D2Cマーケティングとは?手法やメリット、事例などまとめて解説
D2C(Direct to Consumer)は、ブランドが直接消費者に商品を販売するビジネスモデルです。このモデルでは、中間業者を経由せず、店舗を持たないため、リスクが少なく始めやすいという特徴があり、参入している企業も多い一方で、マーケティングを実施する際には、どのようなポイントに注目すべきか、またどのような手法が効果的なのかを理解することが重要です。
本コラムでは、D2Cマーケティングの基本概念から、そのメリットや課題、具体的な手法、成功事例までを詳しく解説します。
<目次>
1. D2Cマーケティングとは
2. D2Cマーケティングのメリット
3. D2Cマーケティングの課題
4. D2Cマーケティングの5つの手法
5. D2Cマーケティングの取り組み事例
6. D2Cマーケティングを成功させるポイント
7. まとめ
D2Cマーケティングとは

はじめに、D2Cマーケティングとは何か概要を解説します。
D2Cとは
D2Cとは、「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」の略で、企業が中間業者を介さずに直接消費者に製品を販売するビジネスモデルを指します。このモデルでは、メーカーやブランドが自社のオンラインストアやポップアップなどの直営店を通じて、直接消費者と接触し、販売を行います。D2Cの最大の特徴は、企業が消費者との関係を直接管理できる点にあり、お客さまからのフィードバックを迅速に受け取り、製品の改善や新商品の開発に活かすことが可能です。また、中間業者を排除することで、コスト削減や価格競争力の向上を図ることができます。
D2Cマーケティングは、このビジネスモデルに関連するマーケティング手法全般を指し、企業が消費者との直接的な接触を通じてブランドの認知度を高め、お客さまとのエンゲージメントを強化することを目的としています。
ECとD2Cの違い
一方、ECとは「Electronic Commerce(エレクトロニック・コマース)」の略で、日本語では電子商取引を意味します。これは、インターネットを通じて商品やサービスを販売する形態を指しますが、D2Cマーケティングはその中でも特に、企業が直接消費者に販売するビジネスモデルに焦点を当てています。ECは広義には、B2B(企業間取引)やB2C(企業対消費者取引)など、さまざまな形態を含みますが、D2Cはその中でも消費者との直接的な関係を重視する点で異なります。つまり、D2CマーケティングはECの一部でありながら、消費者との直接的な接点を持つことに特化した手法となります。
D2Cマーケティングの需要が高まっている背景
D2Cマーケティングが注目される背景には、SNSやECプラットフォームの発達と普及があります。これにより、中小企業でも比較的低コストで自社ブランドを立ち上げ、消費者に直接アプローチすることが可能になりました。また、消費者の購買行動がモノ消費からコト消費へと移行していることも、D2Cマーケティングの需要を後押ししています。消費者は単に製品を購入するだけでなく、ブランドとのストーリーや体験を求めるようになっており、D2Cモデルはこのニーズに応える形で進化しています。
このように、D2Cマーケティングは企業と消費者の新しい関係性を築くための重要な手法となっており、今後もその重要性は増していくと考えられます。
D2Cマーケティングのメリット

続いて、D2Cマーケティングのメリットについて解説していきます。
スモールスタートで始められる
まず、D2Cマーケティングはスモールスタートで始められる点が大きな利点です。従来の販売モデルでは、商品を市場に投入するために多額の初期投資や流通コストが必要とされてきました。しかし、D2Cでは自社のECサイトを通じて直接販売するため、中間業者を介さずに消費者に商品を届けることができます。これにより、初期コストを抑えつつ、迅速に市場に参入することが可能です。特にスタートアップや中小企業にとって、このアプローチは非常に魅力的です。
顧客ロイヤルティ・LTVが向上しやすい
D2Cは顧客ロイヤルティやLTV(ライフタイムバリュー)の向上に寄与しやすいという点があります。直接消費者と接点を持つことで、企業はお客さまのニーズやフィードバックを直接収集し、迅速に対応することができます。このような顧客中心のアプローチは、消費者との信頼関係を構築し、長期的な関係を築く上で非常に重要です。結果として、お客さまのリピート購入が増え、LTVの向上が期待できます。
マーケティングにおける柔軟性や自由度が高い
D2Cモデルはマーケティングにおける柔軟性や自由度が高い点も魅力です。企業は自社のブランドストーリーを自由に発信でき、消費者に対して独自の価値を訴求することができます。また、デジタルマーケティングツールを活用することで、ターゲットオーディエンスに対する効果的なアプローチが可能となり、マーケティング戦略を迅速に調整することができます。これにより、競争の激しい市場でも差別化を図ることが期待できます。
自社ECがもとになるため顧客データの収集が可能
自社ECが基盤となるため、顧客データの収集が可能である点もD2Cの大きなメリットです。消費者の購買履歴や行動データを収集・分析することで、よりパーソナライズされたマーケティング施策を展開することができます。これにより、消費者のニーズに応じた商品開発やサービス提供が可能となり、企業の競争力を高めることができます。
D2Cマーケティングの課題

