工場における労災対策
様々な機械が稼働しており、フォークリフトやトラックなどのモノや人の移動も多い工場は、
一般的なオフィスなどと比較して非常に危険な環境になっています。
このように危険な環境であることを背景に、
製造業の労働災害による死傷者数は全産業中1位、死亡者数も2位と、
数値的に見ても労働災害のリスクが高い業界であると言えます。
このような労働災害の発生を予防するためには様々な対策が必要とされています。
本コラムでは、工場における労働災害の対策についてご紹介します。
<目次>
■工場の労働災害対策を行なうべき理由
■工場における労働災害の例
■労働災害の基本対策
■労働災害についてのまとめ
■労働災害における設備担当者の重要性
■工場の労働災害対策を実施する際のポイント
■e-Platchによる改善提案
■工場の労働災害対策を行なうべき理由
工場の労働災害対策を行なうべき主な理由は以下の通りです。
〇労働者の安全と健康の確保
労働災害の対策を行うことで、労働者を物理的、心理的に危害から守り、安全で健康的な職場環境を提供できます。
〇生産性の向上
労働災害は、生産性の低下に繋がる可能性があります。従業員が安全な環境で働くことができれば、より効率的に業務を行い、生産性の向上に繋がります。
〇コスト削減
災害が発生すると、補償費用や設備の損害、生産の中断などにより、企業の財務に大きな負担がかかります。予防対策を行うことでこれらのコストを削減することができます。
■工場における労働災害の例
工場においては様々な事故、労働災害が発生しますが、
上位10位を占める事故は下記の通りです。
① 「はさまれ・巻き込まれ」
② 「転倒」
③ 「墜落・転落」
④ 「動作の反動・無理な動作」
⑤ 「切れ・こすれ」
⑥ 「飛来物・落下物による事故」
⑦ 「激突」
⑧ 「激突され」
⑨ 高温・低温の物との接触
⑩ 崩壊・倒壊
上記の順位は過去4年間において変動がないことから、
これらの事故は工場における根深い課題となっていることが分かります。
次項では労働災害の予防を実現するために、対策として一般的な対策方法の一例をご紹介します。
■労働災害の基本対策
①5S活動
5Sとは、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「躾」を意味します。
それぞれの項目の具体的な内容は下記の通りです。
・整理:不要なものと必要なものを区分すること
・整頓:必要なものを決められた場所に分かりやすいように置くこと
・清掃:定期的な清掃やメンテナンスを通してきれいな状態を保つこと
・清潔:整理、整頓、清掃を維持すること
・躾 :決められた規則を守るように習慣づけすること
5S活動を通して勤務環境を可能な限り安全な状態を保つことは、労働災害の対策としての基本です。
②ヒヤリハット活動
ヒヤリハット活動はハインリッヒの法則に基づいて行われる活動です。
ハインリッヒの法則とは、
1件の重大災害の背景には、
29件の軽度の災害、300件の無傷事故(ヒヤリハット)が存在しているというものです。
つまり、重大な災害や、軽度の災害を予防するためには、
無傷事故(ヒヤリハット)を撲滅する必要があります。
ヒヤリハット活動とは、この 300 件のヒヤリハット(無傷事故)の事例を集め、
事前の対策と危険な状態・状況への認識を深めることで、重大な事故を未然に防ぐ活動です。
ヒヤリハットを感じたものの、運が良く事故につながらなかった事例に出会った場合に、
これらの記録をしておくように通達しておきます。
記録を作ったのち、情報を周囲の人間と共有し、
危険な事象に対する理解を深めることによりヒヤリハットの機会を低減させていきます。
このように普段から危険な環境を現場で共有しておくことにより、
重大な災害を予防することにつながります。
③危険余地訓練(KYT)
危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険要因を発見し解決する能力を高める手法です。
危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTをとり、KYTとも呼びます。
チームやグループでイラストシートを見ながら、
危険な要素がどこに存在しているのか意見を出し合い、
