海を救う世界的な合意|国際プラスチック条約が描く規制の全容と対応策は
地球規模のプラスチック汚染対策の切り札が「国際プラスチック条約」です。策定に向けた国際交渉は最終段階に入り、プラスチックの生産から廃棄に至るライフサイクル全体を包括的に規制する可能性があります。
この新たな国際的なルールは、グローバルに事業を展開する企業の製品開発やサプライチェーン管理に大きな影響を及ぼすことが必至です。そのため、自社への影響や対策の検討が重要となります。
本稿では、条約の最新動向と主要論点を整理し、日本企業が今後直面しうる課題と、その対応策のポイントを分かりやすく解説します。
国際的プラスチック規制の歴史的背景
プラスチック汚染問題の深刻化と国際認識の高まり
「プラスチック汚染問題の深刻化と国際認識の高まり」は、20世紀半ばからのプラスチック生産量の急激な増加、それに伴う廃棄物による環境汚染が地球規模で深刻化したことから生じました。現在、年間1900~2300万トンものプラスチックが河川や海洋に流出しており、これは生態系だけでなく人間の健康や経済活動にも深刻な影響を及ぼす複合的な危機として国際的に認識されています。(*1)(*2)(*3)
【参考】世界のプラスチック生産量(1950~2021年)
                      プラスチック汚染については、1970年代から国際的な問題意識が高まり、国連などを中心に対策が議論されてきました。特に2022年には、大きな進展がありました。プラスチック汚染を終結させるための法的拘束力のある国際協定の策定に175カ国が合意したのです。この合意では、生産削減やリサイクル推進により、2040年までに汚染を80%減らす具体的な目標も示されました。国際社会ではこれを「緊急事態」と認識し、連携して対策を強化しています。(*5)(*6)
【参考】1人当たりの海洋プラスチック廃棄物(2019年)
                      各国独自の規制から国際協調への流れ
20世紀初頭より普及したプラスチックは戦後大量消費され環境問題を深刻化させました。(*8)(*9)
インドの使い捨てプラスチック禁止やEUのプラスチック戦略など、各国は独自規制を進めていますが、プラスチック汚染は国境を越えるため、国際協調なしでは効果が限定的です。
こうした背景から近年、国際協調の機運が高まり、2022年には国連でプラスチック汚染に関する法的拘束力のある条約策定に関わる150カ国以上の国連加盟国、国際機関、NGOなどが合意し、政府間交渉委員会(INC)(注1)が設立されました。この国際的な枠組みは、統一基準設定や途上国支援を通じ、地球規模の課題解決を目指す上で極めて重要な仕組みとなっています。(*10)
注1)	政府間交渉委員会(INC)は、プラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある条約策定のため、2022年3月の国連環境総会決議に基づき設立された組織です。プラスチックのライフサイクル全体を対象とする包括的アプローチを採用し、汚染根絶を目指す法的枠組みの構築を目的とします。具体的には、プラスチックの設計・生産からリサイクル・廃棄までの新基準設定や循環型経済の推進が求められています。(*11)
以下に、政府間交渉委員会(INC)における各国の主な主張について、「厳しい規制を求める国」と「緩い規制を求める国」に分けて、代表例を示します。
| No | 国家名または地域 | 主張内容 | 
| 1 | 欧州連合(EU) | EUのプラスチックの生産や流通に対する厳格な規制を推進しており、国際的な生産制限を求めています。(*12) | 
| 2 | フィジー | フィジーは太平洋の小島嶼国として、海洋プラスチック汚染の影響を直接受けており、明確な削減目標と実効性のある国際ルールを求めています。(*13) | 
| 3 | メキシコ | 北米のメキシコからなされた「有害なプラスチックの根絶を求める」提言は、メキシコ国内で特に問題視されるプラスチック製品を特定し、これらの使用を減少させることを目的としています。(*14) | 
| 4 | ケニア | アフリカのケニアではプラスチック製造と使用による影響を受けている国として、強力な国際ルールの設定を支持しています。 (*15) | 
| 
 5  | 
エクアドル | 南米のエクアドルではプラスチック汚染の問題に対処するため、国際的な協力を強調し、厳しい規制を支持しています。(*16) | 
| No | 国家名または地域 | 主張内容 | 
| 1 | サウジアラビアなどの産油国 | サウジアラビア、イラン、ロシアなどの産油国は、プラスチック生産を削減し、強制的な化学物質制限を施行する提案された措置を拒否し、条約の境界を超えていると主張しています。(*17) | 
| 2 | ロシア | ロシアは、プラスチックのリサイクルを重視するアプローチを支持しています。彼らは、プラスチックの生産を制限するのではなく、廃棄物の管理やリサイクルの促進に焦点を当てるべきだと考えています。(*18) | 
