コラム

商品開発のアイデアを生むためのポイントと発想法を紹介

  • TOPPAN CREATIVE編集部

優れたアイデアはどのようにすればひらめくのでしょうか。独創的なアイデアや、課題の核心を突くアイデアは、商品開発において欠かせないものです。
本記事では、商品開発でアイデアを生み出すためのヒントとして、豊かな発想を生むためのポイントや、活用したいフレームワークを紹介します。


商品開発のアイデアを生むためのポイント

アイデア出しは「偶然のひらめき」に依存する部分もありますが、いくつかのポイントを押さえることで、優れたアイデアを出せる可能性を高めることができます。ここでは、商品開発におけるアイデアを生むための5つのポイントを見ていきましょう。

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「不」の解消に着目する

どんなに独創的なアイデアでも、まったく無の状態から勝手に生まれてくるわけではありません。発想のヒントは、それまで集めてきた情報のなかに眠っています。
特に注目したいのが「不」のつく状態です。「不」は、何らかの欠けた状態、すなわち課題や解決すべき要素が隠れているものとしてとらえることができます。
特に、消費者からの不満や不便、不自由、不公平といった意見は、その意図を掘り下げて考えることで、新たなニーズの発見につながる可能性があります。

質より量を意識する

ひらめきにもプロセスがあります。大きく分けると、できるだけ多くのアイデアを出しあう発散のフェーズと、出したアイデアを取捨選択していく収束のフェーズの2段階を踏んでいくと効果的です。
発散のフェーズでは、質にこだわらず、とにかく大量のアイデアを出し合うことが重要です。レベル感も粒度も不揃いの方が、多角的な視点をもてるため歓迎されます。
以下の点に着目してアイデア出しの場をつくるとよいでしょう。

 |リラックスできて何でも話しやすい雰囲気をつくる
 |その時間の中で何を目指すのか、目的やゴールを共有する
 |批判や評価を禁止する
 |どんな意見が出てきても歓迎する
 |出てきた言葉に便乗し、連想や言い換え、造語などでアイデアを増やす
 |ありえないと思ったことも言葉にする
 |どんな言葉も書き留める
 |時間制限を設けて集中しやすくする
 |適度に休憩を入れたりテーブルを変えたりしてリフレッシュする時間をつくる

固定観念を捨てて考える

斬新なアイデアを生み出すには、常識にとらわれない自由な発想が必要です。思考の枠は効率化を図るうえでは重要ですが、新規性を求める際には、いったん外しておく方がよい場合もあります。
固くなった思考を解きほぐすには、まず自分に固定観念があることを認め、強制的に視点をずらすところから始めましょう。以下を参考に、発想の転換を試みてください。

 |自分が何にこだわりやすいのか(思考のタイプ)を知る
 | 出てきた考えを疑う
 |立場や性別などの属性を変えて考える
 |場所や地域を変えて考える
 |言葉や文化などの環境を変えて考える
 |時間や時代を変えて考える
 |分野や領域を変えて考える
 |生物を変えて考える

既にある要素を掛け合わせてみる

独創的なアイデアを生み出すには、異なる要素を掛け合わせて考えることが重要です。既知の技術、消費者、市場、業界のなかから、これまで出合うことのなかった組み合わせを選び出し、「この要素とこの要素が出会ったらどのような結果になるだろう」と想像をふくらませてみましょう。
要素や変数が多様なほどバリエーションが広がり、これまでにないアイデアが生まれる可能性も高まります。以下のような応用を参考に、掛け合わせてみるとよいでしょう。

 |異なる分野の知識を組み合わせる
 |異なる文化や習慣を当てはめる
 |目的を変える
 |順序を逆にする
 |拡大・縮小する
 |別のものに置き換える
 |小さく分解した後、部分的に別のものを組み込む

他社事例を参考に考えてみる

すでに結果を出している他社の事例をヒントにする方法も効果的です。成功した要因を分析し、さらに課題として残されている点を深掘りすれば、二番煎じにとどまらないアイデアが生まれる可能性が高まります。
以下のような点に着目し、5W1Hなどの問いを駆使して事例の検証を行い、アイデアの種を拾うとよいでしょう。

 |急速/拡散など、成功した要因を分析する
 |失速/撤退など、失敗した要因を分析する
 |成功/失敗した事例に共通する点を洗い出す
 |成功した事例にあって失敗した事例にないものを見つける
 |例外の中から一般化できる要素を見つける

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商品開発のアイデア発想法

ここからは、効果的なアイデア出しを行うためによく用いられるフレームワーク(発想法)を紹介していきます。

ブレイン・ストーミング

ブレイン・ストーミングは、アメリカの実業家であるアレックス・F・オズボーン氏が、1942年に出版した本のなかで紹介した手法です。複数のメンバーが集まって互いに刺激しあい、自由にアイデアを出し合うために用いられます。
ブレイン・ストーミングの際には、目的を全員で共有したうえで時間に制限を設け、アイデアを出し切ります。各々が思いつくまま、自由に出し合った後、分類・整理してアイデアを俯瞰し、より独創的なアイデアにしていきます。豊かな発想で活発にアイデアを出し合うためには、以下の原則をメンバー全員が共有し、遵守することが重要です。

