コラム

介護業界の人手不足の原因は?問題点や解消に向けた対策を解説

近年、介護業界の人手不足が深刻化しており、介護サービスの質の低下や介護施設の閉鎖が問題視されています。介護ニーズは今後ますます高まることが予想されており、人手不足を解消するための取り組みが欠かせません。

本記事では、介護業界における人手不足の現状や人手不足が起きる原因について解説します。人手不足を解消するための対策も紹介するため、介護施設の人手不足にお困りの方は、ぜひ参考にしてください。


<目次>
■介護業界における人手不足の現状
■介護業界で人手不足が起きる原因
 1|労働環境の厳しさ
 2|労働に対する賃金の低さ
 3|人間関係の問題
 4|社会的評価の低さ
■介護業界の人手不足がもたらす影響
■介護業界の人手不足解消に向けた対策
 1|賃金や労働環境の改善
 2|キャリアアップの支援
 3|介護職のイメージアップ
 4|外国人雇用の促進
 5|ICTやAI技術の活用
 6|まとめ

ー介護業界における人手不足の現状ー

介護業界では、人手不足が深刻化しています。
2025年には約800万人いる団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」を控えており、介護ニーズはさらに高まると予想されています。

厚生労働省の公表した資料「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。

厚生労働省|第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html)

介護職員の必要数が増加する主な要因は、高齢化の進展です。

厚生労働省が公表した「介護保険制度をめぐる最近の動向について」によると、75歳以上の人口は2015年の1,632万人から、2025年までの10年間で2,180万人まで増加すると予測されています。
また、2,000年には218万人であった要介護(要支援)認定者は、2021年には約3.1倍の682万人まで増加しました。

介護業界で人手不足が起きる原因

介護業界で人手不足が起きる主な原因としては、以下のものが挙げられます。

・労働環境の厳しさ
・労働に対する賃金の低さ
・人間関係の問題
・社会的評価の低さ

労働環境の厳しさ

2024年7月に公益財団法人介護労働安定センターが公表した「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」によると、労働条件・仕事の負担に関する悩みや不安、不満などについての質問で、「身体的負担が大きい」「精神的にきつい」「有給休暇が取りにくい」「休憩が取りにくい」といった回答が多く寄せられて、介護現場の労働環境の厳しさが浮き彫りになっています。

回答ごとの割合は、以下のとおりです。

回答結果 割合
身体的負担が大きい 29.3%
精神的にきつい 22.5%
有給休暇が取りにくい 20.5%
休憩が取りにくい 17.9%

労働に対する賃金の低さ

厚生労働省が公表した「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/dl/13.pdf)によると、介護職の含まれる「医療、福祉」の平均賃金は29.8万円でした。
全産業の平均賃金は31.83万円であることを考えると、他の産業と比較しても高いとは言えません。

公益財団法人介護労働安定センターが公表した「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023r01_chousa_cw_kekka.pdf)でも、回答者の37.5%が「仕事内容のわりに賃金が低い」と回答しています。
このことからも、賃金の低さが介護業界の人手不足の一因となっていることがわかります。

人間関係の問題

公益財団法人介護労働安定センターが公表した「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」によると、介護職を離職した理由としてもっとも多いものは「職場の人間関係に問題があったため」でした。

「職場の人間関係に問題があったため」と回答した人に具体的な状況を尋ねたところ、49.3%の人が「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」と回答しています。
介護という仕事柄、職員同士で感情的になりやすい場面の多いことがうかがえます。

一方、また、現在勤めている事業所に就職した理由を尋ねたところ、31.4%の人が「職場の人間関係がよいため」と回答しました。
このことから、職場の人間関係が良好であることが、継続して勤務するかどうかの重要な要因になっていると言えます。

社会的評価の低さ

介護業界で人手不足が起きる主な原因のひとつに、社会的評価の低さが挙げられます。

公益財団法人介護労働安定センターが公表した「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」では、労働条件・仕事の負担に関する悩みや不安、不満などについての質問において、「業務に対する社会的評価が低い」ことを不満に感じている人が20.4%にも上ることが明らかになりました。

従来、介護は家族が担うものという考え方が主流でした。
高齢社会が進む現代において欠かすことのできない職業であるにもかかわらず、専門性が高くないと認識され、いまだに社会的評価が低い状況にあるのです。

そのため、介護業界の人手不足を解消するには、介護職の重要性に対する社会の理解不足を改善することが欠かせません。

ー介護業界の人手不足がもたらす影響ー

介護業界の人手不足がもたらす主な影響には、以下のようなものがあります。

・介護サービスの質の低下
・介護施設の閉鎖

人手不足により、利用者一人ひとりに手厚いケアを提供することが難しくなり、サービスの質が低下してしまいます。
さらに、人手不足によってサービス提供体制が脆弱化し、緊急時の対応が困難になるなど、介護施設の運営が立ち行かなくなる可能性もあるのです。