| 3 | 中国 | 中国は、プラスチック汚染の原因は廃棄物管理の不備にあるとし、条約の焦点を廃棄物の適切な管理に絞るべきだと主張しています。(*19) | 
国連環境総会(UNEA)における条約交渉プロセス
国際プラスチック条約の交渉は、国連環境総会(UNEA)決議に基づき進められています。プラスチック汚染を終わらせるため、生産から廃棄までの全ライフサイクルを対象とした法的拘束力のある国際文書策定が目的です。(*20)
2022年に政府間交渉委員会(INC)が発足し条約交渉が開始されましたが、2024年末のINC-5(第5回会合)でも各国の意見がまとまらず最終合意ができませんでした。そのため、交渉は2025年に継続されています。特にプラスチック生産規制などが大きな課題であり、実効性ある条約策定のためにはさらなる国際協力が不可欠となっています。(*21)
| 会議名 | 開催時期 | 主な交渉結果 | 
| INC-1 | 2022年11月 | ウルグアイのプンタ・デル・エステにおいて国際プラスチック条約の第1回政府間交渉委員会(INC-1)が開催されました。プラスチック汚染対策のための法的拘束力ある国際文書策定に向け、世界共通目標の設定、製造から廃棄までのライフサイクル全体での規制、各国別の行動計画の必要性などが議論されました。(*22) | 
| 
 INC-2  | 
2023年5月 | フランスのパリにおいて国際プラスチック条約の第2回政府間交渉委員会(INC-2)では、プラスチック汚染対策の具体的措置が議論されました。主な論点は2040年までの汚染ゼロ目標や、プラスチックのライフサイクル全体での対策、循環利用促進等です。各国は目標年限設定に支持を示しましたが、生産制限や資金面等で意見が分かれ、継続議論となりました。(*23) | 
| 
 INC-3  | 
2023年11月 | ケニアのナイロビにおいて、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第3回政府間交渉委員会(INC-3)が開催されました。主な論点は、条約の目的及び年限目標、一次プラスチックポリマーの生産制限、懸念のある化学物質・ポリマー・問題のあるプラスチック製品の規制、国別行動計画の内容、新たな基金設置の有無を含む支援資金に関する議論です。(*24) | 
| 
 INC-4  | 
2024年4月 | 
 カナダのオタワにおいて、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第4回政府間交渉委員会(INC-4)が開催されました。主な論点は、(1)条約の前文・スコープ・目的・原則、(2)主要義務規定(一次プラスチックポリマー、懸念のある化学物質・ポリマー、問題があり回避可能なプラスチック製品、製品設計、拡大生産者責任(EPR)、廃棄物管理等)、(3)条約の実施手段・措置(資金・技術支援、国別行動計画等)等です。(*25)  | 
| 
 INC-5  | 
2024年11月 | 
 2024年11月末から韓国の釜山で、プラスチック汚染に関する国際条約策定に向けた第5回政府間交渉委員会(INC-5)が開催されました。177カ国が参加し、2024年末までの条約完成を目指し交渉。議長案を基に議論が進みましたが、生産、プラスチック製品や資金等で国の意見が大きく異なり、合意には至りませんでした。議長案を交渉の出発点として、今後の会合で交渉を継続します。(*26)  | 
| 
 INC-5.2  | 
2025年8月5日~15日 | 
 スイスのジュネーブで2025年8月に第5回政府間交渉委員会(INC-5.2)が開催されました。プラの生産規制など主要争点を巡る対立は解消されませんでした。協議の再開は宣言されたが、次回INCの時期や場所は未定。  | 
国際プラスチック条約の枠組みと主要条項
                    生産から廃棄までのライフサイクル全体を対象とした規制内容
国際プラスチック条約は、深刻化するプラスチック汚染を根本から解決するため、2040年までの汚染根絶を目指す国際的な法的枠組みです。175カ国以上が支持し、法的拘束力を持つのが特徴です。
この条約は、プラスチックの生産、設計、使用、リサイクル、廃棄に至る全ライフサイクルを包括的に管理します。具体的には、製品設計の変更やリサイクル技術向上を促し、特にリサイクル困難な製品や使い捨てプラスチックの生産制限、廃棄物管理の強化、各国間の協力と技術・財政支援、進捗状況のモニタリングなどが盛り込まれています。これにより、持続可能なプラスチック利用を促進し、地球環境の保護に貢献することが期待されます。(*27)(*28)(*29)
使い捨てプラスチック削減に関する国際基準の設定
国際プラスチック条約は、プラスチック汚染解決のための法的拘束力ある国際枠組みの提供を目的とし、特に使い捨てプラスチック削減に関する国際基準設定を目指しています。
具体的には、以下のような施策を推進しています。
1)	特定プラスチック製品の段階的廃止の導入
