【超初心者向け】CIAMとは?必要とされる理由からメリット、機能まで解説
近年、デジタル化の発展により、スマホアプリやECサイトなど私たちが日頃使うサービスは増え続けています。一方、サービスを提供している企業側では、分散しているお客さまおこくあ情報の管理やセキュリティ対策が大きな課題となっています。
こうした背景から、顧客IDとアクセスを一元管理する考え方である、CIAM(Customer Identity and Access Management)が重要視されています。このコラムでは、CIAMの基本概念から、その必要性、機能、導入のメリット、さらには導入する際の課題について詳しく解説します。
目次
1. CIAMとは
2. CIAMが必要とされる理由
3. CIAMの基本的な機能
4. CIAMのメリット
5. CIAM導入の課題
6. まとめ
CIAMとは
はじめに、CIAMの概要について解説していきます。
CIAMの概要
CIAM(Customer Identity and Access Management)とは、BtoC企業が消費者向けにオンラインサービスを提供する際に、顧客のユーザーIDとアクセス権を効率的かつセキュアに管理するための仕組みのことです。近年、顧客チャネルの多様化が進んでいる中、ユーザーエクスペリエンスの向上やセキュリティ対策の観点などで、企業がサービスを提供する際に顧客の情報をどのように管理するかが重要な課題となっています。その中で、CIAMは顧客のIDとアクセスを管理するための重要なソリューションとして注目されています。
従来、主に企業内の従業員やビジネスパートナーのIDおよびアクセス管理を行うためのシステムであるEIAM(Enterprise Identity and Access Management)がありましたが、CIAMはこれを顧客向けに特化させたものと考えることができます。
CIAMとEIAMの違い
CIAM | EIAM | |
対象の範囲 | 顧客(一般消費者を含む) |
企業内部の従業員・パートナー企業 |
目的 | セキュリティ対策と顧客体験向上のバランスを取る | 組織内のセキュリティとコンプライアンス強化 |
規模 | 大規模(例:数百万単位のユーザーを対象とすることも) | 企業規模に応じて異なる(例:数百~数万のユーザー) |
機能 |
顧客向けの機能 ・シングルサインオン(SSO) ・多要素認証(MFA) ・ソーシャルログイン など |
内部セキュリティに重点を置いた機能 ・アクセス制御 ・ロールベースアクセスコントロール(RBAC) ・監査とレポート機能 など |
CIAMとEIAMの主な違いは、管理対象の範囲とその目的にあります。EIAMは、企業内部の従業員に焦点を当て、セキュリティとコンプライアンスの強化を主な目的としていますが、CIAMは、セキュリティ対策を担保しながら顧客体験を向上させることを主な目的とし、一般消費者がスムーズにサービスを利用できるようにすることが重視されます。
また、規模にも違いがあり、EIAMは企業規模に応じて異なるものの、多くて数万ユーザー程度ですが、CIAMは数百万単位のユーザーを対象とすることも珍しくありません。機能面においても、EIAMは内部セキュリティに重点を置いた機能が多い一方で、CIAMは顧客が安全かつ簡単にサービスにアクセスできるようにする機能が求められます(CIAMの機能詳細は後述)。
CIAMが必要とされる理由
続いて、CIAMが必要とされる理由について詳しく解説していきます。
スムーズなユーザーエクスペリエンス
近年、デジタル化で利便性が向上している背景もあり、現代の消費者は、シームレスで直感的なオンライン体験を求めています。シングルサインオン(SSO)などの機能によってユーザーが複数のサービスに簡単にアクセスでき、パスワード入力の手間が省略されることで、ストレスフリーなユーザー体験の実現が期待できます。
オムニチャネルの重要性
現代では、顧客がどのチャネルからアクセスしても一貫した体験を提供することが求められています。CIAMは、ウェブサイト、モバイルアプリ、店舗など、さまざまなチャネルでの顧客データを統合し、一貫性のあるサービス提供を実現できます。その結果、顧客はどのチャネルを利用しても同じようにスムーズにサービスを受けることができます。
プライバシー規制の強化
GDPR(一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、世界各地でプライバシーに関する規制が強化されています。CIAMは、顧客の同意管理やデータアクセスの透明性確保にも役立ち、企業は法令遵守を確保しつつ、顧客の信頼を得ることができます。
CIAMの基本的な機能
続いて、CIAMの基本的な機能について詳しくご紹介します。
ユーザー登録・ID管理
CIAMの基本機能の一つとして、ユーザー登録とID管理があります。顧客がサービスにアクセスする際の最初のステップであり、ユーザーのプロファイル情報を安全に収集、保存、管理するプロセスです。適切なID管理は、個々の顧客にパーソナライズされた体験を提供するための基盤となり、データ保護規制に準拠するためにも重要です。
シングルサインオン(SSO)
シングルサインオン(SSO)は、ユーザーが一度のログインで複数のアプリケーションやサービスにアクセスできる機能です。これにより、ユーザーは異なるドメイン間でもID情報を共有することができ、複数のパスワードを覚える必要がなくなります。企業にとっても、ユーザーのログイン情報が一元管理されることで、管理の簡素化やセキュリティリスクの軽減といった恩恵があるでしょう。
多要素認証(MFA)
