外国人生徒やその保護者との連絡をサポート。
多言語対応のWEB連絡帳「E-Traノート」の導入事例【各務原市立緑陽中学校(岐阜県)】
定型文と多言語で伝えるWEB連絡帳システム「E-Traノート」を、岐阜県にある各務原市立緑陽中学校(以下、緑陽中学校)に導入いただきました。緑陽中学校では、外国人生徒が増えてコミュニケーション面での課題を解決したいと考えているタイミングだったといいます。「E-Traノート」の導入前後でどのような変化があったのかを今回伺いました。同じような課題を抱えている教育機関や市区町村のみなさまはぜひご参考になさってください。
プリントだけの連絡では限界を感じていた
「E-Traノート」の導入以前から、ICTに対応した環境整備が緑陽中学校では進められていました。携帯電話(スマートフォン)は個人のものを使っていますが、パソコンは1人1台ずつ揃っており、今年2022年度からタブレットも支給されています。
また生徒や保護者とのコミュニケーションは、プリントを介して基本的に行っていました。特に外国人生徒やその保護者向けには、週に2日ほど来校する市の巡回職員が内容を外国語に訳したプリントを渡しているといいます。小学校で使っている連絡帳のような伝達手段が、中学校には一般的にありません。生活の記録を自身で書いて残す予定帳はあっても、保護者に見せるわけではないのです。プリントが保護者に渡るかは生徒次第で、保護者にプリントが渡らない事態が当然発生します。プリントが保護者に渡らない理由として、大きく分けて下記の二つが考えられるとの意見が挙がりました。
●パーソナリティの問題:忘れっぽい性格で、大事だといわれていてもプリントを保護者に渡すことを忘れたり、なくしてしまったりする生徒が少なからずいる。
●思春期ならではの問題:多感な時期に入り、保護者には学校に来て欲しくない生徒も珍しくない。授業参観や進路説明会などのプリントを意図的に保護者に渡していない生徒がいる。
外国人生徒が12名在校中
緑陽中学校には、外国人生徒も在校しています。外国人生徒の対応をされているのは、時間割の中で教科指導を担当する教職員7名・日本語担当職員2名・巡回職員1名の合計10名が中心です。
【緑陽中学校の外国人生徒の情報(2022年8月時点)】
外国人生徒の数:12名在校中(全校生徒323名のうち)。
出身国籍:一番多いのがブラジル国籍。他にボリビア国籍・ルーマニア国籍なども。
対応している言語数:4言語(ブラジル語・ポルトガル語・ボリビア語・スペイン語)。
「E-Traノート」導入前の様子
「E-Traノート」の導入以前の業務状況について詳しく伺いました。
■通訳・翻訳担当の外国人巡回職員に仕事が集中
「E-Traノート」の導入以前は、外国人生徒やその保護者とのコミュニケーションにおいて、外国人対応や日本語指導に関わる巡回職員への負担が大きかったといいます。昨年まで巡回職員の勤務が週に1回であったため、その1日に仕事が集中する状態でした。量が多くて訳しきれない状況が続いていたのです。外国人生徒やその保護者からの連絡がすべて巡回職員に直接寄せられる中、他の学校にも巡回しているため、早々の対応が難しい状態だったといいます。
担任の先生レベルでも作業ができるように、機械翻訳のツールやWEBアプリケーションを使用する場面もありました。しかし学校で使われる専門用語まで完璧に翻訳するのには限界があり、どうしても巡回職員の確認が避けられません。また手間暇をかけて翻訳したプリントも、保護者に見てもらえないケースがあるといいます。外国人保護者の場合、「日本語で書いてあるから読めない」と、そもそもプリントを見ない習慣が付いてしまっているのです。
■そもそも時間がない
巡回職員のみならず、時間がない教職員ばかりだといいます。プリント連絡では不十分で、保護者からの問い合わせ電話は終業後の17時以降も続き、朝7時10分頃には電話がかかってくる状況です。しかしパソコンを持ち帰れないため、翌日の教材準備やテスト作成などをするには、電話を受けながら学校に残らざるをえません。また巡回職員は、巡回先以外の学校に在籍している生徒からも四六時中連絡を受けています。もちろん時間外の対応も発生しており、ボランティアで対応しているのが実情です。
なお仕事の効率化がなおざりにされてきたわけではありません。例えばタブレットを利用してテストの採点や課題の評価を効率化させ、検索できるように整理もされてきました。また巡回職員が翻訳した資料もストックしてあり、再利用する場面もあるといいます。他にも業務で作成したデータをストックしてあり、教職員の負担軽減が図られてきました。
■対ひとの仕事に時間を割くのが難しい
教職員が業務の効率を上げたいのは、対ひとの時間を確保したいからだといいます。対機械ではなく、生徒に対しても保護者に対しても、人と人で接する時間を一番においていきたいと緑陽中学校の教職員のみなさまは語られました。
学力向上には家庭学習が欠かせない中、習慣化されていない生徒が多いといいます。家庭学習を習慣化させるためには、保護者の理解が必要です。学校側が求めていることをしっかりと伝えていかなければ、保護者からの協力は得られません。多忙な中でも、生徒を気にかける時間を保護者が増やしてくれるように、情報発信や親子の橋渡しを学校側はする必要があるといいます。
