地方への移住を進めたい自治体
—成功のカギは “マーケティング” —
拍車がかかる少子高齢化に、止まらない首都圏への人口流出。そのような中、地方自治体にとって「移住」「定住」を促進する施策はきわめて重要なものとなってきています。
移住・定住施策は、どのように進めるべきなのでしょうか?
ここで自治体が気を付けなければいけないことは、ただ「移住」促進をうたい、一般的な広報・PRをするだけでは、気づいてもらえない恐れがあるということです。このコラムでは、移住施策に携わるご担当者様に移住をめぐる有益情報と、移住・定住促進のために自治体が行うべき成功のカギ、“マーケティング”についてお伝えします!

地方への移住政策を成功させるために、自治体がまず知っておくべきこと
過去最少となった2024年の出生数約72万人から、死亡数を引いた自然増減数はおよそ▲89万人と過去最大の減少。そんな中でも、東京都の社会増加数は約14万人に上り、前年比2万人以上拡大と、東京への人口一極集中は一層進んでいます。
そのため地方へ移住・定住を促進することは、地方の人口減少や人材不足を解決するために、非常に有効な手立てです。
だからこそ移住・定住を政策的に取り組んでいる地方自治体は非常に多く、もはや競合状態に。
そのため「移住しませんか?」「定住するのに良い町ですよ!」とただ広報・PRするだけでは、効果は期待できないのが現実です。
自治体は、見てもらいたい情報を市町村のホームページに掲載しますが、ホームページは、その地方に興味を持っている人が詳しい情報を探しに来る場所。地方や自治体名を知らなければ、どんなに魅力的な情報、移住に有益な情報をホームページに掲載しても、東京圏や大阪圏など大都市圏に居住しているターゲット層には知られないままになってしまうでしょう。
移住促進サイトの構築も全国で進んでいますが、何かをきっかけにサイトの存在を「知って」サイトを訪れたり、たまたま「目に留まったり」といったことがなければ、同じことになってしまう恐れがあります。
また、移住のための支援金を支給する施策をせっかく打ち出したとしても、「労働力不足を補うために、支援金を支給します」と書いてあったら…。知らない町の労働力不足を補うために、わざわざ移住したいとは思えないかもしれません。その町に「住みたい」と思えるような魅力があるから、移住するのではないでしょうか。
伝え方にも課題があるのが現状です。
若い世代の移住願望を、どうやってわが自治体に呼び込むのが効果的?
進学や就職を機に地方から東京へ出て行き、リタイアする年代になって地方に戻る、あるいは移住する人が多く、その人数も東京へ出て行った分に比べてぐっと少なくなるというのが現在の状況。
ですが、移住したいという希望者は、実は若い世代にも一定程度いるのです。
2023年に内閣府が実施した調査「第6回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏在住者のうち移住に関心を持つ人は増えており、全世代で増加していることが分かりました。中でも、特に20歳代でその傾向が強く表れています。
東京圏に住む20歳代の回答者のうち実に44.8%の人が、関心がある(「やや関心がある」を含む)と答えているのです。
■地方移住への関心(東京圏在住者)

リモートワークという働き方が一般的になったことも大きいと思われますが、都会の住環境を顧みて、より広い住宅でのびのびと子育てをしたいと思う人も増えたのではないでしょうか。
ではどうすれば、若い世代を東京から地方へ呼び込むことができるのでしょうか?
漠然と「もっと住みやすい地域」で暮らしたいという願望があっても、自分の理想の暮らしをできる地域が果たしてあるのか、それが一体どの地域なのか? と考えるとなかなか具体的な行動に移しづらいものです。
仕事や子育てで忙しい毎日を過ごす若い世代の潜在的な移住願望を具体化して、移住支援策を行っている自治体とマッチングができたら、人口減少に悩む自治体にとってまたとないチャンスになるのではないでしょうか?
ただ、今や移住施策にしのぎを削る自治体は数多くあるため、自治体が単独で一般的な移住PRをしても、若い世代が接する多くの情報に埋もれてしまい、なかなか目を留めてもらえないもの。そのため差別化を図り、個人に適した情報を訴求していくことが重要になってきます。まずは、「個別ニーズ」を把握することが必要なのです。
漠然とした移住願望でも、どんな「暮らし」をしたいかのイメージは必ずあるものです。
例えば、夫婦だけの世帯であっても、これから子育てをしたい若い夫婦の場合と、退職後に景色を楽しみながらのんびり暮らしたい高齢夫婦の場合とでは、生活に必要な施設が異なるように、ライフステージ、ライフスタイルによって、「暮らし」のイメージとニーズは様々です。
現役世代であれば、仕事を移住先の土地でスムーズにできるかどうかは死活問題です。現在の仕事をリモートワークでできるのか、その場合でも出社日の通勤は可能かどうか。仕事を変える場合には、新たな就業機会はあるか、観光資源の豊かな土地であれば観光業などに携わる見込みはあるか、新規就農は可能か、といったことも。
子育て中や子育てを考えているファミリー層であれば、保育園や認定こども園、小・中学校と、ライフステージに応じて暮らしに必要な環境が変化してきます。その上で学力向上や教育にどれだけ重きをおき、どんな教育環境を求めるのかといった考え方は、夫婦や家族の志向によって異なる個別ニーズです。
住む場所は、景色を優先するか、程よい利便性を優先するか。景色を優先する場合は、山や畑の緑に囲まれた所がいいのか、海の見える所が好きなのか。
大都会に住みたくはないけれど、ある程度の距離感で施設や公共交通機関を利用できる「程よく便利な場所」に住みたいという場合は、利便性の優先順位がぐっと高くなります。
医療機関は、ファミリー層なら小児科や産婦人科、高齢者なら内科や整形外科といったふうに、年齢層に応じて受診傾向にも特徴があるものですが、多くの人が受診する歯科も含め、通院にかかる移動時間の許容範囲はどこまでか、といったことも挙げられるでしょう。
このように、移住希望者といってもそれぞれの思い描く「移住」「定住」のイメージは千差万別であり、何を優先するかが移住先のロケーションを選ぶ決め手となってきます。
そのため、移住希望者の理想やイメージを、年代や家族構成に応じた暮らしの必要性、志向に応じてきめ細かくセグメントし、よりふさわしい地方とマッチングすることが重要となってくるのです。
データをセグメントすることにより、必要な層にターゲティングをした上で、ピンポイントでアプローチしていくことが可能になります。
つまり、自治体に必要なのは「移住を促進するための“マーケティング”」です。
自治体が行うべき移住・定住のマーケティングとは?

