コラム

防火構造とは|耐火構造との違いや外壁材の種類、メリット・デメリットを徹底解決

建築物を設計する際にキーワードとなるのが「防火構造」です。建物の階数や延床面積によって、外壁や軒天に防火性のある材料や構造を採用することが求められます。

今回は、環境配慮型建材を製造する“TOPPAN”が、防火構造の概略から耐火構造との違い、「延焼のおそれのある部分」との関係性を詳しく解説します。防火構造における外壁・軒裏の仕上げ材それぞれのメリット・デメリットも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


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<目次>

■ 防火構造とは|耐火・準耐火構造との違い・「延焼のおそれのある部分」との関係
■ 防耐火構造の種類
■ 防耐火構造の外壁・軒裏仕上げ材|種類とメリット・デメリット
■ 防耐火構造に対応できるTOPPANの環境配慮型外装材「フォルティナ」
■ まとめ


■ 防火構造とは|耐火・準耐火構造との違い・「延焼のおそれのある部分」との関係

防火構造とは、火災発生時に周囲からの延焼によって外壁や軒裏が影響を受けない防火性能を持つ構造を指します。ここでいう防火性能の技術基準は、以下のとおりです。

・耐力壁である外壁は、建物の周囲で発生した火災(火熱)によって「加熱開始後30分間」構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

・耐力壁以外の外壁と軒裏は、建物の周囲で発生した火災(火熱)によって「加熱開始後30分間」屋内に面する壁面などの温度が燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。

【ポイント】
防火構造は、外壁・軒裏のうち「延焼のおそれのある部分」に対して、一定の防火性能基準を超えていることが条件です。「延焼のおそれのある部分」とは、建築基準法第2条第6項で定義される範囲を指します。

防火構造と混同されがちなのが、耐火構造と準耐火構造です。耐火・準耐火構造は、建物における主要構造部と呼ばれる壁(間仕切壁・外壁)や柱、床、梁、屋根、階段について、それぞれ規定以上の時間で構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないための耐火性能を持つ構造を指します。

【耐火】

構造部の種類

最上階/最上階から数えた階数が2以上4以内の階

最上階から数えた階数が5以上9以内の階

最上階から数えた階数が10以上14以内の階

最上階から数えた階数が15以上19以内の階

最上階から数えた階数が20以上の階

間仕切壁(耐力壁)

1時間

1.5時間

2時間

2時間

2時間

外壁(耐力壁)

1時間

1.5時間

2時間

2時間

2時間

1時間

1.5時間

2時間

2.5時間

3時間

1時間

1.5時間

2時間

2時間

2時間

1時間

1.5時間

2時間

2.5時間

3時間

屋根

30分

30分

30分

30分

30分

階段

30分

30分

30分

30分

30分

【準耐火】

構造部の種類

全ての階数

間仕切壁(耐力壁)

45分間

外壁(耐力壁)

45分間

45分間

45分間

45分間

屋根

30分

階段

30分

つまり、火災への抵抗力のみを比較すると、最も厳しい基準であるのが「耐火構造」で、それに次いで「準耐火構造」、最も緩い基準が適用されるのが「防火構造」という訳です。

耐火・準耐火構造と防火構造の違いは火災へ抵抗できる時間の長さだけではありません。耐火・準耐火構造は、防火構造では基準に含まれない「遮熱性」「遮炎性」「非損傷性」も審査されるため、より火災への抵抗力が担保されます。

ここで気になるのが防火・耐火・準耐火構造の使い分けです。どの構造を採用しなくてはいけないかは、建物の階数・延床面積・用途・地域区分によって異なります。

防火地域※

階数が3以上もしくは延床面積が100m2を超える建築物は「耐火建築物=耐火構造の建物」か「準耐火建築物=準耐火構造の建物」

準防火地域※

地階を除く階数が4以上もしくは延床面積が1,500m2を超える建築物は「耐火建築物」

地階を除く階数が4以上もしくは延べ面積が500m2を超え1,500m2以下の建築物は「耐火建築物相当」か「準耐火建築物」

地階を除く階数が3である建築物は「耐火建築物」「準耐火建築物」

法22条指定区域※

屋根を準不燃性能、外壁で延焼のおそれのある部分を準防火性能のある構造とする

その他の区域

延べ面積が1,000m2を超える木造建築物等については、外壁や軒裏で延焼のおそれのある部分を「防火構造」、屋根を「準不燃性能のある構造」

建築物が異なる地域にまたがる場合

建築物が防火地域・準防火地域や指定外の区域をまたがる場合は、建物全体に防火地域もしくは準防火地域の規定を適用(厳しい方の規定が適用される)

