【導入事例】Sensing WaveⅡで夜間巡視を半減、転倒事故ゼロを実現

社会福祉法人佐与福祉会 地域密着型特別養護老人ホーム ことぶきの森 藤井施設長 |
《施設概要》
佐与福祉会 ことぶきの森は、福岡県飯塚市に位置する地域密着型の介護老人福祉施設である。
平成26年に特別養護老人ホーム29床で開設し、令和2年にはショートステイを3床から10床に増床、現在は計39床を運営している。
同施設は全室個室という特徴を持ち、各部屋にはトイレを完備することで、入居者のプライバシーと自立性を最大限に尊重した環境を提供している。
地方施設が直面した人材不足と夜間巡視の課題
インタビュアー:貴施設がICT化を進めてきた背景をお聞かせください。
(藤井施設長)
私どもの施設がある飯塚市は地方都市で、開設当初から介護人材の確保に苦労してきました。
この人材不足を補うため、開設時からICT化を進めています。
特に見守り機器業務は多くの人手を必要とするため、積極的に導入してきました。
インタビュアー:職員の負担として最も大きかった課題は何でしたか?
(藤井施設長)
夜間の巡視業務が最大の負担でした。
高齢者の方は足腰が弱くて付き添いが必要だったり、認知症で予測できない動きをされたりするため、常に見守りが必要な方がほとんどです。
導入前は、2時間に1回の定期巡視がルール化されており、職員は一晩で80~90回も各部屋を訪問していました。
これは職員の体力的・精神的に大きな負担となり、多くの時間も費やしていました。
インタビュアー:全室個室という環境での安全管理の難しさはありましたか?
(藤井施設長)
当施設は全室個室で、各部屋にトイレも設置しています。入居者様には自由に過ごしていただきたいのですが、その分、動きが多くなり安全確保が難しくなります。
また、安全確認のために職員が何度も部屋を訪問することは、入居者様のプライバシーを侵害し、安眠を妨げることにもなります。必要な時だけ訪室できる仕組みが求められていました。
現場目線で選んだSensing WaveⅡ導入の3つの決め手
インタビュアー:数ある見守りシステムの中から「Sensing WaveⅡ」を選ばれた理由を教えてください。
(藤井施設長)
実際に使いやすいことが大前提でした。選んだ決め手は次の3つです。
● 検知の正確性とスピード
● 介護職員にも優しい操作性
● きめ細かな個人設定機能
まず重要だったのは、入居者様の状況を正確に、そして素早く検知できることです。通信の遅延で情報が遅れては意味がありません。
また、入居者様の状態に応じて設定を頻繁に変更する必要があります。介護職員は介護のプロですが、ITの専門家ではありません。センシングウェーブⅡは、そんな職員でも簡単に操作できる点が決め手となりました。
他社製品とも比較検討しましたが、センシングウェーブⅡは検知スピードが速く、介護職員でも扱いやすい操作性で他製品より優れていました。
数字が証明する劇的な業務改善と事故防止効果
インタビュアー:現在、何床に設置されており、どのように活用されていますか?
(藤井施設長)
特別養護老人ホームの全29床に導入しています。最初は10台程度から始めて、効果を確認しながら段階的に増やしました。ショートステイにはまだ導入していませんが、今後は必要な方に対して導入を進めていきたいと考えています。
インタビュアー:夜間巡視の負担はどの程度軽減されましたか?
(藤井施設長)
導入前は、1回の夜勤で80~90回は各部屋を訪問して安否確認をしていました。Sensing WaveⅡ導入後は、画面上で呼吸数などが確認できるので、わざわざ部屋に行かなくても安否確認ができるようになり、現在は訪室回数を40回程度に削減でき、職員が施設内を歩き回る負担が大幅に軽減されています。
インタビュアー:転倒・転落事故の予防効果はいかがですか?
(藤井施設長)
令和6年度に全室設置を完了してから、ベッド周りでの転倒事故は0件です。年度全体でも、歯磨き中にバランスを崩した1件のみで、ベッド周りの事故は完全に防げています。
導入前は年間5件程度の事故があったので、システム導入により確実に事故を減らせたと実感しています。
インタビュアー:職員・入居者・ご家族それぞれの反応はいかがですか?
(藤井施設長)
職員からは「Sensing WaveⅡがないと困る」という声が上がるほど、必要不可欠なツールになっています。
入居者様からは「ちょうどいいタイミングで職員が来てくれる」と喜ばれています。データに基づいて適切なタイミングで訪室できるようになったからです。
ご家族には、睡眠時間などの具体的なデータをもとに「○時間しっかり眠れています」と説明できるようになりました。このような詳細な報告により、「丁寧にケアしてもらっている」と高い評価をいただいています。

