自治体の子育て支援の最新動向は?
テーマ別の施策も解説
少子高齢化が進行する日本において、国を挙げて子育て支援策の拡充が強く求められています。こうした背景から、各自治体の子育て支援活動は一層活発化しており、現状を常に把握し、他自治体の成功事例や民間との連携を積極的に取り入れながら進めることが重要となっています。
今回は、保活ワンストップサービスをはじめとした自治体の子育て支援の最新動向からテーマ別の具体策、住民が直面する課題、BPOを含めた課題解決策をご紹介します。
■自治体の子育て支援の最新動向
自治体の子育て支援の最新動向をご紹介します。
●保活ワンストップサービス
保活ワンストップサービスは、東京都が進める「保活ワンストッププロジェクト」の施策によるもので、子育て中の保護者が、保育園探しから入園までの手続きが発生する「保活」を、オンラインで完結できるサービスです。
スマートフォンを通じて保育施設の情報収集や見学予約を行えるほか、自治体への入園申請や手続き情報サイトの利用も可能です。
東京都が2024年10月に板橋区、足立区、調布市の保育施設から導入を開始し、2025年7月からは19自治体で利用可能になりました。
システムはGovTech東京と協働で構築されており、保活に関する情報を集約した連携基盤を中心とし、民間保活サイトと保育施設の保育ICTシステムとをつないでいます。これにより保活を行う保護者の利便性向上を図っています。
●無償化・手当て支給などの施策
物価の高騰も背景に、子育て世代を支援する、自治体からのさまざまな経済的支援策が次々と打ち出されています。2025年度には次のような事例があります。
・A区
-中高生1人につき定額支給
-区立小中学校などで副読本や問題集などの教材費を全額補助
・B区
-入学祝い金として小学1年生、中学1年生1人につき特定の金額を支給
・C区
-区立中学校の修学旅行無償化
-区立中学校の制服無償化(2026年度より)
-医療系や理工農系の学部進学の大学生へ年間特定の金額を支給
(所得制限なし)
今後もさらに、各種手当の支給、自治体からのお祝い金など支援対策は、ますます広がっていくでしょう。
■自治体の子育て支援のテーマ別の具体策
近年、子育て支援の取り組みは、自治体によって多様な方向性で進められています。ここではテーマ別に具体策をご紹介します。
●経済的支援
先述の無償化やお祝い金などを含めた経済的支援は、妊娠時から出産・子育て、就学補助まで一貫して行われています。経済的な負担を軽減することで、出産や育児、教育への不安に対応します。
例)
・出産育児一時金
・出産手当金
・育児休業給付
・児童手当
・3-5歳の認定こども園、幼稚園、保育所などの利用料無償化
・小中学校の給食費、学用品の無償化
・高等学校などの就学支援金
・高校生などの奨学給付金
・私立高等学校などの授業料減免
など
●医療・健康支援
子ども医療費助成制度をはじめとした、子どもの健やかな健康をサポートするものです。主に子どもの急な入院や通院の経済的な負担を和らげます。保護者の仕事と育児の両立も想定しています。
●保育の受け皿整備・保育人材の確保
安心して子どもを預けられる保育の受け皿や保育人材の確保は、保護者の負担を軽減し、仕事と育児の両立を促します。認可保育所の開設や一時預かりや夜間保育の拡充、保育人材が働きやすい環境整備などが挙げられます。
●ICT・デジタル活用・オンライン化
子育て支援金の申請や保育所入所申請、予防接種や健診予約などのオンライン申請が進んでいます。役所の窓口に行く手間と時間を省き、子育て支援をスムーズに利用できます。
●地域コミュニティ連携支援
地域ぐるみの子育てが推進されるなか、公民館や児童館での育児悩み相談や保護者同士の交流の場などが提供されています。
■自治体の子育て支援に対する住民のニーズと課題
自治体の子育て支援は、活発に行われている一方で、さまざまな課題に直面しています。そのなかでも、住民サービスに対する課題をご紹介します。
●自治体支援策の認知度が低い
子育て支援策が充分に認知されていないケースがあります。自治体側がどれだけ充実した支援を行っても、特に対象となる保護者に認知されていなければ、利用が進んでいきません。
●自治体支援策の内容がわかりにくい
手厚い支援策であっても、住民にとって複雑であり、また申請方法がわかりにくいなどがあれば、充分に利用されないこともあります。
●申請の手間と時間に負担がある
子育て支援金を受け取れることはわかっていても、仕事と育児の両立に忙しく、役所へ出向けなかったり、情報を確認する時間がなかったりすることもあります。
■自治体の子育て支援の課題解決策
上記の自治体の子育て支援における住民に対する課題の主な解決策をご紹介します。
●住民ニーズ調査の実施
住民がどのような悩みを抱えているか、支援策を知らないのか、あるいは知っていても手続きする時間がないのか、といった実態を正確に把握することが重要です。そのために住民のニーズ調査が有効です。
●住民が利用しやすいデジタル環境の整備
手軽にスマートフォンで確認・手続き・申請ができる仕組みは、子育て支援策の利活用につながります。スマートフォンなどからのオンライン申請と紙による手続きを併用することも可能です。
また、自治体によっては独自に子育てアプリを開発して住民がアプリを通じて手続きを手軽にできるようにしています。またSNSなどを活用して子育て支援策の認知度を上げ、興味関心を引き付ける手法もあります。
●官民連携による情報発信
自治体だけでの情報発信では、届く範囲が限られたり、充分なPR効果が得られないことがあります。そうした場合は、民間企業と連携することが一つの解決策となります。
例えば、PR会社と自治体が協定を結び、インターネットを通じて自治体の政策を広く発信したり、広報活動のノウハウを共有するセミナーを開催したりすることで、情報発信を強化している事例があります。
●BPOの活用
自治体職員の人手不足が深刻になるなか、子育て支援策のコア業務に専念し、周辺の事務局運営や事務作業はBPOに委託するのもおすすめです。
BPOとは、「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字をとったビジネス手法の一種です。企業や自治体が特定の業務やビジネスプロセスを専門の民間企業に委託します。ただのアウトソーシング(=業務代行)の意味合いを超えて、課題解決および業務改善を目的とするものです。
●子育て支援策の業務周辺でBPOに委託できる業務の例
・保活ワンストップサービスにおける認可保育所入所申請受付業務
・住民へ通知する予診票の印刷から問い合わせコールセンター業務
・児童手当支給認定にかかる事務局運営業務
・幼児教育・保育の無償化制度の事務処理
いずれも自治体向けBPOの実績が豊富なTOPPANにてご対応可能です。またオンライン申請とアナログ申請の併用や煩雑になりがちな運用もお任せください。
■まとめ
今後も自治体の子育て支援策は、さらに強力に進められていくでしょう。特に申請・手続き、利用の担い手である住民に対する認知や利便性向上などの施策が重要です。
子育て支援策のコア業務に専念するためにも、周辺業務やデジタル化はBPOを利用するのもおすすめです。
TOPPANでは、自治体向けの子育て支援にかかわるBPOにも広くご対応しています。既存制度のデジタル化、デジタルとアナログを組み合わせたハイブリッド型の支援策の構築など幅広くご対応しています。お困りの際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。
2025.08.26