「非認知能力」ってなに?なんで大切なの?どう育てるの?
近年、幼児期における非認知能力に対する関心が高まっています。TOPPANと東京大学Cedepは、2018年より共同研究として「幼児期の非認知能力の育ちを支えるプロジェクト」に取り組んできました。今回は、様々な心の力のことを指す非認知能力の中でも当プロジェクトでフォーカスを当てている5つの力について、わかりやすく解説していきます。
目次
・「非認知能力」とは
・「非認知能力」の中身
・「自己効力感」とは
・「内発的動機づけ」とは
・「感情知性」とは
・「向社会性」とは
・「セルフコントロール」とは
「非認知能力」とは
「認知能力」は、読み書き計算など、「頭の良さ」や「IQ」で表現される心の力です。それに対して「非認知能力」は、自分を大切にし、自分を高めようとする力、周りの人とうまくやっていく力、自分の感情をうまくコントロールする力など、「認知能力」以外の心の力のことを指します。
「非認知能力」を育むために、必ずしも特別なプログラムが必要というわけではありません。「非認知能力」の育ちには、子どもの日常生活の経験の積み重ねが大切だと考えられています。具体的には、子どもが感情の当事者である時(悲しかったり、寂しかったり、イライラしたり、うれしかったり…といった気持ちを経験しているまさにその時)に、先生やお友達が何をしてくれたのか?という経験を重ねることが大切です。
「非認知能力」の中身
「非認知能力」には、具体的には「自己に関わる心の力」、「社会性に関わる心の力」、そして、それら両方を支えるものとして「セルフコントロール」の3つの力が含まれます。「非認知能力」を育てるということはこれらの力を育んでいくということです。
TOPPANと東京大学Cedepの共同研究では、介入によって変化しうる可能性(可変性)と、ある課題で示される力が他の課題や物事に対しても当てはめることができる可能性(波及性)に着目しながら、幼児期に適した力として、「自己効力感」、「内発的動機づけ」、「感情知性」、「向社会性」、「セルフコントロール」の5つにフォーカスを当てています。
それでは、それぞれの力について見ていきましょう。
「内発的動機づけ」とは
自分から物事に興味を持ち、進んでそれに取り組んでいる状態の気持ちを「内発的動機づけ」と言います。一方「ごほうびがもらえるからやる」「 叱られるのが嫌だからやる」など、他の何かや誰かのために取り組んでいる状態の気持ちを「外発的動機づけ」と言います。特に子どもが「やらされている感覚」を持っている場合、ごほうびがもらえる時は一生懸命頑張るけれども、ごほうびがもらえなくなった途端やる気をなくしてしまうことがあります。
「自己効力感」とは
「自己効力感」は、「自分には何かを引き起こすだけの効果を及ぼす力があるという感覚(=やればできるという感覚)」のことを指します。自己効力感を持つことは、人間関係では「自分が頼めば、たいてい相手は助けてくれるという見通しを持てること」、何かの課題に取り組むときには「がんばって取り組めば、必ずできるようになるはずだという見通しを持てること」とつながります。
「セルフコントロール」とは
セルフコントロールは、「自分自身をコントロールする力」を指します。具体的には、「少し先の自分にとってもっとプラスになりそうなことを実現するために、今やりたいことをぐっとがまんする力」(=未来の自分のためのセルフコントロール)と、「他の人に迷惑をかけないように、または他の人のためになるように、自分の今やりたいことをぐっとがまんする力」(=他者のためのセルフコントロール)の2つの側面があります。
セルフコントロールがあることで、大切な目標に向かって粘り強くがんばり続け、それによって自分自身の色々な力をさらに高めることができます。また、他の人と円滑な関係を築いたり、維持したりして集団の中でうまく行動できるようになります。
「感情知性」とは
感情知性は、知的な側面の賢さではなく、「感情面での賢さ」を意味する言葉です。具体的には、「自分自身の感情を理解する力」「自分の感情が人に伝わるよう上手に表現する力」「他者の感情をうまく汲み取り必要に応じて他者の感情を調整する力」などが含まれます。
「向社会性」とは
向社会性は、「困っている人に共感したり、助けてあげようとしたりする思いやりの心」のことを指します。向社会性は、感情知性と密接に結びついたものであり、相手の気持ちを理解した上で、相手の立場になって、その人のためになるような適切な行動が取れることを指します。
おわりに
非認知能力に対する理解は深まりましたでしょうか?
今後も、TOPPANと東京大学Cedepは、これらの力にフォーカスを当てながら、保育・幼児教育の現場で保育者が子どもの非認知能力の育ちを「見とり・支える」ためのプログラム開発および効果検証を行っていきます。
2023.10.01