インカム連携で実現した「静かな施設」という新たな価値
インタビュアー:インカムアプリBuddycomと連動させているとお聞きしましたが、これはどのようなシステムでしょうか?
(藤井施設長)
スマートフォンのアプリを通じたインカムシステムで、Sensing WaveⅡからの通知が音声で「10号室の○○さんが起床しました」といった形で職員のインカムに届きます。
介護職員は仕事しながらだと画面を見ることができない時間が多いので、耳からダイレクトに情報が入ってくることで、すぐに頭で考えて行動ができるようになりました。
インタビュアー:連携による効果を教えてください。
(藤井施設長)
最も大きな変化は、施設内から機械音が消えたことです。以前は通知音が施設全体に響いていましたが、今は必要な情報が職員のインカムだけに届きます。入居者様は不快な機械音を聞かずに済み、静かで落ち着いた環境で過ごせるようになりました。
現場主導で進めたスタッフ教育の工夫
インタビュアー:ITに不慣れな職員への対応はどのようにされましたか?
(藤井施設長)
DX担当職員を一人配置し、機器のトラブル対応やメーカーとのやり取りを専門的に担当してもらっています。
この担当者が、メーカーからの専門的な説明を介護現場で使いやすい言葉に置き換えて、わかりやすいマニュアルを作成しています。これにより、ITに不慣れな職員や年配の職員でも、問題なくシステムを活用できるようになりました。
インタビュアー:スタッフへの教育方法で工夫した点を教えてください。
(藤井施設長)
まずDX担当職員にしっかりと使い方を習得してもらい、現場での実践的な指導を重視しました。実際の業務中に、わかる職員がその場で教えることが重要です。
全体説明会を一度開いて終わりではなく、日々の業務の中で繰り返し指導することで、全員が自然に使えるようになりました。段階的に導入を進めたこともあり、今では見守り機器やICTツールの活用が当たり前になっています。

医療連携・家族共有を見据えた介護DXの未来像
インタビュアー:今後、さらにSensing WaveⅡの活用を拡大される予定はありますか?
(藤井施設長)
Sensing WaveⅡはクラウド型なので、施設外からもアクセスできるのが大きな利点です。実際、私も退社後に自宅から入居者様の状況を確認することがあります。管理者にとっても便利な機能です。
今後は特養での運用が軌道に乗ったので、ショートステイでも順次導入を進める予定です。
インタビュアー:将来的にどのような介護サービスの実現を目指していますか?
(藤井施設長)
技術の進化に合わせて、機械に任せられることは機械に任せる業務改善を進めていきます。特に見守り業務は、機械の方が効率的で確実です。
将来的には、協力医療機関とデータを共有して専門的なアドバイスを受けたり、遠方のご家族とも情報共有できるようになれば、さらに安心していただけるサービスが提供できると考えています。
「まずは小さく始める」ことが成功の鍵
インタビュアー:どのような施設に「Sensing WaveⅡ」をおすすめしたいですか?
(藤井施設長)
入居型施設には必須だと思います。特に、少ない職員で多くの入居者様を見守る必要がある施設には強くお勧めします。
意外かもしれませんが、Sensing WaveⅡは元気で動きのある入居者様にこそ効果を発揮します。自力で動ける方は、いつ起きて動き出すか予測できません。その動きを確実に把握できることが、事故防止につながります。
インタビュアー:見守りシステム導入を検討している施設の皆様へアドバイスをいただけますか?
(藤井施設長)
最初から全床に導入するのではなく、必要な方に必要な台数から始めることをお勧めします。少数でも実際に使ってみることが重要な第一歩です。
施設によって規模も構造も、抱える課題も異なります。他施設の真似をしても上手くいきません。自施設の課題を明確にし、それに合った使い方を少しずつ見つけていくことが大切です。今すぐにでも、小さな一歩を踏み出すことをおすすめします。
2025.09.25