続いて、D2Cマーケティングの課題についても解説していきます。
顧客獲得コストの高騰
課題の一つとして、顧客獲得コスト(CAC)の高騰が挙げられます。オンライン広告の競争が激化する中で、消費者の注目を集めるための広告費用が増加しています。特に、デジタルプラットフォームを活用した広告は、ターゲット層にピンポイントでアプローチできる反面、競合他社も同様の手法を用いるため、広告単価が上昇しやすい状況にあります。
これに対応するためには、ターゲットオーディエンスの精緻な分析や、パフォーマンスの高い広告クリエイティブの開発が不可欠です。
競争激化による差別化の工夫
D2C市場は急速に拡大していますが、それに伴い競争も激化しています。多くのブランドがD2Cモデルに参入する中では、他社との差別化を図ることが重要です。独自のブランドストーリーや製品のユニークな特徴を訴求することで、消費者に選ばれるブランドになる必要があります。さらに、お客さまのエンゲージメントを高めるために、パーソナライズされた体験や限定商品、特別なキャンペーンを提供することも効果的です。
ブランド自体の信頼性
消費者がD2Cブランドを選ぶ際には、ブランド自体の信頼性が重要な要素となります。特に新興ブランドの場合、消費者に対して信頼感を築くことが大きな課題です。信頼性を高めるためには、品質の高い製品提供や優れたカスタマーサービスが求められます。また、お客さまからのフィードバックを積極的に取り入れ、サービスの改善に努めることも重要です。透明性のあるコミュニケーションや、持続可能性への取り組みを示すことも、消費者の信頼を得る手段となります。
D2Cマーケティングの5つの手法

続いて、D2Cマーケティングの手法を解説していきます。
改めてとなりますが、D2Cビジネスモデルは、ブランドが直接消費者とつながることを目的としており、特にデジタルマーケティングがその中心的な手法となります。ここでは、ECを起点として活用できるD2Cマーケティングの5つの手法について詳しく解説します。
メルマガ
メルマガ(メールマガジン)は、D2Cブランドがお客さまと直接コミュニケーションを取るための効果的な手段です。お客さまの購買履歴や行動データを基にパーソナライズされたコンテンツを送信することで、顧客ロイヤルティを高めることができます。また、新商品やキャンペーン情報をタイムリーに伝えることで、購買意欲を喚起することも可能です。メルマガは、コスト効率が高く、ターゲット層に直接リーチできるため、D2C企業にとって重要なマーケティングツールとなっています。
SNS
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、ブランドの認知度向上や顧客エンゲージメントを高めるために有効なプラットフォームです。InstagramやFacebook、Xなどを活用して、視覚的に魅力的なコンテンツを配信することで、ブランドのストーリーを効果的に伝えることができます。また、フォロワーとのインタラクションを通じて、リアルタイムでのフィードバックを得たり、コミュニティを形成したりすることも可能です。SNSは、D2Cブランドが消費者と直接つながるための重要なチャネルです。
YouTube
YouTubeは、動画コンテンツを通じて製品の魅力を伝えるための優れたプラットフォームです。商品レビューやチュートリアル、ブランドストーリーを動画で紹介することで、お客さまの理解を深めることができます。また、YouTubeのSEOを活用することで、関連するキーワードでの検索結果に表示されやすくなり、新規顧客の獲得にもつながります。視覚的なコンテンツは、特に若年層の消費者に対して強い訴求力を持っています。
オウンドメディア
オウンドメディアは、ブランドが自社で運営するウェブサイトやブログを指します。ここでは、製品の詳細情報や使用方法、業界トレンドなど消費者が興味を持つコンテンツを提供することで、お客さまの関心を引き付け、ブランドの専門性をアピールすることができます。SEO対策を施すことで、検索エンジンからのトラフィックを増やし、新規顧客の獲得を図ることも可能です。オウンドメディアは、長期的な視点でのブランド価値の向上に寄与します。
ポップアップストア
デジタルの世界に加え、物理的な接点を持つこともD2Cマーケティングの一環として重要です。ポップアップストアは、期間限定で設置される実店舗で、消費者に実際に商品を手に取ってもらう機会を提供します。オンラインでは伝えきれない商品の質感や使用感を体験してもらうことができ、ブランドに対する信頼感を高められます。また、直接お客さまと対話することで、リアルなフィードバックを得ることも可能です。
D2Cマーケティングの取り組み事例