※防火地域:建築基準法第61条で定める「市街地における火災の延焼を防止するための地域」
※準防火地域:建築基準法第61条で定める「市街地における火災の延焼を防ぐために、防火地域に次いで厳しい規定が設けられる地域」
※法22条指定区域:建築基準法第22・23条で定める「市街地における火災の延焼を防止するために、特定行政庁が指定する区域」
※主要構造部:建築基準法第2条第5項で定義される「壁、柱、床、梁、屋根、階段」

【ポイント】
防火構造は、主に防火地域の平屋建てと準防火地域の平屋建て・2階建ての建物における外壁・軒裏に採用され、告示によって定められている仕様か、国土交通大臣から個別認定を受けた仕様にする必要があります。

◎◎

■ 防耐火構造の種類

防火構造は告示※で定められている仕様と、それ以外で国土交通大臣より認可されて個別の認定番号を取得した仕様に分かれます。個別認定を受けた仕様は、建築基準法で定められた技術基準に則っているかが審査のポイントです。

告示で定められている構造

建設省告示第千三百五十九号「防火構造の構造方法を定める件」に明記されている主な防火構造は以下の通りです。

・準耐火構造(耐力壁である外壁のみ)(参考:建設省告示第1358号「準耐火構造の構造方法を定める件」)

・屋内側において、間柱及び下地を不燃材料で造り、「厚さ9.5mm以上の石膏ボードを張ったもの」「厚さ75mm以上のグラスウール又はロックウールを充填した上に厚さ4mm以上の合板・構造用パネルパーティクルボード・木材を張ったもの」

・屋外側において、間柱及び下地を不燃材料で造り、「塗厚さが15mm以上の鉄網モルタル」「木毛セメント板又は石膏ボードの上に厚さ10mm以上モルタル又は漆喰を塗ったもの」「木毛セメント板の上にモルタル又は漆喰を塗り、その上に金属板を張ったもの」「モルタルの上にタイルを張ったもので、その厚さの合計が25mm以上のもの」「厚さが25mm以上のロックウール保温板の上に金属板を張ったもの」など、防火被覆が設けられた構造

これらの仕様で重要なキーワードとなるのが「不燃材料」です。不燃材料とは、加熱開始後20分間「燃焼しない・防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じない・避難上有害な煙又はガスを発生しない」要件をクリアする材料を指します。

個別認定番号を取得した構造(大臣認定仕様)

告示で認定されている仕様以外にも、防火構造で用いることができる仕様もあります。それが、国土交通大臣より個別認定を取得した仕様です。

建築基準法に基づき、国土交通大臣が防火性能の基準を満たした建築材料や構造に識別番号(耐力壁:PC***BE /非耐力壁:PC***NE)が付与されます。

■ 防耐火構造の外壁・軒裏仕上げ材|種類とメリット・デメリット

防火・耐火構造の外壁や軒裏仕上げ材として採用される外装材は、主に以下の7種類です。それぞれ特徴が異なりますので、違いをチェックしておきましょう。

鉄筋コンクリート+塗装

鉄筋コンクリートは構造躯体がそのまま外装材になります。表面保護(コンクリートの風化や鉄筋の腐食防止)のために、塗装などのコーティングが必須です。

メリット

  • ・塗装色のレパートリーが豊富

デメリット

  • ・工期がかかる
  • ・構造上、高層建築物には対応不可(限界階数は12階までで、一般的には8階程度までに採用)
  • ・建物重量が大きくなり、耐震面で不利になる可能性がある
  • ・塗膜・コンクリートの劣化によって雨水が内部まで侵入すると、鉄筋の腐食によって爆裂などの深刻な問題に発展する可能性がある

ALC(軽量気泡コンクリート)パネル

ALC(軽量気泡コンクリート)パネルは、主にS(鉄骨)造・RC(鉄筋コンクリート)造の外装仕上げに用いられます。防火・準耐火・耐火構造によって、採用可能なパネルの最低厚さが異なるので注意が必要です。

また、製品や施工方法によって防耐火構造の認定内容が異なる可能性があります。

メリット

  • ・コンクリートの1/4程度の重量しかないため、建物荷重が小さい
  • ・遮音性がある

デメリット

  • ・表面塗装が必要
  • ・パネルの継ぎ目にコーキングを打つ必要がある
  • ・吸水性があるため、塗膜やコーキングの劣化部分から雨水が侵入すると、凍害や鉄骨の劣化など深刻な問題に発展する可能性がある

