D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とは?
企業経営における必要性や推進方法を解説
- TOPPAN CREATIVE編集部
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とは、多種多様な人材が互いに認め合い、自分の持つ能力を発揮して活躍することです。近年は社会全体にD&Iへの関心が高まっており、D&I推進に取り組む企業も増えています。ただしD&Iの必要性や目的が不明瞭なままでは成果が出にくく、一過性の取り組みとなりかねません。
本記事では企業にD&Iが必要とされるようになった背景や、取り組むメリットを整理したうえで、具体的な推進方法を紹介します。
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とは?
D&Iはダイバーシティ(Diversity)&インクルージョン(Inclusion)の頭文字をとった用語で、厚生労働省では下記のように定義されています。
年齢や性別、国籍、学歴、特性、趣味嗜好、宗教などにとらわれない多種多様な人材が、お互いに認め合い、自らの能力を最大限発揮し活躍できること
引用:広報誌「厚生労働」2022年9月号 特集2|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202209_00002.html |
ダイバーシティは多様性を意味しますが、単にさまざまな人たちが在籍しているだけでは組織の成長は難しいでしょう。そこで、あらゆる人材が互いに尊重し、能力を最大限発揮できるようにするインクルージョンの考え方が浸透してきました。
企業の取り組みとしては女性管理職の登用や障がい者・高齢者雇用の促進、働き方改革(リモートワークや時短勤務)などが挙げられます。
なお近年はD&Iに公平性を表すエクイティ(Equity)をくわえ、DE&Iとよばれるケースも増えています。
なぜD&Iに取り組む必要があるのか
なぜ企業はD&Iに取り組むべきなのでしょうか。社会的にもビジネスの世界でも重要性が増しているD&Iの、歴史的背景から紐解いてみましょう。
社会の人権意識の高まり
D&Iは米国から広がりました。1960年代からの公民権運動や女性解放運動など人権意識が高まると、個人を尊重しつつ共存する多文化主義が現れます。その後21世紀に入って、単に多様なだけでなく、互いの力を最大限に発揮できる包括的社会へと進化していきました。
日本では、1980年代までは同質性を重く見る傾向にありましたが、1986年の男女雇用機会均等法施行、1999年の男女共同参画社会基本法施行など、グローバル化の進展とともに多様性の考え方が浸透し、企業や教育機関を中心にD&Iの重要性が認められてきています。
D&Iの推進は、企業戦略としても重要なCSR(企業の社会的責任)活動のひとつとなっているのです。
労働人口の減少
少子高齢化は、生産年齢人口の減少による深刻な人手不足や、後継者不足をもたらしています。
不足した労働人口を補うためにも、高齢者や女性、外国人など、従来は活躍の場が限定されていた人材を、積極的に登用する動きが広まってきました。
労働者の多様化に合わせて、誰もが働きやすい多様な雇用形態や労働環境の整備も進められています。
D&Iを意識した経営を行うメリット
企業がD&Iを推進するメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
● 優秀な人材の確保
● イノベーションの創出
● 従業員満足度の向上
● 炎上リスクの回避
● 企業イメージの向上
順番に見ていきましょう。
優秀な人材の確保
D&Iに取り組み、従業員にとって働きやすい環境を整えている企業は、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。優秀な人材の多くは報酬や肩書きといった従来の評価にとらわれず、自分の能力や個性をより発揮できる場を求めています。とくに若年世代は、柔軟な就労形態や価値の多様化を重視する傾向があるのです。
また、ライフスタイルや価値観の異なる人が互いの働き方を認め合い、補完し合う関係性を構築することで、生産性が最大限に高まる職場づくりも期待できます。
イノベーションの創出
個々人の信念や価値観を尊重し合い、信頼のうちに考えを高め合うことにより、相互の関わり合いのなかから新たな価値を生み出すイノベーションの創出の可能性が大きく高まります。
文化も価値観も異なる視点からユニークな意見が集まり、刺激し合うなかで、画期的な新しいアイデアが形になっていくのです。
また、幅広い人材が集まれば多様化する市場ニーズも捉えやすくなり、顧客満足度の向上や新規ビジネスの創出にもつながるでしょう。
従業員満足度の向上
D&Iに積極的に取り組む企業は「働きやすい会社」「働きがいのある会社」として評価され、企業イメージを高めることができるでしょう。単に多様な人が集められているのではなく、一人ひとりが役割と持ち場を得て、自分らしく力を発揮できるのが、多様性を包含した職場です。仕事への満足感や働きがい、モチベーションも高まり、組織への信頼や帰属意識の強化、定着率の向上も期待できます。