【4原則】

批判厳禁

良し悪しを判断せず、アイデアを出すことに専念する

自由奔放 どんな奇抜な発想でも歓迎する
質より量 アイデアの数が多いほど、良質な発想が出てくる
結合改善 メンバー間のアイデアに便乗したり組み合わせたりして発展させる

KJ法

KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏が、1967年に著書のなかで紹介したアイデアの整理方法で、姓名のイニシャルから名付けられました。ブレイン・ストーミングなどで出されたアイデアをカード化して構造化することで、アイデアを練り上げる方法です。KJ法は以下のような流れで行います。

 |カードづくり:小さな紙切れ1枚に対し、1つの情報を書き込む
 |カード広げ:書き込んだカードを机の上などに並べ広げ、内容を読み解く
 |カード集め:近いイメージのカードを数枚ずつ寄せる(無理はしない)
 |タイトル付け:カードのかたまりごとにタイトルをつける
 |グループの構造化:カード集めとタイトル付けを繰り返してグループを階層化させる
 |空間配置:グループの関連性をもたせながら模造紙などの上に配置する
 |図解化:グループ同士の関係性を枠取りや矢印などで表し、全体像を図化する
 |文章化:図解をもとにストーリーをつくり、文章にする

オズボーンのチェックリスト

「オズボーンのチェックリスト」とは、ブレイン・ストーミングの考案者であるオズボーン氏が、より多角的に発想を膨らませるために整理した9つのチェックリストです。問いの形で多方面から深掘りすることができ、一人でアイデア出しをするときにも有効です。

【9つの質問】

1 転用 他の目的や用途、使い方、他の領域へ適用できないか
2 応用 類似する点を他の分野や業界へ応用できないか
3 変更 形、色、音、匂い、味、触感、原料、意味、様式、働きを変えられないか
4 拡大 数、大きさ、重さ、速さ、長さ、高さ、強さ、間隔、価値を広げられないか
5 縮小 数、大きさ、重さ、速さ、長さ、高さ、強さ、間隔を減らす/省略できないか
6 代用 他の素材、部品、スペース、プロセス、人、エネルギーに変更できないか
7 再編成 順序、パターン、要素、レイアウト、波及の組み合わせを変えられないか
8 逆転 前後、裏表、左右、上下、主従、因果、役割を入れ替えられないか
9 結合 階層、入れ子、混在、混入、アンサンブル、ユニット、組み合わせができないか

ブレインライティング

ブレインライティング法は、旧西ドイツの経営コンサルタントであるホリゲル氏が、1968年に開発した発想法です。最大の特徴は、集団で行う発想法にもかかわらず全員が無言で行うところにあります。時間制限があるなか、全員が沈黙してアイデアを強制的に出し、前の人に続けて書き込んでいくことにより、発言に消極的な人や声の小さな人でもアイデアを出すことができます。
ブレインライティング法は次の流れを基本とするため、「6・3・5法」とも呼ばれます。

 |6人のメンバーがアイデアシート(3列6行のマス目がある用紙)を1枚ずつ持つ
 |1人につき3個ずつアイデアを出し、各自のシートに記入する
 |5分たったら隣の人にシートを回す
 |回ってきたシートに記載されたアイデアをヒントに、次の行にアイデアを書き足す
 |一巡してシートが埋まるまで繰り返す

マンダラート

マンダラートは、日本のデザイナーである今泉浩晃氏が1987年に考案した思考法で、9つのマス(マンダラ)を埋めていく技法(アート)であることから名付けられています。
マンダラートの特徴は、マンダラのどこから書き始めてもよいという非線形な思考で自由な発想を促すところにあります。また、アイデアの広がりが視覚的にもわかりやすく、アイデアどうしの関係性も把握しやすいとされています。マンダラートは以下の流れを基本とします。

 |3列3行の正方形のマス目をつくる
 |マス目の中心に、テーマを書き込む
 |テーマのマス目を囲む8つのマス目に、連想した言葉や文章を書き込む
 |8つのマス目の言葉を、新しい9つのマス目の中心に転記する
 |新しい中心の言葉から連想される言葉を周囲の8つのマス目に書き込む
 |上記を繰り返して思考を広げる

マインドマップ

マインドマップは、イギリスの教育者であるトニー・ブザン氏が1970年代に考案したもので、頭の中で放射状に広がる思考を外面化する技法です。脈絡がないように見える発想でも枝を伸ばして書き込むことにより関連性が可視化されて全体像を把握しやすく、自由に連想を伸ばしていけるためアイデアの拡張がしやすいところが特徴とされています。
マインドマップは以下の流れを基本として行います。

 |A4より大きい白い紙を用意し、真ん中に核となるイラストを3色以上使って描く
 |中央のイメージからブランチ(曲線)を放射状に出してつなぐ
 |1つのブランチの上にキーワードを乗せる
 |ブランチのサイズは中心に近いほど太く、大きくする(強調する場合も太くする)
 |思考の広がりや連鎖を、ブランチが放射状に継ぎ足される形で表現する
 |キーワードを関連づけ、色分けや番号、記号、アイコン、イラストなどを加える

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商品開発のアイデア出しのポイント:まとめ

優れた商品を開発し、世に送り出すためには、優れたアイデアが不可欠です。アイデア出しのポイントや思考法は、本記事で紹介したように複数ありますが、マーケティング戦略の内容によってふさわしいものが異なります。また、これらの思考法は適切な市場調査のデータやトレンドがあってはじめて効果的に作用するものです。
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2024.06.20

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