パフォーマンスマーケティングサービス コラム

D2Cとは?
ビジネスモデル・成功のポイントを解説!

D2Cとは、製造者が自社で商品の製造から流通、販売までを行うビジネスモデルです。消費者との関係性を濃厚にし、マーケティング戦略などのコントロールが可能で高い収益性が期待できます。また、近年はSNSとの相性の良さが注目されている手法でもあります。
本記事では、D2Cの定義と市場での可能性、D2Cのメリットやデメリットを概説するとともに、具体的な事例を取り上げつつ、D2Cを成功させるためのポイントを紹介します。


D2Cとは

D2Cとは

D2C(Direct to Consumer)とは、製造者(メーカー)が自社で企画・開発、製造、流通、販売までをおこない、商品やサービスを消費者に直接届ける販売形態を指します。
一般的な流通の場合、卸売業者や小売業者といった中間業者を介しますが、D2Cではメーカーと消費者の間に他の業者が入りません。そのため、メーカーと消費者との関係性が濃厚になり、商品・サービスの開発・改善が期待できるほか、品質と価格のバランスを取りやすくなったり、マーケティング戦略や販促方針などの自由度が高くなったりといったメリットがあります。

D2Cが普及した理由

D2Cは、経済のありかたが従来の大量生産・大量消費から、少量多品種の生産・消費へシフトする中、次のような消費者の指向を背景に2000年代後半頃から普及してきました。
1. デジタルネイティブ世代の増加:ミレニアル世代やZ世代といったデジタルネイティブ世代が購買層に台頭し、オンライン販売が一般的になった
2. SNSの普及:スマートフォンの普及とともにSNSが社会に浸透したことにより、直接顧客とコミュニケーションをとってブランドストーリーや商品の特徴を効果的に伝える機会が増えた
3. 消費に対する価値観の変化:皆が同じものを所有するモノ消費から、商品に付加された個性や世界観、ストーリーを共有し独自の体験を得るコト消費へと価値が変化している

D2CとB2Cの違い

D2Cと混同されがちな販売形態に、B2C(Business to Consumer)があります。B2Cは、企業と消費者との取引全般を指すため、製造者と消費者の間に卸売業者や小売業者など中間事業者が介在することがあります。また、ECモールのような小売業者と消費者との取引もB2Cに含まれます。
D2Cは、中間事業者が入らずメーカー企業と消費者が直接つながる販売形態ですから、B2Cの一種ともいえます。

D2CとSPA(製造小売)の違い

企業が直接販売する点では、製造小売のSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)も、D2Cとよく似ています。SPAは、製造者と小売が一体化した業態のことを指しており、「製造小売業」とも称され 、小売流通業が独自に展開するPB(プライベートブランド)も類似の販売形態です。
最大の相違点は、SPAやPBが実店舗を展開しマス的に販促するのに対し、D2CはECサイトでSNSなどによる消費者とのコミュニケーションを重視した販促に軸足を置いている点です。

D2Cの市場規模と成長性

D2Cが近年特に注目されるのは、コロナ禍を経たEC市場の拡大が背景にあります。経済産業省が毎年行う「電子商取引に関する市場調査」によると、2022年の消費者向けのEC市場は22.7兆円を超え、前年比で9.91%増と1割近い伸び率を示しています。また、消費者向け市場のEC化率は前年比0.35ポイント増の9.13%でした。
これらの数値から、オンライン取引が依然として増加傾向であり、EC市場はまだ十分な伸びしろをもっていることが伺えます。
消費者向けのEC市場は大手ECプラットフォーム(ECモール)での展開が多くを占めていることから、オンライン販売市場のなかで独自の販売戦略を講じるD2Cの市場規模は今後も拡大することが予測できます。

D2Cのメリット

D2Cのメリット

では、D2Cの販促形態を取り入れるとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは、D2Cの販促形態の利点をみていきましょう。

収益性が高くなりやすい

D2Cでは、商品の販売やサービスの提供に関連する中間マージンや、ECプラットフォームに支払う販売手数料が発生しません。このため粗利率が上がり、収益性が高まりやすい点がメリットとして挙げられます。中間コストの削減分を商品価格へ反映させ、安価で高品質な商品にすることによって、購買行動の促進も見込めるでしょう。
また、価格設定の自由度が高くなる点もメリットです。独自の世界観やストーリーの共感による付加価値をつけた差別化を行えば、競争力のある価格での提供が可能になります。高価格でも購入されやすくなり、収益性が高まるわけです。

