利用できる地域電子マネーで、香美市民は全員に配布された「kamicaカード」を利用して決済できます。香美市民以外は、スマートフォンに「kamicaアプリ」をインストールすることで利用できます。
2023年2月からは、自治体予算や国の助成金等に頼らずにkamicaを継続して運用できる仕組みの構築を目指し、資源ごみリサイクルを行うとkamicaにポイント還元を行う実証実験も実施しています。

●長野県岡谷商工会議所「Okaya Pay」

長野県岡谷商工会議所は、発行・運営するプリペイド機能付きポイントカード「Okaya Pay」にオンライン決済プラットフォームを採用し、2020年4月より提供しています。
参加している店舗でキャッシュレス決済が可能であると同時に、自治体ポイントの付与など行政と連携した住民サービスとしての機能も備えています。
マイナポイントと紐づけることでOkaya Payのチャージに対してマイナポイントが付与される仕組みも設けています。地域のキャッシュレス化を通じた地域の消費活性化や観光客誘致などを目指しています。

まとめ

地域通貨は、現在、自治体などで導入活用が進んでいます。今後もオンライン決済プラットフォームの活用によりデジタル化が促進され、さらに浸透していくことで、地域活性化などの可能性は広がっています。

TOPPANデジタルが提供する自治体キャッシュレス決済プラットフォーム「地域Pay®」は、地域における決済サービスをまとめてデジタル化し、1枚のカードやスマートフォンアプリだけで、複数の決済サービスが利用可能となることから、地域通貨のデジタル化に寄与します。地域通貨の導入やデジタル化をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

2024.03.19

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