コラム

デジタルプリントとは?オフセット印刷との違いとメリット・デメリット
表紙写真:山岸伸(左)、佐藤倫子(右) 撮影:南雲暁彦 出典:玄光社「コマーシャル・フォト2021年2月号」

  • TOPPAN CREATIVE編集部

数多くのデジタルコンテンツが日々増え続けている現在、デジタルの色の鮮やかさに慣れた目を印刷物で満足させるのは難しくなっているといっていいでしょう。インキの色は混じるほどにくすんでしまうからです。目に映る鮮やかな色をそのまま印刷で再現するのは、高度な技術を必要とします。

加えて今はパーソナルの時代です。高品質で少数の作品がバリエーション豊かに展開することに価値が置かれ、従来の大量製造によるコストダウンを図ることが難しくなってきてもいます。

このような現代の制作活動を強力に後押ししてくれる印刷技術としていま注目を浴びているのが、デジタルプリントです。デジタルプリントは、オフセット印刷のもつ繊細な印刷技術と、オンデマンド印刷のもつ少部数印刷や短納期といった機動力や柔軟性が両立したような印刷技術といえます。

このコラムではデジタルプリントに関して、オフセット印刷との違いや工程・部数・費用感などを、最新の技術を結集した「TFDP(TOPPAN FINE DIGITAL PRINT)」を例に解説します。特に高品質な写真集やカタログなどを小ロットで制作したい法人や団体の担当者様に、デジタルプリントの魅力と可能性をご紹介します。



デジタルプリントとは?

デジタルプリントの最も大きな特徴は、印刷用の版を作らない点です。データから直接インキの出力を解析し、紙面へ出力します。

国内での印刷市場は、全体ではゆるやかに減少しているにもかかわらず、デジタルプリントへの期待は高まり続けています。一般社団法人日本印刷産業連合会の行ったアンケート調査によると、印刷関連の売上高は、従来型の印刷が2018年度の72.1%から2019年度は71.3%へと減少傾向を示している一方、デジタル印刷は13.3%から14.4%と増加傾向になっています。

デジタルプリントの技術が向上し、支持を伸ばしている証ともいえるでしょう。

オフセット印刷とデジタルプリントの違い

初めに、オフセット印刷とデジタルプリントについて技術的な特徴から違いを見ておきましょう。

オフセット印刷は、現在最も一般的な印刷方法です。CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色をひとつずつ刷り重ねることにより、すべての色を再現します。印刷用データから4色の印刷面に分解し、各色の版を作成(製版)。特色といって、たとえば金や銀などの特殊な色に調合したインクの版をさらに追加することもあります。

そして、版からいったんブランケットと呼ばれる印刷用の丸い筒に転写し(刷版)、インクを乗せ紙へ付着させて刷り上げます。

そのオフセット印刷に対し、デジタルプリントは前述したように印刷に版を使いません。印刷機の中でCMYKを組み合わせ、直接紙へ出力します。

デジタル印刷には、オンデマンド印刷と呼ばれる方式があります。さらにオンデマンド印刷には、一般的なプリンターと同じ原理で、感光体ドラムにトナーを吸着させて用紙に転写し、圧着させるトナー方式と、ノズルから紙へインキを吹き付けるインクジェット方式があります。

それらのオンデマンド印刷と比べても、デジタルプリントははるかに細かな粒子で出力することができますし、オフセット印刷と比べても粒子が細かいほどです。

デジタルプリントのメリットとは?

