データテクノロジー&プラットフォームサービス コラム

サッポロビール×TOPPAN
ファンコミュニティ
立ち上げプロジェクトで見えた
顧客ID統合の必要性と真の価値、成功のための秘訣とは?[前編]

TOPPANと各社との対談で、日本企業のデジタルマーケティングの課題解決と未来を探るシリーズ。今回は、サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部でシニア メディア プランニング マネージャーを務める福吉敬氏をお迎えして、TOPPANとの協働プロジェクトから日本企業における「顧客ID統合」の必要性と実行における課題を紐解き、成功に導くためのプロジェクトマネジメントと、顧客データを正しく活用することの真の価値について、ご紹介します。
※所属企業名・部署名は2022年8月時点


スピーカー紹介

サッポロビール株式会社
マーケティング本部 ビール&RTD事業部
シニア メディア プランニング マネージャー
福吉 敬 氏
TOPPAN株式会社
情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
デジタルマーケティングセンター データ&テクノロジー本部
システムインテグレーション部 1T
遠山 恵美


サッポロビールは2022年2月25日、「2022年ヱビスブランド戦略発表会」をオンライン開催し、コロナ禍での家飲み需要を受けて「高価格帯ビールへの感心が高まっている」と、好調な売上を報告。2022年のマーケティング戦略として顧客接点の強化に注力し、オンラインのファンコミュニティなどを通して、ブランド価値を高めていくと発表しました。

【背景・課題】 双方向・1to1コミュニケーションを阻む課題と、顧客ID統合の必要性とは?

-今回のプロジェクトの背景をお聞かせください。

福吉氏:これからの50年、100年と長く続くブランドとしてお客様に愛されるために、まずはお客様理解の解像度を上げることが必要でした。当社のブランドの中でもYEBISUブランドは1890年から130年以上の歴史があり、認知度は高い一方で「ハレの日に飲むビール」、「年に数回、特別な日に飲むビール」というイメージが強いブランドです。これを日常使いしていただくために、メーカーとしてお客様とどのようなコミュニケーションを行っていけばよいのだろう、と模索していました。これまでメルマガなどの施策は実施していたものの、今後はさらに双方向型で1to1のコミュニケーションが求められます。しかし、そもそも当ブランドのお客様はどんな方々で、どういった機会にヱビスビールを飲むのか、顔が見えづらいことが課題でした。

-これまで保有していたデータと、活用における課題は何でしたか?

福吉氏:当社には「サッポロウェブ会員」「CLUB黒ラベル」などの会員サイトがあり、登録いただくとお得なキャンペーン情報やメルマガが届きます。サッポロウェブ会員に登録いただいている中で、YEBISUブランドのメルマガを読まれている方が何名いて、メルマガを開封している、頻度と回数、さらにどの記事をクリックしているのかなどの把握は行っていました。ただ、数十万通のうち開封したのが〇万通、そのうち〇万人がクリック、どの記事を見ているなどの総数と率は把握できるものの、IDを統合していなかったために「誰が」までを正しく把握する仕組みはありませんでした。また、会員IDを持つ人がサイトにアクセスしたことは分かりますが、行動データまではつながっていませんでした。メルマガ専用ツール、サイトの解析はGoogle Analytics、アトリビューションはTRENDEMONという具合に、利用ツールもバラバラです。そのため、例えば同じ方が複数サイトに登録されると別人として扱われるといった不具合も生じていました。

-本プロジェクトで、どのようなコミュニケーション施策を目指されたのでしょうか?

福吉氏:ヱビスビールは特別感のあるブランドで、「YEBISU、自分は好きなんだけどマイノリティだよな・・・」と感じている人が多いのです。そこで「仲間がいるよ」、ということを見せたいと考え、新たにヱビスのファンコミュニティサイトの立ち上げを計画しました。メルマガのような一方通行のコミュニケーションではなく、好きな方同士が集まり、会話していただくことで、より世界が広がるのではないかと。そしてその機会に、これまで個別に保有してきたアセットをつないで、より立体的にお客様を可視化したいと考えたのです。

-顧客を可視化する上で、なぜ顧客IDの統合が必要なのでしょうか?