炎上リスクの回避
D&Iに取り組むと、差別や偏見、言葉づかいや表現に敏感になり、法令遵守やリスク回避の効果があります。
コンプライアンス意識が高まっている昨今において、多様性に欠ける組織は炎上リスクの高い傾向にあります。とくに、ユーザーと直接コミュニケーションをとる機会が多い販促活動などでは、不用意な言動からトラブルに発展し、企業価値の毀損や不買活動まで招きかねません。
多様性を認め合うD&Iの考え方が従業員に浸透していれば、ふだんの関係構築のなかでリスク回避できる風土を醸成できます。
さらに、D&Iの意識が社内に浸透すればハラスメントなどのトラブル抑止も期待できます。
企業イメージの向上
D&Iは、いまや世界が重視する社会の概念です。そのためD&I推進は、企業の印象を高める必須の取り組みともいえるでしょう。
たとえば、経済産業省と東京証券取引所は共同で、女性活躍を推進する企業を「なでしこ銘柄」、男女を問わない共働き・共育ての推進に優れた企業を「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」として選定し、お墨付きを与えています。
D&Iは株価や採用など企業戦略に大きな影響を与える取り組みなのです。
企業のD&Iの推進方法・ステップ
では、実際にD&Iはどのように推進していけばよいのでしょうか。
経済産業省は7つのアクションを提示しています。
1. 経営戦略への組み込み(ダイバーシティ・ポリシーの明確化)
2. 推進体制の構築(経営レベルでの推進体制の構築)
3. ガバナンスの改革(取締役会の監督機能の向上)
4. 全社的な環境・ルールの整備(人事制度の見直し・柔軟な働き方の実現)
5. 管理職の行動・意識改革(管理職に対するトレーニングの実施)
6. 従業員の行動・意識改革(多様なキャリアパスの構築)
7. 労働市場・資本市場への情報開示と対話(経営計画資料や有価証券報告書等での開示)
D&I推進のポイントは目的の明確化です。「社会的に求められているから」といった受け身の姿勢では、前向きに取り組みづらく、成果も得づらいでしょう。
期待する社内変化や経営への影響をあらかじめ明らかにしておくことが重要です。
D&Iを実現するためのポイント
ここからは、D&Iを実現させるためのポイントをみていきましょう。
施策を一部の属性だけに限定しない
日本企業では女性の活躍に焦点を当てたD&I活動が多くみられますが、D&Iは女性のためだけに行うものではありません。
ダイバーシティ(多様性)には性別だけでなく年齢や国籍などさまざまな要素が含まれ、それらを包括するD&Iはすべての属性を網羅して「誰ひとり取り残さない」状態を目指すものです。
特定の属性に偏った施策はかえって不公平感を生みかねないため、注意しましょう。
研修などで社員の意識改革を推進する
D&Iは、経営層や管理職の理解だけでは進みません。従業員全体に浸透させるため、社内研修などを地道に行い、意識の変化を促しましょう。
人は過去の経験や見聞きした情報からの影響で「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」が培われていきます。育児休暇と聞くと女性、単身赴任と聞くと男性が思い浮かぶなど、心当たりはないでしょうか。良かれと思っての言動が思い込みにより相手を傷つけ、人間関係を悪化させるケースが少なくありません。
D&Iの実現には、従業員一人ひとりが自身の無意識の思い込みに気づき、言動を見つめ直すきっかけづくりも重要なのです。
コミュニケーションを活性化させる仕組みを整える
D&Iの推進には、コミュニケーションの活性化による関係性の構築が不可欠です。
本音で対話するからこそ、一人ひとりの違いについての理解を深めることができます。そのためには、自分をさらけ出せる安心感の醸成が欠かせません。
チームでのランチ会や面談などの機会を設けて、少数派でも安心して意見を述べられるよう心を配りましょう。
風通しのよいコミュニケーションによって相互理解が深まり、強固なチームワークを構築する手助けとなります。
D&Iの社内研修のご相談はTOPPANへ!
D&Iが社会的に注目される昨今、企業においても社会に対して果たすべき責任として取り組みが求められています。企業におけるD&Iとは性別や年齢、国籍、宗教、障がいの有無にかかわらず、一人ひとりが尊重され、能力を発揮して活躍することです。
D&Iは従業員が一丸となって取り組むものですが、まずは経営層、管理職など上層部への価値観教育を早期に行い、全社にメッセージを伝えていく手法が効率的です。
TOPPANでは、企業の事業内容やニーズに応じたオリジナルの「D&I表現ガイドブック」を制作するほか、社内研修や社員育成のためのプログラム導入支援サービスを提供しています。
数々の実績をもとに、社員への浸透ノウハウがないなど企業ごとに抱えるD&I推進の悩みにお応えします。お気軽にお問い合わせください。
2024.08.26