石膏ボード+木材(羽目板・木質サイディング)

近年、住宅・非住宅問わず、板張り外壁を採用したデザインがトレンドですが、石膏ボードなどの不燃材料と組み合わせた認定工法を用いる必要があります。

メリット

  • ・個性的でナチュラルな外観デザインに仕上がる

デメリット

  • ・不燃木材を使用する必要がある場合も多く、直接雨が当たる場所では不燃薬剤が表面に滲み出て結晶化する“白華現象”が起こる可能性がある
  • ・不燃木材ではない木材を採用する場合は、燃えしろ設計(板材を分厚くして、表面が燃えても炭化して、建物への延焼を防ぐ手法)を採用しなくてはいけない可能性がある
  • ・天然木材は無塗装だとシロアリ・腐朽・カビなどのリスクが高く、表面保護塗装が必須

窯業系サイディング

窯業系サイディングとは、セメントと繊維を混ぜ合わせて成形した外装パネル材で、主に住宅から中規模建築物に採用されます。

メリット

  • ・耐火性・耐久性が高い
  • ・色柄のレパートリーが豊富

デメリット

  • ・木目・石目調などのリアリティはあまりない
  • ・定期的な塗装メンテナンスが必要(放置するとひび割れや劣化が進行)
  • ・コーキング目地の劣化に要注意
  • ・重量があるため、建物への負荷がやや大きい

金属板(ガルバリウム)

ガルバリウムとは、主にアルミニウム・亜鉛・シリコンなどの合金を指し、外壁や屋根などの仕上げ材として主に住宅や小規模建築物の外装に採用されています。

メリット

  • ・サビに強く軽量
  • ・色柄のレパートリーが豊富
  • ・焼き付け塗装で、メンテナンスサイクルが長い

デメリット

  • ・木目・石目調などのリアリティはあまりない
  • ・キズがつくと、そこから腐食する可能性がある
  • ・塩害・排気ガス・落ち葉などの影響で電食を引き起こす可能性がある

金属板(アルミニウム)

ガルバリウム製の金属板よりもさらに高耐久な材料として、建物の用途・規模を問わず多くの事例で採用されているのがアルミニウム製金属板です。サイディングやスパンドレルに加工され、ビルなどの外装材に使用されています。

メリット

  • ・アルミニウムよりもさらにサビに強く軽量
  • ・色柄のレパートリーが豊富
  • ・化粧シート貼りのタイプは、原則としてメンテナンスフリー

デメリット

  • ・異種金属接触腐食のリスクがある(アルミニウムが露出している部分のみ)

【ポイント】
TOPPANフォルティナは、化粧シート+アルミニウムの不燃意匠材で、腐食などのリスクを最小限に抑えた内外装材です。内装仕様・準外装仕様に加えて、耐候性に特化した外装R仕様もお選びいただけますので、外壁や軒裏の仕上げ材をお探しの方は、ぜひカタログをご覧ください。

◎◎

■ 防耐火構造に対応できるTOPPANの環境配慮型外装材「フォルティナ」

TOPPANフォルティナは、高意匠・高性能で環境負荷の少ない(対塩ビ系材料比)オレフィン系化粧シートとアルミニウムを組み合わせた内外装不燃アルミ意匠材です。1900年の創業以来培った印刷技術を活かし、トレンドをとらえたリアリティのある木目・石目を再現しています。

形状のラインナップは、ルーバー・スパンドレル・手すり・リブパネル(フォルティナレッジ)と多岐に渡るため、様々な規模・用途の建築物へご採用いただいている人気製品です。

【TOPPAN内外装材の特徴】
・長年培った高度な印刷技術によって木目と質感をリアルに再現
・製造時のCO2排出量が少なく燃焼時にも有毒ガスが出ないオレフィンシートによる環境配慮性の高さ
・高耐久・長寿命(特に耐候性の高い外装仕様も)
・メンテナンスフリー(定期的な塗装は不要)

■ まとめ

防火構造とは、外壁や軒裏に防火・耐火性の高い仕上げ材を用いて火災発生時の被害を最小限に抑えるための規定です。中規模以上の建築物には、防火構造よりもさらに高い防火・耐火性が求められる、耐火構造・準耐火構造の基準が適用されます。

TOPPANでは、高耐久で不燃材料としての認定を取得した環境配慮型内外装建材を開発・製造しております。「環境に配慮した建築」や「人に長く愛される建物」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.09.25

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