コラム

環境に配慮したエコ建材・内外装材|定義と具体例、採用するメリット・デメリットを徹底解説

各業界がSDGs達成に向けて取り組む中、2010年代から建築の設計デザインにおいても変化が現れてきました。それが、「エコ建材」の採用です。

今回は、建築材料が自然環境にもたらす問題や環境に配慮した「エコな建材・内外装材」の定義、具体例について詳しく解説します。

「エコな建材・内外装材」を採用するメリット・デメリットや、1900年創業のTOPPANが自信を持って提案するおすすめ内外装材も紹介しますので、ぜひ最後までごらんください。


◎◎

<目次>

■ 建築材料がもたらす環境問題
■ エコな建材・内外装材とは|エコマテリアルの定義と必要な理由
■ エコな建材・内外装材の具体例
■ エコな建材・内外装材を採用するメリット
■ エコな建材・内外装材を採用するデメリット・注意点
■ TOPPANの「高耐久&環境に配慮した」オレフィン系建築内外装材
■ まとめ


■ 建築材料がもたらす環境問題

建築・建設業界は他業種よりも多くのエネルギーを消費し、多くの二酸化炭素を排出します。建築材料についても例外ではなく、多方面で地球環境に悪影響を及ぼしている点は否定できません。

違法伐採(乱伐)による森林破壊

計画的な森林伐採は、森林の循環※を生み、木々の若返りによる二酸化炭素吸収(固定)量増加につながります。
※森林の循環:森林で「植林・間伐・伐採・利用・再植林」を繰り返すことによって老齢樹からの若返りを促すサイクル。

そのため、日本だけではなく世界的に木材利用の動きが活発化しています。

しかし、熱帯地域における主要木材生産国の50%~90%、世界全体で流通する木材の15%~30%が、違法伐採によるものとされており、無計画な森林伐採が進んでいるのが現状です。

無秩序な森林伐採を続けると再植林しても成長が追いつかず、相対的な森林面積の減少につながり、二酸化炭素吸収量減少が懸念されています。

大量のCO2消費

建物は「資材の生産・運搬・施工・建物使用・解体・廃棄」と全ての段階において、多量の二酸化炭素を排出します。

産業部門におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量3億5,200万tのうち、およそ2%が建設業に由来するとも言われているほどです。このデータはあくまでも建設(新築)時のみのものであり、建物使用や解体における二酸化炭素排出量を加えると、環境に与える影響は決して小さくありません。

環境省の調べでは、建設までの二酸化炭素排出量(エンボディドカーボン)と建物使用における二酸化炭素排出量(オペレーショナルカーボン)を合わせると、日本における総排出量の約1/3を占めるとされています。

大量のエネルギー消費

建築資材の「生産・運搬・施工・建物使用・解体・廃棄」段階において懸念されているのは、二酸化炭素排出量だけではありません。どの段階においても多量のエネルギーを消費します。

特に建物使用における消費エネルギー量は増加を続けており、業務部門・家庭部門のエネルギー消費量は全エネルギー消費量の30.4%を占めるほどです。

建物の断熱性・省エネ性アップによって建物使用におけるエネルギー消費量は減少傾向にあるものの、建築資材の生産・運搬・施工における省エネ化は今後も改善の余地があるとされています。

■ エコな建材・内外装材とは|エコマテリアルの定義と必要な理由

消費型社会によって文明や技術は確実に進化し私たちの生活は豊かになりましたが、エネルギー消費と廃棄物の増加、天然資源の枯渇など、様々な環境問題をもたらしました。日本の建築においては長年にわたりスクラップ&ビルド(=フロー型建築)が常態化していたのも事実です。

しかし、環境配慮の観点から、循環型社会(=ストック型建築)への移行が進んでいます。そこで近年注目されているのが「エコマテリアル」です。

エコマテリアルについて、国土交通省では以下のように定義しています。
「資源採取から、製造、使用、廃棄までのライフサイクル全般を通じて、人に優しく、環境負荷を最小にし、特性・機能を最大とする材料」

