インタビュー・会談

【会談記事】アンケート回収率は約40%!PXサーベイの調査委託で患者サービス向上が一歩前進

これからの日本の医療は治療のみならず、患者一人ひとりのQOL向上の実現にシフトするとされています。そこで近年の医療施設では、患者がいつどこでどのような経験をしたかという「患者経験価値(PX:ペイシェント・エクスペリエンス)」を重視する動きが広がっています。

TOPPANエッジでは、福岡県筑豊エリアの地域医療を支える株式会社 麻生 飯塚病院さまが行ったPXサーベイ(患者経験価値調査)の運用を全面サポート。調査項目の設計から、アンケートの印刷・発送・回収・入力・分析までをワンストップで行いました。今回は飯塚病院さま初の試みとなったPXサーベイ実施について、広報課の内田さまと樺島さま、そしてTOPPANエッジの河原、田代で振り返りました。

ゲスト

株式会社 麻生 飯塚病院

経営管理部 広報課 課長代理
内田 静香さん

経営管理部 広報課
樺島 重勝さん


インタビュアー

TOPPANエッジ株式会社

西日本営業統括本部
九州第一営業本部 第一チーム
河原 祐洋

事業推進本部 企画販促本部
リージョン企画販促部 リージョン企画チーム
田代 良太郎

※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。


入院患者満足度調査を行うも、業務過多・分析不十分という課題

樺島さん:これまで飯塚病院では、入院患者さんに対する満足度調査を行っていました。この調査は「看護師の対応はいかがでしたか?」などの質問に、患者さんが「非常に良かった」や「どちらともいえない」といった選択肢から答えるもので、あくまでも回答者の主観や印象による評価でした。

河原:調査用紙は広報課が作成し、回収もしていたのですよね。

樺島さん:はい、入院患者さんが退院する時にお渡しする書類一式にアンケートを同封し、会計窓口へ設置していた回収ボックスへ精算時に投函していただくようお願いしていました。
その箱を私が決まったタイミングで確認していたのですが、自席のある広報課から会計窓口までが遠かったです(笑)。

河原:飯塚病院さんは総合病院ですし、敷地がとても広いですからね。

樺島さん:この入院患者満足度調査にはさまざまなご意見が書かれていて、例えば看護師への感謝の言葉といった個別評価を拾い上げ、モチベーション向上へ役立てました。しかし、集計結果をデータとしては見ていたものの満足度に対する全体的評価はわからずじまいでした。

そこで次のステップとして、飯塚病院では新たに「患者経験価値向上委員会」を立ち上げました。というのも、企業立病院※である当院が経営の中長期計画と連携して行ったTQM(総合的品質管理)活動が評価され、2022年に医療業界初となるデミング賞を受賞したのですが、その中長期計画の中にPXの向上も挙げられていたのです。そうした経緯もあり、患者経験価値向上を目指すPDCAプロセスの一環としてPXサーベイを行うことで、組織全体を客観的に見直すことができるのではないかと考えたのです。

※企業立病院:医療法人ではない、民間企業が経営する病院

内田さん:委員長には医師部門の代表が就任し、看護部門や医療技術部門、経営管理部門の代表、その他委員長が必要と判断する部署や組織の方が招集されました。また、メンバーは調査内容と関わりが深い部署の方や、入社して10年以上のキャリアがあり飯塚病院のことをよく知る方、各部署で改善活動の経験がある方々であり、15名で構成されています。私たちは2022年から委員会の事務局を引き継ぎましたが、コロナ禍もあり広報課の業務も増えていたので、入院患者満足度調査は行っていたものの結果の分析までは正直手が回っていない状態でした。

入院患者の経験価値向上を目指してPXサーベイを導入

河原:そんな中、2021年9月ごろに弊社の前任の営業担当が、広報課さんへ「TOPPANエッジの『デジタルギフトサービス』はアンケート調査のインセンティブにも使えますよ」とご案内したのがきっかけで、「実は入院患者満足度調査で悩んでいることがあって……」とご相談いただいたところから、今回のご縁が始まったと聞いています。

田代:当初はNPS調査の話や国内の病院アンケートを収集し、そのサンプルをご紹介していました。すると飯塚病院さまから「実はPXサーベイというものがありまして」とご紹介いただき、そこからいろいろ動き出しましたね。

【NPS調査】
NPS(Net Promoter Score)は「友人や同僚に勧めたいか?」という究極の一問への回答から算出できる指標。顧客満足度や、具体的な不満点の内容、ブランド評価を上げるための要素を抽出することができます。収益性との相関が高く、プロジェクト内の共通指標として活用できるため、国内の導入企業が増加しています。

※ネット・プロモーター、 NPS、NPS関連の絵文字、 ネット・プロモーター・スコア、およびネット・プロモーター・システムは、ベイン・アンド・カンパニー、サトメトリックス・システムズ、フレッド・ライクヘルドの商標またはサービスマークです。

