【事例対談】
SOMPOひまわり生命×インテグレート×TOPPAN
ウェルビーイング視点で取り組む
健康行動促進に向けたCRM施策<後編>
~3社が共同で仕掛けたお客さまの健康行動促進施策と
そこから見えてきた企業とお客さまとの新たな関係値とは~
▼前編はこちら
◆スピーカー&モデレーター紹介

◆案件概要
インシュアヘルスを通じてお客さまの健康行動を増やすというSOMPOひまわり生命様の目標達成に向け、TOPPANではインテグレート社と協働して、ウェルビーイング視点でのパーセプション(購買に至るまでの認識・態度)設計を軸に、お客さまの健康行動を促すために調査・分析を行い、それに基づいたデジタルコミュニケーション施策の全体設計、コンテンツ制作、効果検証・レポーティングを実施しました。

◆施策の効果
―プロジェクトスタートから半年が経過しました。SOMPOひまわり生命様としては、どのような効果を実感されていますか。
髙橋氏:今回のPoCで、事前に検証したいと考えていた内容は概ね検証できたと思います。セグメント設計と検証によりターゲットを定義できたこと、今後の方向性が見えてきたことが大きな成果と感じています。
一方で、当社は保険契約を中心に大量のデータを保有しているのですが、それらをまだ活用しきれていないと痛感しました。お客さまの健康意識を探るためには、生命保険契約とはまた別の軸でデータを取る必要があります。

佐野氏:特に印象的だったのは、「お客さまを健康意識と健康行動の2つの軸で9つにセグメントし、健康行動をしやすい人と、なかなか行動しづらい人に同じメッセージを送った場合、どのような結果が出るのか見て行きましょう」というご提案をいただいたことです。これは、我々の業務の延長線上では出ない視点だったと思います。
コンテンツのつくり方も、インテグレートさんに研修していただいたことで、セグメント別にどんな案内が有効かなど、私たちの「勝ちパターン」が見えてきました。健康チャレンジ対象者に向けたDMや、アプリで健康診断結果をご登録いただいたお客さまに対する健康行動促進といった場面で、今回の経験を活かしています。他のアウトプットでも実践したいと思っています。
―インテグレートさん側、TOPPAN側から見て、自分たちの強みを発揮できたと感じる部分や、今回のプロジェクトを通しての気付きをお聞かせください。
白井氏:パーセプションシナリオの設計は当社単独でも行っていますが、今回のように、短期間でデータ分析をセキュアな環境で行い、あれほどの規模でメールなどのオペレーションに落とし込むことができたのは、TOPPANさんとのチームだったからこそ実現したことです。それぞれの役割分担のもと、一気に最後まで走り抜けることができて良かったと感じています。また、データの細部まで髙橋さんが非常に良くご存知でしたので、我々としてはとてもラッキーな環境でした。
また、セグメントを分類して施策に落とし込むのは、通販領域や金融業界で昔から取り組まれていることですが、まだ浸透していない業界・企業も多いです。そこにはいくつか要因があると思いますが、SOMPOひまわり生命様の場合、チャレンジできることがまだたくさんあると感じました。そういう意味で、次につながる非常に良い落とし込み方ができたのではないかと思います。

木邨:まず、健康意識と健康行動の2軸で顧客セグメントを設計し、メール施策を実施・検証したことで、態度変容しやすい層を発見できました。そして、健康意識の高い人、低い人でパーセプションが違うのではないかと推察し、対象別にコンテンツをつくり、検証したことは、非常に有意義でした。結果、やはり健康意識の低い人に行動喚起するのは非常に難しいことや、元々の健康意識の高さで刺さるメッセージに差があること、健康意識が低い人はインセンティブで動きやすい傾向があることなどが分かりました。また、今回は、DMとメールを同じタイミングで実施しましたが、同じセグメントでもDMのレスポンスの方が随分高かったことが印象的でした。
八木:また、デプスインタビューで健康行動のきっかけとなったタイミングをヒアリングすることにより、今後の施策を打つべきタイミングの参考情報を得られました。さらに、インタビュー結果から得られた情報を反映することで、よりパーセプションシナリオの精度を高めていくことができたかと思います。

◆今後の展開
―SOMPOひまわり生命様としての本施策の今後の展開をお聞かせください。
山下氏:今回のPoCによる成果は、あくまで健康行動促進の第一歩と考えていますが、お客さまの健康づくりを促進するための1つの“型”をつくれたのは、大変大きかったと感じています。今後は、お客さまを健康にする顧客体験の全体像を設計し、そこにお客さまの属性や健康リテラシー、「MYひまわりアプリ」で取得した健康診断データなどを掛け合わせ、さらに効果の高い健康応援を行っていきたいと思います。今健康意識が低い人であっても、ライフイベントなどによって意識が変化する場合もあると思うので、しかるべきタイミングで健康行動を促す仕掛けを、アプリを中心にメールやDMなど、様々なチャネルを使いながら届けていきたいです。
また、当社では、2024年9月からポイントプログラムがスタートしました。冒頭にも申し上げた、人が健康になるためには、①健康になりたいという気持ち、②その気持ちを行動に移すこと、③その行動を継続することが欠かせません。このプログラムは、その背中を押すものとなっています。最適なコミュニケーションプランとの組み合わせで、さらにお客さまの健康を後押ししていきたいと思います。
髙橋氏:データ分析の観点では、データの取得と統合、活用をさらに進めていきます。特に、お客さまの健康に対する意識の部分や、お客さまのパーセプションの変化をとる仕組みをまずつくりたいです。セグメンテーションの要素にもなると思いますし、それをきっかけに、さらにお客さまを健康にする働きかけに取り組んでいきたいと思っています。
また、chocoZAPと業務提携したことで、まさにリアルな健康行動を行ってもらうきっかけが増えました。デジタル・リアルを融合させたデータ分析・シナリオ設計を行っていく必要があると感じています。
佐野氏:今回の取り組みから見えてきた課題の1つが、健康行動を促す案内パターンの不足です。ここを充実させていく必要があると考えています。案内パターンを量産し、配信・実行等へ移すには、運用体制も検討し、今後はAIや外部知見の活用などを、皆さんにご協力いただくことも含め考えています。
もう1つの課題が、我々の強みである保険代理店、募集人のチャネルとの連携です。デジタルとリアルを融合させた取り組みを進化させ、お客さまにお届けしていきたいと思っています。