続いて、D2Cマーケティングの取り組み事例をご紹介します。
D2C・EC・多モール展開を自社で実践(TOPPANグループ企業)
TOPPANグループ企業において、快眠を提供する枕のブランドを効果的にブランディングし、D2Cモデルを成功させた事例です。公式通販サイトの制作・運営に加え、多モール展開とカスタマーサポートを充実させました。また、的確なサイト制作・リスティング広告の運用を行うことで、テレビ・雑誌などでも取り上げられる商品のシリーズをもっと見たい、もっと知りたいお客さまへより確実に情報と商品をお届けしています。
D2C向けオウンドメディアコンテンツマーケティング制作・運用支援(食品メーカー)
ある食品メーカーの事例です。直販事業拡大を狙うプラットフォーム会員組織の設計と構築をサポートし、ゲームや動画など様々なコンテンツを通じてファン化を進めました。さらに、初期開発以降はコンサルティングを実施し、施策設計方針や結果分析、そして次のステップの提示を行いました。このように、コンテンツを活用したマーケティング戦略により、消費者とのエンゲージメントを深め、ブランドロイヤルティの向上を図っています。
D2Cマーケティングを成功させるポイント

最後に、D2Cマーケティングを成功させるポイントをご紹介します。
D2Cが勝ちやすい市場・商品を選ぶ
まず、D2Cが勝ちやすい市場や商品を選ぶことも成功の要因です。競争が激しい市場ではなく、ニッチで独自の価値を提供できる市場や、成長が期待される分野をターゲットにすることで、より効果的に市場に参入できます。市場調査を行い、消費者のニーズやトレンドを把握することが重要です。
例えば、特定のライフスタイルに特化した商品や、サステナブルな商品など、消費者の特定のニーズに応える商品を選ぶことも有効です。
ブランドストーリーの設計
次に、ブランドストーリーの設計が重要です。消費者は単に商品を購入するだけでなく、その背景にあるストーリーやブランドの価値観に共感することを求めています。ブランドの歴史や使命、ビジョンを明確に伝えることで、消費者との深いつながりを築くことができます。例えば、製品がどのようにして生まれたのか、どのような社会的意義があるのかを伝えることで、ブランドに対する信頼感と愛着を醸成します。
顧客データの活用・管理
顧客データの活用と管理もD2Cマーケティングにおいて欠かせない要素です。顧客データ管理システムの導入は、お客さまの購買履歴や行動パターンを分析し、よりパーソナライズされたサービスを提供するために必要不可欠です。さらに、ユーザビリティに優れ、セキュアな認証・ログイン機能を活用することで、お客さまのプライバシーを守りつつ、快適な購買体験を提供することが求められます。データを統合してサイロ化を防ぐことも、お客さまの全体像を把握するために重要です。もちろん、データプライバシーや法制度への対応も怠ってはなりません。
最適な伴走パートナーを選ぶ
最適な伴走パートナーを選ぶこともD2Cマーケティングの成功には欠かせません。D2Cマーケティングでは、マーケティングからECサイトの構築、カスタマーケアなど専門的な知識が多く必要になります。
そのため、自社のリソースですべてを賄うのではなく、専門的な知識や技術を持つ外部企業にアウトソースすることで、売上の最大化を図ることができます。例えば、物流やカスタマーサポート、デジタルマーケティングの分野でのパートナーシップを通じることが有効です。
まとめ
D2Cマーケティングには、スモールスタートで始められることや、マーケティングの自由度が高いといった多くのメリットがあります。しかし、実際に参入する際には、競争が激化している市場であるため、顧客獲得単価が高騰するなどの課題があり、効果的な手法の選定や体制の整備が重要となります。
TOPPANの「D2Cのばセル®」は、難易度の高いD2Cの事業立ち上げから育成まで、一連のプロセスを総合的に支援します。ターゲティングや世界観の確立、商品開発、ブランディングを訴求するECサイトの構築、CRM運用、効果的なプロモーションに至るまで、 TOPPANならではの高いデザイン性と幅広い技術を駆使し、お客さまのファン化を促します。パッケージ分野を中心に培ってきたマーケティングのノウハウを活かし、業態・業種別にEC設計の標準フォーマットを整備、期間やコストの短縮を図ることも可能です。
また、TOPPANでは「ECワンストップフルフィルメントサービス」も提供可能です。「フルフィルメントのノウハウが自社にない」「自社に合ったシステムがどれか判断できない」「どうやって売上を拡大していけばいいのか」など、EC事業のフェーズに応じた課題の解決に向けて伴走支援します。
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2025.02.28