個人でできるD&Iの具体的な取り組みやアクション例
- TOPPAN CREATIVE編集部
近年、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)への注目が高まっています。ビジネスの世界では自社の発展や人手不足の解消を目的として、多様な人材を採用し、活躍してもらえるように制度や環境を整えることでD&Iを進めるケースがよくみられます。
ではD&I社会の実現に向けて、個人レベルで実践できる取り組みにはどのようなものがあるでしょうか。
本記事ではD&Iに個人が取り組むにあたって重要な考え方や、具体的なアクションを紹介します。
D&Iの取り組みで個人が知っておきたい重要な考え方
個人がD&Iに取り組むにあたって大切なことは、まず自分自身をよく知ることです。
では具体的に自分自身のなにを知ればよいのでしょうか。ここでは4つの考え方を紹介します。
自分自身の欠点や弱点を知る
はじめに重要なのが、自分の欠点と向き合い、受け入れる心をもつことです。自分の評価を落とすようで抵抗を感じるかもしれませんが、素直に認めてしまいましょう。
ただし、欠点を認めることは自己否定とは異なります。「◯◯だからわたしはだめな人間だ」と否定するのでなく、「◯◯という欠点がある」と認めるだけで十分です。
自分の欠点を受け入れられると、他者の欠点や弱点にも寛容になり、D&Iの実現に一歩近づきます。
自分自身の価値観が常識でないことを認識する
次に、自分の価値観があたり前ではないと認識しましょう。
多くの人は自分の価値観が「普通」だと感じがちですが、D&Iにおいては「普通で常識的な価値観」は存在しません。
他者を自分の価値基準に当てはめてみてしまうと、自分と異なる価値観に出会った際に「ありえない」と否定して排他的な言動をとりやすくなり、D&Iの実現から遠ざかってしまいます。
「普通は…」「◯◯はあたり前」といった自分の発言や考えを、日頃から客観的に観察してみましょう。
自分自身にある無意識の偏見や差別を認識する
自分の価値観のなかには、無意識のうちに偏見や差別が含まれているかもしれません。この無意識の偏見や差別を「無意識バイアス」といいます。
たとえば「女性は感情的になりやすい」「外国人は自己主張が強い」などの考えが無意識バイアスにあたります。
無意識ゆえに気づきにくいものですが、まずは「自分にも無意識バイアスがある」と認識しましょう。この認識によって自分の言動を客観的に振り返っていけるようになります。
固定観念にとらわれず積極的に相手を知ろうとする
他者と接するときには、相手に興味を持ち、人柄や大切にしている価値観を積極的に知ろうという姿勢が大切です。
先述の無意識バイアスにも通じますが、たとえば「障がい者」や「外国人」と聞いて頭のなかにパッと浮かぶイメージはあなたの固定概念かもしれません。よく話してみたら全然イメージと違った、身構える必要がなかったと気づく機会もあるでしょう。
性別や年齢、国籍、信仰、性的指向、障がいに対する固定概念にとらわれず、相手をひとりの人として尊重し、積極的に知ろうとする姿勢で接しましょう。
個人でできるD&Iの具体的な取り組みやアクション例
ここからは、個人レベルでも実践できるD&Iの具体的な取り組みやアクションについてみていきましょう。
自分自身の価値観を押し付けない
まずは、自分の価値観を他者に押し付けないことです。
誰しも自分なりの正しさをもっていますが、それは自分だけの価値観によるものです。他者も同様に、その人なりの正しさ、その人なりの価値観をもっていることを忘れないようにしましょう。
十人十色というように、価値観は人それぞれ異なります。たとえば結婚していて子どもがいない女性に対して「子どもはかわいいから産んだほうがよい」というのは、相手からすれば押し付けと感じるかもしれません。
良かれと思って発言したつもりでも、相手を傷つける、相手の意欲を奪うおそれがあるため、気をつけましょう。
自分の欠点や弱点を開示する
自分の欠点や弱みに気づくことができたら、その弱みを周囲にわかってもらいましょう。
とくにリーダーポジションにある人にとっては、自分の弱みを見せるなど抵抗があるかもしれませんが、自己開示は信頼関係の構築に不可欠です。
