コラム

ルーバー建築のもたらす建物への“持続可能な効果”とは|設計デザインのステップと注意点

近年、建築物のファサードのアクセントや日差しの気になる場所へ採用されているのが「ルーバー」です。ルーバーはこれまで住宅の窓辺へ設置される事例が一般的でしたが、屋内の快適性・省エネ性を向上させる目的で、非住宅建築物・中大規模建築物のプランへも多く取り入れられています。

そこで今回は「ルーバー建築」のメリットや採用事例、設計プランのポイントについて詳しく解説します。環境配慮型建築を目指す方におすすめの製品も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。


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<目次>

■ ルーバー建築とは|設計へ採用するメリット
■ ルーバー建築には建物の“持続可能性”を高める効果も
■ 企業におけるルーバー建築の導入事例
■ ルーバー建築のポイント|設計ステップと注意点
■ TOPPANの環境配慮型「木目調アルミルーバー材」
■ まとめ


■ ルーバー建築とは|設計へ採用するメリット

ルーバーとは羽板(はいた)と呼ばれる細長い板材を、一定の間隔を空けて縦又は横に並列させる建築部材を指し、「ルーバー建築」は、外壁・天井・庇などにルーバーを部分的もしくは全面的に取り入れた建築です。

窓などの開口部やバルコニー、ベランダの前に設置することで、外部からの視線や日射を遮断する役割を果たします。

近年は、単に視線や日射を遮るためだけではなく、デザイン的な観点からファサード(正面デザイン)へ取り入れる事例も少なくありません。

では、ここで改めて建築へルーバーを取り入れるメリットを具体的に紹介します。

・外部からの視線や日差しを完全に遮断せず、軽減しながら適度に取り込める
・ガラスやカーテンウォールなどを飛来物、ホコリ・土ぼこりから守れる(防汚性・安全性・防犯性能向上の効果も)
・角度のついているガラリ形状のルーバーは、より日射遮蔽効果が高く、窓辺の温度上昇や空調効率の低下、紫外線による内外装材劣化を防ぐ(高層建築物や周囲に空地のある建築物は、周囲建物の影に入らず、長時間日差しに晒されるケースが多いため特に効果的)
・窓やガラスカーテンウォール、バルコニーの前に設置すると、周囲の騒音や空調設備の稼働音が屋内に伝わるのを軽減できる
・ルーバーを外観デザインへ取り入れると、無個性な建物でも個性とデザイン性をプラスできる
・木目調ルーバーは無機質な印象にナチュラルで柔らかい印象をプラスできる
・ビルやテナントの外壁や庇、天井へ取り入れると、連なるラインによって遠近感を強調できる
・アルミ製ルーバーは軽量で施工性が高く、放熱・雨のよる影響・汚れに強いため、メンテナンスにかかる手間やコストを抑えられる(錆びにくい)

特に日射熱や紫外線の遮蔽効果は近年注目されており、外壁・庇に採用してルーバーの向きによって夏の暑い日差しや室温が上がりやすい西日をうまくシャットアウトしたり、逆に冬には日射熱を取り込んで暖房負荷を軽減したりなど、ルーバーによって空調による消費エネルギーを削減する建築プランも増えています。

■ ルーバー建築には建物の“持続可能性”を高める効果も

ルーバーが建築へもたらすメリットの中でも、近年その重要性が高まっているのが「持続可能性」です。今や建築プロジェクトにとってSDGsへの貢献は必須ポイントと言っても過言ではありません。

では、具体的にルーバーと持続可能性の関係性を紹介します。

シンボリックなデザイン

ルーバーを効果的にファサードへ取り入れることで、外観デザインが周囲に与える印象が変わり、街の“シンボル”となります。シンボリックな建物は、地域利用者から親しまれ愛される可能性が高まります。

ただし、地域を象徴する建物を長期間維持するためには、メンテナンス性や耐候性を踏まえた材料選定が欠かせません。

室内環境の快適性向上

ルーバーによる日射遮蔽効果は、窓辺の暑さを軽減します。

また、日射を軽減しながらも窓を開ければ自然風を取り入れられる点もポイントです。機械換気に加えて自然換気を取り入れると、建物利用者のリフレッシュ効果を得られることもわかっています。