本条約では、特定の用途における使い捨てプラスチック製品の段階的廃止や制限を設定することが計画されています。これにより、プラスチックごみの発生を大幅に削減することが望めます。(*30)
2)	代替素材の推進
再利用可能な素材や生分解性プラスチックなどの代替素材の使用を奨励し、持続可能な製品設計を促進します。これにより、プラスチック製品のライフサイクル全体を見直し、環境への負荷を軽減することを目指しています。(*31)
3)	国際的な協力
政府間交渉委員会(INC)を通じて、各国が協力して具体的な基準を策定し、実施することが求められています。これにより、国際的なプラスチック管理の枠組みが強化されることになります。(*32)
4)ライフサイクルアプローチ
ライフサイクルアプローチとは、プラスチック製品の設計から廃棄に至るまでの全工程を考慮し、環境に優しい選択を目指すことです。これにより、プラスチックの使用を最小限に抑え、廃棄物の削減を図ります。(*33)
5)再利用とリサイクルの促進
製品の設計段階から再利用やリサイクルを考慮し、循環型経済の実現を目指します。これにより、プラスチックの使用を減少させるだけでなく、資源の効率的な利用を促進します。(*34)
マイクロプラスチック対策と特定有害物質の規制
国際プラスチック条約は、プラスチック汚染の根本的な解決を目指し、特に以下の2点に重点を置いています。
1.マイクロプラスチック対策の強化
環境や人の健康に深刻な影響を与えるマイクロプラスチックに対し、条約は、製品への意図的な添加を禁止するなど、発生そのものを抑制するための具体的な対策の導入を各国に求めています。(*35)
2.特定有害化学物質の規制
プラスチックに含まれる発がん性物質や内分泌かく乱物質といった有害化学物質については、段階的な使用廃止を目標としています。さらに、製品の設計から廃棄に至るライフサイクル全体を通じた管理体制を強化する方針です。(*36)(*37)
これらの規制の実効性を高めるため、国際的な協力のもとで共通の基準が設けられます。
こうした取り組みを通じて、地球環境と人の健康を保護し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
また、以下に「国際プラスチック条約」で議論されている主要テーマ(大項目のみ)を示しますので参考にして下さい。
●【参考】国際プラスチック条約の主な規定(大項目のみ)(*38)
(注)以下の規定では、原文の意味が分かり易くなるように意訳しています。
1)製品設計と再利用の促進
安全性、循環性、持続可能性に配慮した材料・製品の設計または再設計に関する規定。再利用可能・詰め替え可能なパッケージへの奨励策の提供、使い捨てパッケージの設計要件設定、デポジット返還制度の導入など、より優れたシステムの構築を目指す。
2)拡大生産者責任(EPR)の確立
廃棄物管理における財政的および/または運用上の責任、場合によってはその他の費用を生産者に負わせることを規定。
3)海洋プラスチック発生源への対策
港湾における廃棄物受入施設の整備、漁具の設計と要件など、海洋ごみの発生源に対処する規定。
4) マイクロプラスチックの発生・排出抑制
マイクロプラスチックの発生源や使用を削減するための製品再設計に関する規定。これには、意図的に添加されたマイクロプラスチック(化粧品、洗浄洗剤、その他家庭用・工業製品に添加されるもの)、プラスチックペレットの漏出(ペレットロス)、人工芝や繊維製品からのマイクロプラスチック排出抑制に関する規定を含む。
5) プラスチック生産・製造段階での規制
バージンプラスチックの生産を規制することを目的とした規定。バージン樹脂への課税、生産施設への生産上限設定(キャップ)、特定の化学物質の制限、リサイクル素材の使用義務化など、生産現場での要件を含む。
6) 使い捨てプラスチックの削減
使い捨てプラスチック製品および材料の削減を目的とした規定。特定のプラスチック製品を禁止する措置や、消費削減を目的とした広報キャンペーン実施の法的要件などを含む。
7)情報の透明性とトレーサビリティの確保
プラスチック前駆体およびプラスチックがバリューチェーン全体を移動する際のデータ収集と情報アクセスに関する規定。生産者に対し、使用した化学物質やポリマーの種類・量の開示要求や報告義務を課すことなどを含む。
8)廃棄物管理の適正化
リサイクル(ケミカルリサイクルを含む)、焼却、埋め立てなど、プラスチック廃棄物の収集と処理に関する規定。
9) プラスチック廃棄物の国際間取引規制
ある管轄区域から別の管轄区域へのプラスチック廃棄物の輸出入(廃棄物取引)に対処する規定。
国際プラスチック規制の実施と将来展望
                    先進国と途上国の差異ある責任と能力
国際プラスチック規制では「先進国と途上国の差異ある責任と能力」が重要です。歴史的に大量のプラスチックを生産・消費してきた先進国は汚染の主要因であり、廃棄物処理能力が低い途上国は先進国からの廃棄物流入で問題が悪化しています。このため、先進国には過去の責任を踏まえ、技術や資金力で劣る途上国へ技術移転や資金援助を行い、持続可能なプラスチック管理能力の向上を支援する責任が求められます。