「どこかいい場所があれば、東京圏から移住したい」と、漠然と移住・定住を希望している方たちに、希望する「暮らし」のイメージを顕在化してもらい、「データ」をもとに、より適した地方での「暮らし」の情報を提供する。そんな「移住のマッチング」ができたら、今よりもっと効率的に自治体の移住施策が行えるようになります。
では、どうやって?
例えば、TOPPANの「『ピタマチ』を活用したマーケティング」では、移住希望者を年代や家族構成、志向に応じてセグメントし、的を絞ったマーケティングを行うことが可能です。
仕事・住まいの環境・子育て・医療福祉・教育環境・近隣の市町村や県へのアクセスなど、理想とする移住のイメージは多種多様なもの。
『ピタマチ』では移住・定住希望者が、64枚の写真から理想の暮らしのイメージに近いものを選択し、自分の理想の暮らしを表す「軸」と「キーワード」を診断できる『理想の暮らし診断』という機能があります。この機能で出た移住・定住希望者の診断結果を活用し、地域の環境にマッチした希望者にピンポイントで「あなたの志向に近い移住先候補として、〇〇市や△△町があります。〇〇市は、自然に囲まれた土地でありながら◎◎にも近くて便利。住みやすい町です」などと、住む場所としての利点や支援策のPRができれば、より効果的に移住・定住施策を、ターゲット層に訴求することができるのです。
関心度合いの大きい移住・定住希望者に、オファーメッセージを一括送信することができるので、よりマッチ度の高い希望者にリーチすることができ、その後はチャットルームでコミュニケーションを取ることも可能となります。
さらに、「ピタマチ」のサイトで地域を紹介するページに、自治体の情報を掲載することが可能ですので、はじめは広域の地方への関心からであっても、個別の地域が目に留まることで、具体的に詳しい地域情報や移住・定住支援情報へと関心を持ってもらいやすくなります。
ここで、「『ピタマチ』を活用したマーケティング」の導入事例を、2件ご紹介します。
◎地域プロモーション支援
―愛媛県南予地方の移住交流イベント
愛媛県南予地方の5地域(宇和島市、八幡浜市、大洲市、西予市、内子町)は、『南予子育て移住促進協議会』を設立し、子育て移住を全力で応援するための取り組みを行っています。
「『ピタマチ』を活用したマーケティング」を導入したこの南予地方では、『自然の中で子ども達にのびのび育ってほしい』との移住希望を持つ方々に向けて、南予地方の魅力を発信する移住施策を2024年に実施しました。
子育て世代に人気のメディアへの記事掲載や、地域の魅力を配信するラジオ番組へ南予の移住・定住施策のキーマンをゲストに迎え魅力を発信。また、東京で開催されたイベントでは、教育や医療などの都市機能も充実している南予で実際に子育てをしている先輩移住者をゲストに、南予ならではの子育て事情などをご紹介。子育ての不安についても、南予での生活をもとにお答えいただくというもので、移住の不安解消と移住後のミスマッチを防ぐ効果が期待できます。併せて個別相談会も実施しました。
漠然とした移住願望から、具体的に一歩を踏み出せるきっかけにもなるこうした子育て層に特化した移住交流イベントやPR活動。
「『ピタマチ』を活用したマーケティング」では、子育て世帯にターゲットを絞り、子育て世帯が気になる情報発信を各媒体で展開することで、効果的なイベントのプロモーションが可能となるのです。
◎オンラインイベントの開催
―高知県「移住を考えはじめた方のためのセミナー」
高知県に移住された様々な属性の先輩移住者(単身移住、趣味移住、子育て移住など)をゲストに迎え、「理想の暮らし」をテーマとして、移住を考えはじめたばかりの方に向けたオンラインセミナーを開催しました。
このように、自治体が単独ではなかなか行うことが難しい移住マッチングイベントも、「『ピタマチ』を活用したマーケティング」であれば、ユーザーのビッグデータを活用することで、移住・定住希望者の気持ちに刺さるコンセプトの検討から開催までをサポートしますので、効率的に実施することができるのです。
貴自治体の移住・定住施策に、TOPPANの「『ピタマチ』を活用したマーケティング」を取り入れてみてはいかがでしょうか?
2025.04.25