働き方改革

VRを活用した安全教育の取り組み
「安全道場VR」とは?

近年、健康経営や働き方改革、人手不足と高年齢者・未熟練労働者・非正規雇用者の増加などから、安全衛生や安全講習のニーズが高まっています。そうしたなか、IoT活用やDXなどの流れもあり、VRを活用した安全教育の取り組みが注目されています。
そこで今回は、そうした取り組みの一つとしてトッパンの「安全道場VR」をご紹介します。


「安全道場」から生まれた「安全道場VR」

「安全道場」とは

「安全道場」はトッパンが持つ印刷工場のスタッフに向けた安全教育を実施・考案する組織です。労働災害の減少を目的として2010年に設立しました。印刷工場スタッフとして長年勤めたベテラン社員が師範として、安全教育や労災対策の提案などを行っています。

実際に稼働している工場設備の一部を再現し、機械の挟まれ・巻き込まれや、転倒、粉塵爆発などの疑似体験をしながら、約50種の労働災害の体感教育を実施しています。

設立翌年から延べ約4万人に講習を実施し、数々の取り組みにより、労災発生割合を3割以上減少させました。また防災意識が高まり、禁止動作による労災が半減しました。

「安全道場」を進化させる

安全道場の体感設備は、運搬に費用が掛かり、遠方の方には来場のコストがかかるなどの課題があります。また、一部の労働災害事例を実際に体験させるには危険という問題もあります。
これらを背景に、事故体験や労働災害をより手軽に体験するにはVRが適しているのではとの検証が始まりました。
労働災害を360度で撮影し、VRヘッドマウントディスプレイにインストールすることでVR動画を視聴できるよう開発したのが、体験型安全教育VRシステム「安全道場VR」です。

コンテンツは安全道場のベテラン社員である師範が監修しており、VRヘッドマウントディスプレイを装着すれば、労働災害の原因究明や防止対策などの説明を聞きながら360度映像を視聴できます。

安全道場VRのコンテンツ例

安全道場VRには、次の7つの安全教育VRコンテンツがあります。いずれも弊社で実際に起こった労働災害をVRで再現し、体感できるようにしたものです。

・カッター切創
フィルムの切り出しにおいて、慣れから専用のカッターと耐切創手袋を使わないことによる切創事故の労災。

・機械稼働
稼働中のローラーに異物が付着した際に、機械を止めずに手を出して、巻き込まれてしまう労災。

・高所落下
蛍光灯交換などの際に、脚立を一人で使ったことにより、バランスを崩して転落してしまう労災。

・エアブロー清掃
圧縮エアでのブロー清掃後に、ホース内の残圧を抜くのを怠ったままホースを抜いたことにより、ホースが暴れてぶつかってしまう労災。

・機械点検
二人一組の点検で、一人が内部に頭を入れて確認し、もう一人が機械操作を行う際、声掛けを怠り、誤って機械を下に降ろして体の一部を挟んでしまうという労災。

・機械清掃
汚れた機械を停止せずに効率良く清掃しようとした際に、手を滑らせて巻き込まれてしまうという労災。

・可燃性溶剤火災
静電気が原因で可燃性溶剤に引火してしまう労災。火災はCGエフェクトにより表現。

安全道場VRの特徴とメリット

安全道場VRには、次のような特徴とメリットがあります。

・よりリアルな体験ができる
ただ映像を見せるのとは異なり、ヘッドマウントディスプレイを用いた体感のため、より没入感があり、リアルな危険体験ができます。また、解像度が4Kのヘッドマウントディスプレイを利用しており、臨場感の高い体験を提供します。

・ベテランの師範監修で説得力がある
VR安全教育コンテンツは、実際に労災を体感し、なぜ発生したのか、どうすればその労災を防げたのか?という考えの下でシナリオを組んでいます。ベテランの安全道場師範が監修しているため、説得力のある内容になっています。

・若い世代へのインパクトや訴求力がある
近年、危険感受性向上の必要性が高まっているなか、とくに若い世代による「禁止動作」の労災がなくならない課題があります。原因として、既存の講義やテキストによる研修では本人自身に定着しづらい、安全な環境で育ち危険性に対する感度が鈍っていることが考えられます。VRではあたかも自分が被災したかのような臨場感が生まれ、インパクトがあるため記憶に残りやすくなります。実施後のアンケートから、VRに対して若年層の関心が高いことが分かっており、従来のテキスト教育より、リアルな映像体感型の教育が効果的であったという声も頂いています。安全道場VRは若い世代へインパクトや訴求力があると考えられます。

・多言語翻訳機能(英語、中国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語)
事前に多言語に翻訳した動画もご用意しており、外国人労働者への安全教育も可能です。

・導入ハードルが低い
パソコンや機材を別途用意する必要がなく、端末単体で動作するため、複雑な操作を必要とせず、簡単にVRを安全教育研修に組み込めます。

・オペレーションの簡易化
安全教育者のオペレーションの負荷が軽減される工夫をしています。一人の体験者が端末を外してすぐに次の体験者が装着することで、動画が再生されるオリジナルアプリもあります。

安全道場VRの制作発案者のコメント

安全道場VRを制作したきっかけや教育効果、操作と運用方法について、制作発案者であるトッパンの人事労政部の難波のコメントをご紹介します。

・安全道場VRを制作したきっかけ
「若い方たちには映像での教育というのが非常に効果的と考えています。しかもリアルに体感できるものをということからVRを作ることにしました。安全教育にVR映像を使うと、非常にリアルな怖さを感じるコンテンツを提供できるので、リアリティーのある体験ができると考えています。」

・安全道場VRの教育効果
「まずVRは映像ですから、国を超えて、言葉でなくても伝わるということ。多言語翻訳してナレーションを入れていますので、色々な国の方にもご利用頂けます。
次に、体感率が高いということ。アンケートでは非常に体感率が高いというご回答を頂いております。また若い方たちには、文章化された手順書よりも、映像により訴求効果があると考えます。リアリティーが高く、怖さを実感できるというお声もあります。『やはりルールを守らないといけないとつくづく感じました』というご意見もありました。とくに禁止動作に対する意識が高まったことは、労災事故の減少等の数字に表れています。」

・安全道場VRの操作と運用
「非常に手軽に操作でき、椅子に座ったまま短い時間で体感できます。安全教育をコンパクトに伝えることができると考えています。ヘッドマウントディスプレイをかぶり、ボタンを押せばナレーションを含めてすべて再生されますので、誰でも操作を一回覚えてしまえば使いこなせるようになっています。」

まとめ

安全道場VRの概要や特徴、メリット、効果などをご紹介してきました。最後に安全道場VRの特長を改めてご紹介します。

1.4Kヘッドマウントディスプレイによる危険体験VRで、労災対策に高い効果を得られます。
2.業種を問わず共感頂ける、現場でよくある7つの事象のコンテンツをご用意しています。
3.発生原因と防止方法を「安全道場の師範」が解説します。
4.VRコンテンツと機器の安価なパッケージ商品なので導入しやすくなっています。
5.PCは不要で、オリジナルアプリにより簡単操作が可能です。
6.多言語翻訳機能を搭載しており、オリジナルコンテンツ作成も可能です。

ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

2022.03.31

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