コラム

IT人材不足の中で
DX推進を進めるための方策

執筆者:黒川 貴弘



株式会社拠り所 代表取締役
株式会社フロントビジョン 取締役
株式会社AtFilm 顧問
LEC東京リーガルマインド講師

大学在学中に中小企業診断士資格に合格。システムエンジニアとして6年間勤務後、2011年に独立起業。IT導入・DX推進プロジェクトを多数行いながら、IT系企業研修、大学講師、資格取得予備校講師を拝命。その他、自社ブランドのキャンプ用品開発・販売やコーヒー豆の焙煎・販売なども手掛けている。


■そもそもDXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して企業や公共団体などがより良い価値を見出すための改革の実現を目指す取り組みです。単にパソコン上の自動化などではなく、ビジネスモデル全般の抜本的な革新や社会全体のインフラのコントロールなどを目指す動きです。AI等を中心とする技術進化による第4次産業革命を意識した取り組みとなっています。


■DX推進の取り組み

DXは、2024年現在でかなり多くの企業や組織で進められています。生成AIなどをはじめとするAIの活用は特に注目されています。RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)と呼ばれる、コンピュータ内の操作を自動化するソフトウェアもAIと連動できるようになり、定型的な作業だけでなく、非定型な作業にも対応できるようになってきています。これにより、属人的で人手に頼らないといけなかった作業が自動化され、生産性向上の効果を得ることができています。また、クラウドサービスの利用拡大やIoT(モノのインターネット)の利用拡大もDXを進めるうえで必須のものとなっています。


■DX推進の考え方・進め方

まずは現状分析(As-Is)

DXを推進する上で必要なことは、しっかりと現状分析を実施することです。闇雲にデジタル技術を導入すればいいというものではありません。現状の業務などの実態を可視化することが重要です。掃除で例えるなら、普段きれいに掃除できている場所は問題がないのですが、隅のほうや隠れた場所に汚れがたまりがちです。そういった部分を切り分けて、どこに問題点があるのか、その問題点の本質は何なのかを見つけることで、意味のある解決につながりやすいですし、なにより問題点の可視化により改善担当者のモチベーション向上が促されます。現状の業務の可視化は、業務フロー図などを描いて図解して全体を俯瞰してみることがおすすめです。

次にあるべき姿の創出(To-Be)

現状分析をしたあとに、あるべき姿を明確にします。現状分析がしっかりとできているとあるべき姿は組み立てやすいものです。現状の良いところは活用し、問題点となっている場所を改善します。その改善の際に乗り越えないといけない事象を課題として認識します。課題は一覧化して課題一覧という資料を作り、誰がどのように対応していくかを管理していくといいでしょう。重要なポイントは、あるべき姿の立案時に、企業であれば経営理念や店舗コンセプトなどに反していないかをチェックすることです。理念の実現につながるような方向性で進めていくことが必要となります。

As-IsとTo-BeのギャップをDX推進で埋める

As-Isの現状とTo-Beのあるべき姿の間には明確なギャップが生まれてきます。現状分析とあるべき姿の組み立てをしっかりとやれば、そのギャップは具体的なものが見えてきます。そのギャップを埋めるためにDXを行うのです。そのため、DXを推進すること自体が目的にならないようにしたいものです。例えば、より良い顧客満足の実現が目的となって、それを達成するためにDXを実施するという展開にするべきでしょう。単に上層部からDXを進めよと言われて進めるだけでは意味がありません。そもそも何を目指すのかをしっかりと定義することが重要なのです。

効果測定と継続サイクル

DXを実施してみた効果は明確にすべきです。数値にしにくい要素である定性的な側面と、数値評価できる定量的な側面の2面から効果をまとめていくことが重要です。Before/Afterでまとめるとわかりやすいでしょう。例えば、DX前は人手による作業で1000時間使っていたことが、DX後に1時間にまで削減され、そのあまった時間を別の高付加価値業務へまわすことができサービス充実につながっているといった具合です。このようにして効果を図りながら次のDX推進につなげるために、しっかりとPDCAを回していきます。1回限りで終わらないように、今回のDXの課題を次でどう解決しようかと計画を立て、改善を重ねていきます。このように改善のマネジメントサイクルを回し続けることが重要となります。


■DX推進で立ちはだかる壁

IT人材不足

経済産業省の試算によれば、2030年には約45万人のIT人材が不足すると予測されています。昨今においてはDXの加速によりIT人材需要が高まり、慢性的な人出不足状態となってしまっています。このために、早い段階から人材育成などを中心として対策の実施を進めなければならない状況となっています。

IT人材育成のために

一言にITといっても分野は幅広いものです。AIのような先端的な分野もあれば、従来型のシステム、半導体、データベース、ネットワーク、データサイエンスなどさまざまな分野があります。さらにはセキュリティ対策も日進月歩で進化しており、継続的な知識のアップデートが必要となります。段階的に社員全体のITリテラシーを高めておく必要があるのです。

社員全体のベースアップ

ITパスポート試験や基本情報技術者試験などの資格試験を活用することで、体系的かつ効率的に分野横断の知識を身に付けることができます。また資格試験は合否が明確に出るため、達成状況の把握がわかりやすいという利点があります。このため、ITパスポートを全社員に合格を促す企業も多く表れています。資格手当の設定など本人のやる気を引き出しながら運用することが重要です。

専門人材の育成

ある程度のベースアップが図れたら、個々人の適性ごとに専門的な知識を学ばせることも必要です。要件定義やマネジメントのノウハウ獲得や、AIの技術的な知識、データサイエンスなどの統計学を駆使した分析技術など分野ごとにまったく適性が違うため、しっかりと切り分けて各自の能力が伸びるように人材計画を考えることが重要となります。日本全体の企業統計として、欧米諸国よりも教育にかけるコストが低水準というデータもあるため、積極的な人材投資が必要な時代になってきたといえるでしょう。

外部人材の活用

内部で育成が難しい分野や、スピードを求める場合には、外部人材の活用も検討に値します。外注という形や提携、プロジェクトへの参画を協力企業として促すなど、状況に応じて柔軟な対応が可能です。しかし、外部人材も必要なタイミングで適任者が調達できるとは限りません。IT専門企業内でもIT人材は不足しているため、外部人材と自社人材の育成をバランスよく進めることが望ましいでしょう。


■まとめ

DX推進を成功させるためには、正しい実施方法の理解とIT人材不足への対策が不可欠です。短期的な解決と中長期的な人材育成を同時に進めることで、持続可能なDX推進が実現できます。まずは自社の現状を見つめ直し、具体的な行動計画を立てることから始めてみましょう。



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2024.12.10

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