マーケティング戦略の自由度が高い

D2Cでは、メーカーが直接消費者と接点をもちます。そのため、マーケティング戦略の自由度が高まり、独自の調査や自社のECサイトから得られるデータを詳細に分析し、ブランディングの強化や最適な販促戦略を講じることができます。この点、ECプラットフォームなどでは購買者の個人データが入手できなかったり、価格設定やキャンペーンなどの設定に制約があったりと、制約が多くなる可能性があります。
また、D2Cでは、SNSを通じて顧客ニーズに関する情報収集が容易になり、調査コストを短縮しつつ、効果的なマーケティング活動を展開できます。ECプラットフォームに出していた広告など販促コストの見直しも、顧客データによる販促の戦略構築により差別化を図ることもできるのです。

商品開発に顧客の声を活かせる

D2Cでは自社ECサイトやSNSでの直接的なコミュニケーションにより、顧客からのフィードバックや購買データから得られるニーズの動向など、さまざまな情報を収集することができます。これらの声を活かすことで、市場のニーズに即した商品・サービスの開発・改善にを行うことが可能になります。
また、消費者の声が商品に反映される様子が分かりやすいため、メーカーと共に商品・サービスを育てている手応えを消費者に感じさせ、愛着を深められる点もメリットです。商品開発のリードタイムを短縮し、満足度の高い商品を提供し続けていくことにより、互いの信頼関係も深まって、リピーター獲得にもつながっていきます。

D2Cのデメリット

D2Cのデメリット

これからの市場展開において可能性を秘めたD2Cですが、万能ではありません。ここからは、D2Cに取り組む際に注意すべき点について見ていきましょう。

初期コストや運用コストがかかる

ECプラットフォームへ出店する形であれば商品を登録するだけですみ、オンライン販売に必要な仕組みの構築も顧客の呼び込みもプラットフォーム側もリソースを利用できます。
この点D2Cの場合は、ECサイトや流通経路の構築、顧客の開拓を自力で行う必要があり、初期コストが大幅にかかってしまうかもしれません。
また、ECサイトやSNSなどの運用にも、専門の人材確保や事業者への外注など、コストが発生します。

マーケティングやブランディングの力が必要になる

ECプラットフォームであれば、モールとしての集客力がすでにあるため、ある程度の売上は登録するだけでも期待できますが、D2Cの場合は、ECサイトの認知度を高めるSEO対策や、商品への愛着を高めファンを増やすSNS運用などをすべて自社内で行う必要があります。
効果的なマーケティング戦略やブランディング施策、消費者へ直接アプローチするコミュニケーションなどを、途切れることなく運用する力が求められます。

売上が軌道に乗るまで時間がかかる

D2Cが必要とするマーケティング戦略やブランディング施策の展開は、即効性のあるものは少なく、認知度が高まり商品の価値が浸透し、愛着が高まってリピーターが増えるようになるまでには相当の時間がかかります。
このため、D2Cのビジネスモデルで売上を軌道に乗せるためには、中長期的な視点でリソース配分を行い、ぶれないマーケティング戦略やブランディング施策を講じて、着実な商品の浸透と顧客の育成を行っていかなければなりません。

直接取引のリスクがある

企画・製作から販売までをすべて自社で完結させる直接取引は、それまで中間事業者が担っていたコストやリスクを自社が背負うことにつながります。ECサイト構築などの初期費用や運用コストといった経済リスクのほか、顧客管理、在庫管理、発送作業、問い合わせやクレーム対応、再購買を促すためのアフターフォロー、ブランディングのためのSNS運用も、すべて自社で行うことになります。
人的リソースやノウハウ不足による出荷の遅れや対応の不備、SNS炎上などによるリスクには十分注意が必要です。