具体的には、6つの条件を複数クリアした材料を指します。

製造過程におけるエネルギー消費・CO2排出量が少ない

LCA・LCCO2が少ない建築材料は、環境負荷の軽減につながります。

【LCA】:ライフサイクル・アセスメントの略で、製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取・製造生産・流通・消費・使用・廃棄・再利用)における環境負荷を評価する指標

【LCCO2】:ライフサイクルCO2の略で、製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取・製造生産・流通・消費・使用・廃棄・再利用)において発生する総二酸化炭素排出量

3R(リサイクル・リユース・リデュース)が可能

3Rとは、「リサイクル・リユース・リデュース」をまとめて表す標語です。3Rが可能な建築材料は、廃棄物処分や資源採取量を減らすことができます。

【リサイクル】:廃棄物等を原材料やエネルギー源として再利用すること
【リユース】:使用済製品やその一部を繰り返し再使用すること
【リデュース】:製造生産時の資源量を削減し、廃棄物の発生抑制に取り組み、製品の耐久性を高めて寿命を延ばすこと

3Rへの取り組みに加えて注目されているのが、サーキュラーエコノミーの導入です。サーキュラーエコノミーとはこれまでの「製造・使用・廃棄」の流れとは異なり、「製造・使用・廃棄・再利用」という循環経済を生み出す取り組みを指します。

建築・建設にかかわる企業がサーキュラーエコノミーを意識することにより、建材の3Rが進むと期待されています。

廃棄時に有毒物質を出さない

建築材料の3Rに取り組んでも、最終廃棄物をゼロにすることはできません。そのため、多くの建材メーカーでは、廃棄時に有害物質を出さないための取り組みが進められています。

これまで、建築現場などから出る廃棄物には、以下のような有害物質が含まれていました。

【有毒物質の種類】

【影響】

ダイオキシン

難分解性の有毒な環境汚染物質で、塩素系物質を焼却する時に発生する

窒素酸化物

化石燃料を焼却する時に発生し、大気汚染の原因となる

塩化水素

ポリ塩化ビニル(PVC)など塩素を含むプラスチックを焼却する時に発生し、大気汚染の原因となる

石綿 (アスベスト)

かつては断熱材や浴槽、不燃材料などの建築資材に多く含まれており、解体時に空気中に放出されると人体に悪影響を及ぼす

水銀

蛍光灯や塗料に含まれる重金属で、水質や土壌汚染を引き起こす

鉛・セレン・カドミウム

太陽光パネルなどに含まれており、これらが雨によって溶け出し土壌や水源を汚染すると、人体に悪影響を及ぼす

これら特定有害産業廃棄物の処理は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)によって厳しく規制されていますが、最終処分・埋め立ての問題は依然として解決されていません。

そのため、有害物質を含まない建築材料へ切り替える動きがメーカーや設計者によって進められています。

高耐久で長寿命

建築資材の寿命が延びると、廃棄・再施工(メンテナンス・リフォーム)のサイクルが長くなり、結果的に省エネにつながります。

設計の際に10年で交換や補修が必要な材料ではなく、20年間メンテナンスフリーの材料を選定すると、建物のライフサイクルにおいてかなりの材料・エネルギー消費を抑えられることが可能です。

施工が効率的で省エネ

効率的に短時間で広い面積を施工できる建築材料は、建築機械や現場の空調・照明にかかるエネルギー消費量を削減できます。

また、昨今問題視されている建設業界における2025年問題※の解決につながる点もポイントです。

※2025年問題:団塊の世代である技術・知識を持った作業者が一斉に退職し、深刻な人材不足になる恐れがある問題

建物利用者及び周辺の人の健康を害さない

エコな建材・内外装材とは、自然環境に配慮したものだけではありません。建物利用者や周辺の人の健康を害さないことも重要なポイントです。

今では2003年に設立されたFスター認定※により安全性が保証されている建築材料が大半で、人体へ悪影響を及ぼすアスベストは2012年から全面使用禁止となっています。

しかし、塩ビ系床材などに含まれる可塑剤※である有機リン酸エステル(OPE)などの法的規制は未だ検討段階です。

※Fスター認定:JIS(日本工業規格)・JAS(日本農林規格)にてホルムアルデヒドなどの放散速度量に応じて製品の安全性を等級分けする制度
※可塑剤:柔軟性を与えるための添加物質