樺島さん:ちょうどその頃当院ではPXサーベイについて調べ始めていたので、願ってもないタイミングでした。

田代:そこで、日本で主流のイギリス版PXサーベイを翻訳した「日本版PXサーベイ」を見せていただくと、入院体験をスコア0から10で測る設問がありました。また、設問同士をかけ合わせてより深い分析が可能となる設問間クロス集計も取り入れており、NPS調査の分析技術が応用できることが分かりました。
実施にあたり「日本版PXサーベイ」で定められた60問は減らせませんが、追加設問はOK。よって、飯塚病院さまオリジナルで他に聞いてみたいことは無いかとお尋ねしました。

内田さん:当院では、ナースの動線の無駄を省き患者さんのそばにナースがいて仕事ができる看護サービス提供システム「セル看護※」を独自開発し、導入しています。かなり特徴的なサービスなので、看護部からはここに関連する設問を追加したいと要望がありました。

例えば「あなたは、看護師に対して声をかけやすかったですか?」や「入院中、安心して治療や療養ができましたか?」などですね。また、リハビリに関する設問設定が無く、当院では他医療施設と比べて入院早期からリハビリを取り入れているため、リハビリテーション部からも質問追加の要望がありました。

※セル看護提供方式®:飯塚病院が開発した看護提供方式。ナースの「動線」に着目し、改善手法を用い動線の無駄を省き、「患者のそばで仕事が出来る=患者に関心を寄せる」を実現する看護サービス提供システムのこと。「セル」の名称は製造業のセル生産方式(cell=細胞)に由来する。

田代:「日本版PXサーベイ」にはリハビリに関する質問が無かったですからね。後から追加された質問はどれも現場業務に根付いた具体的な内容だったので、なるほどと感じました。

調査設計から結果分析までワンストップでサポート

河原:そうしてお話を進める中で、PXサーベイの調査項目設計からアンケートの印刷・発送・回収・入力・分析まで、ワンストップまでお任せいただけることになりました。

樺島さん:入院患者満足度調査の回収や改定は私が担当していたのですが、それこそ通常業務にプラスして行っていたので、かなり負担になっていたんです。そこをTOPPANエッジさんに全て代行してもらえたので、非常に助かりましたね。
あと、手が回っていなかった一歩先の分析部分までお任せでき、患者さんの貴重な声がPX向上へ有効活用できる点にもメリットを感じました。

田代:その後、樺島さんのご負担は減りましたか?

樺島さん:はい、とても減りましたね。我々の作業は、アンケートを発送するために退院した患者さんのリストを連携するだけになりました。

田代:良かったです!安心しました。

内田さん:加えて、TOPPANエッジさんはアンケート調査の実績が豊富ですし、NPSの分析にもたけているところを最初に聞かせていただいてたので、そこも大きな魅力のひとつでした。

田代:はじめにご紹介したのは確か、健康食品の通販会社さんで行ったNPS調査分析レポートのサンプルでしたよね。その企業ではご購入商品ごとで消費体験が異なったり、同梱チラシが違ったりしたのですが、「この商品を友人や同僚に勧めたいですか?」といった質問をして、購入商品別の顧客満足度や具体的な不満点を抽出しました。

内田さん:あと、私たちの抱えるもうひとつの課題が、データ分析が十分にできていないことでした。ですのでNPS調査のお話を伺って、ここはもう皆さんにお任せしようかなと。

田代:ありがとうございます。そこでまずは1回やってみようと、お打ち合わせ開始から半年ほどで1回目のPXサーベイを実施させていただきました。調査票を渡すタイミングは、入院時の記憶が薄れないよう、退院後2週間ほどで患者さんのご自宅に届くスケジュールを組みましたね。

樺島さん:退院日は、ご家族が迎えに来られて荷物をまとめて挨拶をして…とかなりバタバタします。ご自宅で入院生活を思い出しながら、ゆっくりご記入いただきたかったので、退院時にお渡しするのではなく後日郵送にしました。加えて、患者さんの回答状況をそろえる狙いもありましたね。

内田さん:とは言いつつ、あまり時間が経たないうちにご回答いただくのが理想でしたので、退院して2週間後に調査票が届くというサイクルはベストだったのではと感じています。

河原:ご自宅に封筒が届いて封を開ける・開けないというのは、ほとんど外側のみを見て判断されます。ですので送付用封筒には「アンケートにご協力お願いします」というメッセージと、医師と看護師がお辞儀しているイラストを入れるご提案をしました。同封する挨拶状については、内田さまからアドバイスをいただきましたね。

内田さん:TOPPANエッジさんご提案の挨拶状は、きちんと患者さんの体調を気遣いつつ「回答をお願いします」という要望が簡潔にまとまっていました。ただ、当院では「患者様」ではなく「患者さん」で呼び方を統一していますので、あまり堅苦しくない文体へ調整しました。

河原:アンケート用紙の回収については、返信用封筒の宛先を弊社工場にすることで、患者さんから郵送いただいた用紙の回収とあわせて内容のデータ入力も弊社で実施しました。ご契約内容によっては回答用紙をスキャニングしてPDFデータで納品したり、テキストマイニングを行ったりというサービスもご用意しています。