D2Cを成功させるポイント

D2Cを成功させるポイント

ここからは、D2Cを効果的に展開するために気をつけておきたいポイントを、「商品」「価格」「流通」「プロモーション」の4P分析の観点から具体的にみていきましょう。

D2Cが勝ちやすい市場・商品を選ぶ

D2Cの特徴に、デジタルコミュニケーションを活用したオンライン直販である点が挙げられます。このため、展開しようと考えている商品の競争力を検討する上で、どの程度EC化した市場へ参入することになるのかを知っておくことが重要です。
服飾雑貨や家電、音楽配信などEC化率が高いジャンルの場合、ユーザーは購買に対する抵抗が少なく市場規模が広いといえます。参入のハードルは低い反面、競合が多く、勝ち残るには強いブランディングと、中長期でのマーケティング戦略が不可欠といえるでしょう。
一方、食品やコスメ、医薬品などEC化率の低いジャンルは、競合が少ない点では独自展開しやすいといえますが、消費者がそもそもオンライン販売に抵抗をもっている場合、購買につながる行動変容が起きないリスクもあります。
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」の結果を参考に、ECの動向をチェックしておくと良いでしょう。

サブスクリプションモデルを検討する

商品の価格設定は、原材料や製造時の品質だけでなく、消費者との信頼関係や付加価値となるストーリー展開により、入手時の満足感を対価にしていきます。このとき、D2Cの特徴である、パーソナライズによる商品へのファン化と直販の特性をフル活用できるのがサブスクリプションの販売形態です。
サブスクリプションは、一定の期間、定額で商品やサービスの提供を受けることのできる購買の形態です。新聞・雑誌やコンテンツ配信、通信など利用し放題となるサービスから始まり、現在はコスメや食品、服のセットアップなどユーザーの嗜好に合わせた商品が毎月届けられるシステムへと広がっています。満足度の高い商品が常に届くという顧客のメリットだけでなく、着実な収益を見込める製造側のメリットも高い販売形態です。

物流体制を整備する

D2Cの流通では、高品質の商品を個別ニーズや購買目的に沿って柔軟に対応しつつ、すばやく確実にお客さまへ商品を届けるプロセスを確保する必要があります。このため、ロットや商品バリエーション、商品セットやラッピングなど、流通時の形態が多様で複雑になりやすく、製造物の検品、在庫管理、ピッキング(注文に合わせた組み合わせ)、梱包、搬出といった工程の正確性と迅速性を確保することが重要となります。
ヒューマンエラーを防止するにはデータ管理が不可欠です。顧客管理、売上管理、生産管理、在庫管理、返品・クレーム管理など、D2Cに関するすべてのデータを統合管理し、正確かつ即応できる物流体制を整えましょう。対応が困難な場合は、専門のノウハウをもつ事業者へのアウトソーシングをおすすめします。

マーケティング(商品開発・SNS)に注力する

D2Cのプロモーションで重要なのは、顧客のファン化と育成です。このため、ブランドの世界観を確立し、商品開発や販売形態へ反映させることは無論、ECサイトでの発信やSNSによるユーザーとのコミュニケーションでも統一した世界観で物語を紡いでいく必要があります。
コアなファンをつくり、リピート率やエンゲージメントを高めることで拡大を目指すブランディングのためには、以下のポイントを重視したマーケティング戦略を中長期的に展開することが望まれます。

1. 顧客ニーズに応じた詳細なターゲット設定
2. 独自の世界観の確立
3. SNS運用によるきめ細かなユーザー参加型コミュニケーション

まとめ

D2Cは、ICTの進展やスマートフォンの普及による情報の個別分散化・ネットワーク化に対応する販売形態として、今後の市場での生き残り戦略の重要な柱となる可能性があります。一方、実際の参入にあたっては整えるべき体制が多く、すべてを自力で行って効果を出すのは至難の業ともいえるでしょう。
TOPPANの「D2Cのばセル™」は、難易度の高いD2Cの事業立ち上げから育成まで、一連のプロセスを総合的に支援します。ターゲティングや世界観の確立、商品開発、ブランディングを訴求するECサイトの構築、CRM運用、効果的なプロモーションに至るまで、 TOPPANならではの高いデザイン性と幅広い技術を駆使し、顧客のファン化を促します。パッケージ分野を中心に培ってきたマーケティングのノウハウを活かし、業態・業種別にEC設計の標準フォーマットを整備。期間やコストの短縮を図ることも可能です。ぜひご検討ください。

2023.12.11

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