福吉氏:可視化が目的ではなく、それによってお客様が何を好み、どんな時にヱビスビールを飲まれるのか?何と一緒に楽しまれているのか?などを知り、お客様に最適なコンテンツやキャンペーンなどを通じて、価値をお返しすることが目的です。そのためには顧客データを正確に取得するだけでなく、それらのデータが裏側できちんとつながっている必要があります。ブランドごとに登録いただいたデータが分断されず顧客IDとして統合されれば、ブランドサイト、コンテンツ、ファンコミュニティとお客様が遷移しても、1IDとして認識できます。そこからよくサイトに訪れてくれる方の中で例えば、グルメのコンテンツをよくご覧になっている、投稿では料理に関することを発信しているであるとか、旅のコンテンツが好きで、国内旅行好きなサークルに加入されているなど、お客様の嗜好の属性と、そのボリュームが見えてきます。そうなればそのお客様の嗜好に沿ったコンテンツを配信する、キャンペーンを打つといった有効な施策につながります。

<ID統合イメージ>

【選定プロセス】TOPPAN「ASP型ID統合プラットフォームサービス」を選定した理由とメリットとは?

―本プロジェクトで、TOPPAN「ASP型ID統合プラットフォームサービス」を選定した経緯をお聞かせください。

福吉氏:前述のようなコミュニケーションのための仕組みをどう実現するか?と検討していたときに、TOPPANから「いろんなプラットフォームを接続して、IDを統合できるプラットフォームがあります」とご紹介いただいたことがきっかけです。

遠山:実は、それ以前から他部署の方に、ファンコミュニティ構築とID統合をセットでご提案していたのですがすれ違いで、ファンコミュニティの構築は別の代理店と計画が進んでしまっていたんですよね。

福吉氏:そうなんです。ただ、コミュニティサイト構築側でも顧客のデータ統合、連携の部分は未解決で、独自でフルスクラッチ開発するしかないか、でも運用が・・・と悩んでいたところでした。ちょうどそのタイミングでTOPPANからASP型ID統合プラットフォームサービスの提案をいただき、すでに仕組みとしてあるのであれば間違いなく早い上に、AWSをベースにしてAPIによる連携機能も提供されるなど汎用性が高い。これからさまざまなアセットを結合していく上で必要となる拡張性も期待できると感じました。これはコミュニティサイトを構築する代理店も同意見で、すぐに賛同が得られたのです。もう1つは、TOPPANと弊社は付き合いも長く、キャンペーンシステムの運用で個人情報のやり取り実績もある。社内の総務・法務・IT部門から了承を得やすいというメリットもありました。

【開発プロセス】実働期間わずか2か月。カスタマイズの考え方

―開発は、どのくらいの期間で実施されたのですか?

福吉氏:今回、既にコミュニティサイト構築が進行していた経緯もあって実働 2か月弱と、非常に短納期でした。2021年12月からスタートし、第一段階の目標であるデータ移行と統合までの作業が予定通り、2月末に完了しました。

遠山:なかなかタイトなスケジュールでしたね。

福吉氏:しかもサービスをそのまま利用するだけでは済みませんからね(笑)

―カスタマイズはどの程度実施されたのですか?

福吉氏:完全にカスタマイズしてしまうとスクラッチ開発と同じで、ASPサービスを利用するメリットはありません。ですから、標準仕様でできることは何ですか?と聞いて、どの辺が落としどころかな?と、打ち合わせで詰めて行くやり方を取りました。TOPPANのプラットフォームの制約上、これしかできないなら運用でこうしたほうがいい、でもここはやっておかないと後でこっちのデータと合わないよね、みたいな打ち合わせを重ねました。

遠山:このプロジェクトの進め方が今回はすごくユニークで、そのおかげでこの短納期で乗り切れたと感じています。

続く後編では、チームコミュニケーションを円滑に進めるためのプロジェクトマネジメントの工夫や意思決定および業務分担のコツについて、そしてこの取り組みで得られた成果と、これから求められるお客様への提供価値について、さらに語り合います。



2023.11.30

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