◎◎

■ エコな建材・内外装材の具体例

「実際にどんな建材・内外装材がエコなのか知りたい」という方のために、具体例を紹介します。

木材・木質系建材

木材利用は、森林の循環を生み出し、木々が若返り成長の過程で多くの二酸化炭素を吸収します。

ただし、輸入材は運搬の過程で多くのエネルギーを消費し二酸化炭素を排出するため、多くの森林資源をもつ日本では、国産材や地産材(地域材)を利用する事例は少なくありません。

漆喰・珪藻土など

漆喰は、日本で採取できる鉱物資源である石灰を主原料とした塗り壁材で、珪藻土は水中に生息する植物プランクトンの殻が堆積した土から作られる塗り壁材です。

どちらも自然由来であることから、エコ建材として古くから多くの現場に採用されています。

ただし、塗り壁材は施工手間がかかり短期間でのメンテナンスが必要になるため、中規模以上の建築物や公共施設へ採用することが難しい点には注意が必要です。

各種リサイクル建材

近年、建築廃材を再資源化して作るリサイクル建材が増えています。

【パーティクルボード】:廃木材を粉砕して作るパネル材
【再生砕石】:廃コンクリートを粉砕して作る路盤材
【ガラスブロック】:廃蛍光灯やブラウン管を溶解し、再度固めて作る意匠材
【人工木材・リサイクルウッド】:廃木材と廃プラスチックを混ぜて作る
【リサイクル金属】:窓サッシ枠など不要な金属を溶解して再度固めて建築資材の原料にする
【再生骨材・透水性ブロック・再生加熱アスファルト】:建設廃棄物や産業副産物、下水汚泥などを原料として作る

これら建築廃材のリサイクル技術発展により、日本の建設廃棄物リサイクル率は1990年代の約60%から、2018年の約97%へ大幅に上昇しています。

低VOC塗料

低VOC塗料は、大気汚染の抑制や健康被害の軽減につながり、主に水性塗料やハイソリッド塗料などが該当します。VOCとは、揮発性有機化合物 (Volatile Organic Compounds) の略称で、塗料や接着剤に含まれる溶剤もそのうちの一種です。

VOCが気化すると、大気中に漂って大気汚染の原因になります。そのため、近年はVOCの排出量が少ない、もしくは、ほとんど含まない塗料を採用する事例が大半です。

オレフィン系仕上げ材

オレフィンとは、エチレン・プロピレン・ブタジエンなどの高分子化合物を総称する非塩ビ素材の総称です。燃焼しても水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に分解され、大気汚染をもたらす塩化水素ガスやダイオキシンなどの有毒ガスをほとんど排出しません。

また、一般的な内装材に多く含まれる塩ビ素材より製造過程の二酸化炭素排出量が少ない点もポイントです。

【ポイント】
TOPPANのオレフィンシートを用いた内外装材は、製造時の二酸化炭素排出量を最小限に抑え、原料に塩素を含まないため燃焼時に塩化水素などの有害ガスが発生しません。

また、大気汚染物質の発生要因とされている可塑剤を含まないため、環境に配慮した建築仕上げ材として多くの事例にご採用いただいています。

■ エコな建材・内外装材を採用するメリット

エコな建材・内外装材を採用するメリットは、環境に配慮できる点だけではありません。

・環境配慮性によって建物(プロジェクト)の存在価値を高められる
・競合他社との差別化につながる
・SDGsやCSRへの取り組みを通じて、企業(プロジェクト)のブランディングにつながる
・ESG投資※を受けられる可能性が高まる

※ESG投資:環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字をとった投資用語で、企業の株式などに投資する際にキャッシュフローや利益率などの財務情報だけではなくESGへの貢献度などを考慮する投資方式。世界全体のESG資産保有残高は2016年から2018年の間で1.3倍に増加し、注目されている。