多要素認証(MFA)は、ユーザーの認証を強化するための手法であり、パスワードに加えて追加の認証要素を必要とします。これには、SMSによるコード送信や生体認証などが含まれます。MFAは、不正アクセスを防ぐための強力な手段であり、特にセキュリティが重要な業界では必須の機能となっています。
API連携
API連携は、CIAMの柔軟性と拡張性を高める重要な機能です。APIを通じて、CIAMシステムは他のビジネスアプリケーションやサービスと統合され、データの共有やプロセスの自動化が可能になります。これにより、企業は顧客データを効率的に活用し、より良いユーザーエクスペリエンスを提供することができます。
マルチチャネル対応
マルチチャネル対応は、顧客がどのデバイスやプラットフォームからでもシームレスにアクセスできるようにするための機能です。スマートフォン、タブレット、PCなど、さまざまなデバイスに対応することで、顧客の利便性が向上し、エンゲージメントが強化されます。
分析・レポーティング
分析・レポーティングは、ユーザーの行動やアクセスパターンを詳細に把握し、サービスの最適化やセキュリティ強化に役立てるための機能です。ユーザーのログイン履歴、アクティビティパターン、デバイス使用状況などをリアルタイムで確認でき、異常なアクセスに対する早期の検知、迅速な対応が可能となります。また、ユーザーの利用傾向を分析することで、マーケティング戦略やサービスのパーソナライズの改善にも役立てることができます。
CIAMのメリット
続いて、CIAMの具体的なメリットについて詳しくご紹介します。
顧客体験の向上
CIAMの最大のメリットの一つは、顧客体験を向上させることです。まず、シームレスで安全なログイン体験を提供することで、顧客は煩わしい手続きを省略し、スムーズにサービスを利用することができます。上述のシングルサインオン(SSO)や多要素認証(MFA)などの技術を活用することで実現可能です。
さらに、CIAMは顧客データを活用してパーソナライズされたサービスを提供することが可能です。顧客の過去の行動や嗜好に基づいて、最適な商品やサービスを提案することで、顧客満足度を高め、リピート率を向上させることができます。
セキュリティの強化
セキュリティの強化もCIAMのメリットです。データ漏洩や不正アクセスのリスクを低減するために、CIAMは高度なセキュリティプロトコルを実装しており、これには暗号化技術や異常検知システムなどが含まれています。また、GDPRやCCPAなどのデータ保護規制に準拠するための機能も提供しています。これらの機能を活用することで、企業は法的リスクを最小限に抑えつつ、信頼性の高いサービスを提供することができます。
ビジネスの成長促進
CIAMはビジネスの成長を促進するための強力なツールでもあります。顧客データの一元管理により、ユーザーの分析がしやすくなることで、マーケティングの最適化が期待できます。例えば、顧客の購買履歴や行動データを分析することで、ターゲットを絞った効果的なキャンペーンを展開することができます。
さらに、CIAMにより優れた顧客体験と強固なセキュリティを提供することで、新規顧客に対する信頼を築き、既存顧客のロイヤリティを高めることができます。
CIAM導入の課題
続いて、CIAMの具体的なメリットについて詳しくご紹介します。
システム・統合の複雑さ
CIAM導入の際に直面する主な課題の一つとして、システム・統合の複雑さが挙げられます。多くの企業では、既存のシステムやアプリケーションとCIAMを統合する必要がありますが、容易ではありません。異なるプラットフォームや技術スタック間でのデータの連携は、しばしば技術的な障壁となり、プロジェクトの遅延を招くことがあります。したがって、CIAMソリューションを選定する際には、既存システムとの統合のしやすさを重視することが重要です。
カスタマイズと柔軟性
カスタマイズと柔軟性にも課題があります。企業ごとに異なるビジネスニーズやセキュリティポリシーに対応するため、CIAMソリューションには高いカスタマイズ性と柔軟性が求められます。しかし、過度なカスタマイズは、システムの複雑化や保守性の低下を招く可能性があります。そのため、企業は自社のニーズに最も適したCIAMソリューションを選び、必要最低限のカスタマイズで運用できるようにすることが推奨されます。
導入コスト
CIAMの導入には、ライセンス費用や開発・統合にかかる人件費、保守運用費用など、さまざまなコストが発生します。これらのコストを正確に見積もり、ROI(投資対効果)をしっかりと評価することが求められ、スケーラブルでコスト効率の良いソリューションを選ぶことが鍵となります。
まとめ
企業は、顧客IDの安全な管理とシームレスなユーザー体験の提供を実現することが求められています。しかし、導入には技術的な課題やコストの問題も存在します。これらを克服するためには、適切なパートナーを選ぶことと戦略的な計画を立てることがおすすめです。
TOPPANでは、分散した顧客データを統合管理し共通ID化を実現する、「ASP型ID統合プラットフォームサービス」を提供しています。会員登録、シングルサインオン、マイページなど基本的な機能に加えて、LINEやFacebookなどSNSアカウントを利用したソーシャルログインも標準機能で備えておりますが、顧客IDの統合に必要となる機能に特化した構成のため、最小限のコストでご導入いただけます。
また、拠点ごとに管理されていた顧客データが一元管理されることで、購入履歴等のデータが共有され、より精度の高いマーケティングも実現します。
これまでさまざまな事業者様の顧客ID統合をサポートしてきたノウハウを生かし、実践経験の豊富なデジタルマーケティングのプロが対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
2025.01.10