(*39)(*43)
技術移転と資金メカニズム
途上国がプラスチック規制を効果的に実施するには、技術移転と資金メカニズムが不可欠です。知識や資源が不足する途上国に対し、先進国は確立されたリサイクル技術や廃棄物管理システムを提供します。また、現地の状況に合わせた技術移転や研修により、対処能力向上させる支援も必要です。国際的な資金供与や技術支援でも、インフラ整備や持続可能な管理基盤を築く上で重要となります。これらの連携を通じて、プラスチック汚染問題の解決と環境保護の促進が図れます。
(*40)
プラスチック汚染撲滅の道筋と課題
OECDの報告書(2024年10月2日)によると、包括的な国際協力により、2040年までにプラスチックの環境流出を96%削減できると示されています。対策なしではプラスチック生産は70%増え、環境への流出も50%増加する見込みです。使用抑制やリサイクル強化など、生産から廃棄までのライフサイクル全体で対策を講じることが、環境と経済の両面で大きな効果をもたらすと強調されています。(*44)(*45)(*46)
しかし、目標達成の道のりには多くの課題があり、国際的な協力が欠かせません。主な障害としては、各国の経済状況や政策の違い、開発途上国における技術力や資金の不足、そして国際的な合意形成の難しさなどが挙げられます。これらの課題を乗り越えるためには、国際的な資金援助や技術移転の推進、関連する教育プログラムの強化、そして共通の目標に向けた協力体制の整備といった、国際社会全体の努力が求められています。
(*41)(*42)
「国際プラスチック条約」に対する日本企業の課題と対応策
国際プラスチック条約の要求内容について、特に「代替素材への移行」と「サプライチェーンの透明化」が大きな課題です。これらの課題に対して、課題の内容を深堀し、具体的な対応策を立てる必要があります。よって以下にその詳細を解説します。
国際プラスチック条約に伴う代替素材移行の課題と対応策
国際プラスチック条約により代替素材への移行が求められています。そのため、企業は多くの技術的・経済的ハードルに直面しています。具体的には以下のような課題が挙げられます。
【主要な課題】
技術面の課題:既存プラスチックの機能再現、製造プロセス変更、品質確保の困難さ
経済面の課題:代替素材の高コスト、研究開発費の負担増加
規制・標準化の課題:認証基準の不統一、リサイクルインフラの未整備
市場受容性の課題:消費者および企業間取引(BtoB)における市場受容性の不確実さ
【必要な対応策】
日本企業がこれらの複合的な課題を克服し、製品品質と環境負荷低減の両立を実現するためには、以下の対策が必要となります。
1. オープンイノベーション体制の強化
大学や研究機関との連携を一層強化し、バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックといった代替素材の共同研究開発を加速させます。これにより、革新的な素材開発を推進します。
2. 段階的移行計画の策定 
製品カテゴリーごとに優先順位を明確にし、技術的・経済的に実現可能な分野から、代替素材への切り替えを順次進めるための詳細なロードマップを作成します。
特にコストへの影響が大きい製品については、お客様への価格影響を考慮しつつ、製品設計の最適化なども含めた、包括的な対応策を検討・策定します。
3. 循環型ビジネスモデルへの転換
従来の「製品を販売して廃棄する経済」から、「製品素材を再利用する循環型経済」へとビジネスモデルを転換します。具体的には、使用済み製品の回収・リサイクルシステムを自社単独ではなく、関連業界、国、自治体と連携して構築します。この取り組みにより、原材料コストの削減と国際プラスチック条約への対応を同時に実現します。
サプライチェーン全体での透明性確保と情報開示の課題と対応策
国際プラスチック条約は、企業にプラスチックのライフサイクル全体における透明性の確保と情報開示を義務付けています。これに対して企業は、サプライチェーン全体での情報把握と開示という重要な課題に直面しています。
【現状分析から見える新たな課題】
この課題を解決するために現状を分析すると、以下の新たな課題が浮かび上がります:
・海外を含む複雑なサプライチェーンからの情報収集の困難さ
・データ管理体制の未整備
・標準化された報告方法の欠如
・企業秘密と情報開示のバランス調整
・法的責任の拡大への対応
【必要な対応策】
これらの懸念を克服するため、以下の施策を実施する必要があります:
1. データ追跡システムの構築
ブロックチェーン技術などを活用し、原材料調達から製品廃棄までのライフサイクル全体を追跡できるシステムを導入します。これにより、プラスチック使用量の可視化と報告義務への対応が可能になります。
2. サプライヤー連携プログラムの確立
取引先を含めたサプライチェーン全体での情報共有プラットフォームを構築し、定期的な監査と報告体制を整備します。
3. 業界横断的な情報開示基準の策定
