D2Cの市場規模とマーケット推移、
日本・世界のD2Cの市場動向について解説!
D2Cは、自社で商品開発から製造、流通販売まで行う販売形態です。ECサイトやSNSを駆使したユーザー参加型のブランディングで、顧客をファン化させる戦略を特徴とします。
日本におけるD2Cの市場規模は拡大傾向にあり、2025年には3兆円になると予測されています。
本記事では、国内外のD2Cの市場規模や将来性について見ていきましょう。D2Cの定義や可能性など具体的な内容については以下の概説を参考にしてください。
日本のD2Cの市場規模と動向予測
売れるネット広告社の調査によると、2015年に1.3兆円だったD2Cの市場規模は年々1割近い拡大を続け、2020年には2.2兆円に達しました。その後も右肩上がりの拡大で、2025年には3兆円を超える見込みです。
D2Cに注目が集まる背景には、スマートフォンやSNSの普及によって、個別化された情報や、ユーザー生成型コンテンツ(UGC)の有用性が上がったことが挙げられます。加えて、クラウドファンディングの普及により少資本でもスタートアップが容易になってきていることも、D2C市場の成長を後押ししています。
今後、D2Cでの販売方式をベースにした企業や個人が増えていくと思われます。
世界のD2Cの市場規模
ここからは、世界におけるD2Cの市場規模について、米国、欧州、中国の順に、具体的にみていきましょう。
米国のD2C市場規模
米国では、アパレルやコスメ、衛生用品など、多くの業界でD2Cが増加傾向にあります。デジタルマーケティングの調査会社eMarketerによると、米国のD2Cの市場規模は、2019年に766.8億ドル(約8.4兆円)でしたが、2020年には1,115.4億ドル(約11.9兆円)にまで成長し、2023年の推計では1,749.8億ドル(約18.7兆円)に達するとされています。つまり、2019年から2023年までのわずか4年の間に、米国のD2Cの市場規模は約2.3倍に拡大しているのです。
D2Cの市場規模は、性質上主な販売チャネルのひとつであるECが普及しているほど拡大しやすい傾向にあります。そのことを念頭に置きつつ、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査報告書」の調査結果から、世界全体のECの市場規模を見てみましょう。
2019年に3.35兆ドルだった世界のEC市場規模は、2023年には5.92兆ドルと拡大し、EC化率も13.6%から20.2%へと上昇しています。2023年には7.62兆ドル/23.3%まで伸びる見通しです。EC化率の上昇傾向に伴い、D2Cの市場規模も引き続き拡大していくことが予想されます。
ヨーロッパのD2C市場規模
続いて、ヨーロッパにおけるD2Cの事情を見ていきましょう。ここでも、D2Cの主な販売チャネルであるEC市場のシェアに着目します。
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2022年のEC市場におけるシェア率は、1位が中国(50.4%)、2位が米国(18.4%)と、この2国で全体の3分の2を占めています。
欧州ではイギリス(世界3位、4.5%)が最も市場規模を広げており、その後をドイツ(世界6位、2.1%)、フランス(世界8位、1.7%)が追いかけています。日本(3.1%)は世界4位で、イギリスよりやや遅れ、ドイツや韓国(世界5位、2.5%)より規模が大きい状況です。
中国のD2C市場規模
2022年時点で総人口が14億人を超える中国は、世界のEC市場でもトップのシェアを誇り、D2C市場においても拡大が見込まれます。同様の人口規模を抱えるインドに比べてEC化率が高い理由としては、次のような社会背景があります。
1. 過疎地や農村地帯でも通信インフラ強化や高齢者向けにインターネット対応の取り組みが推進されている
2. スマートフォンが普及し、スマホアプリや電子マネー、クレジットカードなどのキャッシュレス決済が国策として進められている
3. 中間層(年収が約6万元/約96万円~約50万元/約800万円)で個人消費が進み、個人同士の消費(CtoC)のトラブルを避けるため企業から良いものを購入する(BtoC)の流れが主流になってきている
4. 独身の日(11月11日)に代表されるような、イベントと掛け合わせたECセールが普及してきている
特に、SNSアプリから購買するソーシャルコマースの伸びといった要因が中国のD2C市場を広げていると考えられます。
