教育

安全衛生教育とは?内容や実施例をご紹介

近年、労働災害による死傷者数が増加傾向にあることから、世間の関心も高まっており、各所で対応策や教育、啓蒙活動が活発に行われています。特に労働災害の多い製造業や建設業、小売業においては、安全衛生教育に真摯に取り組んでいる企業も多くあります。
今回は、安全衛生教育の概要から内容、実施例をご紹介します。


安全衛生教育とは?

安全衛生教育の定義と種類をご紹介します。

安全衛生教育とは?

●安全衛生教育とは
労働災害を防止するために、労働者の就業にあたって必要な安全衛生に関する知識などを付与するために実施する教育です。労働災害とは、業務が原因で労働者が負傷したり病気になったりすることをいいます。安全衛生教育を行うことで、労働者の安全意識向上、労働災害の防止や減少、安全で健康な職場づくりに寄与します。

安全衛生教育を行う必要がある旨は、労働安全衛生法59条~60条に定められており、事業者は労働者を雇い入れたときはその労働者に対し、従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行なわなければならないことが記載されています。その他、危険物や有害物質を扱う業務に従事する際などは適宜定められた技能講習の修了・免許所得が義務付けられています。
安全衛生教育の対象者については、業種や職種・事業場・雇用形態を問わず、安全衛生に関わる全ての労働者に行う必要があります。

なぜ、安全衛生教育が必要なのでしょうか。それは実際に作業を行う労働者や、労働者を指揮、監督する者が、安全についての知識や技能を十分に有していなければ、どのような安全対策も労働災害も予防できないと考えられるためです。

●安全衛生教育の種類
事業者が行うべき安全衛生教育は、雇入れ時だけではなく、主に次の6つが定められています。

(1)雇入れ時の教育
(2)作業内容変更時の教育
(3)特別の危険有害業務従事者への教育
(4)職長等への教育
(5)危険有害業務従事者への教育
(6)安全衛生水準向上のための教育

作業内容が変更したときや、特別な、もしくは通常の危険有害業務を行う労働者に対して行う教育、現場を指揮監督する職長への教育、安全管理者や衛生管理者をはじめとした安全衛生水準向上に関わる者への教育などがあります。

安全衛生教育の実施内容と手順

安全衛生教育の実施内容と手順の概要を紹介します。

安全衛生教育の実施内容と手順

●実施内容
安全衛生教育は、種類に応じて行う内容が定められています。例えば雇い入れ時と作業内容変更時には、次の内容を行う必要があります。

【雇い入れ時の教育・作業内容変更時の教育】

・機械や原材料の危険性や有害性の知識と取扱い方法

・安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能の知識と取扱い方法

・作業手順

・作業開始時の点検方法

・業務において発生する恐れのある疾病の原因と予防に関する知識

・整理、整頓、清潔の保持

・事故発生時の応急措置と退避方法
など

安全衛生教育の内容は、業務の内容によっても変わってきます。その中でも、多くの事業所で共通して行われている教育内容に、5S、指差呼称、KYT(危険予知訓練)などがあります。

5Sとは:「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」をそれぞれアルファベットに直したときの頭文字を取ったものです。この5項目を徹底することにより、製品やサービスの「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」の改善を図る目的で行われます。同時に無駄なものや不衛生なものが排除されることから、労働環境が改善することで労働災害予防にもつながる重要な活動です。

指差呼称とは:KY(危険予知)活動の一つです。労働者が作業開始前や作業中に作業対象や標識などに対して指差しを行い、その名称と状態を声に出して確認することで意識レベルを上げ、緊張感や集中力を高める効果をねらいます。

KYT(危険予知訓練)とは:職場や作業の状況に潜む危険を、イラストに描くなどして用意してそれを見ながら複数人で話し合う訓練です。そしてポイントになることや重点実施項目を、実際の作業前に唱和したり指差呼称したりするルールを決めて実施します。

●実施手順
安全衛生教育は、次の流れで実施すると良いとされています。

1.実施計画の作成
教育の種類ごとに、対象者や実施時期、実施場所、講師、教材などを定めた年間の実施計画を作成します。

2.実施責任者の選任
安全衛生教育の計画も含めた業務の実施責任者を選任します。

3.教育内容の検討
講師や教材などを検討します。教材は労働災害事例に即した具体的な内容が推奨されており、動画などの視聴覚教材を活用することが効果的といわれています。また、形態としては講義方式のほか、現場での実習や受講者が直接参加する討議方式も有効です。

安全衛生教育の先進的な実施例

近年は、次のような先進的な安全衛生教育が行われています。その教育効果もあわせて見ていきましょう。

安全衛生教育の先進的な実施例

●VRを活用した安全教育の事例
ある製造業の企業は、製造所内の安全活動の推進および災害・事故の低減を目的に、安全衛生教育方法を模索する中、特に若手労働者に興味を持ってもらえる方法を探していました。そこでVR(バーチャルリアリティ)によって事故の体験が可能な教育ツールを導入しました。

・教育効果
ゴーグルを装着して、機械清掃などのリアルな現場で起き得る事故をVRで疑似体験できる新鮮さから、若手社員を惹きつけました。社員からは新しい気付きが得られ、より注意する意識が高まったり、VRで体験した状況に近い業務を行うときに思い出すという感想も得られ、安全活動を推進するリーダーもVRで危険を体感することは有効であると実感しました。

●AIを活用によるKY(危険予知)案内システムの事例
ある製造業の企業は、事故や労働災害を防ぐ目的で、複数の工場にAIを活用して事故や労災を削減するシステムを導入しました。毎日行う業務の中から作業を抽出し、関連するヒヤリハット(幸い災害には至らなかった「ヒヤリ」「ハッ」とした事象のこと)の情報や事故労災情報を自動でAIが案内する仕組みです。

・教育効果
従来は、多くのヒヤリハット情報を作成した活動から教育効果が出ていた一方、過去のヒヤリハット情報が十分に活用されていませんでした。そこで自動で過去の情報から提案する同システムにより、KY(危険予知)活動の充実に効果が期待されています。

まとめ

安全衛生教育は、労働災害を未然に防ぐために、どの業界・業種においても重要な取り組みです。その教育効果を最大限に引き出すために、ありとあらゆる工夫が行われています。

TOPPANは「災害ゼロを達成できる職場を目指す」という経営の強い思いから、2010年9月より、従業員一人ひとりの危険に対する感受性を養うことを目的として、 埼玉県川口市のトッパングループ研修センターに、体感教育による研修施設「安全道場」を開設しています。

そのノウハウを生かし、2019年からは「安全道場VR」というVRデバイスで疑似的に体感できる製品を開発しました。安全道場VRはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使用することで、実際に起こり得る労働災害をVRで体験できるものであり、危機体感型安全教育に有効です。

今回ご紹介した事例のうち、VR活用の事例は「安全道場VR」を導入した事例です。

安全衛生教育の効果をご検討されている場合には、ぜひ安全道場および安全道場VRの詳細をご覧ください。

2023.09.14

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