デジタルプリントは、版を作るコストや時間がかかりません。印刷の内容を少しずつ変えた場合でも、そのたびに版を作り直したり差し替えたりする必要がなく、少部数でバリエーション豊かな制作が可能です。そのため、季節やイベントに合わせて冊子を制作したいシーンなどで活躍します。

また無版印刷のため、データ入稿から印刷完了までの工数も大幅に減ります。オフセット印刷は調整のたびに版を作り直す必要があるため、時間もコストもかかりますが、デジタルプリントは版自体が必要ないため、製作期間を短くできますし、印刷ぎりぎりまで修正対応も可能です。

さらにもうひとつメリットが。インキを吹き付けるデジタルプリントは、必要な部分にインキを付着させるだけなので、インキの無駄がなく、オフセット印刷のように印刷に使った版の清掃も必要ありません。デジタルプリントは、環境にやさしい印刷方式でもあるのです。

デジタルプリントのデメリットとは?

デジタルプリントは、大量印刷時に時間がかかり、コストも割高になる点がデメリットです。

まず、印刷自体に有版印刷の倍程度の時間がかかったりします。加えて印刷できる用紙サイズが小さいため、一度に印刷できる面数が少なく、特に大量印刷の場合はかなり時間がかかります。

またコストに関しては、大量に印刷する場合もさほど単価が変化しません。そのため、大量ロット時に単価が下がる傾向がある有版印刷に比べると、割高になってしまうのです。つまり、大量の印刷になる場合はオフセット印刷のほうが全体として早く仕上がりますし、コストも抑えることができます。

またオフセット印刷は色を4色に分けて製版して印刷を管理するため、色の再現性が良く、印刷ムラが起こりにくいとされています。高度な色合わせまでは必要のない一般的な印刷物を大量に作成する場合は、やはりオフセットのほうが向いているといえるでしょう。


唯一無二のデジタルプリントサービス、TFDPの魅力

「TFDP」は、TOPPANが提供する印刷・製本を行うデジタルプリントサービスです。デジタル印刷の特長である少部数・短納期を最大限に活かしつつ、従来のデジタル印刷では再現不可能だった、高品質な色の再現を実現しています。

デジタル印刷で高品質な写真集・図録が作れる

「TFDP」では、従来のデジタル印刷では再現することが難しかった、写真やイラストの細かな色調整も行えるようになっています。

鮮やかな色を再現したいのでオフセット印刷を考えたが、「イベントのつど図録を作りたい、でも在庫を抱えるのはイヤ」「こまめに少しずつ増刷したい」などの要望がかなわずにあきらめていた冊子を、「TFDP」は数百部という小ロットで制作することができるのです。

写真家やイラストレーターなどのアート作品集はもちろん、美術館・博物館の販促用の図録、高価格商品のカタログなど、多彩な高品質冊子の希望に応えられるサービスなのです。

彩度が高く高級感のある作品に

「TOPPAN FINE DIGITAL PRINT」で印刷したサンプル 写真提供:山岸伸氏 佐藤倫子氏

「TFDP」の特長は、なんといっても色の鮮やかさです。表現色の領域がより広いRGBの印象を、CMYKで紙面上に再現する技術を開発したのです。

明るさも柔らかさも濃淡も、色調豊かに表現されます。また黒の締まりや階調表現も、トーンが絶妙なバランスで再現されます。

目で見たのとなるべく近い印象で色を再現するのに欠かせないカラーマネジメントは、TOPPANが国内でいち早く開発したデジタルアートプリント「プリマグラフィー」で培った、画像データの補正技術が支えています。

また様々な写真家の作品を手がけた実績も多数あり、それにより蓄積されたプロの印刷技師としての知見やノウハウもいろいろとご提供できます。

TFDPの技術的特長

「TFDP」の特徴をさらに紹介します。色鮮やかで高品質な冊子を作成する際に重要な役割を果たすのが、色調再現に必要な製版技術と操作力、インキを受け止める用紙のクオリティ、紙面への印刷技術の3つの要素です。

熟練したプロが全体をマネジメント

「TFDP」の持ち味を最大限に活かすためにまず重要視しているのが、印刷前の打ち合わせです。TOPPANのグラフィック・アーツ・センター(GAC)のプリンティングディレクターが、デザインのこだわりから全体の進行までに関するマネジメントを担当します。そして製版部門であるトッパングラフィックコミュニケーションズ(TGC)のチーフディレクターが、色調補正や全体のトーン調整、色校を行います。

