校正の方法とは?
初稿から校了までの手順とコツを解説
- TOPPAN CREATIVE編集部
校正とは、文章を正しく整えていく作業です。校正によって修正箇所を指定し、修正稿が戻ってきたら、次の校正では指示通りに訂正されたかをチェックしていきます。このように、校正と修正を何度か繰り返して校了に至るのです。
本記事では、校正の作業手順と、校正でチェックすべき要点を具体的に解説するとともに、品質の高い校正にするための実践的なポイントを紹介します。
校正の手順
はじめに、校正作業がどのような流れで行われるかを理解しておきましょう。
校正には、入稿から校了までの各段階に応じて、初校、再校、著者校、色校正、校了といった工程があります。
初校
執筆原稿をもとにレイアウトされたデザインを出力したものに対する校正を「初校」といいます。出力したもの(校正紙)を「ゲラ」といい、元原稿と初出力ゲラを引き比べて行う校正作業が初校です。
初校のゲラは、原稿のテキストデータが初めてデザインされた状態のため、チェックポイントが多くなりがちです。そのため、初校には時間がかかることが多くなります。
昨今では手書き原稿を逐一打ち込むことは稀になりましたが、それでも初回は流し込みに誤りがあるなど、レイアウト全体での確認が必要です。原稿どおりの内容が統一されたデザインで正しく流し込まれているかを確認した後、全体を通した素読みを行い、表記の不具合を洗い出します。
<初校の主な手順>
1. ゲラ確認:入稿した原稿がすべて初校となって順番どおり出力されているかを確認
2. 引き比べ校正:初校ゲラが原稿で指定した内容のとおりレイアウトされているかを確認
3. 素読み校正:初校ゲラだけを通し読みし、誤記や誤用がないかを確認
訂正箇所は校正記号を用いて赤字で書き入れます。修正が必要か悩むものは、赤以外の色や鉛筆で質問や修正案を書き入れてください。
再校(二校)
初校に記載された訂正指示を反映したもので行う第2回の校正を「再校」といいます。初校に問題がなければ、指定どおり修正されているかを確認すればよい作業のため、初校よりは負担が少ない作業です。
ただし、後述する執筆者の校正(著者校)で編集を要するほどの大掛かりな修正指示が入ったり、共同の執筆者が多く統合に手間がかかるものだったりすると、再校でも統一指示が残るなど、修正箇所が多くなる場合があります。訂正指示がなくなるまで校正を繰り返すことになり、三校、四校と校正の回数が増えます。特に慎重な作業を要するものは、念校といって、校正終了の直前に最終確認を行う校正を追加する場合もあります。
<再校の主な手順>
1. 引き比べ校正:再校ゲラが初校ゲラで指定した内容のとおり修正されているかを確認
2. 素読み校正:再校ゲラだけを通し読みし、修正の前後の違和感や全体の誤記などを確認
著者校
インタビューや対談などの発言内容の記載や寄稿など、製作作業者以外に著作者が存在する場合、各関係者へゲラを送って内容を確認してもらうことを「著者校」といいます。
内部での校正で赤が多く入っていると確認しづらいため、著者校に送るゲラが初校か再校かは仕上がり具合によります。
関係者に対し、ゲラの表記内容に違和感がないか、意図しない表現になっていないかなどを確認してもらいます。スケジュールや編集工程、修正指示の量などによりますが、内容確認で1回、修正指示が反映されているかの確認で1回、計2回行われるのが一般的です。
色校正
実際の紙とインクでの印刷具合を確認し、色味の調整を行う作業を「色校正」といいます。モニター上で再現される色(RGB)は、インクを調合して紙に染み込ませる(CMYK)と色が沈んでみえるなど、刷り上がりに差異が生じやすいため、色味のみを確認する校正です。商品カタログや写真集など、特に色味が重要視されるコンテンツで行われます。
本印刷時の紙に出力するものは「本紙校正」といいます。本印刷同様の印刷機とインクを用いて製版して試し刷りする「本機校正(清刷)」と、校正専用の出力機で行う「簡易校正」があります。製版作業まで行う本機校正はかなりのコストがかかります。