2023年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は122件で、過去2番目の高水準となっており、介護業界が厳しい状況に直面していることがわかります。

ー介護業界の人手不足解消に向けた対策ー

介護業界の人手不足を解消するためには、国や業界全体での取り組みが求められます。ここでは、人手不足解消に向けた対策を紹介していきます。

・賃金や労働環境の改善
・キャリアアップの支援
・介護職のイメージアップ
・外国人雇用の促進
・ICTやAI技術の活用

賃金や労働環境の改善


政府は介護業界の賃金を引き上げるために、介護職員処遇改善加算の拡充や介護報酬の改定を進めています。しかし、jinjer株式会社の実施した「介護職員等処遇改善加算の実施状況に関する調査」では、処遇改善手当を導入した後の課題として、19.7%の人が「公的機関とのやり取りが煩雑である」と回答しました。人手不足に悩む介護業界にとって、煩雑な手続きは大きな負担となる可能性があり、この点が課題として指摘されています。

また、労働環境の改善に向けて、介護記録の電子化やノーリフティングポリシーの普及が進められています。今後は勤務シフトの柔軟化、休暇取得の促進、メンタルヘルスケアの充実なども図りながら、働きやすい環境づくりを推進していくことが求められています。

キャリアアップの支援

介護の仕事には資格が必須ではありません。
しかし、資格を取得することで、より専門的な業務に携わることができて、従業員の仕事に対するモチベーションの向上を期待できます。

資格取得には費用がかかるため、職場がその費用を負担し、意欲的な従業員の成長を後押しすることが効果的です。
また、資格取得を目指した研修を実施するなど、さまざまな取り組みを通じて、従業員の成長と職場への定着を促進しましょう。

介護職のイメージアップ

介護職は労働環境の厳しいイメージがついており、「3K」と呼ばれる職業のひとつです。3Kは、「きつい、汚い、危険」の頭文字を取った言葉であり、「給料が低い」を追加して「4K」と呼ばれることもあります。
このようなイメージが定着したままでは、介護業界の人材不足は解消できないため、介護職のイメージを向上させるための取り組みが重要となっています。

多くの人に介護を身近なものとして捉えてもらえるように、国は11月11日を「介護の日」に設定しました。
さらに、若い世代に介護職が魅力のある職業として認識してもらえるように、11月4日から11月17日までを「福祉人材確保重点実施期間」と定めています。
この期間中、関係機関と連携して、福祉・介護サービスの意義の理解を一層深めるための普及啓発および福祉人材の確保・定着を促進するための取組を行なっており、取組内容は市町村や団体によってさまざまです。

たとえば、神奈川県の藤沢市では、介護職の魅力を描いた映画「ケアニン」の上映や、最新の福祉用具の展示・体験などを行なっています。

外国人雇用の促進

日本の生産年齢人口は年々減少していることから、外国人を積極的に雇用することも、介護業界の人手不足を解消する対策として有効です。

政府は在留資格「介護」の創設や技能実習制度の拡充など、外国人の介護人材の受け入れ促進に力を入れています。
今後は、言語や文化面でのサポート体制の整備、受け入れ施設の環境作りなどが課題となるでしょう。

ICTやAI技術の活用

ICTやAI技術を活用し、業務の効率化を図ることも、介護業界の人手不足解消に向けて非常に重要な取組です。
具体的には、介護記録の電子化や情報共有システムの導入、センサーを用いた見守りなどが挙げられます。

これらの技術を活用することで、介護職員の労働環境を改善し、介護業界の人材確保につながると期待されています。
さらに、限られた人材でもより効率的に質の高い介護サービスを提供できるようになるでしょう。

なお、TOPPANは介護職員の負担を軽減する介護見守りロボット「Sensing WaveⅡ」を開発・提供しています。
「Sensing WaveⅡ」は、ベッドマットレスの下にセンサーを設置し、棚にカメラを置くだけで、リアルタイムで居室内の利用者の状況を確認できるサービスです。
遠隔から入居者の状況を確認できることから訪室回数を削減できて、さらに離床前のお知らせで訪室して転倒・転落を防止できます。

ーまとめー

少子高齢化が進む中、介護ニーズは今後ますます高まることが予想されます。
介護サービスの質を向上させ、誰もが安心して老後を過ごせる社会を実現するためには、国、業界、社会全体で介護人材の確保・定着に向けた取り組みを進めていくことが不可欠です。

本記事では、介護業界で人手不足が起きる原因や対策について解説しました。
ぜひ本記事の内容を参考にして、職員の定着や人材確保を目指してみてください。

弊社TOPPANでは、介護職員の負担を軽減できる介護見守りロボット「Sensing WaveⅡ」を開発・提供しています。
離床を平均3秒で検知できる点が特徴で、離床や心拍相当数の低下など、あらかじめ設定した事象が発生した際には音でお知らせします。
「訪室回数を削減して介護職員の業務を効率化したい」「転倒転落予防で事故を防止したい」という方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

2024.08.29

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