同業他社との連携により、業界共通の情報開示フォーマットを確立し、効率的かつ標準化された報告体制を構築します。これにより、条約対応コストの分散と効率化を実現します。
TOPPANが「国際プラスチック条約」に対して、貢献できる製品・サービスとは
TOPPANでは、国際プラスチック条約に貢献するため以下4つの取組みを推進しています。この取り組みにより、企業様の「国際プラスチック条約に対応した製品やサービス」を強力にサポートします。
液体の長期常温保存が可能な口栓付き紙容器「EP-PAK」
EP-PAKは、液体などの内容物を常温で長期間保存するのに適した口栓付き紙容器です。その秘密は、TOPPAN独自の透明蒸着加工技術とコーティング技術を駆使した高性能な透明バリアフィルム「GL BARRIER」にあります。このフィルムは世界最高水準のバリア性能を持ち、内容物の品質を劣化させる酸素や水蒸気の侵入を効果的に防ぎます。
「GL BARRIER」はアルミ箔の代替としても使用できるほど高いバリア性を誇ります。このため、EP-PAKはアルミを使わずに長期常温保存が可能となり、食品の風味や品質を長く保つことができます。
                    実際に、J-オイルミルズ様ではEP-PAK採用により油脂製品の賞味期間延長、プラスチック使用量削減を実現しました。また、若潮酒造様では焼酎パックがリサイクル可能になり、プラスチック使用量も削減しています。
EP-PAKはさらに、充填前の資材保管スペースを大幅に削減でき、森林認証紙など環境配慮素材も選択可能です。このように、EP-PAKは優れたバリア性による長期常温保存と環境への配慮を両立させた画期的な紙容器です。
                    
                    とことん環境に配慮し常温での長期保存も可能なカートカン
カートカンは、ヨーロッパで生まれTOPPANが日本国内向けに改良した円柱状の紙製飲料容器です。環境配慮型容器として、原料紙に間伐材を含む国産材を30%以上利用し「間伐材マーク」を取得しました。また、売上の一部は「緑の募金」へ寄付され、日本の森林育成にも貢献しています。また、「紙パックマーク」が付与され、他の紙パックと同様にリサイクル可能です。
品質面では、アルミなどの金属類を使わず、TOPPAN独自開発の透明バリアフィルム「GL BARRIER」を使用することで高い酸素バリア性を誇り、内容物の劣化を防ぎます。これに無菌充填技術を組み合わせることで、食品の風味や栄養を損なわずに常温流通と長期保存を実現しています。
カートカンの円柱型形状は、切れ目のないデザインが可能で高級感を演出し、製品の差別化にも貢献します。
                    TOPPANではカートカンのパッケージ製造だけでなく、内容物の調合から品質管理、アセプティック充填による飲料の充填作業まで一括で対応(OEM/ODM方式)します。さらに、企業のCSR活動の一環として「企業の森」の間伐材活用モデル構築のサポートも行っています。
                    
                    再生材使用率約30%のスタンディングパウチ
TOPPANは、リサイクルポリエチレンとリサイクルPETフィルムを組み合わせ、再生材使用比率約30%のパウチ用フィルムを開発しました。このフィルムは、ヴィークレア社の新製品「&Cream セラムシャンプー詰め替え」(2025年4月発売)に採用が決定。これにより、包材のライフサイクル全体でのCO2排出量を約7%削減できる見込みです。
この開発品は、日本政府のプラスチック資源循環戦略や、官民一体で行うCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)が海洋プラスチックごみ問題解決に向け掲げる再生材使用率30%目標「Circular 30 by 30」の達成に貢献します。
ヴィークレア社の新ブランド「&Cream」は、「使うことで、あなたも地球も美しく」をコンセプトに、環境配慮素材を製品本体だけでなく詰め替えパウチにも初採用しました。
また、TOPPANの中期経営計画では「DX(Digital Transformation)」と「SX(Sustainable Transformation)」を掲げ、環境対応を重点施策の一つとして再生材活用を推進しています。
                    上述の取り組みついてご興味がありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
出典
(*1)海の未来:プラスチックに取り組む技術の最前線|The Economist Newspaper Limited 2019
https://backtoblueinitiative.com/the-future-of-the-ocean-the-tech-to-tackle-plastics-jp/
(*2)Global Plastic Pollution and Its Regulation: History, Trends, Perspectives – Politics Today