そして外国人生徒やその保護者とのコミュニケーションにおいて、対ひとの時間の確保が巡回職員は特に重要です。機械ができる作業は機械に任せ、語学力を活かして生徒と直に触れて話しながら、母国語や文化の大切さを教え日本語を習得するサポートをしてもらいたいといいます。
「E-Traノート」導入後の様子
「E-Traノート」導入後の変化もご紹介します。
■プリントにくわえて、保護者にメールで直接連絡
緑陽中学校では、従来のプリントと「E-Traノート」のメールによる二重連絡を実施するようになりました。紹介したとおり授業参観や進路説明会などのプリントを意図的に渡していないケースがあった中、「E-Traノート」を併用し始めてから参加率が大幅に上がったといいます。
なお「E-Traノート」のメールには、写真が添付可能です。緑陽中学校では、外国人生徒に対しては、翻訳した文章を書いたプリントを写真に撮って保護者にメールで送っています。ほとんどの保護者が今は携帯電話(スマートフォン)を持っており、すぐに確認してもらえるようになりました。さらに体調や天候の不良で急に生徒が帰宅しなければならなくなったときも、保護者に直接連絡ができるようになっています。外国人生徒の保護者への連絡が巡回職員のいないタイミングでもできるようになったのです。
くわえて保護者が確認したか、まで確認できるのも便利との意見も出ました。「はい」や「いいえ」だけでなく、「内容は理解できました」や「難しいので日本語がわかる人に聞きました」など外国人生徒やその保護者ならではの理解度チェックができる仕組みも重宝しているといいます。
■通訳・翻訳担当の巡回職員にかかっていた負担軽減
「E-Traノート」の導入によって、巡回職員がいなくても直接保護者と連絡が取れるシステムが整いました。担任の先生が責任を持って情報を伝達できるようになった変化は大きいといいます。
担任の先生も、外国人生徒を気にかけているのは間違いありません。しかし外国語が話せないために、生徒にも保護者にもどのように接していいかがわからず止まってしまう担任の先生が多いのが実情です。「E-Traノート」を使って「やってみよう」と踏み出してくれれば、信頼関係などが生まれやすいと考えられます。
また繰り返し行っていた同じような翻訳作業が無くなり、巡回職員の負担は大きく軽減されたといいます。対ひとの仕事に集中できる時間が増えそうと期待の声も挙がりました。
■学校の専門用語やウルドゥー語にも対応可能で使用感には満足
市で導入されているメールサービスと比較したとき、「E-Traノート」の方が送信できる添付ファイルの量が5MGまでと大きく、パソコンだけなくタブレットにも入れられるため写真も送りやすいといいます。持ち歩いて使える点が便利との意見も出ました。
機械翻訳のツールやWEBアプリケーションでは対応が難しい専門用語の翻訳も、専門家を入れて翻訳したテンプレートがあるため安心して使えています。さらにウルドゥー語が入っている点も重宝しているようです。緑陽中学校の近郊でパキスタン国籍の人が増えている中、ウルドゥー語を知っている人は少ないといいます。希少言語まで翻訳できるのは「E-Traノート」の強みといってもいいかもしれません。
原作者・監修者の若林教授の説明から「E-Traノート」を導入
2021年度末に岐阜県教育事務所が教職員を対象に開催した研修会で、「E-Traノート」を知ったのが導入につながったといいます。「E-Traノート」の考案者・監修者である、宇都宮大学 客員准教授の若林秀樹さんの説明に感銘を受けて、研修会に参加していた現場の教職員が校長・教頭先生に相談して導入に至りました。
システム導入などは入札で決まるケースが多く、このような経緯での導入は珍しいケースといえるでしょう。サービスがいくらよくても、予算や時間などの問題で“報告して終わり”になるケースが9割程度のようです。緑陽中学校だけに留まらず、教育委員会にも理解を仰ぎ、市全体で「E-Traノート」を導入してほしいといいます。巡回職員は市内を回っており、さらに中学校だけでなく小学校の兄弟姉妹がいる家庭もあるため、学校単位での運営よりも市全体での運営の方が効率的だからです。
「外国籍のみんなにとってありがたいシステム」と保護者から御礼も
「E-Traノート」の利用を市にも働きかけるために、緑陽中学校では保護者から感想を集めました。その中で、外国人生徒の保護者から下記のような感想が上がってきたそうです(外国語で寄せられた文章を巡回職員によって翻訳)。
《紙ベースだと親の手元まで届かなかったり、提出を忘れてしまったりすることがあるが、このシステムは学校と保護者がダイレクトにつながることができてとてもよい。これは私だけでなく、外国籍のみんなにとってありがたいシステムに違いない。使ってくれてありがとう。》
緑陽中学校や各務原市だけでなく多くの学校や市区町村が、今回紹介したような外国人の支援や教職員の働き方に関する課題を抱えられているのではないでしょうか。トッパンは、「E-Traノート」の提供を通じてそのような課題の解決をサポートしていきます。「E-Traノート」の詳しい情報は下記の専用ページからご確認ください。
2022.11.21