校了
何回かの校正を経て、訂正箇所がなくなり校正が完了することを「校了」といいます。もうこれ以上修正はないという宣言です。これに対し、いくつかの訂正箇所が残ってはいるものの、簡易な修正であることから、印刷所で修正を確認して進めてよいとする完了の宣言を責任校了、略して「責了」といいます。校了は編集者など発注側の責任、責了は印刷側の責任になります。
校正で見るべきポイント
ここからは、ゲラを通し読みする際に主にチェックしておきたい校正ポイントをみていきましょう。
誤字脱字
誤字脱字に代表される表現の誤りは、どんなに気をつけていても発生します。とはいえ、ケアレスミスとも言える誤記が散見されるコンテンツは読者からの信頼を失ってしまうため、何度も確認しましょう。特に文章量の多いものは、複数人の目で確認することをおすすめします。
誤記には、誤字脱字のほかにも、衍字(不要な文字が連続している)、英文のスペルミス、同音異義語の誤用、文字化け、ダミーの消し忘れ、重言、二重敬語、ラ抜き/イ抜き/サ入れ/レ足す言葉などがあります。
表記ゆれ
表記ゆれは、ひとつの言葉が二通り以上の表記方法で表されているものをいいます。特に、すぐ近くの箇所で表記ゆれがあると目立ちますし、統一感が失われて散漫な印象を与えてしまうおそれがあるため、全体で基準を設けて表記を揃えましょう。
表記ゆれを起こしやすいものには、漢字とひらがな、送り仮名、接続詞、漢数字と算用数字、全角と半角、西暦と和暦、単位やカンマの付け方などが挙げられます。また、文末表現で常体と敬体がまじっている場合、表記ゆれなのか敢えて表現しているのかを見極める必要があります。
そのほか、出典の掲載方法、英文の省略表記なども統一がとれやすいため、全体で確認をしておきましょう。
表現(日本語)の誤用
語句の用い方の誤りや文章の構造的な問題についても確認が必要です。
用語の誤りでは、業界用語、法的用語、差別用語、慣用表現など、表記の誤りや用い方の誤認識などがあります。
文章の構造的な誤りでは、1文中の受動態と能動態の混在、主述の表現の矛盾、前文と後続文との係り受けの誤り、接続詞の誤用、列挙された項目と総括内容の矛盾、引用元の記載内容の誤認識による本文の論理矛盾などが挙げられます。
形式の矛盾
個別の文章に問題がない場合でも、レイアウト全体でみると構造上に問題が生じる場合もあります。文章の内容に気を取られると形式的な整合がおろそかになりがちです。単独で確認をしておきましょう。
形式的な矛盾には、目次と見出し・ページ数の不整合、柱(ヘッダー・フッター)と見出しの不整合、本文と画像の位置のずれ、参照先の不整合、URLやQRコードのリンクの誤りなどがあります。
特に、フォーマットを使って作成することの多い表紙まわりなどの制作物は、ビジュアルデザインに気を取られて、ダミーのコードや値段が残ってしまう致命的なエラーを招く恐れもあります。複数人でチェックすることをおすすめします。
固有名詞
固有の名称やデータの表記などは、出典や公式サイト、政府の発表などの信頼できる根拠資料をチェックし、事実確認をとりましょう。
主には、人名、組織名、商標、商品名、作品名、地名などの固有の名称、年月日や時刻、生没年、金額、単位、順位などの数値表現、歴史的整合や時間の経過など時系列表現があります。そのほか、風聞、キャッチコピー、記者会見の発言内容、判決文、論文、各種権利・法なども事実確認を行い、正確に表記する必要があります。
校正の精度を上げるコツ
膨大な確認事項のある校正作業は、どのように精度を高めていけばよいのでしょうか。
ここからは、校正の品質を上げるための方法をいくつか紹介します。
文章を読もうとしない
文章を通し読みする素読み校正の場合、特に心得ておきたいのが「校正時には文章を読まない」ことです。