伝えられたメンバーは「リーダーも完璧ではないのだ」と気づき、弱い自分を見せる勇気の大切さに触れます。互いを尊敬し、助け合いが生まれやすくなります。
欠点も人それぞれですから、チーム全体で互いの違いを受け入れて各々の弱点を補い合うことで、より結束が強まり、成果をあげられるチームへと成長できるでしょう。
他者からのフィードバックを受け入れ、活かす
職場だけではなく、家庭や友人関係においても、誰かからフィードバックをもらったときには、それを積極的に受け入れるようにしましょう。
フィードバックのなかには、素直に受け入れにくい内容もあるかもしれません。しかしフィードバックは相手の成長を思ってされるものです。自分とは異なる視点や経験から学びを得て、仕事や生活に活かせれば自分の成長やチームの成長にもつながります。
多様な価値観を自分に取り入れることで、より柔軟でクリエイティブな考え方ができるようになるでしょう。
D&Iの研修やイベントに参加する
客観的な知識や情報を得るには、D&I関連のイベントやセミナーへの参加もおすすめです。
多様性・包含性を特徴とするD&Iは、常に新しい価値観を取り込み、変化を続けています。参加者どうしで意見を交換しながら進める形式のイベントでは、ほかの参加者から新しい気づきを得られるかもしれません。イベント情報サイトなどで積極的に探してみましょう。
TOPPANにおけるD&Iの取り組み事例
ここで、TOPPANの社員が実際に行ったD&Iの取り組みを、本人の感想も交えて2例ご紹介します。
事例①:周囲への影響を考慮した積極的な育休の取得
Aさん(男性)は、夫婦で子どもと密接に向き合う時間をもちたいという想いから、早い段階で職場に育休の意向を伝え、管理職の職責を担いつつ2か月間の育児休業を取得しました。チームは人的な余裕がある状況ではありませんでしたが、想定される事柄のリストアップや、業務の棚卸し、引き継ぎの調整など対策をとったうえで育休に臨みました。
復職後は、パートナーと家事・育児の分担をしながら働いており、本人いわく、働き方への意識も変わったといいます。時間の使い方は勿論のこと、定期的に自分の業務を棚卸ししたり、業務をチーム内で共有し合うことを改めて実践することで、誰が休んでも業務を回せる状態にしているとのことです。
今後、男性の育児休業はさらに広まるでしょう。そうなったときにAさんの育児経験は、他の社員が育休を取得する際の理解や共感にもつながります。自身の仕事と育児の両立が次の世代に与える影響を考えながら、自然体でD&Iに取り組んだ例のひとつです。
事例②「手話/ろう文化の紹介」でコミュニケーションの活性化
聴覚障がいのあるKさんの職場では、Kさんの入社後、「聴こえに関する勉強会」を開催しました。Kさん自らが勉強会資料を作成し、自身の特性やコミュニケーションについてお話をしました。また、手話やろう文化の理解を広めたいという想いから、月初めの朝礼では毎回、手話の紹介をしたり、掲示物でろう文化の発信なども行っています。
さらに、ランチタイムに「手話勉強会」を開催することで、手話を広めるだけではなく、普段、業務上接点のないメンバー同士で交流する機会が創出され、職場のコミュニケーションの活性化にもつながっています。
一人ひとりの「違い」を知り、お互い尊重し合うことで、新たなコミュニケーションが生まれ、職場の活性化につながる、D&I推進の事例です。
D&Iの社内研修のご相談はTOPPANへ!
D&Iに個人で取り組むには、自分自身をよく見つめ直して自分が持つ弱みや価値観に気づくことが最初のステップです。自分の価値観は数ある価値観のひとつにすぎないと認識し、他者が持つ自分と異なる価値観や考え方を尊重して受け入れていくことが大切です。
また自分のことは自分では気づきにくいものですから、他者との関わりによってはじめて自分の固定概念やバイアスを自覚できるかもしれません。
本記事ではD&Iに関して個人レベルで実践できる取り組みを紹介しましたが、企業レベルでD&Iの概念を浸透させ、推進していくには社員研修が効果的です。
TOPPANではD&Iに関する社内研修や育成プログラムの挿入支援を提供しています。またLGBTQ・障がい者・高齢者などあらゆる人たちに配慮した表現を学べる「D&I表現ガイドブック」は現場ですぐにお使いいただけます。お気軽にお問い合わせください。
2024.08.26