部門ごとに専門性を持ったディレクターが作家と対話を重ね、エピソードなども伺う中で技術面に加えてエモーショナルな部分でも共感させていただきながら、共同でクリエイティブ作業を進めていきます。

「作品の中身も印刷も重視した写真集にしたい」という思いを、作家やクリエイターの方々と共にディレクターも持ちあわせ、作品を形にしていくわけです。

高品質用紙を採用

「TFDP」は用紙にもこだわります。デジタル印刷機に最適化した用紙として、高級印刷用紙の「ヴァンヌーボLT-FS」を採用。

「ヴァンヌーボ」は、印刷への適性と紙そのものの風合いという相反する性質を両立させた画期的な印刷用紙で、アート界隈で高い評価を得ているファインペーパーのシリーズです。

そしてこの「ヴァンヌーボ」を後述する「HP Indigo」にさらに最適化したのが、「ヴァンヌーボLT-FS」です。オフセット印刷に近いグロス感と良い按配のラフさというハイレベルな質感を併せ持っています。

最高品質デジタル印刷機を使用

「TFDP」の品質を支える印刷は、HP Indigoシリーズの最高機種「12000 HD デジタル印刷機」で行います。B2サイズまで対応可能、標準の4色印刷だけでなく最高で7色のインキにまで対応します。

目に鮮やかな高品質印刷を支えるのが、国内初となる色域拡張機能「ColorUp!」です。RGB画像の色がCMYKの色域を超えてしまうパターンの時に、CMYの追加版を自動生成して色域を35%拡張します。

最新デジタル製本機を使用

「TFDP」は、製本までの品質管理も徹底されています。

国内の最新デジタル印刷対応製本機を導入した専用の「デジタルマザー工場」で、一貫して作成します。このため無駄のない工程で、印刷から製本までを高い品質で行うことができる上、印刷内容が外部に流出するリスクを防ぎ、個人情報管理にも厳格に対応することが可能です。

小ロット・低コストで高品質な作品制作が可能に!

「TFDP」での印刷部数は100〜500部と、写真集や図録などで在庫管理しやすい少部数での作成が可能となっています(費用は部数とページ数などにより変わります)。

たとえば本文40ページ+表紙4ページで500部の場合、印刷費用は税別で約70万円です(追加仕様のない場合)。

一般的なネット印刷やフォトブックのサービスと比較すると高めに思えるかもしれませんが、印刷品質の圧倒的な差を考えるとむしろ割安とさえいえるでしょう。


入稿から納品までの流れ

「TFDP」による冊子は、データ入稿後に色校正での確認を経て校了となり、その後2~3週間程度で印刷・製本が行われ、指定の場所まで発送されます。これまでの解説とかぶる部分もありますが、再度大まかな流れをまとめると以下のようになります。

1. 入稿
入稿するデータは、画像がRGB、レイアウトデータについてはInDesignを基本とします。

2. 出校
色調補正や製版を始める前に、TOPPANのディレクターと綿密な打ち合わせを行います。
色校正は、印刷本紙の「ヴァンヌーボLT-FS」で出校されます。

3. 校了
色校正で色調などを確認いただき、赤字を入れて色校正を戻すと、校了となります。

4. 納品
校了後、中10〜20営業日で印刷・製本が行われ、宅配便にて発送されます。


法人の担当者さんにおすすめ!

デジタルプリントには、美術館や博物館、写真家、美術系の大学や出版社など、日頃から制作に対し高い品質を求めている方々にとって待望の印刷技術が結集しています。

より鮮やかな作品に仕上げたい。高品質かつ独創性が高く、バリエーションのある作品群を送り出したいという方は、ぜひ「TFDP」をお試しください。

「TFDP」についてより詳しく知りたい、また問い合わせをされたいという方は、以下のページもぜひご覧ください。

2021.12.21

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