D2C市場が拡大している理由と現状
D2C市場が拡大している理由について、PEST分析(政治 Politics、経済 Economy、社会 Society、技術 Technology の4側面から現象を掘り下げるフレームワーク)の観点を参考に、法整備の面からも補足しつつみていきましょう。
EC市場の拡大
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2022年の国内のEC市場は、物販・サービス・デジタルの3分野を合わせて22兆7,449円と、前年比で約2.5兆円も増加。1割近い伸び率になりました。
この背景には、ICTの進展やインターネット通信の浸透により、ECが身近になっていることが挙げられます。キャッシュレス決済の普及を目指し、国をあげた取組みが行われたことも追い風になりました。今や商品やサービスをネット検索で下調べし、ECモールで利用者コメントを確認するのは当たり前で、多くの企業にとってECは重要な販路となっています。
一方でECモールは、手数料がかかる、競合が多い、独自性を発揮しづらい、入手できる顧客情報に制限があるなどデメリットを抱えています。このため、デジタルコミュニケーションを駆使してユーザーと直接つながるD2Cに大きな期待が寄せられているのです。
ウィズコロナと体験価値を重視する消費者の増加
2019年度後半から2022年度前半まで世界的に流行した新型コロナウイルス感染症により、外出の自粛や店舗の営業時間短縮など、コロナ禍以前とは社会状況が一変し、オンラインでの消費が一気に進みました。先に紹介した経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」でみると、2020年の物販系分野のB2C市場は前年と比べて2兆1,818億円(21.7%)の増加と、大きく伸びています。
さらに、市場規模だけではなく消費のあり方にも変化が生じています。機能の良さやコストパフォーマンスより商品を通じて得られる共感や体験を重視する「モノ消費からコト消費」へと変わってきているのです。
D2Cは、ユーザーがメーカーと直接つながりファン化することでブランディングを高めていく販売形態です。これもあって、コロナ禍での支持が大きく伸びたともいえるでしょう。
SNSやスマートフォンの普及
ICTをはじめとするデジタル技術・情報通信技術の進展に加え、スマートフォンの普及により、1人1台以上のモバイル端末をもつようになったことで、マスメディアからソーシャルメディアの時代へと変化しました。
総務省の「令和5年情報通信白書」によると、モバイル端末の世帯保有率は97.5%に達し、そのうちスマートフォンは90.1%となっています。
スマートフォンの普及により、インターネットの情報はさらに個人化されるようになりました。特にスマホアプリでデジタルコミュニティを形成するSNSの浸透はすさまじく、令和3年度版情報通信白書では、全体で73.8%が普段から利用しており、デジタルネイティブと言われる20歳代は90.4%と9割を超えています。
SNSの浸透により、デジタルコミュニケーションを通じて個人と個人がゆるやかにつながるネットワークが経済の基盤になりつつあるといえるのです。
法整備の観点
D2CではLTV向上のためにサブスクリプションモデルが取り入れるケースがありますが、広告規制が弱く定期購入がやりやすかったという法的な観点も、市場規模の拡大に少なからず影響していると考えられます。
ただし、広告規制が弱いとはいえ、支払いや途中解約などの条件をわかりやすく表示しておかないと、特定商取引法違反とみなされるおそれがあります。また、商品の効能を体験談風に記載した広告が薬機法違反として摘発される事件も発生しています。
次のような項目に注意し、適正な取引を心がけましょう。
1. 事業者の氏名や価格、販売条件、返品対応、解約条件など諸条件の明示
2. 不当な威迫、勧誘などの禁止
3. 重要事項の表示の義務付け、虚偽・誇大広告の禁止
まとめ
D2Cは、ICTの進展やインターネット・スマートフォンの普及、SNSの浸透、コロナ禍でのライフスタイルの変化などを背景に、企業と個人がデジタルコミュニケーションを通じて直接つながり、世界観を共有しつつコト消費を進めるビジネスモデルとして、今後大きな飛躍が期待できる市場といえます。
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2024.07.01