https://politicstoday.org/global-plastic-pollution-and-its-regulation/
(*3)やめよう、プラスチック汚染 | 国連広報センター
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/beat_plastic_pollution/
(*4)Global Plastics Outlook | OECD(PDF.p.35)
https://www.oecd.org/en/publications/global-plastics-outlook_de747aef-en.html
(*5)Global Plastics Treaty | Pages | WWF
https://www.worldwildlife.org/pages/global-plastics-treaty
(*6)プラスチック汚染は、いまや「破壊的」なレベルに到達した:国連報告書が示す深刻な懸念と、問題解決への抜本的な道筋 | WIRED.jp
https://wired.jp/article/plastic-pollution-emergency-united-nations/
(*7)Plastic Pollution - Our World in Data
https://ourworldindata.org/plastic-pollution
(*8)使い捨てプラスチック禁止:バングラデシュでの有効性の調査 - Giving Compass
https://givingcompass.org/article/single-use-plastic-bans-examining-efficacy-in-bangladesh
(*9)2002年、バングラデシュは、使い捨てのビニール袋の一種であるポリエチレン袋の製造、輸入、マーケティング、使用を禁止する世界初の国になりました。
https://x.gd/YZVr1
(*10)プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第一回政府間交渉委員会の結果概要 (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221205008/20221205008.html
(*11)Intergovernmental Negotiation Committee on Plastic Pollution | IUCN
https://iucn.org/incplastics
(*12)EU・産油国の対立解消先送りの公算…プラスチック規制条約案、詰めへ最終交渉|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
https://newswitch.jp/p/43742
(*13)フィジーの大臣が「より迅速な」プラスチック汚染条約を要請 |マカオ事業
https://www.macaubusiness.com/fiji-minister-urges-quicker-plastic-pollution-treaty/
(*14)Mexico's Plastic Pact Identifies Top 10 Avoidable Plastics|Mexico business news
https://mexicobusiness.news/infrastructure/news/mexicos-plastic-pact-identifies-top-10-avoidable-plastics
(*15)Kenya president urges progress on global treaty against plastic pollution | Reuters
https://www.reuters.com/business/environment/kenyas-president-urges-progress-global-plastics-treaty-2023-11-13/
(*16)Plastic Pollution – Perspectives from Ecuador and Australia on a global agreement | Research School of Social Sciences
https://rsss.cass.anu.edu.au/news/plastic-pollution-perspectives-ecuador-and-australia-global-agreement
(*17)Global Plastic Treaty: Why should investors support a strong treaty? - Planet Tracker
https://planet-tracker.org/global-plastic-treaty-why-should-investors-support-a-strong-treaty/