【テキストマイニング】
自由記述の文章を品詞ごとに分類し、言葉の出現頻度や関係性などを明らかにしていく方法。分類、集計には専用のソフトウェアを使い、膨大な文章データを一括分析して、大まかな傾向をつかみたいといった目的に向いています。
例えば、最も多く書かれている内容はどのようなもので、その内容はポジティブなものが多いのかネガティブなものが多いのかなどを分析できます。

田代:飯塚病院さまにはテキストマイニングもご契約いただけたので、「日本版PXサーベイ」には無い自由回答欄を追加しました。具体的には「あなたの入院体験は何点ですか」という質問の後に「その点数の理由を教えてください(自由回答)」とお聞きしました。つまり入院体験10点の理由や入院体験5点の理由がわかるのですが、点数が高い方ほど感謝の言葉や、〇〇の対応をされて良かったといった今後の施策に役立つ有益な情報を記入いただけました。
ちなみに自由回答欄はPXサーベイの終盤に追加したのですが、60問も答え続けて恐らくお疲れであろうところ、約半数の方が記入にご協力いただけたことがうれしかったですね。

河原:また、今回のPXサーベイでは、調査票の回収目標数を400に設定しました。一般的なアンケート調査では、400名分の回答が集まれば確度の高い結果が得られるというデータもあります。飯塚病院さまは年間2万人ほどの入院患者さんがいらっしゃるとのことで、400名ほどの方に返送いただけたなら分析に十分足りうる数だと判断しています。

田代:そこで、400名分の回答を集めるための回収率をやや厳しめの10%で設定し、4,000通の調査票を準備し、少しずつ発送して状況を見ました。途中コロナ禍の第8波と重なり発送を止めた時期もありましたが、しばらくすると予想よりもはるかに多い38%の患者さんから返信していただけていることがわかり、発送を予定よりも早く終えることとなりましたね。

内田さん:今回、1,425通の発送で542人もの方からご回答いただくことができました。これはうれしい誤算でした!

田代:データ分析をしていると、他業種と比べて人が主語になる回答が多かったことに驚きました。医療スタッフに人として大切にされた経験への回答が上位を占め、良い入院体験だったと感じていらっしゃることがデータからも明らかでした。さまざまなプレーヤーが活躍されている病院だからこその結果だと思います。

PXサーベイ実施で見えたものを病院全体へ浸透させていく

内田さん:今回TOPPANエッジさんへPXサーベイの運用や分析をサポートいただけたことで、委員会として新たな一歩を踏み出すことができました。次は、この結果を受けて具体的な改善活動を始めていくのですが、当院にPXという考え方がまだまだ周知されていないことを課題に感じています。

こういった取り組みは委員会や上層部だけが実施するものではなく、病院全体で動かなくてはいけません。まずは、各部署へ今回の分析結果を共有し、院内にPXという考え方を根付かせるところから始めたいですね。そうすることで、当院が目標としている「まごころ医療、まごころサービス」へつながっていくと思っています。

樺島さん:具体例を挙げると、患者さんから「退院後に守ることを書面で提供して欲しい」という回答が多かったのですが、実際は書面をお渡ししているんですよね。これはつまり、病院側はやっているつもりでも、患者さんには正しく伝わっていないことの現れです。退院前は病院側も患者さん、ご家族もバタバタしているからこそ、しっかりと丁寧にお伝えする必要があることを痛感しました。

田代:私たちが調査設計をする際は、普段のオペレーションに落としこめるレベルの設問を作りたいと思っています。というのも、「人として大切にされましたか」「入院中は安心できましたか」といった聞き方は非常に抽象度が高いんですよね。具体的に何をしてもらって「大切にされた」と感じたのか、患者さんの感情が動くプロセスを知るべきだと思います。

そのためには、現場から患者さんへ聞きたい内容が上がってきた時点で、現場は具体的に何をしているかを細かくヒアリングして分解し、質問へ反映する。するとどの行動が患者さんに響いたかが明らかになり、オペレーションへ反映できるようになります。

内田さん:そうなんです!病院側が良かれと提供したサービスについて、患者さんは「ちょっとズレている」と感じていらっしゃるかもしれない。私たちが一番知りたいところはそういったギャップだったりします。

河原:とても参考になるご意見、ありがとうございます。もし質問をアップデートする機会をいただけるなら、私は事前に仮説のすり合わせをしたいと思っています。例えば、ナースコールの回数が多いのは良いこと・悪いことのどちらなのかを、お互いが認識しておく。これによって調査設計の捉え方が若干違っていたのではと感じています。

樺島さん:確かにそうですね。私の振り返りとしては、今回のPXサーベイは入院患者さんだけが調査対象でしたが急性期病院でもある当院として、次は外来や救急外来の患者さんにまで範囲を広げて調査したいですね。

内田さん:そうですね。提供する医療サービスが変わってきますし、多分同じことを聞いても、外来や救急外来の患者さんでは感じ方が異なってくるだろうと予想しています。

河原:今回、第1回となるPXサーベイを実施させていただいたことで、我々にも新たな気づきがありました。この課題を反映して次回はもっと良い調査ができるよう、引き続きサポートさせていただければうれしいです。本日はありがとうございました!

2024.03.22