―今のお話を受けて、今後TOPPAN、インテグレートさんとして、どのようなご支援をしていきたいですか。
木邨:デジタルとリアルの融合をより意識していかなければいけないと、我々も感じています。全体の顧客体験の設計と、それに基づくパーセプションシナリオの構築や、具体的な施策立案のお手伝いなどができればと思います。また、佐野さんが仰っていたように、今後、コンテンツ制作量増加には実務的な課題もあると思います。TOPPANでAIなどテクノロジーを活用し、業務負荷の軽減、あるいは施策の効果を上げていくといったお手伝いができるのではないかと思います。
白井氏:今後の取り組みとしては大きく2つの方向性が考えられるかと思います。1つは、佐野さんも仰っていた、保険代理店・募集人経由で取得できる情報をどうデータ化していくか。お客さまと直接対話できる大変貴重な環境にいるため、取得情報のデータ化がうまくいけば、次のステップに早く進める可能性があると思います。
もう1つは、健康意識の低い人にいかに意識を高く持っていただくか。新規で取得するデータや現状のデータ活用をさらにブラッシュアップすることで、施策や手法を磨き込めるのではないかと思っています。やり足りないこと、やれることは、まだたくさんあると考えています。広がる可能性の中で、どの順番で取り組めばよいのか、優先順位を付け、メニューとして提案させていただきたいと思っています。

中尾:TOPPANエッジでは、お客さまへの通知物の印刷・発送等、個人情報を安全に加工してお届けする部分をお任せいただいています。「健康☆チャレンジ!制度」や、その周辺業務の内容は深く理解していると自負しています。ですから、その辺りでお力になれることがあるのではないかと思います。また、アウトソーシングや、業務プロセスの効率化・見直しといった観点でのご支援が可能であるかと思います。
木邨:今回、インテグレートさんとTOPPANの強みを活かして、施策の成果向上に関するご支援をさせていただきました。今後は、業務プロセスや施策コストの効率化などもご支援できればと考えています。ここで削減・効率化した時間・予算をアロケーションすることにより、将来へ投資する「資産」を生むお手伝いをさせていただく。これがTOPPANの伴走支援の考え方です。今後もお役に立てれば幸いです。

◆さいごに——ウェルビーイング視点でのビジネス展開の重要性について
―生活者が心身ともに健康な状態を維持し、幸せな状態であることを意味する「ウェルビーイング」。この言葉は、今回の取り組みの大きなキーワードでもあります。CRМ施策においてウェルビーイング視点をもつ重要性について、どのようにお考えですか。
白井氏:一昨年、TOPPANさんと当社の連携を発表した折、ウェルビーイングに関するビジネス支援を、業務の1つとして掲げさせていただきました。
ウェルビーイングは、まだまだ馴染みが薄く、どんなイメージなのかわかりにくい言葉のようです。しかし、SOMPOひまわり生命様の「インシュアヘルス」という考え方は、ウェルビーイングと非常に近いものだと思います。我々としては、インシュアヘルスの取り組みをよりウェルビーイングな状態に近づけていく。そうした方向性でお手伝いができればと思っています。今後、お客さまへの体験のうち、ウェルビーイングな状態にそぐわない部分は、そぎ落としていく必要もあると思います。
木邨:ウェルビーイングの視点をただ商品やサービスにそのまま取り入れるのではなく、CRMの視点も取り入れ、お客さまの目線に立ってコミュニケーションの取り方を考えながら進めることが重要です。そのためには、顧客データを解釈してお客さまを理解し、それぞれに合ったサービスや情報を、必要なタイミングで提供することを積み重ね、エンゲージメントを強化していくことが大切なのではないでしょうか。

SOMPOひまわり生命保険株式会社 先進的な商品・サービスを提供し、SOMPOグループの成長を牽引する生命保険会社。「健康応援企業」として、保険本来の機能(Insurance)に健康を応援する機能(Healthcare)を組み合わせた、新たな価値Insurhealth®(インシュアヘルス)を提供している。 |
株式会社インテグレート IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)を専門的に実践するマーケティングエージェンシー。独自のインサイト抽出と顧客体験設計プログラムにより、従来の戦略コンサルティング会社、広告代理店、PR会社ともまったく違った新しい業態を創り出している。 |
2025.02.18