(*18)Russia, Saudi Arabia, Iran & petrochemical industry stall plastics treaty: Critics
https://news.mongabay.com/2023/11/russia-saudi-arabia-iran-petrochemical-industry-stall-plastics-treaty-critics/
(*19)Global plastic treaty talks could hinge on China pledging to curb plastic production
https://kr-asia.com/global-plastic-treaty-talks-could-hinge-on-china-pledging-to-curb-plastic-production
(*20)海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する条約 | 水・土壌・地盤・海洋環境の保全 | 環境省
https://www.env.go.jp/water/inc.html
(*21)国際プラスチック条約、政府間交渉委員会での合意は延期 | RM NAVI
https://rm-navi.com/search/item/2013
(*22)「プラスチック汚染対策に関する条約策定に向けた政府間交渉委員会第1回会合」の結果について | 報道発表資料 | 環境省
https://www.env.go.jp/press/press_00917.html
(*23)プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第2回政府間交渉委員会の結果概要 (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230605005/20230605005.html
(*24)プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第3回政府間交渉委員会の結果概要 (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231121002/20231121002.html
(*25)プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第4回政府間交渉委員会の結果概要 (METI/経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240430005/20240430005.html
(*26)プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要 | 報道発表資料 | 環境省
https://www.env.go.jp/press/press_04058.html
(*27)国際プラスチック条約とは? | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
https://ideasforgood.jp/matome/global-plastics-treaty/
(*28)Reports.eia-international.org/a-new-global-treaty/
https://reports.eia-international.org/a-new-global-treaty/
(*29)国際プラスチック条約とは? 内容や背景、関連する取り組みについて解説 | ELEMINIST(エレミニスト)
https://eleminist.com/article/3867
(*30)国連の「国際プラスチック条約」とは?背景から協議内容まで詳しく解説 - ELCOM SDGsブログ
https://blog.elcom-jp.com/plastic-treaty/
(*31)プラスチック規制をめぐる国際動向 | HRGL Sustainability Opinion | HRガバナンス・リーダーズ株式会社
https://www.hrgl.jp/sus-opinion/sus-opinion-11061/
(*32)なぜ世界は世界的なプラスチック条約を緊急に必要としているのか |Earth.Org
https://earth.org/why-the-world-urgently-needs-a-global-plastic-treaty/
(*33)プラスチック汚染を終わらせるために、世界プラスチック条約がどのように目指すか
https://www.qualitasertifikasi.com/how-the-global-plastic-treaty-aims-to-end-plastic-pollution
(*34)【国際プラスチック条約】を分かりやすく解説 - plaplat
https://division.nagase.co.jp/plaplat/sustainable_solution/trend/global-plastics-treaty/