そして、近年では太陽光がもたらす健康性・快適性・作業効率性向上や、夜間のスムーズな入眠効果が立証されており、実際に太陽光を再現した太陽光LEDを採用するオフィスが増えているほどです。

そのため、快適な室内空間は日差しを完全に遮るのではなく、暑さの原因を取り除きながら適度に取り入れる方法が主流です。

環境保全への貢献

日射遮蔽による空調効率アップはルーバーの大きなメリットですが、ポイントは、季節・時間帯によっては日射熱を取り込めるという点です。

例えば、ルーバーを庇や窓の前に設置する際、方角・位置を考慮すると室温が上がっていない朝や太陽高度の低い冬場だけ太陽光を室内へ取り入れることも可能となります。

このようなパッシブデザインを取り入れた建物は近年増えており、SDGs・脱炭素の観点からも注目されています。

※パッシブデザイン:太陽光・太陽熱や、自然風、地熱などの自然エネルギーを季節に応じて遮断・採用して省エネルギーと室内の快適な環境の両方を実現する設計手法

ルーバーは太陽光を完全に遮蔽せず、設計の工夫次第で時間帯によっては自然光を取り入れて照明による消費エネルギーを削減できるため、昼光利用と明るさセンサーによる照明制御を組み合わせてより省エネを実現する事例も少なくありません。

特に事務所部門のエネルギー消費量は増加傾向にあるため、ビルの空調・照明省エネ化は、まだまだ化石燃料に依存している日本において温室効果ガス削減に大きく貢献できます。

経済的効果

ルーバーによってもたらされる建物の省エネ化は、電気代削減につながります。特にビルなどの大規模建築物や工場など特別高圧電力・高圧電力を使用している建物にとって、エネルギーコストの削減は大きなメリットと言えるでしょう。

また、自社建物の省エネ化は近年増えているGX投資やESG投資のチャンスを得られる可能性も大いに期待できます。

※GX投資:GXはグリーントランスフォーメーションの略称で、化石燃料依存からの脱却と自然エネルギー活用への移行に向けた取り組み全般を指す。GXに関する活動に対して政府や資本家が企業などへ投資することをGX投資と呼ぶ。

※ESG投資: 企業などの利益だけを評価せず、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=自主管理や自主統制)への取り組みも踏まえて評価する投資手法

企業イメージの向上

企業にとって自社ビルやオフィス、店舗はまさに“看板”です。そのため、建物の与えるイメージは企業イメージを左右すると言っても過言ではありません。

建物利用者と地球環境どちらにも配慮した建物デザインは、SDGs達成に貢献でき、CSRとしても重要な存在です。

※CSR: Corporate Social Responsibilityの略称で、日本語では「企業の社会的責任」を意味する。近年は、企業が社会や自然環境へ配慮しながら利益追求とは別の社会的責任を果たしているかが評価される。

そのため、近年は持続可能性をコンセプトとしたオフィスビルや店舗は珍しくありません。

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■ 企業におけるルーバー建築の導入事例

近年、建物利用者の快適性や省エネ性アップ、環境問題解決に向けた貢献を目的に、ルーバー建築の事例が増えています。

その中からTOPPAN製品の導入事例を紹介します。

外装(外壁・庇・天井)

こちらの事例は、シンプルな形状の工場にルーバーでナチュラルなデザインとオリジナリティをプラスした事例です。

無機質な印象になりがちな工場の外観も、色の異なる木目調アルミルーバーをランダムに並べることによって、シンプルながらも見た人の記憶に残る外観に仕上がりました。

こちらの事例は、ファサードへダークブラウンの木目調ルーバーを採用した事例です。シックなカラーで統一しているものの、ルーバーの太さ・幅・長さに変化をつけることでインパクトのあるデザインにまとまっています。

