外国人児童生徒や保護者との「言葉の壁」を乗り越えるために
多様化する社会背景のなか、外国人児童生徒は増加しています。それらの児童生徒との「言葉の壁」によるコミュニケーション対応において悩んでいる教職員や学校関係者は多いかも知れません。
そこで今回は、そのような課題解決に役立つ、ICTを活用したツールについてご紹介します。
外国人児童生徒の入学・転入は増加
文部科学省の統計によれば、公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数(日本国籍含む)は2021年度に5.8万人超となり、2012年から2021年までの約10年間で1.8倍増加しました。
公立小・中学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒のうち、特に多いのは、ポルトガル語、中国語、フィリピノ語、スペイン語を母語とする児童生徒で、この4言語だけで約7割を占めています。
このような近年の状況を踏まえると、学校での外国人児童生徒の受け入れ体制の整備には力を入れる必要がありそうです。
外国人児童生徒や保護者とのコミュニケーションに「E-Tra(イートラ)ノート」・「RemotoVoice®」
■「E-Traノート」
外国人児童生徒の保護者との連絡は、学校で日本語を学び、日常的にコミュニケーションが取れる児童生徒自身以上に課題が多いとされています。なぜならば、保護者によっては日本で暮らしているものの、日常的に日本語に触れる機会が少なく、母語以外の言語でのコミュニケーションが困難な場合もあるからです。子どもたちが健やかに楽しく学校生活を送るのに、教職員と保護者の密なコミュニケーションは非常に重要です。
トッパンでは、こうした「言葉の壁」を解決するために、保護者と学校側との連絡を支援する多言語対応のWEB連絡帳「E-Traノート」をご提供しています。
・サービス概要
「E-Traノート」は、多言語対応と定型文を活用して学校から保護者への連絡を楽にする、新しい連絡帳システムです。外国人保護者に届けたい連絡事項や持ち物、集合場所等の情報が定型文として格納されており、利用する教職員や学校関係者は、その文章を組み合わせて、対象となる保護者へ送信すると、システム内で保護者の登録した自身の言語に翻訳され、届けられます。
・外国人生徒と保護者にとってのメリット
「E-Traノート」は、外国人生徒と保護者に以下のようなメリットを提供できます。
①母語で連絡できる安心感
日本語を習得中の保護者にとって、日本語で連絡を受けることは労力を要することです。読んで内容を理解するだけでも時間がかかることもあり、プリントや連絡を放置するケースも見られます。保護者の母語で連絡することは、保護者にとってのストレスや負担を軽減することに繋がります。
②トラブル防止
先述の通り、学校からの連絡を把握するのにも多大な労力を要する保護者の場合、翻訳ミスや放置の結果トラブルに発展する場合もあります。
翻訳済みの定型文を組み合わせて連絡事項を作る「E-Traノート」なら、誤訳等のトラブルを回避することができます。
③伝達漏れ防止
保護者との連絡に際し、児童生徒を介する学校も見られます。ただ、児童生徒が保護者へ伝え忘れることや、うまく内容を伝達できない可能性もあります。
「E-Traノート」で教職員から保護者に直接連絡を送ることで、保護者は確実に情報を受け取ることができます。
・学校側のメリット
学校、教職員側にもメリットがあります。
①教職員の業務負担軽減
あらかじめ格納された定型文は翻訳されているため、翻訳作業の負担を削減することができます。また、PC、スマートフォンに対応しているため、時間や場所を問わず、手の空いたときにいつでも送信できることで作業の効率化を図れます。
②写真や図で説明ができる
「明日は書道道具を持たせてください」「防災頭巾はこのようなものです」
日本の学校や文化に馴染みのない保護者に対して、言葉だけで説明するのは難しいですが、「E-Traノート」であれば写真を添付することができるので、わかりやすく、正確に伝えることができます。
③緊急連絡手段の確保
児童生徒がけがをした場合や登校していない等緊急な連絡が必要な際に、日本語を話せない保護者に対し、電話やショートメッセージ、メール等で正確に状況を伝えることは難しく、結果的に緊急対応ができない等の問題は学校現場で日常的に発生しています。
「E-Traノート」であれば緊急時もすぐ保護者に対し、自身の言語に翻訳されたメッセージを送ることができます。さらに、既読確認ができるため、保護者に状況が伝わっているかの確認が可能です。
実際に「E-Traノート」を活用している学校の事例をご紹介します。
岐阜県各務原市立緑陽中学校では12名の外国人生徒が在籍しており、従来のプリントでの保護者連絡がうまくいっていない事や、巡回職員の負担解消を目的に「E-Traノート」の導入に至りました。
導入に至るまでの課題や、導入後の変化については下記事例コラムを是非ご覧ください。
■「RemoteVoice®」
「E-Traノート」では、「言葉の壁」による保護者との遠隔での連絡に対する課題の解消に寄与していますが、「言葉の壁」によるコミュニケーションの課題は来日したばかりで日本語がほとんど話せない児童生徒との校内での対話や授業、また、保護者会や面談等対面の場合にも発生します。そうしたコミュニケーションをサポートする対話型の翻訳システムとして、トッパンでは、「RemoteVoice®(リモートボイス)」というサービスも提供しています。
「RemoteVoice®」は、スマホ・PC・タブレットと端末を選ばず使うことができるAI翻訳サービスです。日本語、英語、中国語をはじめとした全17種類の言語に対応しており、複数人の外国人児童生徒や保護者を相手にやりとりすることが可能です。
教職員が日本語で入力した内容が、保護者や外国人児童生徒の端末には設定した言語で翻訳表示されます。保護者や外国人生徒が母語で入力した内容は、教職員の端末に日本語で表示されます。しかも、同時に複数の言語の対応が可能です。さらに、スマホやPCに入っている通常のブラウザからチャットのように利用できるので、対面はもちろん、遠隔の場合でも多言語の相互コミュニケーションが可能です。
「E-Traノート」と「RemoteVoice®」の詳細については、ぜひサービス紹介ページをご覧ください。
2023.04.05