危険な要素を特定したうえで解決方法を検討し、
目標設定まで落とし込む4ラウンド法が一般的です。
・「現状把握」・・・どんな危険が潜んでいるか
・「本質追及」・・・危険なポイントを特定する
・「対策樹立」・・・あなたならどうするかという議論をする
・「目標設定」・・・私たちはこうするという目標を設定する
また、危険余地活動としては、指差呼称も挙げられます。
指差呼称とは、作業する対象となるものや、標識や信号、計器類等に作業者が指さしし、
指さししたものの名称と状態を声に出して確認することを指します。
指差呼称を実施することで、
何もしない時と比較すると1/6まで事故等の発生率を低減することが可能です。
このように普段から指差呼称などの基本的な危険予知活動の習慣づけを実施することにより、
労働災害の発生率の低減することが可能です。
■労働災害についてのまとめ
ここまで一般的な労働災害の対策についてご紹介しましたが、
・機器のメンテナンスが不十分
・器具などの整理整頓が不十分
・従業員が心理的・体力的に不安全な状態
これらの要素が事故の発生には大きく寄与しているため、
根本的な対策としては上記の状態を消すことが非常に重要になります。
特にメンテナンス作業を実施するにあたっては、
人手不足を背景に設備担当者のリソースにも限界があるため、
なかなか根本的な対策が難しい状況です。
■労働災害における設備担当者の重要性
設備担当者のリソースは限られているため、作業効率を向上する施策が必要です。
設備担当者は一般的にメーターのチェック作業、計測器のメンテナンス、
製造設備の点検などの作業を担当されていることが多く、
製造設備の点検・メンテナンス以外の作業時間を軽減することが出来れば、
機器のメンテナンスにより多くの時間を充てることが出来ます。
また、工場は、
・複数の階から構成されており、地下などの暗い場所が存在する
・屋内外問わず、広大な地域に機器が設置されている
・公道をまたいで敷地が保有している
・屋上などの高所での作業を伴う
等の特徴を備えているケースも多いです。
このような工場において設備担当者が作業を実施する場合、体力的な負担も重く、
雨の日の作業や地下などの暗い場所での作業は心理的な負荷をかけるケースも多いため、
これらの負荷が結果的に労働災害の原因となっている場合もあります。
よって、設備担当者が可能な限り働きやすい環境で作業を実施することで、
工場内の機器を安定な状態で維持することが可能となり、
加えて設備担当者が労働災害の被害者になる確率を低減することもできます。
■工場の労働災害対策を実施する際のポイント
なお、労働災害対策を行なう際には以下を意識して実施することが大切です。
〇法令遵守
労働安全衛生法などの関連法規を遵守し、必要な設備や保護具を整備することが必要です。
〇安全管理体制の構築
安全管理責任者を指名し、安全対策の実施と監視を行う体制を整えることが重要です。また定期的な安全教育や避難訓練等を行なう必要があります。
〇機械設備の保守管理
機械設備の定期的な点検・保守を行い、故障による事故を防ぐことが大切です。
■e-Platchによる改善提案
e-Platchは巡回点検作業と呼ばれるメーターのチェック作業の改善をサポートするサービスです。
工場内にある様々なメーターの数値を後付け可能な機器により無線化し、
点検作業の自動化をサポートしています。
広大な敷地の様々な場所に点在するメーターのチェックを自動化することにより、
体力的な負荷を低減することが可能です。
さらに、暗所や高所に存在するメーターのチェック作業の自動化も実現可能なため、
危険な場所での作業を排除することが可能です。
巡回点検作業の改善を実現することが出来れば、時間的にも体力的にも余裕ができるため、
労働災害を予防する上で重要になる機器のメンテナンスに時間を充当することが可能になります。
機器のメンテナンスが十分に実施されることで、
最終的には安全・安心な工場環境の構築に大きく寄与することが可能です。
TOPPANはe-Platchを通して、多くの製造業の労働災害対策を実現します。
巡回点検作業の改善でお悩みの方、労働災害の対策を検討中の方は、
一度下記のフォームからお問い合わせいただければと思います。
2024.10.23