こちらの事例は、ベランダフェンスとルーバーを兼ねた事例です。落下防止手すりの必要な範囲から上下にルーバーを延長することで、室内の目隠し効果と、適度な日射遮蔽効果も備えています。

また、全面を一色のルーバーで統一することで、まとまりがありシンボリックな外観に仕上がりました。

内装(天井・壁・間仕切り)

こちらは、天井・下がり壁・円形カウンターの上部に同色のルーバーを採用した事例です。ルーバーのラインがシンプルモダンな印象を、明るい色の木目が爽やかさと温かみのある印象をプラスします。

こちらは、天井から壁へと流れるようにルーバーを設置した事例です。内装へダークブラウンを広範囲にわたって採用すると、重く圧迫感のある雰囲気になりがちですが、ルーバーでしたら落ち着きがありながらも軽やかな印象に仕上がります。

こちらは吹き抜け空間に長尺のルーバーを採用した事例です。ルーバーはストリンガーの形状を工夫すれば、カーテンウォールなどのパネル材よりもコストを抑えて自由な曲面を表現できます。

こちらの事例のように長尺のルーバーを用いる場合は、木材のように反りやねじれが発生しないアルミルーバーがおすすめです。

■ ルーバー建築のポイント|設計ステップと注意点

ルーバー建築は、企画構想やプランニングの段階において抑えるべきポイントや注意点があります。

STEP①コンセプトの検討

ルーバーをプランのどこへ採用するかを検討する前に、まずは建物のコンセプトを明確にしましょう。

ルーバーをデザイン的なツールとして採用するのか、省エネなど環境配慮を目的として採用するのかによって、適切なサイズや設置場所は異なります。

近年は、デザインコンセプトだけではなく建物の持続可能性や環境配慮に向けたコンセプトも重要視されており、プロジェクトのメインコンセプトにもなり得ます。

STEP②平面計画・デザインとの関係性

ルーバーを外装仕上げ材として使用する場合も、平面計画との関係性が重要になります。

外装へルーバーを採用する場合は、採光・通風や日射遮蔽の必要性、空間用途、開口部の方角を総合的に踏まえてプランを検討しましょう。

デザインアイテムとしてルーバーを使う場合は、内外装問わず、ルーバー材のカラー・長さ・厚さ・幅で印象が変わるため、数パターンでシミュレーションすることをおすすめします。

STEP③関連法規の確認

ルーバーと関係性のある法規は主に以下の通りです。

【採光面積】
建築基準法及び建築施行令では居室に最低必要な有効採光面積を定めており、面積を算出する際は採光面積(窓などの開口部)や天窓などの採光補正係数、隣地境界線との距離などの要素に加えて、開口率も考慮されます。

ルーバーを窓の前に設置する場合、ルーバー材の幅や設置間隔によって開口率が異なるため、事前にチェックしましょう。

【防火規定】
建設場所が建築基準法第22条で定める地域(通称:法22条区域)もしくは、防火地域・準防火地域に該当する場合や、建物が特殊建築物に該当する場合は、「延焼の恐れのある部分」を耐火構造・準耐火構造・防火構造・準防火構造にしなくてはいけません。

耐火構造・準耐火構造・防火構造・準防火構造にする場合は、外壁や庇の仕上げ材、構造体に不燃材・準不燃材・難燃材の認定を受けたいずれかの材料を選定する必要があります。

また、特殊建築物や大規模な建築物の内装(天井・壁)も内装制限(建築基準法第35条2項)によって不燃材・準不燃材・難燃材の使用が義務付けられています。

そのため、ルーバーを内外装材として採用する際は、必ず国土交通大臣の認定を受けた製品を選びましょう。

※特殊建築物:不特定多数の人が利用する公共性が高い建築物(建築基準法第2条1項の2)

STEP④メンテナンス・維持管理の検討

建物の規模が大きくなり公共性が高くなるほど、材料の耐久性やメンテナンス方法が選定において重要なポイントになります。

ルーバーは複雑な形状ゆえに清掃・メンテナンスに手間がかかるため、窓やガラスカーテンウォールの前にルーバーを取り付ける場合は、ルーバーとの間にガラス清掃やメンテナンスのための隙間を設けることも重要です。