脳内では、状況把握の効率化のため、多少の文字が入れ替わっていても既知の言葉に置き換えて認識しようとします。これを「タイポグリセミア現象」といいます。日常生活では便利ですが、文字の間違いを探す校正では邪魔な現象です。
文章の意味を理解しながら読むと、単純な文字の間違いは見落としがちになります。このため、表記の誤りを確認する校正では、文のかたまりではなく単語一つひとつを区切って確認するようにしましょう。文章の構造や意味的な誤りを確認する校正とは回を分けて作業を行います。校正は、着目する観点に応じて何度も通しチェックを行う作業方法が要求されるのです。
音読する
文章を声に出して読む確認もおすすめです。話す速度で確認することで、黙読だと素通りした文字の間違いの発見につながる場合もよくあります。
また、実際に朗読してみることで、表現を客観的に確認することもできます。同音の読みの連続、一文の長さ、類似表現の重なり、息継ぎや思考のタイミングと句読点の位置のずれなどに気づき、文章のリズム感やイメージを広げる表現の改善につながります。
音声読み上げのコンテンツなど、ユニバーサルデザインの品質向上にも役立つでしょう。
ダブルチェック体制で行う
人の目で行う校正は、気になるポイントや素通りしてしまう見落としの傾向などが人によって異なります。このため、校正は複数人の体制で行うのが基本です。
ペアで行う通し読みのダブルチェックでは、それぞれがチェックしたものを交換し、再度校正を行っていく方法が一般的です。そのほかには、片方が修正前のゲラを読み上げ、もう一方が修正後のゲラを確認する突き合わせ校正もあります。
特に間違いがゆるされない表記については、できるだけ人員と時間を設けて複数のチェック体制を確保しましょう。
プリントアウトした原稿でチェックする
モニター上でデータをスクロールしながら確認するより、紙に出力したものをページ単位で確認するほうが集中しやすいとされます。モニターは入力デバイス(マウスやキーボード)と離れている上、赤ペンをもつような手軽な操作ではないことから、思いついたことを臨機応変に入れ込むのが難しく、単に文章を読むだけになりがちだとする校正者もいます。また、実際の大きさとは異なるため、最終的な見え方のイメージがないまま校正を重ねてしまい、最終段階になってから大きさのまずさに気づいてやり直しを招くリスクもあります。
また、ゲラを印刷して校正する際は、一つ前のゲラも一緒に印刷しましょう。片方がデータだと突き合わせが難しくなります。
時間を空けて再度読む
校正は、確認事項ごとに繰り返して通し読みを行うのが、集中力を途切れさせないコツです。このとき、連続して再読すると前回の意識をひきずってしまい、見落としが生じやすくなります。できれば数時間から半日程度は時間を空けて、確認の視点の切り替えを行いたいところです。
効果的な校正で高い品質の文章にするため、人にも時間にも余裕をもって校正の工程を組むよう心がけましょう。
校正の方法・コツまとめ
以上、校正の主な流れと確認ポイント、効果的な校正作業のコツをみてきました。
高い品質を目指す校正作業は、表面的な統一から内容に踏み込んだ事実確認まで多岐にわたり、すべてを人の目で行うには膨大な負荷がかかります。
近年は、データ上で作業を行うデジタル校正も普及しつつあります。デジタル校正は単純な表記の誤りなど、一括した作業を得意とするため、人の目と組み合わせれば高い相乗効果を期待できます。
また、オンラインで行うデジタル校正であれば、複数人の校正の統合管理が可能で、時間の大幅な短縮も図ることができます。タブレットを使えば手書きでの校正指示も可能で、直感的に操作できる上、差し替えのデータファイルの添付や注釈、チャットでの議論などの機能を校正と連動させることにより、紙へ書き込む校正より効率よく作業が進みます。
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2023.12.13