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『「学力」の経済学』にみる
"非認知能力" の効果的な育て方
近年特に注目を浴びている “非認知能力”。従来は社会学や教育学の関係者の間で主に話題になっていましたが、近年は一般家庭の保護者にもこのキーワードが普及しつつあり、「子どもの非認知能力を育てたい」と自ら情報収集をする保護者も増えています。非認知能力とはそもそも何なのか?育てるとどんな良いことがあるのか?実際にどんなことをすれば良いのか?トッパンの教育サービス開発にもご協力いただいている、慶応義塾大学の教育経済学者である中室牧子教授が著した『「学力」の経済学』をもとに解説します。
『「学力」の経済学』
書籍名:『「学力」の経済学』
著者名:中室牧子
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
多くの著名人からも絶賛されている話題の一冊。これまで個人の経験で語られてきた教育に対して、データに基づいた科学的根拠から解き明かされている。
目次
・非認知能力とは
・なぜ注目されている?非認知能力を育てるメリット
・どうすれば育つ?非認知能力を鍛える方法
・幼児期に「できた!」を体感できる『できるーと』
非認知能力とは?
非認知能力について、本書では以下のように記載されています。
❝ IQや学力テストで計測される認知能力とは違い、「忍耐力がある」とか、「社会性がある」とか、「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。 ❞
テストの点数などと違って数値化も難しく、個人の特性による差もあるのでなかなか目に見えにくい力ですが、なぜこの非認知能力が注目されているのでしょうか。
なぜ注目されている?非認知能力育成に力を入れるメリット
非認知能力が注目されている理由として、ひとつは世の中の急速なデジタル進展やコロナウイルスの大規模流行による生活様式の変化など、少し先の未来も予測できないような社会の中でも生き抜くために必要な力として重要視されていることがあげられます。
もうひとつの理由としては、将来の学歴や年収などに大きく影響する力であることがあげられます。これは、"ペリー幼稚園プログラム" という就学前の子どもたちに対する教育プログラムの実験から明らかになっています。
ペリー幼稚園プログラムとは、1960年代から開始され現在も追跡が続いているミシガン州のぺリー幼稚園で実施された実験であり、低所得のアフリカ系米国人の3~4歳の子どもたちに対して「質の高い就学前教育」を提供することを目的に行われているプログラムです。
「1週間につき1.5時間の家庭訪問」や「子ども6人を先生1人が担当する少人数制」といった手厚い教育を行ったところ、このプログラムを受けた子どもたちとそうでない子どもたちとの間で「IQ」や「所得」、「持ち家率」など、各項目においてプログラムを受けた子どもたちの方が将来的に見ても優れていることがわかりました。
つまり、幼児期に非認知能力を育成することでその後の人生が経済的に安定することが判明しているのです。
どうすれば育つ?非認知能力を鍛える方法
「でも実際に非認知能力を伸ばすのって大変そう…」「実際に何をすれば良いのかわからない…」といったように、非認知能力を育成したくてもその方法がわからないという方が多いのではないでしょうか。
本書では「非認知能力を鍛える方法」がいくつか記載されています。
例えば、非認知能力の中でも重要な力の一つである「自制心」については、以下のように記されています。
❝ ーー「自制心」は、「筋肉」のように鍛えると良いと言われています。筋肉を鍛えるときに重要なことは、継続と反復です。腹筋や腕立て伏せのように、自制心も、何かを繰り返し継続的に行うことで向上します。
たとえば、先生に「背筋を伸ばせ」と言われ続けて、それを忠実に実行した学生は成績の向上が見られたことを報告している研究があります。(*1) もちろん、背筋を伸ばしたことが直接、成績に影響を与えたわけではありません。「背筋を伸ばす」のような意識しないとしづらいことを継続的に行ったことで、学生の自制心が鍛えられ、成績にも良い影響を及ぼしたのでしょう。❞
自制心を鍛えるには「意識的に」継続させるということが重要なようです。
また、「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことも自制心が鍛えられるようです。レコーディングダイエットで成功する人が多かったことがその一例としてあげられます。
そして、「やり抜く力」も重要な非認知能力の一つです。この力を育てるためには「心の持ちよう」が大切であると記されています。(*2)これは、「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」と考えられる子どもが「やり抜く力」が強いということが明らかになっています。
そのため、子どもに対しては定期的に可能性を遮断させないような声かけをするのが効果的なようです。
幼児期に「できた!」を体感できる『できるーと』
非認知能力を育てることの意義がお分かりいただけたでしょうか。
特に就学前の幼児期のタイミングにアプローチするのが最も効果的で、トッパンではそんな幼児期の4~6歳の子ども向けに『できるーと』という学習教材を提供しています。『できるーと』は、子どもの「できた!」を大切にした、えほんとアプリを使って親子で学べる新しい教材です。
教材は子ども用の「ワークアプリ」「ワークえほん」、保護者用の「おうえんアプリ」の3つです。「ワークえほん」を購入するとアプリは無料で利用できるのですが、なかでも保護者用「おうえんアプリ」では、前述した子どもの非認知能力を育成するのに効果的な言葉のかけ方をレコメンドしてくれる機能も備わっています。
さらに、子どもの間違い方に応じてレコメンドされる言葉が異なるので、問題を間違ってしまってもやる気をなくすことなく楽しく取り組み続けることができます。
おうち時間の増えた今、ご家庭内でぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
注釈
(*1) 背筋を伸ばすことで自制心が鍛えられたことを明らかにした研究は、Muraven,M., Baumeister, R. F., & Tice, D. M. (1999). Longitudinal improvement of self-regulation through practice: Building self-control strength through repeated exercise. The Journal of Social Psychology, 139(4),446-457.
(*2)スタンフォード大学の心理学者・ドュエック教授による主張。参考文献)ドュエック教授の近著の邦訳(今西康子訳)『「やればできる!」の研究ー能力を開花させるマインドセットの力』(草思社)
2023.10.01