このように、エコな建材・内外装材の採用によって、建物が長く使用されて企業の発展につながる可能性が高まるのです。

■ エコな建材・内外装材を採用するデメリット・注意点

エコな建材・内外装材を採用する際には、事前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。

価格が高い

環境に配慮した建築材料は価格が高いものが多く、採用の足かせとなってしまうケースは少なくありません。

そのため、環境に配慮した設計デザインをコンセプトとする場合は、エコ建材がもたらす環境面での効果と価格、耐用年数(寿命)、メンテナンスコストなどのバランスを見極めることが重要です。

グリーンウォッシュの可能性に注意が必要

グリーンウォッシュとは、自社の製品・サービス・取り組みを「環境に優しい」と誇張して宣伝し、消費者に誤解を与える行為を指します。

近年、グリーンウォッシュによって消費者や投資家が適切に製品・サービスを選択できず、結果的に環境問題が悪化してしまう事例が増えています。

海外に続いて日本でもグリーンウォッシュを景品表示法違反(優良誤認)として取り締まる動きが進んでいますが、未だ完璧ではありません。

そのため、エコな建築材料を選ぶ際は、カタログなどに書かれたキャッチコピーだけで判断せず、「なぜ環境に優しいのか」の裏付けまで確認することが重要です。

全てが高耐久・メンテナンスフリーとは限らない

エコ建材は必ずしも高耐久・メンテナンスフリーとは限りません。例えば、天然木材は適切な施工環境でないとすぐに腐朽したり蟻害・カビの影響を受けたりするため、こまめな保護塗装が欠かせません。

そのため、建築材料を選ぶ際には、耐久性(寿命)とメンテナンスの周期・方法・費用を事前に確認しましょう。

【ポイント】
TOPPANの内外装用不燃意匠材「フォルティナ」(外装R仕様)は、長期にわたる屋外での使用に耐えうる外装用化粧シートを表面材に用いており、SWOM※にて10,000時間の耐候性試験をクリアしています。

そのため直射日光や雨が当たる過酷な環境でも、長期間メンテナンスフリーで表面のクラックや絵柄の退色・変色を抑制することが可能です。

※SWOM:促進耐候性試験を意味し、屋外の環境条件を模倣して、製品の耐候性を評価するための試験方法。

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■ TOPPANの「高耐久&環境に配慮した」オレフィン系建築内外装材

TOPPANは1900年の創業以来、SDGs実現に向けた社会的課題の解決に取り組み、高耐久で環境配慮型の建築内外装材を開発製造しております。

フォルティナ

フォルティナは、高意匠・高性能で環境負荷の少ない(対塩ビ系材料比)オレフィン系化粧シートとアルミニウムを組み合わせた内外装不燃アルミ意匠材です。最先端の印刷技術によって、自然素材が持つ風合いを可能な限り再現しています。

形状のラインナップは、ルーバー・スパンドレル・手すり・リブパネル(フォルティナレッジ)と多岐に渡るため、様々な規模・用途の建築物へご採用いただいている人気製品です。

ローバル

ローバルは、「デザイン・環境配慮・ 抗ウイルス&抗菌」の3つの特徴を備えた内外装不燃化粧パネルです。

48種類もの色柄ラインナップとスタンダードの長方形以外に矢羽形・五角形・三角形・風車形などの異形貼りを組み合わせることによって、多彩なデザインを表現できます。

TOPPANマテリアルウッド

TOPPANマテリアルウッドは、廃木材と廃プラスチックから作ったアップサイクルなリサイクル建材です。耐候性が高いので、ウッドデッキやベンチの材料としてご採用いただけます。

また、押出成形品であるため、天然木では難しい複雑な断面形状や自由な長さ(最大長さ4,000mmまで)を実現できる点もポイントです。

天然木の欠点であった節やとげ、ささくれが無いので、ムラのない安定した品質をお約束いたします。

■ まとめ

環境に配慮したエコな建材・内外装材は、資材製造・建築施工・建物使用・解体などの各段階において、消費エネルギー量と二酸化炭素排出量を削減できます。

地球環境に寄り添うだけではなく、SDGs実現に向けた取り組みとして、建物や企業の価値を高められる点もメリットです。

TOPPANでは、環境に配慮しデザイン性を豊かにする内外装建材を開発・製造しております。「環境に配慮した建築」や「人に長く愛される建物」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.09.17

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