(*35)EU calls for agreement to conclude Global Plastics Treaty - European Commission
https://environment.ec.europa.eu/news/eu-calls-agreement-conclude-global-plastics-treaty-2024-11-25_en
(*36)UN’s first draft of Global Plastics Treaty targets toxic chemicals across the entire life cycle of plastic
https://chemtrust.org/news/plastics-treaty-draft/
(*37)The Global Plastics Treaty: An Endocrinologist's Assessment - PMC
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10690721/
(*38)UN Plastics Treaty | Global Plastic Laws
https://www.globalplasticlaws.org/un-global-plastics-treaty
(*39)Top 10 countries responsible for most exported plastic waste - Interplas Insights
https://interplasinsights.com/plastic-industry-insights/latest-plastics-industry-insights/top-10-countries-responsible-for-most-plastic-waste/
(*40)Global plastic profiles: How is the Global North helping the South tackle plastic pollution?
https://www.downtoearth.org.in/waste/global-plastic-profiles-how-is-the-global-north-helping-the-south-tackle-plastic-pollution--95714
(*41)Financing a Future Free from Plastic Leakage | OECD
https://www.oecd.org/en/publications/financing-a-future-free-from-plastic-leakage_32424f03-en.html
(*42)プラスチック規制、産油国側「発展妨げる」と一切妥協せず…条約策定の最終会合は時間切れ : 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20241202-OYT1T50196/
(*43)Development co-operation and the elimination of plastic pollution: Full Report | OECD
https://www.oecd.org/en/publications/development-co-operation-and-the-elimination-of-plastic-pollution_96803ffc-en/full-report.html#boxsection-d1e20
(*44)Policy Scenarios for Eliminating Plastic Pollution by 2040 | OECD
https://www.oecd.org/en/publications/policy-scenarios-for-eliminating-plastic-pollution-by-2040_76400890-en.html
(*45)Global action across the plastics lifecycle could nearly eliminate plastic pollution by 2040 | OECD
https://www.oecd.org/en/about/news/press-releases/2024/10/policy-scenarios-for-eliminating-plastic-pollution-by-2040.html
(*46)Policy Scenarios for Eliminating Plastic Pollution by 2040 | OECD
https://www.oecd.org/en/publications/2024/10/policy-scenarios-for-eliminating-plastic-pollution-by-2040_28eb9536.html
2025.09.17