材料選定の際には耐用年数とメンテナンスサイクルについても確認しましょう。木製ルーバーは外装へ取り入れるといくら防虫・防腐剤を注入した材料でも5〜10年程度で塗装などのメンテナンスが必要です。短期間で腐朽やカビが発生している事例も少なくありません。

対してアルミルーバーは20〜30年ほどメンテナンスフリーで、アルミ基材が見えるほどのキズがつかない限り再塗装は不要です。また、木材よりも紫外線や雨による影響を抑えて長期間美しい状態を保つことができます。

STEP⑤ルーバー材の選定

特殊建築物の内外装へ不燃木材や不燃突板化粧板仕上げの木質ルーバーを採用する事例もありますが、以下の点には注意が必要です。

・不燃木材は経年によって白華現象が発生する
・突板化粧板は外装に使用できないものがほとんど
・温度や湿度の変化によって変形するリスクがある(反り・ねじれ・伸縮など)
・樹種によっては重量があり施工性や運搬性が低下する
・樹種によってはコストがかかり、同品質でまとまった量の材料を入手しにくい可能性がある
・定期的な表面保護塗装が必要

※白華現象:木材に注入した不燃剤が表面に浮き出て結晶化する現象

対して、アルミルーバーは軽量で品質安定性が高く、長尺材でも変形しにくい点がメリットです。ただし、メタリックなルーバー材はカラーレパートリーが限られます。

【ポイント】
TOPPANのアルミルーバーは、アルミニウム基材に木目調の外装用シートやオレフィンシートを接着しており、耐久性と意匠性の両方を兼ね備えた人気製品です。

内装仕様・準外装仕様・外装F仕様に加えて、さらに耐候性の高い外装R仕様がございますので、ぜひ詳細は製品ページをご確認ください。

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■ TOPPANの環境配慮型「木目調アルミルーバー材」

TOPPANは、環境配慮とデザイン性を兼ね備えた内外装用不燃アルミ意匠材・フォルティナを製造しております。

印刷会社として培った技術を活かし、リアルで多彩な木目のラインナップを取り扱っており、弊社製品は高いデザイン性が求められる事例にも多数採用されている製品です。

【FORTINA(フォルティナ)の製品ラインナップ】
・ルーバー
・フラットパネル
・スパンドレル
・リブパネル(フォルティナレッジ)

【FORTINA(フォルティナ)ルーバーの特長】
・最新の印刷技術によって再現したリアルな木目と質感
・工場製造による高い品質安定性
・フラットパネルやスパンドレルとのトータルコーディネイトが可能
・ストリンガータイプとストリンガー不要の直付けタイプの選択が可能
・角材・円柱・ガラリなど多彩な断面形状(ストリンガータイプ43種・直付けタイプ26種)
・専用オプション部材によってシンプルで多彩な納まりに対応可能
・トレンドを押さえた厳選された20種類以上の木目ラインナップ(内装用は80種類以上)
・低汚染なオレフィンシートによる環境配慮性(準外装・内装用のみ)
・耐候性をアップさせ屋外環境でもシート表面のクラック・各層の密着低下・絵柄の退色や変色を長期間抑えられる外装R仕様

【ポイント】
TOPPANでは、意匠性だけではなく施工性・耐候性の高い環境配慮型建材を多数開発・製造しております。設計におけるデザイン・納まり・環境配慮に関するご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。

■ まとめ

ルーバー建築は、意匠性・快適性、そして環境配慮性を兼ね備えたトレンドデザインです。建物のSDGs貢献性は、企業の価値やブランドイメージを向上させ、今後のビジネスチャンスを増やす上で欠かせない要素と言えます。

TOPPANでは、施工性・デザイン性の高い環境配慮型内外装用建材を開発・製造しております。「人に長く愛される建物」や「環境に配慮した建築」、「街のシンボルになる建築」の材料選定でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

2025.04.18

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